出てくるもの(3):Page 時間の後の放射は前の放射ともつれる
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第3章 §7.3.5 ★★★ 次に出る1個の qubit がもつれる相手は、Page 時間の前はブラックホールの中、後は前に出た放射に入れ替わり、相互情報量の和 の配分が Hawking の描像と両立しない
3つに分ける
Page 曲線は放射全体のエントロピーだけを述べている。情報がどこにあるかを細かく見るために、放射を「これまでに出た 個」(early)と「次に出る1個」(late)に分け、全体を 、、(残りの 個)の3つの部分の純粋状態とみる。 がどこともつれているかは、相互情報量 と で測る。
全体が純粋なら、、 なので
が成り立つ( と略した)。1個の qubit が他と持てる相関の総量は と決まっていて、 と の間で取り合いになる。第7部第5章では同じ3つを (次に出る1個)・(前の放射)・(内側の相手)と書き、混合状態でも成り立つ不等式(定理 7.5.1)として扱う。ここの等式は全体が純粋な場合である。これは第3部第3章の弱単調性(もつれの一夫一婦制の最小形)を、純粋な3つの部分で等式にしたものである。
もつれの相手の入れ替わり
乱数の状態では、(7.3.7) を と に当てて
になる。Page 時間の前は も も小さい側なので、 は qubit の数に比例し、 で である。このとき (7.3.14) から で、 はブラックホールの中と最大にもつれている。これは Hawking の描像(外へ出る qubit は中の相手と対をなす)と同じである。Page 時間の後は も も大きい側なので で、、 になる。後から出る qubit は、前に出た放射と最大にもつれていて、中とはほとんど相関を持たない。放射全体の が1個ごとに ずつ減るのは、新しい qubit が前の放射の混ざり具合を1個分ずつ打ち消している(前の放射を純粋化している)からである。
図 7.3.4 次に出る1個の qubit と、前に出た放射 、ブラックホール との相互情報量(Page の式による厳密な平均、14 qubit)。2つの和はどの でも で、Page 時間を境に相手が入れ替わる。
Hawking の描像と両立しない理由
Hawking の計算は、地平面の近くが Minkowski 時空の真空と区別できないことから、外へ出る qubit がいつでも中の相手と最大にもつれている()と結論する。一方、ユニタリ性と典型性からは、Page 時間の後は である。(7.3.14) から和は を超えられないので、2つは同時に成り立たない。「放射は全体として純粋」「地平面のまわりは真空と区別できない」「外は場の量子論で書ける」の3つがこの形でぶつかるというのが、Almheiri–Marolf–Polchinski–Sully(2012)のファイアウォールの議論で、第7部第5章の式 (7.5.9) で扱う。
が大きいことは、Page 時間の後のブラックホールに物を落とすと、その情報が短い時間で放射に出てくることも示唆する。ブラックホールの中がすでに前の放射と最大にもつれていれば、新しく入れた qubit の分の情報は、少しの放射を待つだけで前の放射と合わせて読み取れる。これは Hayden と Preskill(2007)の議論で、デカップリングの定理(第7部第4章の定理 7.4.2)として示す。
ただし の情報は、 と前の放射のたくさんの qubit を合わせて測ったときにだけ読み取れる。前の放射の少数の qubit と の相互情報量は、(7.3.15) と同じ計算で、その少数の qubit が全体の半分を超えない限りほぼ である。情報が出ていることと、それを取り出す手順が簡単であることは別の話である。
例題 7.3.5 12 qubit の模型でもつれの相手を数える ★★
オリジナル12 qubit の乱数の状態で、 個が出た後に次の1個 が出る。
- (1) と のとき、Page の式で と を求め、和が であることを確かめよ。
- (2) Page 時間の直前と直後( と )の値を求め、入れ替わりがどれだけ急かを述べよ。
解答
(1) ( 個の放射)と書く。 では 、。 はほぼ とだけもつれている。 では 、 で、値がちょうど入れ替わる。Page の式が で対称なので、 と ()の値は入れ替えの関係にある。数値で乱数の状態を5個作って の を計算すると平均 で、Page の式と合う。
(2) で 、 で ( に対して 27% と 73%)。12 qubit では1刻みで半分近く入れ替わる。qubit の数が増えても入れ替わりは Page 時間のまわりの数刻みで起き、ブラックホールの全体の qubit 数 に比べると一瞬である。
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