tecktom.com

出てくるもの(2):蒸発するブラックホールの Page 時間

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第3章 Page 曲線
目次
  1. 2つの粗視化したエントロピー
  2. Page 時間
  3. Hawking の計算はどの時刻から矛盾するか
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第3章 §7.3.4 ★★★ qubit の数を Bekenstein–Hawking エントロピーと放射の熱力学のエントロピーに読み替えると、Page 時間はブラックホールが初めのエントロピーの 3/7 を失った時刻(寿命の 0.568 倍)になる

2つの粗視化したエントロピー

qubit の模型の ln⁡dB\ln d_B と ln⁡dR\ln d_R を、本物のブラックホールの量に読み替える。ブラックホールの側は、7.3.1 節で断った仮定のとおりln⁡dB=SBH/kB\ln d_B=S_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B} と置く。質量 MM の Schwarzschild ブラックホールでは

SBHkB=c3A4Gℏ=4πGM2ℏc(7.3.9)\frac{S_{\mathrm{BH}}}{k_{\mathrm B}}=\frac{c^3A}{4G\hbar}=\frac{4\pi GM^2}{\hbar c}\tag{7.3.9}

である(A=4πrs2A=4\pi r_{\mathrm s}^2、rs=2GM/c2r_{\mathrm s}=2GM/c^2。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第12章)。

放射の側の ln⁡dR\ln d_R は、放射を熱力学で数えたエントロピー SradS_{\mathrm{rad}} を kBk_{\mathrm B} で割ったものと置く。熱的な放射は、同じエネルギーを持つ状態の中でエントロピーが最大の状態なので、Srad/kBS_{\mathrm{rad}}/k_{\mathrm B} は「放射がこれまでに運んだエネルギーを持つ状態の数の対数」である。これは放射の粗視化したエントロピーで、放射の各部分を独立に熱的とみなして足した値である。一方、S(ρ^R)S(\hat\rho_R) は放射全体の状態の von Neumann エントロピーで、細かいエントロピー(fine-grained)と呼ぶ。両者の間には、式 (7.3.2) の D≥0D\ge0 と同じ理由で S(ρ^R)≤Srad/kBS(\hat\rho_R)\le S_{\mathrm{rad}}/k_{\mathrm B} が成り立つ。

Hawking 放射が真空へ自由に流れ出るとき、SradS_{\mathrm{rad}} はどれだけ増えるか。ブラックホールが dM<0\mathrm{d} M<0 だけ質量を失うと、第一法則c2dM=TH dSBHc^2\mathrm{d} M=T_{\mathrm H}\,\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}}(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第19章)から、放射はエネルギー −c2dM=−THdSBH-c^2\mathrm{d} M=-T_{\mathrm H}\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}} を運ぶ。温度 THT_{\mathrm H} の黒体放射は、エネルギー EE あたり 4E/(3T)4E/(3T) のエントロピーを運ぶ(7.3.6 節)。したがって

dSrad=−α dSBH,α=43(7.3.10)\mathrm{d} S_{\mathrm{rad}}=-\alpha\,\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}},\qquad \alpha=\frac43\tag{7.3.10}

である。この比は第7部第1章の式 (7.1.20) と第7部第2章の式 (7.2.14) で使ったもので、ここではそれを α\alpha と名付けて一般の値のまま使う。α>1\alpha>1 なので、自由に流れ出る放射は、ブラックホールが失った分より多くのエントロピーを持つ。この結果は W. H. Zurek(1982)による1W. H. Zurek (1982), Physical Review Letters 49, 1683–1686。Zurek は同じ論文で、ブラックホールを周りと熱平衡を保ちながらゆっくり蒸発させれば α=1\alpha=1 にできることも示した。下の脚注へ。初めのブラックホールのエントロピーを S0S_0 とすると、Srad=α(S0−SBH)S_{\mathrm{rad}}=\alpha(S_0-S_{\mathrm{BH}}) である。

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 放射を灰色体因子 1 の黒体放射とみなし、エネルギーあたりのエントロピーを 4/(3TH)4/(3T_{\mathrm H}) で置き換える(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第9章

Page 時間

qubit の模型の min⁡(ln⁡dR,ln⁡dB)\min(\ln d_R,\ln d_B) をこの2つに読み替えると、ブラックホールの Page 曲線は

kBS(ρ^R)≈min⁡(Srad, SBH)=min⁡(α(S0−SBH), SBH)(7.3.11)k_{\mathrm B}S(\hat\rho_R)\approx\min\bigl(S_{\mathrm{rad}},\,S_{\mathrm{BH}}\bigr)=\min\bigl(\alpha(S_0-S_{\mathrm{BH}}),\,S_{\mathrm{BH}}\bigr)\tag{7.3.11}

になる。2つが等しくなる時刻が Page 時間で、そのときのブラックホールのエントロピーは

SBH=α1+αS0=47S0,MM0=47=0.756(7.3.12)S_{\mathrm{BH}}=\frac{\alpha}{1+\alpha}S_0=\frac47S_0,\qquad \frac{M}{M_0}=\sqrt{\frac47}=0.756\tag{7.3.12}

である(SBH∝M2S_{\mathrm{BH}}\propto M^2)。ブラックホールが失ったエントロピーは初めの 3/73/7 で、半分ではない。放射の粗視化したエントロピーが、失われた分の 4/34/3 倍あるからである。

時刻に直すには蒸発の速さが要る。第5部第12章の黒体の見積もり P=ℏc6/(15360πG2M2)P=\hbar c^6/(15360\pi G^2M^2) から dM/dt=−P/c2∝−M−2\mathrm{d} M/\mathrm{d} t=-P/c^2\propto-M^{-2} で、積分するとM(t)=M0(1−t/tev)1/3M(t)=M_0(1-t/t_{\mathrm{ev}})^{1/3}、寿命は tev=5120πG2M03/(ℏc4)t_{\mathrm{ev}}=5120\pi G^2M_0^3/(\hbar c^4) である。M/M0=4/7M/M_0=\sqrt{4/7} になるのは

tPagetev=1−(47)3/2=0.568(7.3.13)\frac{t_{\mathrm{Page}}}{t_{\mathrm{ev}}}=1-\Bigl(\frac47\Bigr)^{3/2}=0.568\tag{7.3.13}

のときである。これは第7部第2章で Hawking の曲線が上限 SBHS_{\mathrm{BH}} を超える時刻 τ∗\tau_*(例題 7.2.4)と同じ時刻である。Hawking の計算がそこから先で正しくなくなる、というのが Page の読み方である。曲線 (7.3.11) を時刻の関数として描いたのが図 7.3.3 である。光子のほかに重力子やニュートリノも出ること、灰色体因子が 1 でないことを入れると α\alpha と蒸発の速さが変わり、Page 時間の数値は変わる。光子と重力子だけを出す大きなブラックホールについて灰色体因子まで入れて計算すると、Page 時間は寿命の 53.81%、ブラックホールが初めの Bekenstein–Hawking エントロピーの 40.25% を失った時刻になる2D. N. Page (2013), Journal of Cosmology and Astroparticle Physics 2013(09), 028。下の脚注へ。黒体の見積もりの 0.5680.568 と 3/7=42.9%3/7=42.9\% はこれに近く、曲線が山形になることは変わらない。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℓP2/A→0\ell_{\mathrm P}^2/A\to0(地平面の面積が Planck 長の2乗に比べて大きい。計量を古典のまま、ゆっくり変わる M(t)M(t) で放射を計算する) | 証明 要確認 | 行き先 近似の数理 第7章

図

図 7.3.3 黒体の見積もり(α=4/3\alpha=4/3、M∝(1−t/tev)1/3M\propto(1-t/t_{\mathrm{ev}})^{1/3})での Page 曲線。破線は Hawking の計算で数えた放射のエントロピー、一点鎖線はブラックホールのエントロピー、太い実線はその小さい方で、全体が純粋で状態が典型的なときの放射の細かいエントロピー。

Hawking の計算はどの時刻から矛盾するか

Hawking の計算は、放射の細かいエントロピーを粗視化したエントロピー SradS_{\mathrm{rad}} に等しいとする(放射の各部分が互いに独立で、相関はすべて中の相手との間にある)。Page 時間の前は Srad≤SBHS_{\mathrm{rad}}\le S_{\mathrm{BH}} で、これは式 (7.3.4) と矛盾しない。Page 時間の後は Srad>SBHS_{\mathrm{rad}}>S_{\mathrm{BH}} になり、kBS(ρ^R)=Sradk_{\mathrm B}S(\hat\rho_R)=S_{\mathrm{rad}} が kBS(ρ^B)≤SBHk_{\mathrm B}S(\hat\rho_B)\le S_{\mathrm{BH}} を超える。全体が純粋なら両者は等しいはずなので、ここで矛盾する。蒸発しきった t=tevt=t_{\mathrm{ev}} では、Hawking の計算は S(ρ^R)=43S0/kBS(\hat\rho_R)=\frac43S_0/k_{\mathrm B} を、ユニタリ性は S(ρ^R)=0S(\hat\rho_R)=0 を要求する。

矛盾が起きるのは Page 時間で、そのときブラックホールの質量はまだ初めの 3/43/4 ほど残っている。地平面での曲率は 1/rs21/r_{\mathrm s}^2 程度で小さく、Hawking の計算の前提(計量を古典のまま扱う)が壊れる理由は見当たらない。パラドックスが「Planck スケールの最後の瞬間の問題」ではなく、半古典の計算が信頼できる時期の問題であることを、Page 曲線ははっきりさせた。どう解決するかは、半古典の計算そのものに新しい寄与を足す第7部第7章の式 (7.7.10)(島の公式)で扱う。

例題 7.3.4 Page 時間が宇宙の年齢になるブラックホール ★★

オリジナル黒体の見積もり(α=4/3\alpha=4/3)で、Page 時間 tPaget_{\mathrm{Page}} がちょうど宇宙の年齢 1.38×10101.38\times10^{10} 年になる Schwarzschild ブラックホール(初期宇宙でできた原始ブラックホールを想定する)を考える。定数は G=6.67430×10−11 m3 kg−1 s−2G=6.67430\times10^{-11}\,\mathrm{m^3\,kg^{-1}\,s^{-2}}、ℏ=1.054571817×10−34 J s\hbar=1.054571817\times10^{-34}\,\mathrm{J\,s}、c=299792458 m s−1c=299792458\,\mathrm{m\,s^{-1}}、1 年 =365.25=365.25 日とする。

  1. (1) 寿命 tevt_{\mathrm{ev}} と初めの質量 M0M_0 を求めよ。
  2. (2) 初めのエントロピー S0/kBS_0/k_{\mathrm B} と、Page 時間のブラックホールのエントロピー SBH/kBS_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B} を求めよ。
  3. (3) 太陽質量のブラックホールの Page 時間(第7部第2章の例題 7.2.4)と比べよ。
解答

(1) 式 (7.3.13) から tev=tPage/0.568=2.43×1010t_{\mathrm{ev}}=t_{\mathrm{Page}}/0.568=2.43\times10^{10} 年 =7.67×1017 s=7.67\times10^{17}\,\mathrm s。tev=5120πG2M03/(ℏc4)t_{\mathrm{ev}}=5120\pi G^2M_0^3/(\hbar c^4) を M0M_0 について解くと

M0=(ℏc4 tev5120πG2)1/3=2.09×1011 kgM_0=\Bigl(\frac{\hbar c^4\,t_{\mathrm{ev}}}{5120\pi G^2}\Bigr)^{1/3}=2.09\times10^{11}\,\mathrm{kg}

である。Page 時間のときの質量は 0.756M0=1.58×1011 kg0.756M_0=1.58\times10^{11}\,\mathrm{kg} になる。

(2) 式 (7.3.9) から S0/kB=4πGM02/(ℏc)=1.16×1039S_0/k_{\mathrm B}=4\pi GM_0^2/(\hbar c)=1.16\times10^{39}。式 (7.3.12) から Page 時間にはSBH/kB=47S0/kB=6.61×1038S_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B}=\frac47S_0/k_{\mathrm B}=6.61\times10^{38} で、これが放射の細かいエントロピーの最大値でもある。

(3) 例題 7.2.4 では太陽質量の Page 時間は 1.19×10671.19\times10^{67} 年で、宇宙の年齢の 105710^{57} 倍ほどある。tPage∝M03t_{\mathrm{Page}}\propto M_0^3 なので、宇宙の年齢に合わせるには質量を (1.19×1067/1.38×1010)1/3=9.5×1018(1.19\times10^{67}/1.38\times10^{10})^{1/3}=9.5\times10^{18} 分の1、つまり 2×1011 kg2\times10^{11}\,\mathrm{kg} 程度まで小さくする必要がある。総合問題 (5) の 1011 kg10^{11}\,\mathrm{kg} のブラックホールはこれより少し軽く、Page 時間(1.51×1091.51\times10^9 年)を宇宙の年齢の中で既に過ぎている。初期宇宙で 2×1011 kg2\times10^{11}\,\mathrm{kg} 前後の原始ブラックホールができていれば、それはいま Page 時間のあたりにいる。

1 W. H. Zurek (1982), Physical Review Letters 49, 1683–1686。Zurek は同じ論文で、ブラックホールを周りと熱平衡を保ちながらゆっくり蒸発させれば α=1\alpha=1 にできることも示した。

2 D. N. Page (2013), Journal of Cosmology and Astroparticle Physics 2013(09), 028。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ