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出てくるもの (2):一般化第二法則は相対エントロピーの単調性

2026年10月15日15分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第1章 ブラックホールの熱力学を情報で読む
目次
  1. 地平面の切り口とモジュラー Hamiltonian
  2. Raychaudhuri の方程式で面積へ
  3. 一般化第二法則
  4. 蒸発で確かめる
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第1章 §7.1.4 ★★★ 地平面の外の領域が時間とともに狭まることと、データ処理不等式と Raychaudhuri の方程式を組み合わせると、SgenS_{\mathrm{gen}} が減らないことが出る

地平面の切り口とモジュラー Hamiltonian

地平面は光的な面で、光の世界線(生成線)を束ねたものである。生成線に沿ったアフィン径数を λ\lambda(長さの次元)、生成線を区別する横の座標を y\bm{y}(2次元)とする。地平面を λ=λ0\lambda=\lambda_0 で切った切り口を考え、そこから先の地平面の部分を H(λ0)H(\lambda_0) と書く(図 7.1.2)。地平面の外の状態のうち、地平面を通って入ってくるものと外へ逃げるものを、H(λ0)H(\lambda_0) と無限遠で見張れば、切り口 λ0\lambda_0 より後の外の世界の情報がそろう。後の切り口 λ1>λ0\lambda_1>\lambda_0 の H(λ1)H(\lambda_1) は H(λ0)H(\lambda_0) の一部なので、単調性 (7.1.11) から

ddλ0D(ρ^H(λ0) ∥ σ^H(λ0))≤0.(7.1.15)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} \lambda_0}D\bigl(\hat\rho_{H(\lambda_0)}\,\|\,\hat\sigma_{H(\lambda_0)}\bigr)\le0.\tag{7.1.15}

図

図 7.1.2 地平面(太線)とその上の2つの切り口 λ0<λ1\lambda_0<\lambda_1。後の切り口から先で決まる外の領域は、前の切り口から先で決まる外の領域に含まれる。単調性 (7.1.11) はこの「含まれる」向きにだけ働くので、相対エントロピーは地平面に沿って未来へ向かうほど減る

基準の状態 σ^\hat\sigma には、ブラックホールの地平面の上で Rindler の真空と同じ形をしている状態(Hartle–Hawking 状態や Unruh 状態)を取る。そのとき H(λ0)H(\lambda_0) のモジュラー Hamiltonian は、Bisognano–Wichmann の形 (7.1.6) を光的な面へ移したもの

K^(λ0)=2πℏc∫d2y∫λ0∞(λ−λ0) T^λλ dλ+定数(7.1.16)\hat K(\lambda_0)=\frac{2\pi}{\hbar c}\int\mathrm{d}^2y\int_{\lambda_0}^{\infty}(\lambda-\lambda_0)\,\hat T_{\lambda\lambda}\,\mathrm{d}\lambda+\text{定数}\tag{7.1.16}

になる。Tλλ=TμνkμkνT_{\lambda\lambda}=T_{\mu\nu}k^\mu k^\nu(kμ=dxμ/dλk^\mu=\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\lambda)は生成線に沿って流れ込むエネルギーの密度である。式 (7.1.6) の xx(楔の端からの距離)が、光的な面では切り口からのアフィン距離 λ−λ0\lambda-\lambda_0 に替わっている。Wall の証明は、この形が成り立つことを地平面の上の可観測量についてのいくつかの公理から導き、それを自由場と1+1次元の共形場理論で確かめた1A. C. Wall (2012), Phys. Rev. D 85, 104049。地平面の上の可観測量の代数が満たすべき公理(決定性・超局所性・局所 Lorentz 不変性・安定性)を仮定し、自由場と1+1次元の共形場理論で公理を確かめている。下の脚注へ。

Raychaudhuri の方程式で面積へ

もう1つの材料は、地平面の面積の変化と流れ込むエネルギーを結ぶ式である。生成線の束の面積要素の伸び率を θexp\theta_{\mathrm{exp}}(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第19章の膨張率)とすると、Raychaudhuri の方程式と Einstein 方程式から

dθexpdλ=−8πGc4Tλλ−12θexp2−(ずれの2乗)\frac{\mathrm{d} \theta_{\mathrm{exp}}}{\mathrm{d} \lambda}=-\frac{8\pi G}{c^4}T_{\lambda\lambda}-\frac12\theta_{\mathrm{exp}}^2-(\text{ずれの2乗})

が成り立つ。ブラックホールが定常に近く、流れ込むものが小さな摂動なら、右辺の2乗の項は摂動の2次なので落とせる。地平面は遠い未来で定常に落ち着く(θexp→0\theta_{\mathrm{exp}}\to0)ので、それを境界条件にして積分すると

θexp(λ0)=8πGc4∫λ0∞Tλλ dλ(7.1.17)\theta_{\mathrm{exp}}(\lambda_0)=\frac{8\pi G}{c^4}\int_{\lambda_0}^{\infty}T_{\lambda\lambda}\,\mathrm{d}\lambda\tag{7.1.17}

を得る。面積の変化は dAdλ0=∫d2y θexp\frac{\mathrm{d} A}{\mathrm{d} \lambda_0}=\int\mathrm{d}^2y\,\theta_{\mathrm{exp}} である。一方、式 (7.1.16) を λ0\lambda_0 で微分すると、被積分関数の (λ−λ0)(\lambda-\lambda_0) が微分されて

dΔKdλ0=−2πℏc∫d2y∫λ0∞Δ⟨T^λλ⟩ dλ=−c34GℏdAdλ0(7.1.18)\frac{\mathrm{d} \Delta K}{\mathrm{d} \lambda_0}=-\frac{2\pi}{\hbar c}\int\mathrm{d}^2y\int_{\lambda_0}^\infty\Delta\langle \hat T_{\lambda\lambda} \rangle \,\mathrm{d}\lambda=-\frac{c^3}{4G\hbar}\frac{\mathrm{d} A}{\mathrm{d} \lambda_0}\tag{7.1.18}

になる(第2の等号で、半古典の Einstein 方程式に従って式 (7.1.17) の TλλT_{\lambda\lambda} を期待値の真空からの差に置き換えた)。つまり ΔK\Delta K の減り方は、そのまま SBH/kB=c3A/(4Gℏ)S_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B}=c^3A/(4G\hbar) の増え方である。

一般化第二法則

式 (7.1.8) と (7.1.18) を単調性 (7.1.15) に入れる:

0≥dDdλ0=dΔKdλ0−dΔSdλ0=−c34GℏdAdλ0−dΔSdλ0.0\ge\frac{\mathrm{d} D}{\mathrm{d} \lambda_0}=\frac{\mathrm{d} \Delta K}{\mathrm{d} \lambda_0}-\frac{\mathrm{d} \Delta S}{\mathrm{d} \lambda_0}=-\frac{c^3}{4G\hbar}\frac{\mathrm{d} A}{\mathrm{d} \lambda_0}-\frac{\mathrm{d} \Delta S}{\mathrm{d} \lambda_0}.

基準の状態 σ^\hat\sigma は地平面に沿った並進(地平面の上のブースト)で不変なので、S(σ^H(λ0))S(\hat\sigma_{H(\lambda_0)}) は切り口によらない(発散するが、切り口を動かしても変わらない)。したがって dΔSdλ0=dS(ρ^H(λ0))dλ0\frac{\mathrm{d} \Delta S}{\mathrm{d} \lambda_0}=\frac{\mathrm{d} S(\hat\rho_{H(\lambda_0)})}{\mathrm{d} \lambda_0} で、両辺に −kB-k_{\mathrm B} を掛ければ

ddλ0[kBc3A(λ0)4Gℏ+kBS(ρ^H(λ0))]=dSgendλ0≥0(7.1.19)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} \lambda_0}\Bigl[\frac{k_{\mathrm B}c^3A(\lambda_0)}{4G\hbar}+k_{\mathrm B}S\bigl(\hat\rho_{H(\lambda_0)}\bigr)\Bigr]=\frac{\mathrm{d} S_{\mathrm{gen}}}{\mathrm{d} \lambda_0}\ge0\tag{7.1.19}

を得る。これが一般化第二法則である。証明に使った性質は、相対エントロピーの単調性(データ処理不等式)と、真空を地平面に制限した状態が「温度 ℏκ/(2πckB)\hbar\kappa/(2\pi ck_{\mathrm B}) の熱状態」であること(モジュラー Hamiltonian の形)と、半古典の Einstein 方程式の3つだけである。

定理 7.1.1(一般化第二法則(Wall 2012 の骨格) ★★★)

定常なブラックホールの地平面に、半古典の重力のもとで量子場の小さな摂動が流れ込むとする。基準の状態の地平面への制限のモジュラー Hamiltonian が式 (7.1.16) の形を取るなら、一般化エントロピー Sgen=kBc3A/(4Gℏ)+kBS(ρ^外)S_{\mathrm{gen}}=k_{\mathrm B}c^3A/(4G\hbar)+k_{\mathrm B}S(\hat\rho_{\text{外}}) は、地平面の切り口を未来へ動かしても減らない。これは地平面の外の領域への制限についての相対エントロピーの単調性 (7.1.11) を書き直したものである。

面積定理との違い

古典の面積定理は Tλλ≥0T_{\lambda\lambda}\ge0(光的エネルギー条件)を仮定して dA/dλ≥0\mathrm{d} A/\mathrm{d}\lambda\ge0 を出す。量子場では ⟨T^λλ⟩\langle \hat T_{\lambda\lambda} \rangle が負になりうる。Hawking 放射の過程では、地平面へ負のエネルギーが流れ込んで面積が減る(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第12章の蒸発)。式 (7.1.19) は、面積が減るときには外のエントロピーがそれ以上に増えることを保証する。面積定理は ℏ→0\hbar\to0 で式 (7.1.19) の第1項だけを残したものとみなせる。

蒸発で確かめる

蒸発するブラックホールで、一般化第二法則が実際に成り立っていることを確かめる。ブラックホールがエネルギー dE\mathrm{d} E を放射すると、第一法則からdSBH=−dE/TH\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}}=-\mathrm{d} E/T_{\mathrm H} である。放射を温度 THT_{\mathrm H} の黒体放射が空の空間へ流れ出るものとみなすと、3+1 次元の黒体放射の流れはエネルギーの流れ σSBT4\sigma_{\mathrm{SB}}T^4 に対してエントロピーの流れ 43σSBT3\frac43\sigma_{\mathrm{SB}}T^3 を運ぶので、dSrad=43 dE/TH\mathrm{d} S_{\mathrm{rad}}=\frac43\,\mathrm{d} E/T_{\mathrm H} である。和は

dSgen=dSBH+dSrad=13 dETH>0(7.1.20)\mathrm{d} S_{\mathrm{gen}}=\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}}+\mathrm{d} S_{\mathrm{rad}}=\frac13\,\frac{\mathrm{d} E}{T_{\mathrm H}}>0\tag{7.1.20}

で増える。寿命 tevt_{\mathrm{ev}} にわたって積分すると、質量は M(t)=M0(1−t/tev)1/3M(t)=M_0(1-t/t_{\mathrm{ev}})^{1/3} で減る(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第12章)ので、SBH(t)=S0(1−t/tev)2/3S_{\mathrm{BH}}(t)=S_0(1-t/t_{\mathrm{ev}})^{2/3}、Srad(t)=43(S0−SBH(t))S_{\mathrm{rad}}(t)=\frac43(S_0-S_{\mathrm{BH}}(t)) となり、SgenS_{\mathrm{gen}} は S0S_0 から 43S0\frac43S_0 へ単調に増える(図 7.1.3)。この比 dSrad=−43dSBH\mathrm{d} S_{\mathrm{rad}}=-\frac43\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}} と SBH(t)S_{\mathrm{BH}}(t)・Srad(t)S_{\mathrm{rad}}(t) は、第7部第2章(式 (7.2.15))で Hawking の計算の放射の von Neumann エントロピーとして読み直し、第7部第3章で比を α\alpha と書いて Page 時間(式 (7.3.13))を出す。

図

図 7.1.3 蒸発するブラックホールの SBHS_{\mathrm{BH}}(青)・放射のエントロピー(赤)・その和 SgenS_{\mathrm{gen}}(黒)。放射を温度 THT_{\mathrm H} の黒体放射とみなし、灰色体因子を1とした見積もり。面積は減るが SgenS_{\mathrm{gen}} は増え続ける。放射のエントロピーが最後まで増え続けることは、全体がユニタリに時間発展するという要請と食い違う(第7部第2章の式 (7.2.19)・第7部第3章の式 (7.3.11))

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℓP2/A→0\ell_{\mathrm P}^2/A\to0(計量は古典のまま、場の期待値 ⟨T^μν⟩\langle \hat T_{\mu\nu} \rangle を源にする半古典の重力)と、流れ込む摂動の大きさ(Raychaudhuri の方程式の2乗の項を落とす) | 証明 条件付き(地平面の上の可観測量の代数が4つの公理を満たすこと。自由場と1+1次元の共形場理論で確かめられている〔Wall 2012〕。半古典の重力そのものの誤差の評価は要確認) | 行き先 近似の数理 第7章

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 放射を温度 THT_{\mathrm H} の黒体放射とし、灰色体因子を 1 とする(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第9章

例題 7.1.5 1 J の放射で一般化エントロピーはどれだけ増えるか ★★

オリジナル太陽質量のブラックホール(TH=6.17×10−8 KT_{\mathrm H}=6.17\times10^{-8}\,\mathrm K)が、エネルギー 1 J を Hawking 放射で放つ。

  1. ΔSBH/kB\Delta S_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B} と、3+1 次元の黒体放射とみなした ΔSrad/kB\Delta S_{\mathrm{rad}}/k_{\mathrm B}、和 ΔSgen/kB\Delta S_{\mathrm{gen}}/k_{\mathrm B} を求めよ。
  2. 放射が1+1次元の1方向の流れ(エネルギーの流れ π(kBT)2/(12ℏ)\pi(k_{\mathrm B}T)^2/(12\hbar))なら、dSrad/(dE/T)\mathrm{d} S_{\mathrm{rad}}/(\mathrm{d} E/T) はいくらか。
  3. 2つの次元で比が1より大きいことの意味を、Gibbs の変分原理の言葉で述べよ。
解答
  1. 1/(kBTH)=1/(1.381×10−23×6.17×10−8)=1.174×1030 J−11/(k_{\mathrm B}T_{\mathrm H})=1/(1.381\times10^{-23}\times6.17\times10^{-8})=1.174\times10^{30}\,\mathrm J^{-1}。ΔSBH/kB=−1.174×1030\Delta S_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B}=-1.174\times10^{30}、ΔSrad/kB=43×1.174×1030=1.565×1030\Delta S_{\mathrm{rad}}/k_{\mathrm B}=\frac43\times1.174\times10^{30}=1.565\times10^{30}、和は +3.91×1029+3.91\times10^{29}。

  2. エネルギーの流れを F(T)=bT2F(T)=bT^2 とすると、エントロピーの流れは ∫0T1T′dFdT′dT′=2bT\int_0^T\frac{1}{T'}\frac{\mathrm{d} F}{\mathrm{d} T'}\mathrm{d} T'=2bT である(各モードについて ds=du/T\mathrm{d} s=\mathrm{d} u/T を積み上げた)。したがって dSrad/(dE/T)=2bT/(bT2/T)=2\mathrm{d} S_{\mathrm{rad}}/(\mathrm{d} E/T)=2bT/(bT^2/T)=2。3+1 次元では同じ計算で F=σSBT4F=\sigma_{\mathrm{SB}}T^4 から 4/34/3 になる。

  3. 熱平衡の状態を熱浴に可逆に渡せば、エントロピーの流れはちょうど dE/T\mathrm{d} E/T(比 1)になる。空の空間へ流れ出る放射は、温度 0 の真空という熱浴と平衡でない状態へエネルギーを渡す非可逆な過程なので、比は 1 を超える。超えた分(3+1 次元で 13 dE/T\frac13\,\mathrm{d} E/T、1+1 次元で dE/T\mathrm{d} E/T)が、この過程のエントロピー生成(第4部第3章の経路の DD)にあたる。

1 A. C. Wall (2012), Phys. Rev. D 85, 104049。地平面の上の可観測量の代数が満たすべき公理(決定性・超局所性・局所 Lorentz 不変性・安定性)を仮定し、自由場と1+1次元の共形場理論で公理を確かめている。

木下の勉強ステータス

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