相対論入門 第11章 §11.6
- 11.1-1 ∂μTμν はテンソルではない。一般の座標変換で Tμν を微分すると、Jacobi 行列の微分を含む余分な項が出る(第8章 §8.1 でベクトルの偏微分について示したのと同じ事情)。そのため ∂μTμν=0 がある座標で成り立っても、別の座標では成り立たず、物理法則として座標の選び方に依存してしまう。局所慣性系の点では偏微分と共変微分が一致する。その上でテンソルの式として正しく書いたものが ∇μTμν=0 である。
- 11.1-2 uμuμ=c2 と gμνuμuν=c2 を使う。
Tμνuμuν=(ρ+c2P)(uμuμ)(uνuν)−Pgμνuμuν=(ρ+c2P)c4−Pc2=ρc4.
トレースは T=gμνTμν=(ρ+P/c2)c2−Pδμμ=ρc2+P−4P=ρc2−3P。放射では T=ρc2−3⋅ρc2/3=0 である。3. 11.1-3 計量は g00=1、gij=−a2δij である。a は x0=ct だけの関数なので
∂0gij=−c2aa˙δij
である。Christoffel 記号の式から
Γ0ij=−21g00∂0gij=caa˙δij,Γi0j=21gik∂0gkj=21(−a2δik)(−c2aa˙δkj)=caa˙δij.
残りの組
Γ000,Γ00i,Γi00,Γijk
は 0 である。g00 が定数で、gij が空間座標によらないからである。
ダストでは T00=ρc2 で、ほかの成分は 0 である。また Γμμ0=∑iΓii0=3a˙/(ca) である。したがって (11.5) の ν=0 成分は
∇μTμ0=∂0T00+Γμμ0T00+Γ000T00=c1dtd(ρc2)+3caa˙ρc2=c(ρ˙+3aa˙ρ)=0
である。ρ˙/ρ=−3a˙/a を積分して
lnρ=−3lna+一定,すなわちρa3=一定
である。空間座標の立方体の物理的な体積は a3 に比例するので、中の質量が一定であることを表している。4. 11.1-4 静止した完全流体では uμ=(c,0,0,0) で、
T00=(ρ+c2P)c2−P=ρc2,T0i=0,Tij=−Pgij=a2Pδij
である。ν=0 成分は
∇μTμ0=∂0T00+Γμμ0T00+Γ0ijTij=cρ˙+ca3a˙ρc2+i∑caa˙⋅a2P=cρ˙+a3a˙ρc+ca3a˙P.
c で割ると、示すべき式 ρ˙+3(a˙/a)(ρ+P/c2)=0 を得る。
放射では ρ+P/c2=34ρ なので、
ρρ˙=−4aa˙
である。積分して ρ∝a−4 を得る。体積 a3 の中のエネルギーは ρc2a3∝a−1 で、膨張とともに減る。1個の光子の波長が a に比例して伸び、エネルギーが a−1 に比例して下がることに対応している(第14章 §14.3)。
これは、∇μTμν=0 から積分した保存量が作れない例で、膨張する時空には時間の並進の Killing ベクトルが無い。5. 11.1-5 積の微分で ∇μJμ=(∇μTμν)ξν+Tμν∇μξν。第1項は保存則で 0。第2項は Tμν が対称なので、∇μξν の対称な部分だけが残る:
Tμν∇μξν=21Tμν(∇μξν+∇νξμ).
Killing 方程式により括弧の中は 0 なので、∇μJμ=0 である。6. 11.2-1 (11.17) に gμν を掛けて縮約する。gμνRμν=R、gμνgμν=4 なので
R−2R=κT,すなわちR=−κT
である。次に (11.17) を書き直して R=−κT を入れると
Rμν=κTμν+21gμνR=κ(Tμν−21gμνT)
を得る。真空については、向きごとに分けて確かめる。
- Tμν=0 ならトレースも 0 なので R=0 である。さらに Rμν=0 である。
- 逆に Rμν=0 ならスカラー曲率も 0 なので、Gμν=0 となる。
したがって2つの形は同値である。7. 11.2-2 4πGρ/c2=4π×6.674×10−11×2.3×1017/8.988×1016=2.15×10−9m−2 なので L=2.16×104m≈22km。中性子星の半径と同じ大きさの程度である。例題 11.2 (c) の関係
c2∣Φ∣∼31(LR)2
によれば、R∼L の天体では ∣Φ∣/c2 が 0.1 の程度になり、弱い場の近似が使えない。中性子星の構造を調べるには、Einstein 方程式を近似せずに解く必要がある。8. 11.2-3 Rμν=κTμν の発散をとる。
- 左辺は、縮約した Bianchi 恒等式から ∇μRμν=21∂νR になる。
- 右辺は保存則で 0 になる。
よって ∂νR=0 である。一方、方程式を縮約すると R=κT なので ∂νT=0 となる。すなわち T は時空のどこでも一定でなければならない。
ところが、星の外の真空では T=0 である。星の中では、ふつうの物質なら T=ρc2−3P>0 である。したがって星の表面で T が変わり、矛盾する。この方程式は、物質のある所と無い所を同時に記述することができない。9. 11.2-4 静止した完全流体では
uμ≃(c,0),T00≃ρc2,T≃ρc2−3P
である。00 成分は
R00≃κ(ρc2−21(ρc2−3P))=2κ(ρc2+3P).
左辺は ∇2Φ/c2 である。κc4/2=4πG を使うと
∇2Φ=2κc2(ρc2+3P)=4πG(ρ+c23P)
を得る。放射では ρ+3P/c2=2ρ なので、同じ ρ のダストの2倍の重力を作る。10. 11.3-1 ∇g=0 なので ∇μ(Λgμν)=0 である。宇宙項を加えても、左辺の発散は恒等的に 0 のままである。11. 11.3-2 ∇2Φ=4πGρ−Λc2=0 から Λ=4πGρ/c2。これを (11.26) に入れると
ρΛ=8πGΛc2=2ρ,すなわちρ=2ρΛ
である。例題 11.4 の値では ρ=2×6.4×10−27=1.29×10−26kg/m3 である。
ρ が少し大きい所では ∇2Φ>0 で引力がまさり、物質はさらに集まって密度が上がる。少し小さい所では斥力がまさって広がり、密度がさらに下がる。どちらも釣り合いから離れる向きなので、この釣り合いは不安定である。Einstein が1917年に考えた静的な宇宙は、この不安定さを持っている。12. 11.3-3 GM=6.674×10−11×2.0×1012×1.989×1030=2.65×1032m3/s2。Λc2=1.08×10−35s−2 なので
rΛ=(1.08×10−353×2.65×1032)1/3=(7.37×1067)1/3=4.19×1022m=1.4Mpc.
銀河の集まりの大きさ(Mpc の程度)で、宇宙定数の斥力が引力と同じ大きさになる。13. 11.3-4 Tμν=0 で (11.25) を縮約すると R−2R−4Λ=0 である。すなわち R=−4Λ。これを入れて
Rμν=21gμνR+Λgμν=−2Λgμν+Λgμν=−Λgμν
を得る。(11.27) で T=0 とおいても同じ結果になる。Ricci テンソルが計量に比例するこの時空は、第14章の de Sitter 宇宙につながる。14. 11.4-1 共変テンソルの共変微分は添字ごとに −Γ の項が付くので
∇λFμν=∂λFμν−ΓκλμFκν−ΓκλνFμκ.
巡回的に (λμν)→(μνλ)→(νλμ) と入れ替えた3つを足すと、Γ の項は
−ΓκλμFκν−ΓκλνFμκ−ΓκμνFκλ−ΓκμλFνκ−ΓκνλFκμ−ΓκνμFλκ
の6つである。Γκλμ=Γκμλ と Fνκ=−Fκν から、1つ目と4つ目は
−ΓκλμFκν+ΓκλμFκν=0
で打ち消し合う。同じく2つ目と5つ目(Γκλν の組)、3つ目と6つ目(Γκμν の組)も打ち消し合う。したがって巡回和は偏微分の巡回和に等しい。15. 11.4-2 g=−a6 なので −g=a3 である。したがって (11.37) は
∂0(a3cρe)=0,すなわちdtd(ρea3)=0
で、ρea3 は一定である。物理的な体積が a3 に比例して増えるので、電荷密度は a−3 に比例して薄まる。空間座標の立方体の中の電荷 ρea3 は変わらない。エネルギーと違い、電荷は膨張しても保存する。16. 11.4-3 B=1/A なので AB=1 である。例題 11.5 (b) は Fr0=−μ0cQ/(4πr2) となる。Ar=0 で静的なので Fr0=∂rA0−∂0Ar=∂rA0。積分して無限遠で 0 とすると
A0=∫∞r(−4πr′2μ0cQ)dr′=4πrμ0cQ,ϕ=cA0=4πrμ0c2Q=4πε0rQ.
Schwarzschild の時空では、座標 r で表した電位は平らな時空の Coulomb ポテンシャルと同じ形になる。17. 11.4-4 Fμν=−Fνμ を使い、ダミー添字の名前 μ,ν を入れ替えると
∇ν∇μFμν=−∇ν∇μFνμ=−∇μ∇νFμν.
したがって 2∇ν∇μFμν=(∇ν∇μ−∇μ∇ν)Fμν=[∇ν,∇μ]Fμν。交換子の式で ρ=ν、σ=μ とおいて縮約すると
[∇ν,∇μ]Fμν=RμλνμFλν+RνλνμFμλ.
Riemann テンソルは後ろの2つの添字で反対称なので Rμλνμ=−Rμλμν=−Rλν、また Rνλνμ=Rλμ である。よって
[∇ν,∇μ]Fμν=−RλνFλν+RλμFμλ.
Ricci テンソルは対称、F は反対称なので、どちらの縮約も 0 である。したがって ∇ν∇μFμν=0 で、Maxwell 方程式 (11.34) から μ0∇νJν=0 が出る。
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