出てくるもの (2):毎回粗視化すると単調に増える
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第4章 §2.4.4 ★★ 区画の確率だけで次の区画の確率が決まる(Markov 過程)と置き換えると、データ処理不等式により は1歩ごとに減る。Boltzmann の H 定理はこの形
粗い運動を Markov 過程で置き換える
前の節の定理で比べたのは、時刻 と時刻 だけだった。時間について単調な第二法則を得るには、毎時刻、細かい構造を忘れ直す必要がある。時間の刻み ごとに区画平均をとり直すと、区画の確率 は
に従って変わる。 は、区画 の中で一様に置いた点が時間 の後に区画 にいる割合である。 は体積を保つので (各列の和が )で、さらに (体積に比例した分布が動かない)が成り立つ。
命題 2.4.6(毎回粗視化したときの単調性 ★★★)
式 (2.4.13) の確率行列 のもとで、体積に比例した分布 に対する は、時刻とともに単調に減る(増えない)。
ここで、毎回粗視化した列 と、本当の粗い分布 の区画の確率は、一般に一致しない。本当の運動では、区画の中の細かい構造が次の行き先を左右するのに、式 (2.4.13) はそれを毎回一様にならしてから写しているからである。図 2.4.3 は、前の節の猫写像で両者を比べたものである。毎回粗視化した列(実線)は単調に増えて に近づき、再帰は起こらない。本当の粗いエントロピー(点線)は では同じ値だが、 では と、毎回粗視化した より小さい。1回目の写像で生じた筋の構造が2回目の行き先を偏らせており、その偏りを毎回の粗視化が消している。
図 2.4.3 図 2.4.2 と同じ猫写像で、毎回粗視化した Markov 鎖の区画の分布のエントロピー(実線)と、細かい運動を厳密に追ってから粗視化した値(点線)。Markov 鎖は単調で再帰がない。 で と の差が出る。
置き換えが厳密になる例:パン屋の写像
毎回の粗視化が近似でなく厳密になる系もある。正方形 のパン屋の写像
は、正方形を横に2倍に伸ばして縦に半分に潰し、右半分を切って左半分の上に重ねる操作で、面積を保つ全単射である。 と を2進数で 、 と書くと、写像は の先頭の桁 を取り外して の先頭に付け、 の桁を1つずつ前に詰める操作である。したがって新しい の先頭の桁は古い の2桁目で、 によらない。 だけを見る区画(幅 の縦の帯)の確率は、それ自体で閉じた Markov 過程に従い、しかも の情報は1歩ごとに1桁ずつ の細かい桁へ移って戻ってこない。区画の確率で見た は厳密に単調に減り、細かい は一定で、減った分はすべて の細かい桁の中にある。
例題 2.4.4 パン屋の写像の縦の帯 ★★
オリジナルパン屋の写像 (2.4.14) で、 を幅 の4つの帯 ()に分ける。初めの密度は帯 の上で一様( は で一様)とする。
- 帯の確率の遷移行列 を求め、二重確率行列であること(行の和も列の和も )を確かめよ。
- 帯の確率と、一様分布 に対する を、時刻 について求めよ。
解答
(1) 新しい の先頭2桁は古い の2・3桁目である。新しい帯 (先頭2桁が を2進数で書いたもの)に入るのは、古い の2・3桁目が に一致する点で、古い先頭2桁で言えば と の2つの帯の、それぞれ半分である。したがって 、他は で、
行の和も列の和も である。
(2) 、、 で、以後は一様のままである。 は 、、 と1歩ごとに ずつ減る。1歩ごとに の1桁( nat)が へ移り、帯で見えなくなるからである。細かい密度は全単射で運ばれるので のまま一定である(格子の上の厳密な計算で確かめた。scripts/verify_ch2-04.py)。
Boltzmann の H 定理
気体の運動論では、粗視化として周辺の積 を使う。 個の粒子の密度 を、1粒子の分布 の 個の積で置き換える。定理 2.4.4 の (ii) を部分が 個の場合に書くと、置き換えで増えるエントロピーは
で、粒子どうしの相関の全量(全相関、多変数の相互情報量とも呼ぶ)である。Boltzmann のエントロピー(1粒子の分布から計算するもの)が Gibbs のエントロピーを下回らないのはこのためである。Boltzmann 方程式の衝突の項は、衝突する直前の2粒子の分布を の積に置き換えて(分子的混沌)作られている(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第8章)。これは衝突のたびに周辺の積へ粗視化し直すことで、その結果として1粒子のエントロピーが時間について単調に増える(H 定理)。衝突でできた相関は、粒子が再び出会わないかぎりその後の運動に影響しないので、捨てても1粒子の分布の時間発展は変わらない、というのがこの置き換えの根拠である。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (Boltzmann–Grad 極限:、粒子の直径 、 一定) | 証明 条件付き(剛体球・独立な初期分布・平均自由時間の数分の1の短い時間に限って Lanford が証明) | 行き先 近似の数理 第8章
近似の裏付け
型 C(閉じる) | 小さいもの 毎時刻、細かい密度を区画の確率だけで決まる密度に置き換える(小さいパラメータなし。区画の中で混合する時間が刻み より短いことが目安) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第1章
木下の勉強ステータス
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