統計学の復習 第2章 §2.7 ★★ 標準偏差を平均で割り、単位と大きさの違うデータの散らばりを比べる
体重と身長のように単位が違う量や、平均の大きさが大きく違う量の散らばりは、標準偏差を直接比べても意味がない。そこで標準偏差を平均で割る。
定義 2.15(変動係数)
正の値をとるデータ(xˉ>0)について、CV=σ^/xˉ を変動係数と呼ぶ(s/xˉ で定める流儀もある。比較するときはそろえる)。
命題 2.16(変動係数は尺度の変換で変わらない)
a>0 として yi=axi なら CVy=CVx。一方、yi=xi+b(b=0)では一般に CVy=CVx。
証明
yi=axi なら σ^y=aσ^x、yˉ=axˉ なので比は変わらない。yi=xi+b なら σ^y=σ^x のまま yˉ=xˉ+b となるので、σ^x>0 である限り CVy=σ^x/(xˉ+b)=σ^x/xˉ。
この命題から、変動係数を使ってよいのは比尺度(0 に「量が無い」という意味がある尺度)のデータに限られる。g を kg に変える(a=1/1000)ような単位の変更では変動係数は変わらないが、摂氏温度のように0の位置が約束で決まっている間隔尺度では、0をどこに置くかで変動係数が変わってしまう。
変動係数と標準誤差
どちらも「標準偏差を何かで割った量」だが、測っているものが違う。変動係数 σ/μ は平均で割って単位を消した量で、データの個数 n によらない母集団の性質である。標準誤差 σ/n は標本平均 Xˉ という別の確率変数の標準偏差で、単位はデータと同じまま残り、n を増やすと小さくなる(第8章・第9章)。
例題 2.9 単位の違う量の散らばりと、間隔尺度での変動係数 ★★
オリジナル
- (1) ある集団の身長は平均 170 cm・標準偏差 6 cm、体重は平均 62 kg・標準偏差 9 kg だった。相対的な散らばりが大きいのはどちらか。
- (2) ある地点の気温は、摂氏で平均 20 ℃・標準偏差 5 ℃ だった。華氏(F=1.8C+32)と絶対温度(K=C+273.15)に直したときの平均と標準偏差を求め、3通りの変動係数を比べよ。
解答
(1) 身長の変動係数は 6/170≈0.035、体重は 9/62≈0.145。体重のほうが平均に対して約4倍散らばっている。
(2) 命題 2.11 と (2.1) から、華氏では平均 1.8×20+32=68、標準偏差 1.8×5=9。絶対温度では平均 293.15、標準偏差 5。変動係数は 摂氏 5/20=0.25、華氏 9/68≈0.132、絶対温度 5/293.15≈0.017 と、同じ気温のデータなのに3通りの値になる。摂氏と華氏の0は約束で決めた位置なので、これらの変動係数には意味が無い。絶対温度は0に物理的な意味がある比尺度なので、変動係数を使うなら絶対温度で計算する。
確認テスト
オリジナル
- 2.7-1 データを yi=axi(a>0)と変換しても変動係数が変わらないことを、σ^ の定義から直接示せ。
- 2.7-2 機械Aが作る部品は平均 250 g・標準偏差 5 g、機械Bが作る部品は平均 40 g・標準偏差 1.2 g である。標準偏差で比べた場合と変動係数で比べた場合で、どちらの機械の散らばりが大きいと判断されるか。
- 2.7-3 母平均 μ=50、母標準偏差 σ=10 の母集団から n=25 と n=100 の標本をとる。それぞれについて変動係数 σ/μ と標本平均の標準誤差 σ/n を求め、n への依存の違いを述べよ。
- 2.7-4 0以上の値をとるデータ(xˉ>0)について、CV=σ^/xˉ≤n−1 を示せ。また等号が成り立つデータの例を挙げよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com