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1形式の線積分

2026年10月22日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第3章 1形式と双対
目次
  1. 線積分の定義
  2. 完全微分と閉形式
  3. 物理の例1:仕事と保存力
  4. 物理の例2:熱は完全微分でない
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第3章 §3.3 ★★★ 1形式は曲線に沿って積分できる。完全微分なら端点だけで決まり、熱のように完全でない1形式は経路に依存する

線積分の定義

1形式は接ベクトルに数を返すので、曲線の速度に作用させて時間で積分できる。

定義 3.8(線積分)

曲線 γ:[a,b]→M\gamma:[a,b]\to M に沿った1形式 ω\omega の線積分を次の式で定める。

∫γω=∫abωγ(t)(γ˙(t)) dt=∫abωi(γ(t)) dγidt dt(3.12)\int_\gamma\omega=\int_a^b\omega_{\gamma(t)}\bigl(\dot\gamma(t)\bigr)\,\mathrm{d} t=\int_a^b\omega_i\bigl(\gamma(t)\bigr)\,\frac{d \gamma^i}{d t}\,\mathrm{d} t\tag{3.12}

被積分関数 ω(γ˙)\omega(\dot\gamma) は (3.2) の組み合わせなので、座標の選び方に依らない。線積分を定義するのに計量は使っていない。

命題 3.9(媒介変数の取り替え)

ϕ:[c,d]→[a,b]\phi:[c,d]\to[a,b] を滑らかな全単射とし、γ~=γ∘ϕ\tilde\gamma=\gamma\circ\phi とする。ϕ′>0\phi'>0 なら ∫γ~ω=∫γω\int_{\tilde\gamma}\omega=\int_\gamma\omega である。ϕ′<0\phi'<0 なら符号が反転する。

証明

連鎖律から γ~˙(s)=ϕ′(s) γ˙(ϕ(s))\dot{\tilde\gamma}(s)=\phi'(s)\,\dot\gamma(\phi(s)) である。ω\omega は線形なので、被積分関数は ϕ′(s) ω(γ˙(ϕ(s)))\phi'(s)\,\omega(\dot\gamma(\phi(s))) になる。置換積分 t=ϕ(s)t=\phi(s) を行う。

∫cdω(γ˙(ϕ(s)))ϕ′(s) ds=∫ϕ(c)ϕ(d)ω(γ˙(t)) dt\int_c^d\omega\bigl(\dot\gamma(\phi(s))\bigr)\phi'(s)\,\mathrm{d} s=\int_{\phi(c)}^{\phi(d)}\omega\bigl(\dot\gamma(t)\bigr)\,\mathrm{d} t

ϕ′>0\phi'>0 なら、積分の下端は ϕ(c)=a\phi(c)=a になる。上端は ϕ(d)=b\phi(d)=b になる。これは元の積分である。ϕ′<0\phi'<0 なら端が入れ替わるので、積分の向きが逆になり符号が反転する。

線積分は曲線の像と向きだけで決まり、速さには依らない。1形式は「向きのついた曲線の上で積分するもの」である。この性質は第12章で、kk 形式が向きのついた kk 次元の面の上で積分されるという形に一般化される。

完全微分と閉形式

定理 3.10(微分の線積分)

任意の曲線 γ:[a,b]→M\gamma:[a,b]\to M と滑らかな関数 ff について、次の式が成り立つ。

∫γdf=f(γ(b))−f(γ(a))(3.13)\int_\gamma\mathrm{d} f=f\bigl(\gamma(b)\bigr)-f\bigl(\gamma(a)\bigr)\tag{3.13}

証明

定義 (3.7) から df(γ˙(t))=ddtf(γ(t))\mathrm{d} f(\dot\gamma(t))=\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t}f(\gamma(t)) である。1変数の微分積分学の基本定理を f(γ(t))f(\gamma(t)) に使えば結論を得る。

定義 3.11(完全形式と閉形式)

ある関数 ff によって ω=df\omega=\mathrm{d} f と書ける1形式を完全形式(完全微分)と呼ぶ。座標のもとで次の条件を満たす1形式を閉形式と呼ぶ。

∂iωj−∂jωi=0(すべての i,j)(3.14)\partial_i\omega_j-\partial_j\omega_i=0\qquad(\text{すべての }i,j)\tag{3.14}

条件 (3.14) が座標の取り替えで保たれることは、第12章 §12.2 の外微分 dω\mathrm{d}\omega を使うと見通しよく示せる。ここでは直交座標のような1つの座標で確かめれば足りる場面だけを扱う。

完全形式は閉形式である。ωj=∂jf\omega_j=\partial_jf なら、2階偏導関数の順序交換から ∂i∂jf−∂j∂if=0\partial_i\partial_jf-\partial_j\partial_if=0 となる。逆向きは、領域の形に条件を付ければ成り立つ。

定理 3.12(1形式の Poincaré の補題)

Rn\mathbb{R}^n の領域 UU が原点に関して星形であるとする。これは、領域の各点 xx と原点を結ぶ線分がすべて UU に含まれるという意味である。このとき、UU の上の閉形式 ω\omega は完全形式である。次の関数が df=ω\mathrm{d} f=\omega を満たす。

f(x)=∫01ωi(tx) xi dt(3.15)f(x)=\int_0^1\omega_i(tx)\,x^i\,\mathrm{d} t\tag{3.15}

証明

(3.15) は、原点から xx への線分に沿った ω\omega の線積分である。積分記号の下で xjx^j について微分する。

∂f∂xj=∫01[t (∂jωi)(tx) xi+ωj(tx)]dt\frac{\partial f}{\partial x^j}=\int_0^1\Bigl[t\,(\partial_j\omega_i)(tx)\,x^i+\omega_j(tx)\Bigr]\mathrm{d} t

閉形式の条件 (3.14) で ∂jωi=∂iωj\partial_j\omega_i=\partial_i\omega_j と入れ替える。すると、被積分関数は tt についての全微分になる。

t xi(∂iωj)(tx)+ωj(tx)=ddt[t ωj(tx)]t\,x^i(\partial_i\omega_j)(tx)+\omega_j(tx)=\frac{d }{d t}\Bigl[t\,\omega_j(tx)\Bigr]

tt について0から1まで積分すると、∂jf=ωj(x)\partial_jf=\omega_j(x) を得る。

星形の条件は外せない。原点を除いた平面の1形式 ω=(−y dx+x dy)/(x2+y2)\omega=(-y\,\mathrm{d} x+x\,\mathrm{d} y)/(x^2+y^2) は閉形式だが、単位円を1周する線積分は 2π2\pi で0でない。定理 3.10 から、1周の線積分が0でない1形式は完全形式になりえない。

この1形式は極座標の dθ\mathrm{d}\theta である。偏角 θ\theta は1周で 2π2\pi 増えるので、穴のある平面全体の関数にならない。穴のある領域の閉形式と完全形式の違いは、第12章 §12.5 で de Rham コホモロジーとして扱う。

物理の例1:仕事と保存力

力 F=Fi dxiF=F_i\,\mathrm{d} x^i が経路に沿ってする仕事は、線積分 W=∫γFW=\int_\gamma F である。力が保存力 F=−dVpotF=-\mathrm{d} V_{\mathrm{pot}} なら、定理 3.10 から仕事は端点の位置エネルギーの差だけで決まる。星形の領域では、保存力であることと閉形式 (3.14) であることは同値になる。3次元の直交座標での条件 (3.14) は、回転 ∇×F=0\nabla\times\bm F=0 にあたる。

保存力でない例として F=k(−y dx+x dy)F=k(-y\,\mathrm{d} x+x\,\mathrm{d} y) を考える。∂xFy−∂yFx=2k≠0\partial_xF_y-\partial_yF_x=2k\ne0 なので閉形式でない。半径 RR の円を反時計回りに1周すると、γ(t)=(Rcos⁡t,Rsin⁡t)\gamma(t)=(R\cos t,R\sin t) を代入して仕事は次の値になる。

W=∫02πk(R2sin⁡2t+R2cos⁡2t) dt=2πkR2W=\int_0^{2\pi}k\bigl(R^2\sin^2t+R^2\cos^2t\bigr)\,\mathrm{d} t=2\pi kR^2

物理の例2:熱は完全微分でない

熱力学の第1法則は、状態空間の上の1形式の等式として書ける。

δQ=dU+p dV(3.16)\delta Q=\mathrm{d} U+p\,\mathrm{d} V\tag{3.16}

左辺の記号 δQ\delta Q は、それが何かの関数の微分ではないことを表す。理想気体では U=CVTU=C_VT と p=nRT/Vp=nRT/V である。チャート (T,V)(T,V) では次の形になる。

δQ=CV dT+nRTV dV(3.17)\delta Q=C_V\,\mathrm{d} T+\frac{nRT}{V}\,\mathrm{d} V\tag{3.17}

閉形式の条件 (3.14) を調べると、∂VCV=0\partial_V C_V=0 に対して ∂T(nRT/V)=nR/V\partial_T(nRT/V)=nR/V で、2つは等しくない。したがって δQ\delta Q は閉形式でなく、完全形式でもない。「状態の関数としての熱 QQ」は存在せず、受け取る熱は経路に依存する。

定義 3.13(積分因子)

1形式 ω\omega に0にならない関数 λ\lambda を掛ける。積 λ ω\lambda\,\omega が完全形式になるとき、λ\lambda を積分因子と呼ぶ。

(3.17) を TT で割ると、閉形式の条件が満たされる。

δQT=CVT dT+nRV dV=d(CVln⁡T+nRln⁡V)(3.18)\frac{\delta Q}{T}=\frac{C_V}{T}\,\mathrm{d} T+\frac{nR}{V}\,\mathrm{d} V=\mathrm{d}\bigl(C_V\ln T+nR\ln V\bigr)\tag{3.18}

1/T1/T は δQ\delta Q の積分因子である。δQ/T\delta Q/T を積分して得られる関数がエントロピーである。2次元の状態空間では、1形式の積分因子は局所的にはいつも存在する。3次元以上の状態空間で積分因子が存在するための条件は Frobenius の定理(第13章 §13.5)の特別な場合で、Carathéodory はこれを熱力学の第2法則の定式化に使った。

図

図 3.3 理想気体の状態空間(チャート (V,T)(V,T))の2つの経路。1形式 δQ\delta Q の線積分は経路1と経路2で異なり、δQ/T=dS\delta Q/T=\mathrm{d} S の線積分は等しい(例題 3.3)。

記号 δ\delta と d\mathrm{d}

  • dU\mathrm{d} U や dS\mathrm{d} S は関数の微分で、閉じた経路での線積分は0である。
  • δQ\delta Q や仕事 δW=p dV\delta W=p\,\mathrm{d} V は1形式だが、何かの関数の微分ではない。閉じた経路(サイクル)の線積分は一般に0でなく、その値が熱機関の出す仕事になる。
  • 「熱の微小量」という言い方は、1形式 δQ\delta Q を微小な変位に作用させた値のことを指す。

例題 3.3 2つの経路で受け取る熱とエントロピー ★★★

オリジナル単原子理想気体 1 mol1\,\mathrm{mol} を考える。定積熱容量は CV=32RC_V=\frac32R で、R=8.314 J/(mol K)R=8.314\,\mathrm{J/(mol\,K)} とする。気体を状態 A (T0,V0)(T_0,V_0) から状態 B (2T0,2V0)(2T_0,2V_0) へ移す。温度は T0=300 KT_0=300\,\mathrm{K} とする。

  1. 図 3.3 の経路1と経路2について、δQ\delta Q の線積分 Q1,Q2Q_1,Q_2 を求めよ。
  2. 差 Q1−Q2Q_1-Q_2 の数値を求めよ。
  3. 2つの経路の δQ/T\delta Q/T の線積分を求め、(3.18) のエントロピーの差と一致することを確かめよ。
解答
  1. 定積の区間では dV=0\mathrm{d} V=0 なので、(3.17) の第1項だけが残る。温度を2倍にすると、熱は CV(2T0−T0)=CVT0C_V(2T_0-T_0)=C_VT_0 である。等温の区間では dT=0\mathrm{d} T=0 なので、第2項だけが残る。温度 TT で体積を2倍にすると、熱は次の値になる。

∫V02V0RTV dV=RTln⁡2\int_{V_0}^{2V_0}\frac{RT}{V}\,\mathrm{d} V=RT\ln2

経路1では等温の区間の温度が 2T02T_0、経路2では T0T_0 である。

Q1=CVT0+2RT0ln⁡2,Q2=RT0ln⁡2+CVT0Q_1=C_VT_0+2RT_0\ln2,\qquad Q_2=RT_0\ln2+C_VT_0 2. 差は Q1−Q2=RT0ln⁡2=8.314×300×0.6931≈1.73×103 JQ_1-Q_2=RT_0\ln2=8.314\times300\times0.6931\approx1.73\times10^3\,\mathrm J である。2つの経路は端点が同じなので、この差は δQ\delta Q が完全形式でないことの現れである。3. 定積の区間の寄与は ∫CV dT/T=CVln⁡2\int C_V\,\mathrm{d} T/T=C_V\ln2 で、どちらの経路でも同じである。等温の区間の寄与は、温度に依らず次の値になる。

∫V02V0RV dV=Rln⁡2\int_{V_0}^{2V_0}\frac{R}{V}\,\mathrm{d} V=R\ln2

どちらの経路も合計は (CV+R)ln⁡2=52Rln⁡2≈14.4 J/K(C_V+R)\ln2=\frac52R\ln2\approx14.4\,\mathrm{J/K} である。(3.18) の関数で差を計算しても、CVln⁡2+Rln⁡2C_V\ln2+R\ln2 で一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 3.3-1 1形式 ω=2xy dx+x2 dy\omega=2xy\,\mathrm{d} x+x^2\,\mathrm{d} y が閉形式であることを確かめよ。さらに ω=df\omega=\mathrm{d} f となる関数を求めよ。

  2. 3.3-2 1形式 ω=−y dx+x dy\omega=-y\,\mathrm{d} x+x\,\mathrm{d} y を、次の2つの曲線に沿って積分せよ。どちらも点 (1,0)(1,0) から点 (0,1)(0,1) へ向かう。

    • (a) 線分 γ(t)=(1−t, t)\gamma(t)=(1-t,\,t)(0≤t≤10\le t\le1)。
    • (b) 単位円の4分の1の弧 γ(t)=(cos⁡t, sin⁡t)\gamma(t)=(\cos t,\,\sin t)(0≤t≤π/20\le t\le\pi/2)。

結果が異なる理由を、閉形式の条件で説明せよ。3. 3.3-3 van der Waals 気体では、内部エネルギーと圧力が次の形をとる(a,b,CVa,b,C_V は定数)。

U=CVT−an2V,p=nRTV−nb−an2V2U=C_VT-\frac{an^2}{V},\qquad p=\frac{nRT}{V-nb}-\frac{an^2}{V^2}

チャート (T,V)(T,V) で δQ=dU+p dV\delta Q=\mathrm{d} U+p\,\mathrm{d} V を書き、閉形式でないことを示せ。さらに 1/T1/T が積分因子であることを示し、エントロピー SS を求めよ。4. 3.3-4 1形式 ω\omega の積分因子をとり、λ ω=df\lambda\,\omega=\mathrm{d} f とする。導関数が0にならない滑らかな1変数関数 Φ\Phi を任意にとる。このとき Φ′(f) λ\Phi'(f)\,\lambda も積分因子であることを証明せよ。

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