tecktom.com

情報の側から見ると:Heisenberg 限界の測定

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第2章 量子 Fourier 変換と位相推定
目次
  1. 比べる状態:周波数の違う波
  2. 量子 Fisher 情報
  3. 裾の代価
  4. 得られる情報量
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第2章 §6.2.5 ★★★ 位相推定は周波数が 1/T1/T ずつ違う直交する状態を見分ける測定で、量子 Fisher 情報は T2T^2 に比例する。情報量は tt ビットで頭打ちになる

比べる状態:周波数の違う波

補助の量子ビットの状態 ∣ψφ⟩| \psi_\varphi \rangle (6.2.7) どうしの重なりは

∣⟨ψφ′∣ψφ⟩∣2=sin⁡2(πT(φ−φ′))T2sin⁡2(π(φ−φ′))(6.2.10)\lvert \langle \psi_{\varphi'} | \psi_\varphi \rangle \rvert ^2=\frac{\sin^2(\pi T(\varphi-\varphi'))}{T^2\sin^2(\pi(\varphi-\varphi'))}\tag{6.2.10}

で、出力の分布 (6.2.8) はこの重なりで φ′=m/T\varphi'=m/T と置いたものに等しい。すなわち逆 QFT と計算基底の測定は、TT 個の状態 ∣ψ0⟩,∣ψ1/T⟩,…,∣ψ(T−1)/T⟩| \psi_{0} \rangle ,| \psi_{1/T} \rangle ,\dots,| \psi_{(T-1)/T} \rangle の基底で測ることである。重なりは φ−φ′\varphi-\varphi' が 1/T1/T の整数倍で 00 になるので、この TT 個は互いに直交し、1回の測定で誤りなく見分けることができる。第3部第8章の言葉では、純粋状態の対の Helstrom の誤り確率は重なりで決まり、直交すれば 00 になる。位相推定は、U^\hat U を T−1T-1 回使って、位相が 1/T1/T ずつ違う TT 通りの仮説を完全に見分けられる状態を作る手続きである。

量子 Fisher 情報

近い2つの位相の見分けやすさは量子 Fisher 情報 JQJ_{\mathrm Q} で測る。純粋状態の族 ∣ψφ⟩=eiφG^∣ψ0⟩| \psi_\varphi \rangle =\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi\hat G}| \psi_0 \rangle では JQ=4(ΔG)2J_{\mathrm Q}=4(\Delta G)^2 で(第3部第8章)、ここでは生成子が G^=2πk^\hat G=2\pi\hat k(k^∣k⟩=k∣k⟩\hat k| k \rangle =k| k \rangle)、分布は kk について一様なので (Δk)2=(T2−1)/12(\Delta k)^2=(T^2-1)/12。よって

JQ(φ)=4π23(T2−1),Δφ≥1JQ=3πT2−1≈0.551T.(6.2.11)J_{\mathrm Q}(\varphi)=\frac{4\pi^2}{3}(T^2-1),\qquad\Delta\varphi\ge\frac1{\sqrt{J_{\mathrm Q}}}=\frac{\sqrt3}{\pi\sqrt{T^2-1}}\approx\frac{0.551}{T}.\tag{6.2.11}

同じ T−1T-1 回の U^\hat U を、1回ずつ別々の補助の量子ビットに使った場合((∣0⟩+e2πiφ∣1⟩)/2(| 0 \rangle +\mathrm{e}^{2\pi\mathrm{i}\varphi}| 1 \rangle )/\sqrt2 を T−1T-1 個)は、1個あたり JQ=4⋅π2=4π2J_{\mathrm Q}=4\cdot\pi^2=4\pi^2 の和で 4π2(T−1)4\pi^2(T-1)、誤差は 1/T1/\sqrt T の大きさにとどまる(標準量子限界)。位相推定では U^\hat U を何回も続けて同じ補助の量子ビットに当てる(U^2j\hat U^{2^j})ので、位相が回数に比例して増幅され、Fisher 情報は回数の2乗に比例する(Heisenberg 限界)。GHZ 状態は NN 個の量子ビットのもつれで同じ増幅を得たが、位相推定は同じ1個の量子ビットに時間方向にくり返し当てることで、もつれなしに同じ増幅を得ている。Higgins たちは光子1個を位相板に何度も通すこの方法で、標準量子限界を下回る位相の推定を実験で示した1B. L. Higgins, D. W. Berry, S. D. Bartlett, H. M. Wiseman and G. J. Pryde (2007), Nature 450, 393。下の脚注へ。

裾の代価

式 (6.2.11) は最良の測定で達する限界であり、標準の位相推定の出力の二乗平均誤差はこれに達しない。φ\varphi を一様に選んで出力の誤差 δ=φ−m/T\delta=\varphi-m/T( mod 1\bmod1 で [−1/2,1/2)[-1/2,1/2) に戻す)の2乗を平均すると、和と φ\varphi の平均をまとめて

⟨δ2⟩=T∫−1/21/2δ2 sin⁡2(πTδ)T2sin⁡2(πδ) dδ≈12T∫−1/21/2δ2sin⁡2(πδ) dδ=ln⁡2π2T(6.2.12)\langle \delta^2 \rangle =T\int_{-1/2}^{1/2}\delta^2\,\frac{\sin^2(\pi T\delta)}{T^2\sin^2(\pi\delta)}\,\mathrm{d}\delta \approx\frac1{2T}\int_{-1/2}^{1/2}\frac{\delta^2}{\sin^2(\pi\delta)}\,\mathrm{d}\delta=\frac{\ln2}{\pi^2T}\tag{6.2.12}

となる(TT が大きいと sin⁡2(πTδ)\sin^2(\pi T\delta) は速く振動するので平均の 1/21/2 で置き換えた。積分は 2ln⁡2/π22\ln2/\pi^2)。二乗平均誤差は ln⁡2/(πT)=0.265/T\sqrt{\ln2}/(\pi\sqrt T)=0.265/\sqrt T で、1/T1/T でなく 1/T1/\sqrt T でしか減らない。中央の山の幅は 1/T1/T なのに、裾の確率 1/(Tδ)21/(T\delta)^2 と誤差の2乗 δ2\delta^2 の積が 1/T21/T^2 のまま TT 個の mm にわたって足され、二乗平均を支配するからである。Kitaev の方法は多数決で裾の確率を指数関数的に小さくするので、二乗平均でも誤差が ln⁡(t/η)/T\ln(t/\eta)/T の大きさになり、対数の因子を除いて Heisenberg 限界の尺度になる。「中央値で見れば 1/T1/T、二乗平均で見れば 1/T1/\sqrt T」という違いは、推定の良さを何で測るかで結論が変わる例になっている。

得られる情報量

補助の量子ビットは tt 個なので、Holevo の限界(第3部第7章)により、出力 mm が位相について持つ情報は tln⁡2t\ln2 nat(tt ビット)を超えない。φ\varphi を [0,1)[0,1) で一様とすると、対称性から mm は一様で H(M)=tln⁡2H(M)=t\ln2、したがって相互情報量は

I(Φ;M)=tln⁡2−H(M ∣ Φ),H(M ∣ Φ)=∫01H(P(⋅ ∣ φ)) dφ(6.2.13)I(\Phi;M)=t\ln2-H(M\,|\,\Phi),\qquad H(M\,|\,\Phi)=\int_0^1H\bigl(P(\cdot\,|\,\varphi)\bigr)\,\mathrm{d}\varphi\tag{6.2.13}

である。H(M ∣ Φ)H(M\,|\,\Phi) は分布 (6.2.8) の広がりのエントロピーで、TT によらずほぼ一定(t=10t=10 で 0.8450.845 nat)になる。補助の量子ビットを1個足すごとに情報は ln⁡2\ln2 ずつ増え、上限との差は約 0.840.84 nat(約 1.21.2 ビット)のまま残る。差は裾への漏れで失われる情報である。

例題 6.2.5 3ビットの位相推定が運ぶ情報 ★★

オリジナルt=3t=3 の位相推定で、φ\varphi を [0,1)[0,1) で一様とする。

  1. (1) 数値積分で H(M ∣ Φ)=0.723H(M\,|\,\Phi)=0.723 nat が得られる。相互情報量 I(Φ;M)I(\Phi;M) を nat とビットで求め、Holevo の上限と比べよ。
  2. (2) 同じ T=8T=8 について、量子 Fisher 情報から決まる誤差の下限と、二乗平均誤差の近似 (6.2.12) を比べよ。
解答

(1) I=3ln⁡2−0.723=2.079−0.723=1.356I=3\ln2-0.723=2.079-0.723=1.356 nat、ビットで 1.356/ln⁡2=1.9571.356/\ln2=1.957 ビット。上限 33 ビットの約 65%65\% である。φ\varphi が 1/81/8 の整数倍のときだけ 33 ビットが完全に得られ、それ以外では2つの mm に分かれたり裾に漏れたりして情報が減る。

(2) 下限は 3/(π63)=0.0695\sqrt3/(\pi\sqrt{63})=0.0695。二乗平均誤差は ln⁡2/(π28)=0.0937\sqrt{\ln2/(\pi^28)}=0.0937(数値の平均でも 0.0930.093)。T=8T=8 ではまだ差は小さいが、TT を4倍の 3232 にすると下限は 1/41/4 になるのに二乗平均誤差は 1/21/2 にしかならず、差は T\sqrt T に比例して開いていく。

ほかの巻では

1 B. L. Higgins, D. W. Berry, S. D. Bartlett, H. M. Wiseman and G. J. Pryde (2007), Nature 450, 393。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ