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授業で習った形との対応

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第1章 密度行列と量子チャネル
目次
  1. 状態ベクトルと射影測定
  2. Bloch 方程式と緩和時間 ,
  3. 確率過程の確率行列
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第1章 §3.1.6 ★★ 量子力学の授業の状態ベクトル・射影測定、2準位系や NMR の Bloch 方程式(T1T_1・T2T_2)、確率過程の確率行列を、この章の密度行列とチャネルで書き直す

状態ベクトルと射影測定

学部の量子力学の授業では、状態を ∣ψ⟩| \psi \rangle で書き、時間発展を Schrödinger 方程式 iℏ∂∂t∣ψ⟩=H^∣ψ⟩\mathrm{i}\hbar\frac{\partial }{\partial t}| \psi \rangle =\hat H| \psi \rangle、測定を「固有値 mm が確率 ⟨ψ∣P^m∣ψ⟩\langle \psi | \hat P_m | \psi \rangle で出て、状態は P^m∣ψ⟩\hat P_m| \psi \rangle に比例するものへ変わる」と習う。密度行列で書くと、時間発展は iℏ∂ρ^∂t=[H^, ρ^]\mathrm{i}\hbar\frac{\partial \hat\rho}{\partial t}=\left[\hat H,\,\hat\rho\right](von Neumann 方程式)で、これは Kraus 演算子が1つ U^(t)=e−iH^t/ℏ\hat U(t)=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\hat Ht/\hbar} のチャネルである。測定して結果を記録しない場合は、Kraus 演算子 {P^m}\{\hat P_m\} のチャネル ρ^↦∑mP^mρ^P^m\hat\rho\mapsto\sum_m\hat P_m\hat\rho\hat P_m になり、これは3.1.3節の「ZZ で測って忘れる」操作の一般形である。結果 mm を記録する場合は、確率 pm=Tr⁡(P^mρ^)p_m=\operatorname{Tr}(\hat P_m\hat\rho) と測定後の状態 P^mρ^P^m/pm\hat P_m\hat\rho\hat P_m/p_m の組を作る。P^m\hat P_m を一般の K^m\hat K_m に替え、E^m=K^m†K^m\hat E_m=\hat K_m^\dagger\hat K_m を POVM とする形が、3.1.5節の測定の一般形である。授業の公理系は、この章の枠のうち「純粋状態・ユニタリ・射影測定」の部分を取り出したものになっている。

Bloch 方程式と緩和時間 T1T_1, T2T_2

磁気共鳴や2準位原子の授業では、Bloch ベクトルの成分の緩和を

drxdt=−rxT2,drydt=−ryT2,drzdt=rzeq−rzT1(3.1.20)\frac{\mathrm{d} r_x}{\mathrm{d} t}=-\frac{r_x}{T_2},\qquad \frac{\mathrm{d} r_y}{\mathrm{d} t}=-\frac{r_y}{T_2},\qquad \frac{\mathrm{d} r_z}{\mathrm{d} t}=\frac{r_z^{\mathrm{eq}}-r_z}{T_1}\tag{3.1.20}

と書く(回転座標系で、外場の歳差運動を除いた形)。T1T_1 を縦緩和時間(エネルギー緩和)、T2T_2 を横緩和時間(位相緩和)と呼ぶ。この章では ∣0⟩| 0 \rangle を低いエネルギーの状態に取っているので、絶対零度の環境への緩和では平衡点は rzeq=1r_z^{\mathrm{eq}}=1 である。(光の巻(光学と量子エレクトロニクス 第19章)の2準位系は σz∣e⟩=+∣e⟩\sigma_z| e \rangle =+| e \rangle と励起状態を上に取るので、ZZ と σz\sigma_z の符号は逆になる。)

この方程式は、密度行列の Lindblad 方程式

dρ^dt=Γ(L^ρ^L^†−12{L^†L^,ρ^}+)+γϕ2(Zρ^Z−ρ^),L^=∣0⟩⟨1∣(3.1.21)\frac{\mathrm{d} \hat\rho}{\mathrm{d} t}=\Gamma\Bigl(\hat L\hat\rho\hat L^\dagger-\frac12\bigl\{\hat L^\dagger\hat L,\hat\rho\bigr\}_{+}\Bigr)+\frac{\gamma_\phi}{2}\bigl(Z\hat\rho Z-\hat\rho\bigr),\qquad \hat L=| 0 \rangle \langle 1 |\tag{3.1.21}

の Bloch 表示である1G. Lindblad (1976), Commun. Math. Phys. 48, 119–130、V. Gorini, A. Kossakowski, E. C. G. Sudarshan (1976), J. Math. Phys. 17, 821–825。下の脚注へ。第1項は振幅減衰の生成子で、これだけを解くと ρ^(t)\hat\rho(t) は式 (3.1.8) の振幅減衰に γ(t)=1−e−Γt\gamma(t)=1-\mathrm{e}^{-\Gamma t} を入れたものになる。第2項は位相反転の生成子で、非対角成分を e−γϕt\mathrm{e}^{-\gamma_\phi t} 倍にする。成分を計算すると rzr_z は e−Γt\mathrm{e}^{-\Gamma t} で 11 へ、rx,ryr_x,r_y は e−(Γ/2+γϕ)t\mathrm{e}^{-(\Gamma/2+\gamma_\phi)t} で 00 へ近づくので

1T1=Γ,1T2=Γ2+γϕ=12T1+γϕ(3.1.22)\frac1{T_1}=\Gamma,\qquad \frac1{T_2}=\frac{\Gamma}{2}+\gamma_\phi=\frac{1}{2T_1}+\gamma_\phi\tag{3.1.22}

である。式 (3.1.21) の各時刻の解は、係数 Γ,γϕ\Gamma,\gamma_\phi が非負なら量子チャネルになる(振幅減衰と位相反転の合成になる)。したがって、授業で経験則として習う T2≤2T1T_2\le2T_1 は、γϕ≥0\gamma_\phi\ge0、すなわち時間発展が完全正値であるための条件として読める。振幅減衰を2回続けると 1−γ=(1−γ1)(1−γ2)1-\gamma=(1-\gamma_1)(1-\gamma_2) の振幅減衰になることも、e−Γt1e−Γt2=e−Γ(t1+t2)\mathrm{e}^{-\Gamma t_1}\mathrm{e}^{-\Gamma t_2}=\mathrm{e}^{-\Gamma(t_1+t_2)} と整合している。

Lindblad 方程式で書けるのは、系の変化がその時刻の ρ^\hat\rho だけで決まる(Markov 的な)場合である。系と環境の結合が弱く、環境の相関が系の変化より十分速く消える極限で、全体のユニタリな時間発展から式 (3.1.21) の形が導かれる2E. B. Davies (1974), Commun. Math. Phys. 39, 91–110。下の脚注へ。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 系と環境の結合の強さ λ\lambda(λ→0\lambda\to0 で λ2t\lambda^2t を固定する van Hove の極限) | 証明 条件付き(有限次元の系・環境の相関関数が十分速く減衰。Davies 1974) | 行き先 近似の数理 第14章

例題 3.1.6 T1T_1 と T2T_2 から緩和を追う ★★

オリジナルある量子ビットの緩和時間を T1=50 μsT_1=50\,\mu\mathrm s、T2=60 μsT_2=60\,\mu\mathrm s とする(数値は例として選んだもの)。環境は絶対零度とし、式 (3.1.21) で緩和するとする。

  1. Γ\Gamma と γϕ\gamma_\phi を求めよ。
  2. ∣+⟩| + \rangle から始めて t=30 μst=30\,\mu\mathrm s 後の Bloch ベクトルと純粋度を求めよ。
  3. 仮に T2=120 μsT_2=120\,\mu\mathrm s と測られたとすると何がおかしいか。∣0⟩| 0 \rangle に近い純粋状態 r=(sin⁡θ,0,cos⁡θ)\bm{r}=(\sin\theta,0,\cos\theta) について ∣r∣2\lvert \bm{r}\rvert ^2 の時間微分を求め、θ=0.3\theta=0.3 で符号を調べよ。
解答
  1. Γ=1/T1=0.02 μs−1\Gamma=1/T_1=0.02\,\mu\mathrm s^{-1}、γϕ=1/T2−1/(2T1)=1/60−1/100=1/150 μs−1\gamma_\phi=1/T_2-1/(2T_1)=1/60-1/100=1/150\,\mu\mathrm s^{-1}。
  2. 式 (3.1.20) を rzeq=1r_z^{\mathrm{eq}}=1 で解くと rx(t)=rx(0)e−t/T2r_x(t)=r_x(0)\mathrm{e}^{-t/T_2}、1−rz(t)=(1−rz(0))e−t/T11-r_z(t)=\bigl(1-r_z(0)\bigr)\mathrm{e}^{-t/T_1}。∣+⟩| + \rangle は (1,0,0)(1,0,0) なのでrx=e−0.5=0.6065r_x=\mathrm{e}^{-0.5}=0.6065、ry=0r_y=0、rz=1−e−0.6=0.4512r_z=1-\mathrm{e}^{-0.6}=0.4512。純粋度は (1+0.60652+0.45122)/2=0.7857(1+0.6065^2+0.4512^2)/2=0.7857。
  3. γϕ=1/120−1/100<0\gamma_\phi=1/120-1/100<0 となり、式 (3.1.21) の第2項の係数が負になる。ddt∣r∣2=2(rxr˙x+rzr˙z)=2(−rx2/T2+rz(1−rz)/T1)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\lvert \bm{r}\rvert ^2=2(r_x\dot r_x+r_z\dot r_z)=2\bigl(-r_x^2/T_2+r_z(1-r_z)/T_1\bigr) に純粋状態を入れると

ddt∣r∣2=2(cos⁡θ(1−cos⁡θ)T1−sin⁡2θT2).\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\lvert \bm{r}\rvert ^2=2\Bigl(\frac{\cos\theta(1-\cos\theta)}{T_1}-\frac{\sin^2\theta}{T_2}\Bigr).

θ=0.3\theta=0.3、T1=50T_1=50、T2=120T_2=120 では 2.5×10−4 μs−1>02.5\times10^{-4}\,\mu\mathrm s^{-1}>0 で、Bloch ベクトルが球の外へ出る。θ→0\theta\to0 では括弧の中が θ2(1/(2T1)−1/T2)\theta^2\bigl(1/(2T_1)-1/T_2\bigr) なので、T2>2T1T_2>2T_1 なら ∣0⟩| 0 \rangle の近くの純粋状態は必ず外へ出る。出力が密度行列でなくなるので、この時間発展は正値ですらない。T2=60T_2=60 なら同じ量は −1.2×10−3 μs−1<0-1.2\times10^{-3}\,\mu\mathrm s^{-1}<0 で、問題は起きない。

確率過程の確率行列

確率過程の授業の Markov 連鎖は、状態の分布 pp に確率行列 WW を繰り返し当てる。この章の言葉では、対角の密度行列だけを扱い、Kraus 演算子 (3.1.10) で書けるチャネルを当てていることになる。対角の範囲では、トレース距離は全変動距離、Helstrom の定理は「尤度の大きい方を答える」最尤判定の成功確率、定理 3.1.9 は全変動距離の単調性に戻る。量子に移って新しく加わったのは、非対角成分を減らすチャネル(位相反転・位相緩和)と、完全正値性という古典には無い制約の2つである。

ほかの巻では

  • 光学と量子エレクトロニクス 第19章:同じ T1T_1・T2T_2 を2準位原子の自然放出と位相の乱れから出す光 Bloch 方程式が読める。記号の対応:向こうは σz∣e⟩=+∣e⟩\sigma_z| e \rangle =+| e \rangle で、この巻の ZZ と符号が逆

1 G. Lindblad (1976), Commun. Math. Phys. 48, 119–130、V. Gorini, A. Kossakowski, E. C. G. Sudarshan (1976), J. Math. Phys. 17, 821–825。

2 E. B. Davies (1974), Commun. Math. Phys. 39, 91–110。

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