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出てくるもの(1):AMPS の矛盾

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第5章 ファイアウォール
目次
  1. 矛盾
  2. 小さな補正では救えない
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第5章 §7.5.3 ★★★ 仮定1は I(B;C)=2S(B)I(B;C)=2S(B)、仮定3は I(B;R)=2S(B)I(B;R)=2S(B) を要求し、和 4S(B)4S(B) は上限 2S(B)2S(B) を超える。小さな補正で救えないことも同じ不等式から量で言える

矛盾

7.5.1節の3つの仮定を定理 7.5.1 に入れる。Page 時間の後に出る遅いモード BB について、仮定1は I(B;C)=2S(B)I(B;C)=2S(B)、仮定3は I(B;R)≈2S(B)I(B;R)\approx2S(B) を要求する。仮定2は、BB・CC・RR を別々の系として扱い、BB の状態をどちらの仮定でも同じ熱状態としてよいことを保証する。すると

I(B;R)+I(B;C)≈4S(B)>2S(B)(7.5.9)I(B;R)+I(B;C)\approx4S(B)>2S(B)\tag{7.5.9}

となり、一夫一婦制の不等式 (7.5.8) に反する。BB が量子ビット1個なら、図 7.5.2 の点 (2,2)(2,2) である。

AMPS の原論文は、同じ矛盾を強劣加法性 (7.5.6) で直接書いた。S(RB)+S(BC)≥S(B)+S(RBC)S(RB)+S(BC)\ge S(B)+S(RBC) に仮定1の S(BC)=0S(BC)=0 を入れると、BCBC が純粋なので ρ^RBC=ρ^R⊗ρ^BC\hat\rho_{RBC}=\hat\rho_R\otimes\hat\rho_{BC} で S(RBC)=S(R)S(RBC)=S(R)。したがって S(RB)≥S(R)+S(B)S(RB)\ge S(R)+S(B) で、BB を加えると放射のエントロピーは増えるしかない。一方、仮定3は S(RB)≈S(R)−S(B)S(RB)\approx S(R)-S(B) を要求する。2つの書き方は同じ不等式の別の顔で、どちらも「部分トレースで相対エントロピーが増えない」の帰結である。

この矛盾が Page 時間の後にだけ現れることに注意する。Page 時間の前は RR が小さく、BB はまだ RR とほとんど相関していない(I(B;R)≈0I(B;R)\approx0)。Hawking の計算は、それを最後まで延ばして I(B;R)=0I(B;R)=0 のまま放射のエントロピーを増やし続ける。それが情報喪失のパラドックスだった(第7部第2章)。Page 時間の後に純粋性を回復させようとすると、今度は地平面の真空と衝突する。AMPS の議論は、情報喪失のパラドックスを「Page 時間の後のある時刻に、ある1つのモードについて」局所的に言い直したものと読める。

図

図 7.5.3 全体で N=12N=12 個の量子ビットが Haar 乱数の純粋状態にあり、そのうち kk 個が放射 RkR_k に出たときの、次の1個 BB と RkR_k の相互情報量の平均(実線、Page の平均の式から計算した厳密な期待値)。Page 時間を過ぎるとほぼ 2ln⁡22\ln2 になる。点線は仮定1が同じ BB と内側の相手に要求する値で、2本の和は上限 2ln⁡22\ln2 を超える

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 2−∣N−2k∣/2→02^{-\lvert N-2k\rvert /2}\to0(放射とブラックホールの片方の次元がもう片方より十分大きい) | 証明 条件付き(Page の平均の式そのものは Foong–Kanno 1994・Sen 1996 が証明。ブラックホールの時間発展を Haar 乱数のユニタリで置き換えるのは仮定) | 行き先 近似の数理 第13章

小さな補正では救えない

Hawking の計算に小さな補正を足せば、放射は少しずつ RR と相関を持つようになり、矛盾が消えるのではないか、という期待がある。Mathur は、これが不可能であることを量的に示した1S. D. Mathur (2009), Class. Quantum Grav. 26, 224001.下の脚注へ。同じ趣旨の不等式を、この章の道具で出しておく。

命題 7.5.2(小さな補正の不等式 ★★★)

3つの系の任意の状態について

S(RB)−S(R)≥S(B)−2S(BC).(7.5.10)S(RB)-S(R)\ge S(B)-2S(BC).\tag{7.5.10}

証明

弱単調性 (7.5.7) を書き直すと S(R)+S(C)≤S(RB)+S(BC)S(R)+S(C)\le S(RB)+S(BC)(第3部第3章の左の形で A=RA=R とおいたもの)。よって S(RB)−S(R)≥S(C)−S(BC)S(RB)-S(R)\ge S(C)-S(BC)。Araki–Lieb の不等式 ∣S(B)−S(C)∣≤S(BC)\lvert S(B)-S(C)\rvert \le S(BC)(第3部第2章)から S(C)≥S(B)−S(BC)S(C)\ge S(B)-S(BC) で、これを入れると式 (7.5.10) になる。

S(BC)S(BC) は、BB と CC の組が純粋な熱場二重状態からどれだけずれているかを測る。ずれが小さく S(BC)≤ϵS(BC)\le\epsilon なら、BB が出るたびに放射のエントロピーは少なくとも S(B)−2ϵS(B)-2\epsilon 増える。Page 時間の後に求められているのは、逆に S(B)S(B) だけ減ることだった。式 (7.5.10) で S(RB)−S(R)=−S(B)S(RB)-S(R)=-S(B) とおくと S(BC)≥S(B)S(BC)\ge S(B) で、BB と CC の組は純粋どころか BB 自身と同じだけ混ざっていなければならない。BB が量子ビットなら S(BC)≥ln⁡2S(BC)\ge\ln2 である。地平面の真空からのずれは、モード1個あたり O(1)\mathcal{O}(1) の大きさで要る。ずれを小さな補正として扱う限り、放射のエントロピーは増え続ける。

例題 7.5.3 12 量子ビットの模型での分け合い ★★

オリジナル全体で N=12N=12 個の量子ビットが Haar 乱数の純粋状態にあるとする。dA≤dBd_A\le d_B の2つに分けたときの部分系のエントロピーの平均は Page の式⟨S⟩=∑j=dB+1dAdB1j−dA−12dB\langle S \rangle =\sum_{j=d_B+1}^{d_Ad_B}\frac1j-\frac{d_A-1}{2d_B}(第2部第3章の式 (2.3.22)。第7部第3章の式 (7.3.6) に再掲)で与えられる。

  1. (1) 1量子ビットのエントロピーの平均 ⟨S(B)⟩\langle S(B) \rangle を求めよ。
  2. (2) k=8k=8 個が放射に出たとき、次の1個 BB と R8R_8 の相互情報量の平均 ⟨I(B;R8)⟩=⟨S(B)⟩+⟨S(R8)⟩−⟨S(R8B)⟩\langle I(B;R_8) \rangle =\langle S(B) \rangle +\langle S(R_8) \rangle -\langle S(R_8B) \rangle を求めよ。
  3. (3) 定理 7.5.1 から、同じ BB が残りの自由度の中の1量子ビット CC と持てる相互情報量の上限を見積もれ(平均の値どうしで見積もってよい)。
  4. (4) BB が地平面の真空の要求 I(B;C)=2ln⁡2I(B;C)=2\ln2 を満たすとすると、放射のエントロピーは BB が出たとき少なくともいくら増えるか。命題 7.5.2 を使え。
解答

(1) dA=2d_A=2、dB=211=2048d_B=2^{11}=2048 で ⟨S(B)⟩=∑j=204940961/j−1/4096=0.6928\langle S(B) \rangle =\sum_{j=2049}^{4096}1/j-1/4096=0.6928 nat =0.9995ln⁡2=0.9995\ln2。

(2) 同じ式で ⟨S(R8)⟩=3.9551ln⁡2\langle S(R_8) \rangle =3.9551\ln2(dA=24d_A=2^4、dB=28d_B=2^8)、⟨S(R8B)⟩=2.9889ln⁡2\langle S(R_8B) \rangle =2.9889\ln2(dA=23d_A=2^3、dB=29d_B=2^9)。⟨I(B;R8)⟩=(0.9995+3.9551−2.9889)ln⁡2=1.9657ln⁡2=1.3625\langle I(B;R_8) \rangle =(0.9995+3.9551-2.9889)\ln2=1.9657\ln2=1.3625 nat。ほぼ上限 2ln⁡22\ln2 に達している。

(3) 2⟨S(B)⟩−⟨I(B;R8)⟩=(1.9989−1.9657)ln⁡2=0.0333ln⁡2=0.02312\langle S(B) \rangle -\langle I(B;R_8) \rangle =(1.9989-1.9657)\ln2=0.0333\ln2=0.0231 nat。CC に残っているのは Bell 対の 1.7%1.7\% にすぎない。

(4) I(B;C)=2ln⁡2I(B;C)=2\ln2 は BCBC が純粋で S(BC)=0S(BC)=0、S(B)=ln⁡2S(B)=\ln2 を意味するので、S(R8B)−S(R8)≥ln⁡2S(R_8B)-S(R_8)\ge\ln2。放射のエントロピーは少なくとも ln⁡2\ln2 増える。Page の模型では ⟨S(R9)⟩−⟨S(R8)⟩=−0.9662ln⁡2\langle S(R_9) \rangle -\langle S(R_8) \rangle =-0.9662\ln2 と減っていたので、2つの要求の差は約 1.97ln⁡21.97\ln2 になる。

1 S. D. Mathur (2009), Class. Quantum Grav. 26, 224001.

木下の勉強ステータス

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