tecktom.com

出てくるもの (2):毎回粗視化すると単調に増える

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第4章 粗視化と第二法則
目次
  1. 粗い運動を Markov 過程で置き換える
  2. 置き換えが厳密になる例:パン屋の写像
  3. Boltzmann の H 定理
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第4章 §2.4.4 ★★ 区画の確率だけで次の区画の確率が決まる(Markov 過程)と置き換えると、データ処理不等式により DD は1歩ごとに減る。Boltzmann の H 定理はこの形

粗い運動を Markov 過程で置き換える

前の節の定理で比べたのは、時刻 tt と時刻 00 だけだった。時間について単調な第二法則を得るには、毎時刻、細かい構造を忘れ直す必要がある。時間の刻み τ\tau ごとに区画平均をとり直すと、区画の確率 P=(P1,…,PK)P=(P_1,\dots,P_K) は

Pk(t+τ)=∑lWklPl(t),Wkl≔∣ϕτ(Al)∩Ak∣∣Al∣(2.4.13)P_k(t+\tau)=\sum_{l}W_{kl}P_l(t),\qquad W_{kl}\coloneqq\frac{\lvert \phi_\tau(A_l)\cap A_k\rvert }{\lvert A_l\rvert }\tag{2.4.13}

に従って変わる。WklW_{kl} は、区画 AlA_l の中で一様に置いた点が時間 τ\tau の後に区画 AkA_k にいる割合である。ϕτ\phi_\tau は体積を保つので ∑kWkl=1\sum_kW_{kl}=1(各列の和が 11)で、さらに ∑lWkl∣Al∣=∣Ak∣\sum_lW_{kl}\lvert A_l\rvert =\lvert A_k\rvert(体積に比例した分布が動かない)が成り立つ。

命題 2.4.6(毎回粗視化したときの単調性 ★★★)

式 (2.4.13) の確率行列 WW のもとで、体積に比例した分布 uk=∣Ak∣/∣Ω∣u_k=\lvert A_k\rvert /\lvert \Omega\rvert に対する D(P(t) ∥ u)D(P(t)\,\|\,u) は、時刻とともに単調に減る(増えない)。

証明

Wu=uWu=u なので、データ処理不等式(第1部第1章・第1部第4章)から D(WP ∥ u)=D(WP ∥ Wu)≤D(P ∥ u)D(WP\,\|\,u)=D(WP\,\|\,Wu)\le D(P\,\|\,u) である。これを1歩ごとに当てはめる。

ここで、毎回粗視化した列 WnP(0)W^nP(0) と、本当の粗い分布 Cρnτ\mathcal C\rho_{n\tau} の区画の確率は、一般に一致しない。本当の運動では、区画の中の細かい構造が次の行き先を左右するのに、式 (2.4.13) はそれを毎回一様にならしてから写しているからである。図 2.4.3 は、前の節の猫写像で両者を比べたものである。毎回粗視化した列(実線)は単調に増えて ln⁡16\ln16 に近づき、再帰は起こらない。本当の粗いエントロピー(点線)は t=1t=1 では同じ値だが、t=2t=2 では 2.2472.247 と、毎回粗視化した 2.4262.426 より小さい。1回目の写像で生じた筋の構造が2回目の行き先を偏らせており、その偏りを毎回の粗視化が消している。

図

図 2.4.3 図 2.4.2 と同じ猫写像で、毎回粗視化した Markov 鎖の区画の分布のエントロピー(実線)と、細かい運動を厳密に追ってから粗視化した値(点線)。Markov 鎖は単調で再帰がない。t=2t=2 で 2.4262.426 と 2.2472.247 の差が出る。

置き換えが厳密になる例:パン屋の写像

毎回の粗視化が近似でなく厳密になる系もある。正方形 [0,1)2[0,1)^2 のパン屋の写像

(x,y)↦(2x−⌊2x⌋, 12(y+⌊2x⌋))(2.4.14)(x,y)\mapsto\Bigl(2x-\lfloor2x\rfloor,\ \tfrac12\bigl(y+\lfloor2x\rfloor\bigr)\Bigr)\tag{2.4.14}

は、正方形を横に2倍に伸ばして縦に半分に潰し、右半分を切って左半分の上に重ねる操作で、面積を保つ全単射である。xx と yy を2進数で x=0.x1x2x3…x=0.x_1x_2x_3\dots、y=0.y1y2…y=0.y_1y_2\dots と書くと、写像は xx の先頭の桁 x1x_1 を取り外して yy の先頭に付け、xx の桁を1つずつ前に詰める操作である。したがって新しい xx の先頭の桁は古い xx の2桁目で、yy によらない。xx だけを見る区画(幅 2−k2^{-k} の縦の帯)の確率は、それ自体で閉じた Markov 過程に従い、しかも xx の情報は1歩ごとに1桁ずつ yy の細かい桁へ移って戻ってこない。区画の確率で見た DD は厳密に単調に減り、細かい DD は一定で、減った分はすべて yy の細かい桁の中にある。

例題 2.4.4 パン屋の写像の縦の帯 ★★

オリジナルパン屋の写像 (2.4.14) で、xx を幅 1/41/4 の4つの帯 Bj=[j/4,(j+1)/4)B_j=[j/4,(j+1)/4)(j=0,1,2,3j=0,1,2,3)に分ける。初めの密度は帯 B0B_0 の上で一様(yy は [0,1)[0,1) で一様)とする。

  1. 帯の確率の遷移行列 WW を求め、二重確率行列であること(行の和も列の和も 11)を確かめよ。
  2. 帯の確率と、一様分布 u=(1/4,1/4,1/4,1/4)u=(1/4,1/4,1/4,1/4) に対する DD を、時刻 0,1,20,1,2 について求めよ。
解答

(1) 新しい xx の先頭2桁は古い xx の2・3桁目である。新しい帯 BjB_j(先頭2桁が jj を2進数で書いたもの)に入るのは、古い xx の2・3桁目が jj に一致する点で、古い先頭2桁で言えば ⌊j/2⌋\lfloor j/2\rfloor と 2+⌊j/2⌋2+\lfloor j/2\rfloor の2つの帯の、それぞれ半分である。したがって Wj,⌊j/2⌋=Wj,2+⌊j/2⌋=1/2W_{j,\lfloor j/2\rfloor}=W_{j,2+\lfloor j/2\rfloor}=1/2、他は 00 で、

W=12(1010101001010101).W=\frac12\begin{pmatrix}1&0&1&0\\1&0&1&0\\0&1&0&1\\0&1&0&1\end{pmatrix}.

行の和も列の和も 11 である。

(2) P(0)=(1,0,0,0)P(0)=(1,0,0,0)、P(1)=WP(0)=(1/2,1/2,0,0)P(1)=WP(0)=(1/2,1/2,0,0)、P(2)=(1/4,1/4,1/4,1/4)P(2)=(1/4,1/4,1/4,1/4) で、以後は一様のままである。D(P ∥ u)=ln⁡4−H(P)D(P\,\|\,u)=\ln4-H(P) は ln⁡4=1.386\ln4=1.386、ln⁡2=0.693\ln2=0.693、00 と1歩ごとに ln⁡2\ln2 ずつ減る。1歩ごとに xx の1桁(ln⁡2\ln2 nat)が yy へ移り、帯で見えなくなるからである。細かい密度は全単射で運ばれるので D(ρt ∥ u)=ln⁡4D(\rho_t\,\|\,u)=\ln4 のまま一定である(格子の上の厳密な計算で確かめた。scripts/verify_ch2-04.py)。

Boltzmann の H 定理

気体の運動論では、粗視化として周辺の積 M\mathcal M を使う。NN 個の粒子の密度 ρ\rho を、1粒子の分布 f(r,v)f(\bm{r},\bm{v}) の NN 個の積で置き換える。定理 2.4.4 の (ii) を部分が NN 個の場合に書くと、置き換えで増えるエントロピーは

∑i=1NH(ρi)−H(ρ)=D(ρ ∥ ∏i=1Nρi)≥0(2.4.15)\sum_{i=1}^NH(\rho_i)-H(\rho)=D\Bigl(\rho\,\Big\|\,\prod_{i=1}^N\rho_i\Bigr)\ge0\tag{2.4.15}

で、粒子どうしの相関の全量(全相関、多変数の相互情報量とも呼ぶ)である。Boltzmann のエントロピー(1粒子の分布から計算するもの)が Gibbs のエントロピーを下回らないのはこのためである。Boltzmann 方程式の衝突の項は、衝突する直前の2粒子の分布を ff の積に置き換えて(分子的混沌)作られている(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第8章)。これは衝突のたびに周辺の積へ粗視化し直すことで、その結果として1粒子のエントロピーが時間について単調に増える(H 定理)。衝突でできた相関は、粒子が再び出会わないかぎりその後の運動に影響しないので、捨てても1粒子の分布の時間発展は変わらない、というのがこの置き換えの根拠である。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの nd3→0nd^3\to0(Boltzmann–Grad 極限:N→∞N\to\infty、粒子の直径 d→0d\to0、Nd2Nd^2 一定) | 証明 条件付き(剛体球・独立な初期分布・平均自由時間の数分の1の短い時間に限って Lanford が証明) | 行き先 近似の数理 第8章

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 毎時刻、細かい密度を区画の確率だけで決まる密度に置き換える(小さいパラメータなし。区画の中で混合する時間が刻み τ\tau より短いことが目安) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第1章

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ