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出てくるもの(1):島の公式と Page 曲線

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第7章 島の公式と Page 曲線の半古典的な導出
目次
  1. 島の公式
  2. 2つの候補
  3. 蒸発するブラックホールの模型
  4. Page 時間の後に何が放射に入るか
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第7章 §7.7.3 ★★★ 量子極値曲面の規則を浴の中の放射に当てると、ブラックホールの内部の一部(島)を放射に加えた領域が現れ、島なしと島ありの入れ替わりが Page 曲線になる

島の公式

量子極値曲面の規則 (7.7.8) を、重力のある時空の中の領域でなく、重力のない浴に置いた放射 RR に当てる。RR の端は浴の中にあるが、規則が許す曲面 X\mathcal X は重力のある領域のどこにあってもよい。そこで、重力のある領域の中に島 I\mathcal I を取り、その境界 ∂I\partial\mathcal I を曲面とする候補を考える。島は RR とつながっていなくてよい。

命題 7.7.3(島の公式 ★★★)

重力のない浴に集めた放射 RR の von Neumann エントロピーは

S(R)=min⁡I ext⁡I[A(∂I)4ℓP2+Sbulk(R∪I)](7.7.10)S(R)=\min_{\mathcal I}\ \operatorname*{ext}_{\mathcal I}\Bigl[\frac{A(\partial\mathcal I)}{4\ell_{\mathrm P}^2}+S_{\mathrm{bulk}}(R\cup\mathcal I)\Bigr]\tag{7.7.10}

で与えられる。I=∅\mathcal I=\varnothing(島なし)も候補に含め、そのとき面積の項は 0 である。極値を与える島を含めた R∪IR\cup\mathcal I が RR のエンタングルメント・ウェッジである。

この公式は 2019 年に G. Penington1G. Penington (2020), Journal of High Energy Physics 2020(09), 002(arXiv 版は 2019 年)。下の脚注へと、A. Almheiri・N. Engelhardt・D. Marolf・H. Maxfield2A. Almheiri, N. Engelhardt, D. Marolf, H. Maxfield (2019), Journal of High Energy Physics 2019(12), 063。下の脚注へが、蒸発するブラックホールに量子極値曲面の規則を当てて見つけ、A. Almheiri・R. Mahajan・J. Maldacena・Y. Zhao3A. Almheiri, R. Mahajan, J. Maldacena, Y. Zhao (2020), Journal of High Energy Physics 2020(03), 149。下の脚注へが浴を持つ2次元の模型で今の形に書いた。なぜ島の分を加えてよいかは 7.7.5 節で扱う。

2つの候補

候補は2つある。

島なし(I=∅\mathcal I=\varnothing)では、式 (7.7.10) の括弧の中は Sbulk(R)S_{\mathrm{bulk}}(R) だけで、これは半古典的な時空の上の場の状態から計算した放射のエントロピー、すなわち Hawking の計算の S(ρ^RHawk)S(\hat\rho_R^{\mathrm{Hawk}}) である。放射が出るたびに RR のモードの相手は地平面の内側に残るので、この値は時間とともに増え続ける。

島ありでは、島をブラックホールの内部の、地平面のすぐ近くまで広がる領域に取る。島の中には、すでに RR に出たモードの相手(内側のモード)が入っている。そのため R∪IR\cup\mathcal I の中では対が閉じ、Sbulk(R∪I)S_{\mathrm{bulk}}(R\cup\mathcal I) は小さい。代わりに面積の項が加わり、島の境界は地平面の近くにあるので、その値はほぼ時刻 tt のブラックホールのエントロピーA(t)/(4ℓP2)A(t)/(4\ell_{\mathrm P}^2) になる。

したがって

S(R)≈min⁡{Sbulk(R), A(t)4ℓP2+Sbulk(R∪I)}≈min⁡{S(ρ^RHawk(t)), A(t)4ℓP2}(7.7.11)S(R)\approx\min\Bigl\{S_{\mathrm{bulk}}(R),\ \frac{A(t)}{4\ell_{\mathrm P}^2}+S_{\mathrm{bulk}}(R\cup\mathcal I)\Bigr\} \approx\min\Bigl\{S\bigl(\hat\rho_R^{\mathrm{Hawk}}(t)\bigr),\ \frac{A(t)}{4\ell_{\mathrm P}^2}\Bigr\}\tag{7.7.11}

で、ユニタリ性から要求された上限 (7.7.3) が等号で出てくる。Page 時間より前は島なしの方が小さく、その後は島ありの方が小さい。Page 時間に、最小を与える極値曲面が「無い」から「島の境界」へ不連続に入れ替わる。この不連続な入れ替わりが Page 曲線の折れ曲がりである。式 (7.7.3) は「ブラックホールの状態の数」の仮定から出た上限だったが、式 (7.7.11) は半古典的な時空の幾何(面積と場のエントロピー)だけから計算した値である。ここが島の公式の新しい点である。

蒸発するブラックホールの模型

4次元の Schwarzschild ブラックホールで、2つの候補を時間の関数として書く。ブラックホールのエントロピー SBH/kB∝M2S_{\mathrm{BH}}/k_{\mathrm B}\propto M^2、蒸発の速さ dM/dt∝−M−2\mathrm{d} M/\mathrm{d} t\propto-M^{-2}(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第12章)から、M(t)3=M03(1−t/tev)M(t)^3=M_0^3(1-t/t_{\mathrm{ev}}) で

A(t)4ℓP2=S0(1−ttev)2/3(7.7.12)\frac{A(t)}{4\ell_{\mathrm P}^2}=S_0\Bigl(1-\frac{t}{t_{\mathrm{ev}}}\Bigr)^{2/3}\tag{7.7.12}

である(S0S_0 は最初のブラックホールのエントロピー、tevt_{\mathrm{ev}} は蒸発しきるまでの時間)。放射の粗いエントロピーは、ブラックホールが失ったエントロピーの α\alpha 倍

Sbulk(R)=α[S0−A(t)4ℓP2](7.7.13)S_{\mathrm{bulk}}(R)=\alpha\Bigl[S_0-\frac{A(t)}{4\ell_{\mathrm P}^2}\Bigr]\tag{7.7.13}

とおく。第7部第3章の式 (7.3.10) の α\alpha と同じ比で、3+1 次元の黒体で 4/34/3、1+1 次元の流れで 22 である(第7部第1章の例題 7.1.5)。α≥1\alpha\ge1 である。ブラックホールが dSBH\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}} を失うとき、出ていく放射のエントロピーは一般化第二法則により少なくともそれと同じだけある。等号はブラックホールと放射の間で可逆に(同じ温度の放射をやり取りして)エネルギーが移る場合で、真空へ自由に出ていく放射では α>1\alpha>1 になる。1+1 次元の場の放射なら、エネルギーの流れ πcM(kBT)2/(12ℏ)\pi c_{\mathrm M}(k_{\mathrm B}T)^2/(12\hbar)(cMc_{\mathrm M} は場の中心電荷)に対してエントロピーの流れがπcMkBT/(6ℏ)\pi c_{\mathrm M}k_{\mathrm B}T/(6\hbar)(kBk_{\mathrm B} 単位)で、ちょうど (エネルギーの流れ)/(kBT)/(k_{\mathrm B}T) の2倍になる。一方、第一法則 c2dM=T dSBHc^2\mathrm{d} M=T\,\mathrm{d} S_{\mathrm{BH}} によりブラックホールのエントロピーは (エネルギーの流れ)/(kBT)/(k_{\mathrm B}T) の速さで減るので、α=2\alpha=2 である(この模型では放射を 1+1 次元の流れで近似し、灰色体因子を 1 とする)。

Page 時間は2つの候補が等しくなる時刻で、α[S0−SBH]=SBH\alpha[S_0-S_{\mathrm{BH}}]=S_{\mathrm{BH}} から

SBH(tP)S0=α1+α,tPtev=1−(α1+α)3/2(7.7.14)\frac{S_{\mathrm{BH}}(t_{\mathrm P})}{S_0}=\frac{\alpha}{1+\alpha},\qquad \frac{t_{\mathrm P}}{t_{\mathrm{ev}}}=1-\Bigl(\frac{\alpha}{1+\alpha}\Bigr)^{3/2}\tag{7.7.14}

である。これは第7部第3章の式 (7.3.12) を時刻に直したもので、α=4/3\alpha=4/3 では第3章の式 (7.3.13) の 0.5680.568 になる。島の公式の2つの候補の交点が、Page が状態の数え上げから出した時刻と一致する。図 7.7.2 は α=2\alpha=2 の場合で、2本の曲線の小さい方が Page 曲線になる。

図

図 7.7.2 蒸発するブラックホールの模型(式 (7.7.12)・(7.7.13)、α=2\alpha=2)。赤の点線が島なしの候補(Hawking の計算)、灰色の点線が島ありの候補(ほぼブラックホールのエントロピー)、青の実線が島の公式の値。Page 時間 tP=0.456 tevt_{\mathrm P}=0.456\,t_{\mathrm{ev}} で最小を与える候補が入れ替わる

Page 時間の後に何が放射に入るか

Page 時間の後、放射 RR のエンタングルメント・ウェッジは R∪IR\cup\mathcal I になる。JLMS の関係 (7.7.9) を BB の代わりに RR について書けば、日記の違う2つの世界の放射の相対エントロピーは

D(ρ^R(1) ∥ ρ^R(2))=D(ρ^R∪Ibulk,(1) ∥ ρ^R∪Ibulk,(2))(7.7.15)D\bigl(\hat\rho_R^{(1)}\,\big\|\,\hat\rho_R^{(2)}\bigr)=D\bigl(\hat\rho^{\mathrm{bulk},(1)}_{R\cup\mathcal I}\,\big\|\,\hat\rho^{\mathrm{bulk},(2)}_{R\cup\mathcal I}\bigr)\tag{7.7.15}

である。日記が島の中にあれば、右辺は日記の部分系への部分トレースで下から押さえられ、量子データ処理不等式により日記どうしの D 以上になる。こうして日記の情報が放射から読み出せることになる。Page 時間の前は島が無いので右辺は RR だけの場の状態の D で、RR の場の状態は日記によらないから 0 であり、式 (7.7.2) に一致する。

この描像は、第7部第5章(第7部第5章)のファイアウォールの議論(定理 7.5.1)とも整合する。そこでは、Page 時間の後の地平面の外のモードが、内側の相手と初期の放射の両方と最大にもつれることはできない(一夫一婦制)、という矛盾が問題だった。島の公式の描像では、内側の相手は島の中にあり、島は初期の放射 RR のエンタングルメント・ウェッジに含まれる。内側の相手は RR と独立な系ではなく、RR の自由度で表される。同じ自由度を2回数えていたので、一夫一婦制の矛盾は起きない、という読み方になる。

例題 7.7.3 Page 曲線の折れ目と太陽質量の Page 時刻 ★★

オリジナル式 (7.7.12)・(7.7.13) の2つの候補について、次の問いに答えよ。

  1. (1) 島なしの候補 α(S0−SBH)\alpha(S_0-S_{\mathrm{BH}}) と島ありの候補 SBHS_{\mathrm{BH}} の時間微分を ∣S˙BH∣\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert で書き、Page 時間の前後で S(R)S(R) の時間微分がどう跳ぶかを示せ。α=4/3\alpha=4/3 のとき、Page 時間の直後と直前の傾きの比を求めよ。
  2. (2) 太陽質量のブラックホールの Page 時刻の範囲を、α\alpha が1から2の間として年で出せ。第7部第3章の例題 7.3.6 の割合と、第7部第2章の例題 7.2.4 の tevt_{\mathrm{ev}} を使ってよい。
解答

(1) ブラックホールは縮み続けるので S˙BH=−∣S˙BH∣\dot S_{\mathrm{BH}}=-\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert である。島なしの候補の時間微分は −αS˙BH=+α∣S˙BH∣-\alpha\dot S_{\mathrm{BH}}=+\alpha\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert、島ありの候補の時間微分は −∣S˙BH∣-\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert になる。S(R)S(R) は2つの候補の小さい方なので、Page 時間の前は島なしの候補、後は島ありの候補を取る。∣S˙BH∣\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert そのものは tPt_{\mathrm P} で連続だから、S(R)S(R) の値は連続のまま、傾きだけが +α∣S˙BH∣+\alpha\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert から −∣S˙BH∣-\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert へ跳ぶ。直後と直前の傾きの比は −1/α-1/\alpha で、α=4/3\alpha=4/3 なら −3/4-3/4 である。式 (7.7.12) から ∣S˙BH∣=23S0tev(1−t/tev)−1/3\lvert \dot S_{\mathrm{BH}}\rvert =\frac23\frac{S_0}{t_{\mathrm{ev}}}(1-t/t_{\mathrm{ev}})^{-1/3} で、tP=0.568 tevt_{\mathrm P}=0.568\,t_{\mathrm{ev}} では 0.882 S0/tev0.882\,S_0/t_{\mathrm{ev}} なので、傾きは +1.176 S0/tev+1.176\,S_0/t_{\mathrm{ev}} から −0.882 S0/tev-0.882\,S_0/t_{\mathrm{ev}} へ変わる。値が連続で傾きだけが不連続になるのは、2つの鞍点の小さい方を取る 7.7.6 節の1次相転移と同じ形で、Page 曲線の折れ目は鞍点の入れ替わりである。

(2) 第7部第3章の例題 7.3.6 と同じく Page 時間のブラックホールのエントロピーは初めの α/(1+α)\alpha/(1+\alpha) 倍で、α=1\alpha=1 では 1/21/2、α=2\alpha=2 では 2/32/3 である。式 (7.7.14) から tP/tev=1−(1/2)3/2=0.646t_{\mathrm P}/t_{\mathrm{ev}}=1-(1/2)^{3/2}=0.646 と 1−(2/3)3/2=0.4561-(2/3)^{3/2}=0.456 になる。太陽質量では tev=2.10×1067t_{\mathrm{ev}}=2.10\times10^{67} 年(第7部第2章の例題 7.2.4)なので、tPt_{\mathrm P} は 0.456×2.10×1067=9.6×10660.456\times2.10\times10^{67}=9.6\times10^{66} 年から0.646×2.10×1067=1.36×10670.646\times2.10\times10^{67}=1.36\times10^{67} 年の間にある(α=4/3\alpha=4/3 なら 1.19×10671.19\times10^{67} 年)。4次元の実際の放射では粒子の種類と灰色体因子で α\alpha が決まり、tevt_{\mathrm{ev}} の係数も黒体の見積もりから変わるので、ここでの数値は桁を見るためのものである。

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 放射の場のエントロピーを熱的な流れ(灰色体因子 1・1+1 次元)で置き換える(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第9章

1 G. Penington (2020), Journal of High Energy Physics 2020(09), 002(arXiv 版は 2019 年)。

2 A. Almheiri, N. Engelhardt, D. Marolf, H. Maxfield (2019), Journal of High Energy Physics 2019(12), 063。

3 A. Almheiri, R. Mahajan, J. Maldacena, Y. Zhao (2020), Journal of High Energy Physics 2020(03), 149。

木下の勉強ステータス

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