光学と量子エレクトロニクス 第11章 §11.6 ★★ 学部の光学で習う分散公式・Cauchy の式・Lorentz–Lorenz の式・群速度の式が、この章の振動子と局所場のどこから出るか
学部の光学の授業では、物質の分散を次の形で習う。電子の振動の方程式を解いて、多くの共鳴の和として
εr(ω)=1+ε0mNe2j∑ωj2−ω2−iγjωfj
を書き、これを分散公式と呼ぶ。この章の式 (11.3) と同じである。この章の言葉では、これは局所場を無視した薄い気体の式で、密な物質では Clausius–Mossotti の関係 (11.8) に置き換わる。共鳴が1つなら置き換えた結果も同じ形 (11.9) で、共鳴の位置が ωt2=ω02−ωp2/3 へずれるだけなので、実験で ωj と fj を合わせる限り、2つの式を区別することはできない。違いが見えるのは密度を変えたときである。
透明なガラスの屈折率は、授業では経験式の Cauchy の式
n(λ)≈A+λ2B′
で習う。これは Sellmeier の式 (11.18) で、紫外の共鳴1つだけを残し、λ≫λj で展開したものである。n2=1+Bλ2/(λ2−λ02)≈1+B+Bλ02/λ2 の平方根を取って
A=1+B,B′=21+BBλ02
を得る。B′>0 は正常分散を表し、紫外の共鳴が遠いほど(λ0 が小さいほど)分散は小さい。赤外の格子振動の共鳴を捨てたので、Cauchy の式は近赤外で合わなくなる(例題 11.8)。
Lorentz–Lorenz の式は、授業では分子屈折 Rm=ρMn2+2n2−1(M はモル質量、ρ は密度)が物質ごとの定数になる、という形で習う。N=ρNA/M を式 (11.8) に入れると Rm=NAα/(3ε0) で、分子屈折は分子1個の分極率をモルあたりにしたものにすぎない。群速度は vg=dω/dk として習い、式 (11.13) と同じである。この章では、これらの式がばらばらの経験則でなく、振動子の和と局所場という2つの仮定から出ることを示した。
例題 11.8 Cauchy の式はどこまで使えるか ★
オリジナルN-BK7 の屈折率は、Sellmeier の式 (11.18) から F 線(486.1nm)で 1.52238、C 線(656.3nm)で 1.51432 である。
- (1) この2点を通る Cauchy の式 A+B′/λ2 の係数を求めよ。
- (2) Sellmeier の式の値 n(400nm)=1.53085、n(1.064μm)=1.50663、n(1.5μm)=1.50127 と比べ、ずれが大きくなる理由を述べよ。
解答
(1) B′=(nF−nC)/(λF−2−λC−2)=0.00806/(4.232−2.322)μm−2=4.22×10−3μm2、A=nC−B′/λC2=1.5045。
(2) Cauchy の式の値は 400nm で 1.53089(ずれ +4×10−5)、1.064μm で 1.50826(+1.6×10−3)、1.5μm で 1.50640(+5.1×10−3)。可視ではよく合うが、波長が長くなるとずれが急に大きくなる。Cauchy の式は紫外の共鳴だけを残したもので、10.2μm の赤外の共鳴の寄与 B3λ2/(λ2−C3)≈−B3λ2/C3(λ≪λ3)を落としている。この項は負で λ2 に比例するので、近赤外では屈折率を下げる向きに大きくなる。
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