物理のための微分幾何入門 第1章 §1.6
- 1.1-1 Jacobi 行列と行列式は次のとおりである。
J=(111−1),detJ=−1−1=−2
単位正方形の像は、ベクトル (1,1) と (1,−1) が張る正方形である。その面積は ∣detJ∣=2 である。行列式が負なので向きは逆になる(図 1.2 の右)。2. 1.1-2 球座標の Jacobi 行列を第3行 (cosθ,−rsinθ,0) で余因子展開する。
detJ=cosθrcosθcosφrcosθsinφ−rsinθsinφrsinθcosφ+rsinθsinθcosφsinθsinφ−rsinθsinφrsinθcosφ
第1の小行列式は r2sinθcosθ、第2の小行列式は rsin2θ である。したがって detJ=r2sinθcos2θ+r2sin3θ=r2sinθ となる。
球の体積は、変数変換の公式から次のように求まる。
∫0Rr2dr∫0πsinθdθ∫02πdφ=3R3⋅2⋅2π=34πR3
3. 1.1-3 偏微分は次のようになる。
J=a(sinhμcosνcoshμsinν−coshμsinνsinhμcosν)
行列式は a2(sinh2μcos2ν+cosh2μsin2ν) である。cosh2μ=1+sinh2μ を使うと、次の形に整理できる。
detJ=a2(sinh2μ+sin2ν)
行列式が0になる条件は、sinhμ=0 かつ sinν=0 である。すなわち μ=0 で、しかも ν∈{0,π} のときである。これは xy 平面の2点 (±a,0) にあたり、楕円座標の楕円の焦点である。4. 1.1-4 G=F−1 とおくと、G∘F は恒等写像である。連鎖律から JG(F(u))JF(u)=I が成り立つ。両辺の行列式をとると detJG(F(u))⋅detJF(u)=1 となり、逆写像の Jacobi 行列式はもとの逆数である。
極座標では det∂(x,y)/∂(r,θ)=r なので、次のようになる。
∂(x,y)∂(r,θ)=r1=x2+y21
直接の計算でも確かめられる。r=x2+y2 と θ=arctan(y/x) の偏微分を並べると、次のようになる。
det(x/r−y/r2y/rx/r2)=r3x2+y2=r1
5. 1.2-1 重なりは、円から2点 (±1,0) を除いた集合である。これは上半分 y>0 と下半分 y<0 の2つの部分からなる。座標変換は次のようになる。
θ′=θ(y>0, 0<θ<π),θ′=θ+2π(y<0, −π<θ<0)
どちらの部分でも座標変換は滑らかで、導関数は1である。重なりが2つに分かれるため、1つの式で書けないことに注意する。6. 1.2-2 ρ=u として球面の場合と同じ計算をすると、u2=(1+y)/(1−y) から逆写像は次のようになる。
(x,y)=(u2+12u, u2+1u2−1)
重なり(y=±1)では、x2=1−y2 を使って次が成り立つ。
uu′=(1−y)(1+y)x2=1−y2x2=1
したがって u′=1/u で、その導関数は −1/u2 である。u=0 は南極にあたり、重なりに含まれない。7. 1.2-3 上半分のチャートの逆写像は (x,y)↦(x,y,1−x2−y2) なので、座標変換は次のようになる。
ϕ2∘ϕ1−1(x,y)=(y, z),z=1−x2−y2
∂z/∂x=−x/z と ∂z/∂y=−y/z から、Jacobi 行列式は
det(0−x/z1−y/z)=0⋅(−zy)−1⋅(−zx)=zx
となる。重なりでは x>0 かつ z>0 なので正であり、2つのチャートは同じ向きである。8. 1.2-4 このトーラスは、(θ,φ)∈[0,2π]2 から R3 への連続写像
((2+cosθ)cosφ, (2+cosθ)sinφ, sinθ)
の像である。コンパクトな正方形の連続写像による像なので、トーラスはコンパクトである。1枚のチャート ϕ で覆えたとすると、その像は R2 の空でない開集合で、しかもコンパクト(有界な閉集合)になる。定理 1.6 の証明と同じく、R2 の連結性からこれは R2 全体となり、有界であることに反する。9. 1.3-1 次のとおりである。
- (a) 球面 S2 で、2次元。
- (b) 3つの角がそれぞれ円の点なので T3=S1×S1×S1 で、3次元。
- (c) 一方の質点の位置と、もう一方への向きの直積 R3×S2 で、5次元。
- (d) 重心の位置と向きの直積 R3×SO(3) で、6次元。
どれも、質点の座標の個数から独立な拘束の個数を引いた数に一致する。10. 1.3-2 Rx(0)=I なので、θ=0 では次のようになる。
R(φ,0,ψ)=Rz(φ)Rz(ψ)=Rz(φ+ψ)
z 軸のまわりの回転を2回続けると、角が足される。したがって θ=0 では、第1の角を増やして第3の角を同じだけ減らしても、回転は変わらない。これは、方向 (1,0,−1) への微分 ∂R/∂φ−∂R/∂ψ が0であることを意味する。
Jacobi 行列は、R の9成分を3つの角で偏微分した 9×3 行列である。その第1列と第3列が等しいので、階数は3より小さい。第2列 ∂R/∂θ は第1軸のまわりの回転を表し、第1列とは独立なので、θ=0 での階数はちょうど2になる。11. 1.3-3 Jacobi 行列式の連鎖律から、(T,V) を間にはさんで次のように書ける。
∂(S,V)∂(T,P)=∂(T,V)∂(T,P)⋅∂(S,V)∂(T,V)=(∂V∂P)T⋅CVT
理想気体では P=nRT/V から (∂P/∂V)T=−P/V である。したがって ∂(T,P)/∂(S,V)=−TP/(CVV) となる。これは0にならないので、(T,P) も理想気体の状態空間のチャートになる(行列式が負なので、(S,V) とは逆の向きである)。12. 1.3-4 座標変換 (S,V)↦(U(S,V),V) の Jacobi 行列式は、(1.13) と同じく次のようになる。
∂(S,V)∂(U,V)=det((∂U/∂S)V0(∂U/∂V)S1)=(∂S∂U)V=T
温度が正の範囲では行列式は0にならない。逆関数定理により、各点の近くで (U,V) は (S,V) と滑らかに取り替えられるチャートになる。向きも (S,V) と同じである。13. 1.4-1 JF=(2x,2y,−2z) が0になるのは原点だけで、F(0,0,0)=0 である。したがって0以外の c はすべて正則値である。c>0 の等高面は一葉双曲面、c<0 の等高面は二葉双曲面である。 c=0 の円錐 C が原点の近くで2次元多様体だと仮定する。すると、原点を含む開集合 W⊂C と、W から開円板への同相写像で原点を中心に写すものがとれる。円板から中心を除いた集合は連結(弧状連結)なので、W から原点を除いた集合も連結でなければならない。ところが、原点を除いた W は、上の部分と下の部分(z の符号で分ける)に分かれる。2つの部分は互いに交わらない空でない開集合なので、連結性に反する。したがって円錐は原点の近くで多様体でない。14. 1.4-2 F(x,y)=x2+xy+y2 とおくと、偏導関数は Fx=2x+y, Fy=x+2y である。点 (1,1) では Fy=3=0 なので、陰関数定理が使える。(1.14) から次を得る。
g′(1)=−Fy(1,1)Fx(1,1)=−33=−1
Fy=0 となる点、すなわち直線 x=−2y の上の点では、陰関数定理が使えない。これを曲線の式に入れると 4y2−2y2+y2=3y2=3 から y=±1 となる。点は (−2,1) と (2,−1) の2つである。そこでは Fx=0 で接線が縦になるので、実際に x の関数として書けない。15. 1.4-3 r=x1−x2 とおくと F=∣r∣2 である。2つの位置による偏微分を並べると、次のようになる。
JF=(2rT, −2rT)
拘束面の上では ∣r∣=l>0 なので JF=0 で、階数は1である。したがって l2 は正則値で、配位空間は 6−1=5 次元の部分多様体になる。16. 1.4-4 写像 F(x,y)=y−g(x) を考えると、グラフはちょうど F−1(0) である。F の Jacobi 行列は次のブロックの形になる。
JF=(−∂g/∂x, Ik)
右側に単位行列 Ik があるので、階数はどの点でも k である。したがって0は正則値で、正則値定理からグラフは (m+k)−k=m 次元の部分多様体である。
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