光学と量子エレクトロニクス 第32章 §32.6 ★★ 近似は3つ(検出の1次の摂動・熱的な光の Gauss 型・量子回帰定理)。測る量は2台の検出器の遅延の同時計数の分布。授業の Mandel の光子計数の式は古典の光の結果で、サブ Poisson を出すことができない
何を近似したか
1つ目は、検出器の計数の速さを ⟨E^(−)E^(+)⟩ と書いたことである(32.1節)。吸収体と場の結合を1次の摂動で扱い、吸収体の終わりの状態の連続の幅が光のスペクトルより十分広いとして、黄金律の速さに置き換えた。吸収体が上へ上がる過程だけを残したところで、検出器の側の回転波近似を使った。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 検出器と場の結合の強さを 0 に送り、検出器の帯域を光のスペクトルより広くとる(弱結合の極限) | 証明 要確認(Glauber (1963) は1次の摂動と広帯域の検出器を前提に正規順序の式を導いた。極限としての誤差の評価の形と前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第14章
2つ目は、熱的な光を複素 Gauss 型の確率過程とみなしたことで、札は 32.3節に置いた。
3つ目は、1個の原子の g(2)(τ) を量子回帰定理で光 Bloch 方程式の解に直したことである(32.5節)。これは原子と真空のモードの結合が弱く、真空の場の相関の時間が原子の変化の時間より十分短いという Markov 近似に基づく。1つの時刻の密度行列の方程式が弱結合の極限で正しいことは第19章の札で述べたが、2つの時刻の相関まで同じ極限で正しいかは別の主張である。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの Γ/ω0→0(原子と真空のモードの弱結合。時間を Γt 一定で伸ばす) | 証明 要確認(1つの時刻の主方程式は Davies (1974) が弱結合極限で証明した。2つの時刻の相関関数に量子回帰定理を当てはめることの、同じ極限での正当化の前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第14章
何の実験の量で確かめるか
g(2)(τ) は、ビームスプリッタの2つの出口に置いた検出器の片方の検出で時計を始め、もう片方の検出で止める測定で測る。止まるまでの時間 τ の分布を、幅 tb の箱に分けて数えたものを同時計数の分布と呼ぶ。2台の検出器の計数の速さを R1, R2、測定の時間を tm とすると、τ の箱に入る数の期待値は
Nc(τ)=R1R2tbtmg(2)(τ)(32.21)
である(τ が平均の計数の間隔 1/R2 より十分短い範囲。長い τ では途中で別の光子に止められる分の補正が要る)。τ が長いところの値 R1R2tbtm で割れば g(2)(τ) が得られる。箱の数え方のばらつきは Poisson 分布で Nc である。分布の形を決める時間の細かさは、検出器の時刻のばらつき(ジッタ。ps から ns)で決まる。もう1つの量は、長い窓 tw の中の計数の分布で、平均と分散から QM を出す。サブ Poisson の統計は、Short と Mandel が共鳴蛍光で初めて観測した(R. Short and L. Mandel (1983), Phys. Rev. Lett. 51, 384)。
例題 32.7 同時計数の分布で g(2)(0) を確かめる ★★
オリジナル2台の検出器の計数の速さが R1=R2=2×104s−1、箱の幅 tb=1ns、測定の時間 1 時間とする。
- (1) τ が長いところの1つの箱の数の期待値と、そのばらつきを求めよ。
- (2) 光源の g(2)(0)=0.1 のとき、τ=0 の箱の期待値を求め、長い τ の値との差がばらつきの何倍かを答えよ。
解答
(1) Nc=R1R2tbtm=(2×104)2×10−9×3600=1440、ばらつきは 1440=37.9 である。
(2) τ=0 の箱は 0.1×1440=144 で、差 1296 はばらつきの 34 倍になり、アンチバンチングははっきり見える。g(2)(0) そのものの不確かさは 144/1440=0.008 の程度である。
授業で習った形との対応
学部の授業では、光の検出を、古典の強度 I(t) の光が光電面に当たり、短い時間 dt の間に電子が1個出る確率が ηI(t)dt に比例する、と書くことが多い(半古典の光検出の理論)。強度が一定なら、窓 tw の中の計数は Poisson 分布になる。強度が揺らぐ光では、窓の中の積分強度 W=η∫tt+twIdt′ の分布 p(W) で平均して
Pn=∫0∞n!Wne−Wp(W)dW(32.22)
とする(Mandel の光子計数の式)。窓が τc より短い熱的な光では、強度が指数分布 p(W)=e−W/Wˉ/Wˉ に従い、式 (32.22) は Bose–Einstein 分布 Wˉn/(1+Wˉ)n+1、つまり式 (32.8) を与える。
式 (32.22) の p(W) は、この章の P 表示の P(α) に当たる。P≥0 の古典の状態では、量子の式と半古典の式から同じ計数の分布が出る。式 (32.22) から Varn=nˉ+VarW≥nˉ なので、半古典の理論は QM≥0 しか出すことができない。光子数状態や共鳴蛍光のサブ Poisson の統計は、p(W) を負にしないと書けず、場の量子化が要る。もう1つ、授業で熱的な光の計数の揺らぎを「VarN=Nˉ+Nˉ2/M、M は窓の中のモードの数」と書くことがある。式 (32.19) に g(2)−1=∣g(1)∣2 を入れると、長い窓で VarN=Nˉ+Nˉ2τc/tw となり、M=tw/τc である。
例題 32.8 Mandel の式で熱的な光を数える ★
オリジナル
- (1) 指数分布 p(W)=e−W/Wˉ/Wˉ を式 (32.22) に入れ、Pn=Wˉn/(1+Wˉ)n+1 を示せ。
- (2) Lorentz 型の線の熱的な光(∣g(1)(τ)∣2=e−Γ∣τ∣)を、窓 tw=100τc で数える。平均の計数を Nˉ=100 として、分散が Poisson 分布の値 100 をどれだけ超えるかを求めよ。
解答
(1) ∫0∞Wne−W(1+1/Wˉ)dW=n!(1+1/Wˉ)−(n+1) なので、Pn=Wˉ1(1+WˉWˉ)n+1=(1+Wˉ)n+1Wˉn である。
(2) 長い窓の式で VarN−Nˉ=Nˉ2τc/tw=1002/100=100 で、分散は Poisson 分布の2倍の 200 になる。窓の端の補正を入れた厳密な2重積分 R2∫0tw∫0twe−Γ∣t1−t2∣dt1dt2 は 99.5 で、補正は τc/tw の程度である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com