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この章で選ぶもの:2体の相互作用を持つ NN 粒子と1粒子分布

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第8章 Liouville に衝突を足すと Boltzmann 方程式
目次
  1. 粒子の Hamiltonian
  2. 1粒子分布
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第8章 §3.8.1 ★★★ 選ぶのは H=∑aH1(ra,pa)+∑a<bϕ(∣ra−rb∣)H=\sum_a H_1(\bm{r}_a,\bm{p}_a)+\sum_{a<b}\phi(\lvert \bm{r}_a-\bm{r}_b\rvert ) と、ρ\rho を粒子1つ分に縮めた f(r,p,t)f(\bm{r},\bm{p},t)

第1章(第3部第1章)では、NN 粒子の相空間の確率密度 ρ\rho が Liouville 方程式 ∂ρ/∂t={H,ρ}\partial\rho/\partial t=\{H,\rho\} に従い、Gibbs のエントロピーが時間によらず一定であることを示した。一方で、気体を容器に入れて放っておくと平衡に近づき、電気抵抗のある導線に電圧をかければ一定の電流が流れて熱が出る。こうした「平衡へ向かう」現象を計算するには、6N6N 次元の ρ\rho を追う代わりに、1粒子の位置と運動量の分布 f(r,p,t)f(\bm{r},\bm{p},t) だけを追う方程式が要る。それが Boltzmann 方程式である。

この章で選ぶのは、2体の相互作用を持つ NN 粒子の Hamiltonian と、そこから作る1粒子分布 ff の組である(3.8.1節)。当てる道具は第1章の Liouville 方程式で、これを粒子1つ分を残して積分すると、左辺に1粒子の Hamiltonian H1H_1 の Poisson 括弧 {H1,f}\{H_1,f\} が、右辺に2粒子分布を含む相互作用の項が残る(3.8.2節)。出てくるものは3つある。第一は、希薄な気体で右辺を2体の散乱として数え直した衝突の項で、ここで初めて近似(分子的混沌)が入る(3.8.3節)。第二は、衝突の前後で保たれる量(衝突不変量)と、1粒子分布から計算したエントロピーが増え続けるという H 定理である(3.8.4節)。第三は、衝突の項を緩和の形に置き換えて電気伝導度を計算する緩和時間近似で、Drude の伝導度 ne2τ/mne^2\tau/m がここから出る(3.8.5節)。最後に、気体分子運動論と Drude 模型の授業で習った形と並べ(3.8.6節)、まとめと総合問題で終える。緩和時間近似で金属の伝導を詳しく計算し、熱電効果や Wiedemann–Franz 則まで進むのは固体の巻(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部第2章・第4部第3章)で行い、Boltzmann 方程式から流体方程式を導く段とその数学的な正当化は第V巻(近似の数理 第8章)で扱う。

記号は記法の正本に従う。Poisson 括弧は {q,p}=1\{q,p\}=1 の流儀で、Liouville 方程式は ∂ρ/∂t={H,ρ}\partial\rho/\partial t=\{H,\rho\} と書く(第1部第11章)。この章には温度が出てくるので、運動エネルギーは ∣p∣2/(2m)\lvert \bm{p}\rvert ^2/(2m) と書き、周期に TT を使わない。1粒子分布 ff と紛れないように、自由度の数には記号を使わず 3N3N と書く。2体の散乱断面積には添字 s を付けて σs\sigma_{\mathrm s} とし、伝導度 σij\sigma_{ij} と区別する。

NN 粒子の Hamiltonian

同じ種類の NN 個の粒子が、外力のポテンシャル U(r)U(\bm{r}) の中を動き、2つずつ距離だけで決まるポテンシャル ϕ(∣ra−rb∣)\phi(\lvert \bm{r}_a-\bm{r}_b\rvert ) で相互作用する系を選ぶ。Hamiltonian は

H=∑a=1NH1(ra,pa)+∑a<bϕ(∣ra−rb∣),H1(r,p)=∣p∣22m+U(r)(3.8.1)H=\sum_{a=1}^{N}H_1(\bm{r}_a,\bm{p}_a)+\sum_{a<b}\phi(\lvert \bm{r}_a-\bm{r}_b\rvert ),\qquad H_1(\bm{r},\bm{p})=\frac{\lvert \bm{p}\rvert ^2}{2m}+U(\bm{r})\tag{3.8.1}

である。H1H_1 は粒子1つだけがあるときの Hamiltonian で、この章では1粒子の Hamiltonian と呼ぶ。第1章の式(第3部第1章)で UU とまとめていたポテンシャルを、外力の部分と2体の部分に分けた形である。

ϕ\phi は粒子の間の距離が 力の到達距離 r0r_0 より大きければほぼ 00 になるものとする。剛体球では r0r_0 は球の直径 dd で、ϕ\phi は距離が dd 未満で +∞+\infty、dd 以上で 00 である。この章で扱う気体は希薄、すなわち粒子の間の平均の距離 n−1/3n^{-1/3}(nn は数密度)が r0r_0 よりずっと大きいとする。希薄な気体では、粒子はほとんどの時間を H1H_1 だけに従って自由に飛び、ときどき他の1つの粒子と r0r_0 の距離まで近づいて短い時間で向きを変える。3つ以上の粒子が同時に r0r_0 の範囲に入る確率は、2つが入る確率よりさらに nr03nr_0^3 倍だけ小さい。

1粒子分布

NN 粒子の相空間の確率密度 ρ(r1,p1,…,rN,pN,t)\rho(\bm{r}_1,\bm{p}_1,\dots,\bm{r}_N,\bm{p}_N,t) は、粒子の番号の入れ替えについて対称であるとする(同じ種類の粒子なので、どれを1番と呼ぶかに意味はない)。粒子1つ分の変数だけを残して積分し、NN を掛けたもの

f(r,p,t)=N∫ρ(r,p,r2,p2,…,rN,pN,t) d3r2 d3p2⋯d3rN d3pN(3.8.2)f(\bm{r},\bm{p},t)=N\int\rho(\bm{r},\bm{p},\bm{r}_2,\bm{p}_2,\dots,\bm{r}_N,\bm{p}_N,t)\,\mathrm{d}^3r_2\,\mathrm{d}^3p_2\cdots\mathrm{d}^3r_N\,\mathrm{d}^3p_N\tag{3.8.2}

を1粒子分布と呼ぶ。f d3r d3pf\,\mathrm{d}^3r\,\mathrm{d}^3p は、位置が r\bm{r} の近くの d3r\mathrm{d}^3r に、運動量が p\bm{p} の近くの d3p\mathrm{d}^3p にある粒子の数の期待値である。同じように、2つの粒子の変数を残した

f(2)(r1,p1,r2,p2,t)=N(N−1)∫ρ d3r3 d3p3⋯d3rN d3pN(3.8.3)f^{(2)}(\bm{r}_1,\bm{p}_1,\bm{r}_2,\bm{p}_2,t)=N(N-1)\int\rho\,\mathrm{d}^3r_3\,\mathrm{d}^3p_3\cdots\mathrm{d}^3r_N\,\mathrm{d}^3p_N\tag{3.8.3}

を2粒子分布と呼ぶ。ff を運動量で積分すると数密度 n(r,t)=∫f d3pn(\bm{r},t)=\int f\,\mathrm{d}^3p になり、全体で積分すると NN になる。ρ\rho は 6N6N 次元の関数だが、ff は6次元の関数である。数密度・流れの速度・温度・電流のように実験で測る量の多くは ff だけで決まるので、ff の従う方程式があれば輸送を計算することができる。

熱平衡にある理想気体の1粒子分布は、第3章(第3部第3章)のカノニカル分布を粒子1つに当てはめた Maxwell 分布

fM(p)=n (2πmkBT)−3/2exp⁡(−∣p∣22mkBT)(3.8.4)f_{\mathrm M}(\bm{p})=n\,(2\pi m k_{\mathrm B} T)^{-3/2}\exp\Bigl(-\frac{\lvert \bm{p}\rvert ^2}{2m k_{\mathrm B} T}\Bigr)\tag{3.8.4}

である。h3fh^3f は相空間の升目1つ(体積 h3h^3)あたりの粒子の数で、p=0\bm{p}=0 での値は nλT3n\lambda_T^3(λT=h/2πmkBT\lambda_T=h/\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T} は熱的 de Broglie 波長)になる。これが 11 よりずっと小さいとき、升目を2つの粒子が取り合うことはほぼ無いので、量子統計の区別(Fermi 粒子か Bose 粒子か)を気にせず古典の ff で扱ってよい。

例題 3.8.1 標準状態の窒素の長さの尺度 ★★

オリジナル0 ∘C0\,{}^\circ\mathrm C(T=273.15 KT=273.15\,\mathrm K)、1 atm1\,\mathrm{atm}(P=101325 PaP=101325\,\mathrm{Pa})の窒素を、直径 d=0.37 nmd=0.37\,\mathrm{nm} の剛体球の理想気体とみなす。分子の質量は m=28.01 um=28.01\,\mathrm u(1 u=1.6605×10−27 kg1\,\mathrm u=1.6605\times10^{-27}\,\mathrm{kg})とする。

  1. (1) 数密度 n=P/(kBT)n=P/( k_{\mathrm B} T) と、分子の間の平均の距離 n−1/3n^{-1/3} を求めよ。
  2. (2) 分子が占める体積の割合 n⋅πd3/6n\cdot\pi d^3/6 を求め、気体が希薄であることを確かめよ。
  3. (3) 熱的 de Broglie 波長 λT\lambda_T と nλT3n\lambda_T^3 を求め、古典の分布で扱ってよいことを確かめよ。
解答

(1) n=101325/(1.3806×10−23×273.15)=2.69×1025 m−3n=101325/(1.3806\times10^{-23}\times273.15)=2.69\times10^{25}\,\mathrm{m^{-3}}。平均の距離は n−1/3=3.34×10−9 m=3.34 nmn^{-1/3}=3.34\times10^{-9}\,\mathrm m=3.34\,\mathrm{nm} で、直径の約9倍である。

(2) nπd3/6=2.69×1025×π×(0.37×10−9)3/6=7.1×10−4n\pi d^3/6=2.69\times10^{25}\times\pi\times(0.37\times10^{-9})^3/6=7.1\times10^{-4}。分子が占める体積は全体の 0.07 %0.07\,\% にすぎず、分子は大部分の時間を他の分子から離れて飛んでいる。3つの分子が同時に接触する確率は、2つが接触する確率のさらにこの程度の割合である。

(3) m=28.01×1.6605×10−27=4.651×10−26 kgm=28.01\times1.6605\times10^{-27}=4.651\times10^{-26}\,\mathrm{kg} で、λT=h/2πmkBT=6.626×10−34/2π×4.651×10−26×1.3806×10−23×273.15=2.00×10−11 m\lambda_T=h/\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T}=6.626\times10^{-34}/\sqrt{2\pi\times4.651\times10^{-26}\times1.3806\times10^{-23}\times273.15}=2.00\times10^{-11}\,\mathrm m。nλT3=2.69×1025×(2.00×10−11)3=2.1×10−7n\lambda_T^3=2.69\times10^{25}\times(2.00\times10^{-11})^3=2.1\times10^{-7} で、11 よりずっと小さい。相空間の升目のほとんどは空で、古典の1粒子分布で扱ってよい。金属の伝導電子では事情が逆で、n∼1029 m−3n\sim10^{29}\,\mathrm{m^{-3}}、質量が分子の約 5×1045\times10^{4} 分の1なので nλT3≫1n\lambda_T^3\gg1 になり、ff の平衡の形は Fermi 分布になる(3.8.5節)。(検算 scripts/verify_ch3-08.py)

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