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関数の微分 df\mathrm{d}f と勾配の正体

2026年10月22日12分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第3章 1形式と双対
目次
  1. 微分 の定義
  2. 等高線と微分
  3. 勾配を矢印にするには計量が要る
  4. 物理の例:熱力学の状態空間と保存力
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第3章 §3.2 ★★★ 偏微分の組 ∂if\partial_if は1形式の成分であって、矢印の成分ではない。矢印の「勾配」を作るには計量が要る

微分 df\mathrm{d}f の定義

第2章 §2.1 で、接ベクトル V∈TpMV\in T_pM を関数に方向微分 V(f)V(f) を返す演算として読んだ。速度が VV の曲線 c(s)c(s) を使うと、方向微分は次の値である。

V(f)=ddsf(c(s))∣s=0V(f)=\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} s}f\bigl(c(s)\bigr)\Big|_{s=0}

この値は VV について線形である。したがって、関数を固定した対応 V↦V(f)V\mapsto V(f) は余接ベクトルになる。

定義 3.5(関数の微分)

滑らかな関数 ff の点 pp での微分を、次の式で定める。

dfp(V)=V(f)(V∈TpM)(3.7)\mathrm{d} f_p(V)=V(f)\qquad(V\in T_pM)\tag{3.7}

点 pp を動かした1形式を df\mathrm{d} f と書く。

命題 3.6(座標での表示)

座標 xix^i のもとで、微分は偏導関数を成分に持つ。

df=∂f∂xi dxi(3.8)\mathrm{d} f=\frac{\partial f}{\partial x^i}\,\mathrm{d} x^i\tag{3.8}

特に、座標関数 xix^i 自身の微分は、(3.4) の双対基底 dxi\mathrm{d} x^i に一致する。

証明

定理 3.2 により、余接ベクトルの成分は基底ベクトルでの値である。(3.7) で V=∂jV=\partial_j とすると df(∂j)=∂jf\mathrm{d} f(\partial_j)=\partial_jf である。したがって成分は偏導関数 ∂f/∂xj\partial f/\partial x^j である。座標関数 f=xif=x^i では ∂jxi=δij\partial_jx^i=\delta^i{}_j となり、これは (3.4) の条件そのものである。

この命題から、偏導関数の組 (∂1f,…,∂nf)(\partial_1f,\dots,\partial_nf) の変換則も分かる。別の座標 x′ax'^a では、連鎖律から次の式が成り立つ。

∂f∂x′a=∂xj∂x′a∂f∂xj\frac{\partial f}{\partial x'^a}=\frac{\partial x^j}{\partial x'^a}\frac{\partial f}{\partial x^j}

これは (3.5) の ωa′\omega'_a の規則と同じである。偏導関数の組は下付きの添字を持つ量、つまり1形式の成分として変換する。

等高線と微分

df\mathrm{d} f を目で見るには、ff の等高線(3次元なら等位面)を描く。

命題 3.7(等位集合の接ベクトル)

点 pp で dfp≠0\mathrm{d} f_p\ne0 とする。pp を通る等位集合を S={f=f(p)}S=\{f=f(p)\} と書く。接ベクトル VV が等位集合に接するための必要十分条件は、dfp(V)=0\mathrm{d} f_p(V)=0 である。

証明

等位集合の中を通る曲線 c(s)c(s) で、c(0)=pc(0)=p となるものをとる。関数 f(c(s))f(c(s)) は一定なので、これを微分すると dfp(c′(0))=0\mathrm{d} f_p(c'(0))=0 である。よって SS の接ベクトルはすべて dfp\mathrm{d} f_p の核に入る。

逆を示す。陰関数定理(第1章 §1.4)により、等位集合は点 pp の近くで n−1n-1 次元の部分多様体になる。その接空間は n−1n-1 次元である。

一方、dfp\mathrm{d} f_p は0でない線形写像なので、核の次元も n−1n-1 である。前半で接空間が核に含まれることを示したので、次元が等しい2つの部分空間は一致する。

点 pp の近くでは f≈f(p)+dfp(Δx)f\approx f(p)+\mathrm{d} f_p(\Delta x) である。したがって、dfp\mathrm{d} f_p の線の族(図 3.1)は、pp の近くの等高線を平行な直線で近似したものになる。等高線が密な所ほど df\mathrm{d} f の成分は大きい。

図

図 3.2 関数 f=x2/4+y2f=x^2/4+y^2 の等高線(f=0.25, 0.5, 1, 1.5, 2f=0.25,\,0.5,\,1,\,1.5,\,2)。点 pp で等高線に接するベクトル VV は dfp(V)=0\mathrm{d} f_p(V)=0 を満たす。等高線に垂直な矢印 grad⁡f\operatorname{grad}f は、Euclid の内積で「垂直」を決めて初めて描ける。

勾配を矢印にするには計量が要る

図 3.2 の赤い矢印は、普通「勾配」と呼ばれる。しかし df\mathrm{d} f の成分 ∂if\partial_if は下付きの量で、矢印の成分は上付きの量である。成分の数字をそのまま矢印の成分に読み替える操作が座標に依らないかどうかを、具体例で調べる。

平面の関数 f=xf=x を考える。直交座標では df=dx\mathrm{d} f=\mathrm{d} x で、成分を矢印に読み替えると ∂x\partial_x になる。極座標では f=rcos⁡θf=r\cos\theta なので、成分は次のとおりである。

∂f∂r=cos⁡θ,∂f∂θ=−rsin⁡θ\frac{\partial f}{\partial r}=\cos\theta,\qquad \frac{\partial f}{\partial \theta}=-r\sin\theta

これを矢印の成分に読み替えたベクトルを、第2章の次の関係で直交座標へ戻す。

∂r=cos⁡θ ∂x+sin⁡θ ∂y,∂θ=−rsin⁡θ ∂x+rcos⁡θ ∂y\partial_r=\cos\theta\,\partial_x+\sin\theta\,\partial_y,\qquad \partial_\theta=-r\sin\theta\,\partial_x+r\cos\theta\,\partial_y

cos⁡θ ∂r−rsin⁡θ ∂θ=(cos⁡2θ+r2sin⁡2θ) ∂x+(1−r2)sin⁡θcos⁡θ ∂y(3.9)\cos\theta\,\partial_r-r\sin\theta\,\partial_\theta =(\cos^2\theta+r^2\sin^2\theta)\,\partial_x+(1-r^2)\sin\theta\cos\theta\,\partial_y\tag{3.9}

これは r=1r=1 の円の上でしか ∂x\partial_x に一致しない。成分を読み替えて作ったベクトルは座標ごとに違うので、矢印としての意味を持たない。

この食い違いの原因は、命題 3.3 で見たとおり、下付きと上付きの成分が逆の行列で変わることにある。1形式から矢印を作るには、2つの添字を結ぶ対称な量 gijg^{ij} が要る。Euclid の内積から決まる gijg^{ij} を使うと、次の矢印は座標に依らない。

grad⁡f=gij ∂f∂xj ∂i(3.10)\operatorname{grad}f=g^{ij}\,\frac{\partial f}{\partial x^j}\,\partial_i\tag{3.10}

極座標では grr=1g^{rr}=1 と gθθ=1/r2g^{\theta\theta}=1/r^2 である。f=xf=x に対しては、勾配は cos⁡θ ∂r−(sin⁡θ/r) ∂θ\cos\theta\,\partial_r-(\sin\theta/r)\,\partial_\theta になる。これを直交座標へ戻すと ∂x\partial_x に一致する(確認テスト 3.2-3 で同じ計算を f=θf=\theta について行う)。gijg^{ij} は第5章 §5.2 で計量の逆行列として定義し、添字の上げ下げの一般論はそこで扱う。

微分と勾配

  • df\mathrm{d} f は計量が無くても定義される。成分は ∂if\partial_if で、1形式として変換する。
  • 矢印としての勾配 grad⁡f\operatorname{grad}f は計量 gijg^{ij} を使って作る。計量を変えれば矢印も変わる。
  • 等高線に接するベクトル VV は df(V)=0\mathrm{d} f(V)=0 で特徴づけられ、計量を使わない。等高線に「垂直」という言葉は計量を使う。

物理の例:熱力学の状態空間と保存力

単純な流体の熱力学の状態空間は2次元の多様体で、(S,V)(S,V) や (T,V)(T,V) をチャートに使う(第1章 §1.3)。内部エネルギー UU は状態空間の上の関数で、チャート (S,V)(S,V) での微分は次の形になる。

dU=T dS−p dV(3.11)\mathrm{d} U=T\,\mathrm{d} S-p\,\mathrm{d} V\tag{3.11}

温度 T=(∂U/∂S)VT=(\partial U/\partial S)_V と、圧力の符号を変えた −p=(∂U/∂V)S-p=(\partial U/\partial V)_S を考える。この2つは、1形式 dU\mathrm{d} U のこのチャートでの成分である。

状態空間には長さや角度を測る自然な規則が無い(第5章 §5.5)。したがって「UU の勾配の矢印」は定義できないが、dU\mathrm{d} U は定義できる。熱力学の式がいつも微分 dU\mathrm{d} U の形で書かれるのは、この事情による。

力学では、位置エネルギー VpotV_{\mathrm{pot}} の微分に負号を付けた F=−dVpotF=-\mathrm{d} V_{\mathrm{pot}} が保存力である。力は、微小な変位 Δx\Delta x を受け取って仕事 F(Δx)=FiΔxiF(\Delta x)=F_i\Delta x^i を返す1形式として現れる。仕事を線積分で足し合わせる話は §3.3 で扱う。

例題 3.2 直交座標と極座標の微分の一致 ★★

オリジナル平面の関数 f=x2−y2f=x^2-y^2 を考える。

  1. df\mathrm{d} f を直交座標で書け。
  2. ff を極座標で表せ。さらに df\mathrm{d} f を dr,dθ\mathrm{d} r,\mathrm{d}\theta で書け。
  3. 極座標の表示に (3.6) を代入し、(1) の表示に戻ることを確かめよ。
  4. ベクトル場 ∂θ\partial_\theta に df\mathrm{d} f を作用させた値を求め、その意味を述べよ。
解答
  1. 偏導関数は ∂xf=2x\partial_xf=2x と ∂yf=−2y\partial_yf=-2y である。したがって df=2x dx−2y dy\mathrm{d} f=2x\,\mathrm{d} x-2y\,\mathrm{d} y となる。
  2. x2−y2=r2(cos⁡2θ−sin⁡2θ)=r2cos⁡2θx^2-y^2=r^2(\cos^2\theta-\sin^2\theta)=r^2\cos2\theta である。偏導関数をとると次の表示を得る。

df=2rcos⁡2θ dr−2r2sin⁡2θ dθ\mathrm{d} f=2r\cos2\theta\,\mathrm{d} r-2r^2\sin2\theta\,\mathrm{d}\theta 3. (3.6) を dr=cos⁡θ dx+sin⁡θ dy\mathrm{d} r=\cos\theta\,\mathrm{d} x+\sin\theta\,\mathrm{d} y と dθ=(−sin⁡θ dx+cos⁡θ dy)/r\mathrm{d}\theta=(-\sin\theta\,\mathrm{d} x+\cos\theta\,\mathrm{d} y)/r の形で代入する。dx\mathrm{d} x の係数は次のようになる。

2rcos⁡2θcos⁡θ+2rsin⁡2θsin⁡θ=2rcos⁡(2θ−θ)=2rcos⁡θ=2x2r\cos2\theta\cos\theta+2r\sin2\theta\sin\theta=2r\cos(2\theta-\theta)=2r\cos\theta=2x

dy\mathrm{d} y の係数も同じように整理できる。

2rcos⁡2θsin⁡θ−2rsin⁡2θcos⁡θ=2rsin⁡(θ−2θ)=−2rsin⁡θ=−2y2r\cos2\theta\sin\theta-2r\sin2\theta\cos\theta=2r\sin(\theta-2\theta)=-2r\sin\theta=-2y

2つの係数は (1) と一致する。4. 極座標の成分から df(∂θ)=−2r2sin⁡2θ\mathrm{d} f(\partial_\theta)=-2r^2\sin2\theta である。∂θ\partial_\theta は原点のまわりの回転の速度なので、この値は点を回転させたときの ff の変化率を表す。直交座標で計算しても、∂θ=−y∂x+x∂y\partial_\theta=-y\partial_x+x\partial_y を代入すると −4xy=−2r2sin⁡2θ-4xy=-2r^2\sin2\theta で同じ値になる。

確認テスト

オリジナル

  1. 3.2-1 関数 f=xyf=xy を考える。点 p=(1,1)p=(1,1) のベクトル V=∂x+2∂yV=\partial_x+2\partial_y に、その点での微分を作用させた値を求めよ。
  2. 3.2-2 理想気体の内部エネルギーは、チャート (T,V)(T,V) で U=CVTU=C_VT と書ける(定積熱容量は定数とする)。エントロピーは S=CVln⁡T+nRln⁡V+定数S=C_V\ln T+nR\ln V+\text{定数}、圧力は p=nRT/Vp=nRT/V である。内部エネルギーの微分を、2つのチャート (T,V)(T,V) と (S,V)(S,V) でそれぞれ書け。その2つが同じ1形式であることを示せ。
  3. 3.2-3 原点を除いた平面の関数 f=θf=\theta(偏角)を考える。(a) df\mathrm{d} f を直交座標で書け。(b) Euclid の計量の勾配 (3.10) を直交座標で求めよ。(c) 極座標の成分 (∂rf,∂θf)(\partial_rf,\partial_\theta f) を矢印の成分に読み替えたベクトルと (b) を比べ、点 (3,4)(3,4) で何倍違うかを答えよ。
  4. 3.2-4 定義 (3.7) だけを使い、積の微分の公式 d(fh)=f dh+h df\mathrm{d}(fh)=f\,\mathrm{d} h+h\,\mathrm{d} f を証明せよ。

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