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出てくるもの(2):真空を壊した代償

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第5章 ファイアウォール
目次
  1. 落ちる観測者が数える粒子
  2. 青方偏移とファイアウォール
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第5章 §7.5.4 ★★★ 仮定1を捨てて I(B;C)=0I(B;C)=0 にすると、落ちる観測者は1つのモードあたり nˉ(nˉ+2)\bar n(\bar n+2) 個以上の粒子を数える。地平面の近くではそのエネルギーが青方偏移で発散し、ファイアウォールになる

落ちる観測者が数える粒子

AMPS は、3つの仮定の中で仮定1を捨てるのが最も穏当だと論じた。純粋性(仮定3)を保ち、外の場の理論(仮定2)も保つと、定理 7.5.1 から I(B;C)=0I(B;C)=0、つまり ρ^BC=ρ^B⊗ρ^C\hat\rho_{BC}=\hat\rho_B\otimes\hat\rho_C になる。このとき落ちる観測者が何を見るかを計算する。

落ちる観測者が「粒子」と数えるのは、Minkowski 真空を消すモードの量子である。第5部第12章の式から、熱場二重状態 (7.5.2) を消す演算子は

d^=b^−q c^†1−q2,[d^, d^†]=1,d^∣ΨBC⟩=0(7.5.11)\hat d=\frac{\hat b-q\,\hat c^\dagger}{\sqrt{1-q^2}},\qquad \left[\hat d,\,\hat d^\dagger\right]=1,\qquad \hat d| \Psi_{BC} \rangle =0\tag{7.5.11}

である(b^\hat b、c^\hat c は BB、CC の消滅演算子。この形の演算子は Unruh のモードと呼ばれる)。地平面の真空では ⟨d^†d^⟩=0\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle =0 で、落ちる観測者は粒子を見ない。

命題 7.5.3(積の状態での粒子数 ★★★)

ρ^B\hat\rho_B が平均の占有数 nˉ\bar n の熱状態で、ρ^BC=ρ^B⊗ρ^C\hat\rho_{BC}=\hat\rho_B\otimes\hat\rho_C(I(B;C)=0I(B;C)=0)なら、m=⟨c^†c^⟩m=\langle \hat c^\dagger\hat c \rangle とおいて

⟨d^†d^⟩=nˉ(nˉ+m+2)≥nˉ(nˉ+2)(7.5.12)\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle =\bar n(\bar n+m+2)\ge\bar n(\bar n+2)\tag{7.5.12}

が成り立つ。等号は CC が自分の真空(m=0m=0)にあるとき。ρ^C\hat\rho_C も同じ熱状態(m=nˉm=\bar n)なら ⟨d^†d^⟩=2nˉ(nˉ+1)\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle =2\bar n(\bar n+1) である。

証明

(1−q2)d^†d^=b^†b^−qb^†c^†−qc^b^+q2c^c^†(1-q^2)\hat d^\dagger\hat d=\hat b^\dagger\hat b-q\hat b^\dagger\hat c^\dagger-q\hat c\hat b+q^2\hat c\hat c^\dagger。積の状態では ⟨c^b^⟩=⟨c^⟩⟨b^⟩\langle \hat c\hat b \rangle =\langle \hat c \rangle \langle \hat b \rangle で、熱状態は占有数の基底で対角なので ⟨b^⟩=0\langle \hat b \rangle =0。交差の項は消え、⟨c^c^†⟩=m+1\langle \hat c\hat c^\dagger \rangle =m+1 から (1−q2)⟨d^†d^⟩=nˉ+q2(m+1)(1-q^2)\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle =\bar n+q^2(m+1)。nˉ=q2/(1−q2)\bar n=q^2/(1-q^2) から 1/(1−q2)=nˉ+11/(1-q^2)=\bar n+1、q2(nˉ+1)=nˉq^2(\bar n+1)=\bar n なので

⟨d^†d^⟩=(nˉ+1)nˉ+q2(nˉ+1)(m+1)=nˉ(nˉ+1)+nˉ(m+1)=nˉ(nˉ+m+2).\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle =(\bar n+1)\bar n+q^2(\bar n+1)(m+1)=\bar n(\bar n+1)+\bar n(m+1)=\bar n(\bar n+m+2).

m≥0m\ge0 から下界が出る。

この結果の意味はこうである。外の観測者には、BB はどちらの場合も同じ熱状態に見える。外の観測だけでは、BB が CC ともつれているか RR ともつれているかは区別できない。区別がつくのは、地平面の両側にまたがる演算子 d^\hat d を測る落ちる観測者で、彼にとって真空だった状態が、もつれを RR に移したとたんにモード1個あたり nˉ(nˉ+2)\bar n(\bar n+2) 個以上の粒子を含む状態になる。2つの状態の違いを相対エントロピーで測ると、D(∣ΨBC⟩⟨ΨBC∣ ∥ ρ^B⊗ρ^C)=I(B;C)=2S(B)D(| \Psi_{BC} \rangle \langle \Psi_{BC} |\,\|\,\hat\rho_B\otimes\hat\rho_C)=I(B;C)=2S(B) で、捨てた相関の量がそのまま違いの大きさになる(逆の順の D(ρ^B⊗ρ^C ∥ ∣ΨBC⟩⟨ΨBC∣)D(\hat\rho_B\otimes\hat\rho_C\,\|\,| \Psi_{BC} \rangle \langle \Psi_{BC} |) は、純粋状態の台に入らないので +∞+\infty である)。

青方偏移とファイアウォール

粒子の数が O(1)\mathcal{O}(1) でも、それだけでは「壁」にはならない。壁になるのは、その粒子のエネルギーが地平面の近くで大きくなるからである。地平面から固有の距離 ϱ\varrho だけ外で止まっている観測者の固有加速度は c2/ϱc^2/\varrho で、その観測者にとっての局所的な温度は Unruh 温度

Tloc(ϱ)=ℏc2πkBϱ(7.5.13)T_{\mathrm{loc}}(\varrho)=\frac{\hbar c}{2\pi k_{\mathrm B}\varrho}\tag{7.5.13}

である(Tolman の関係で遠方の THT_{\mathrm H} と結ばれる。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第12章)。ν∼0.2\nu\sim0.2 の典型的なモードの量子は、その場所で kBTlock_{\mathrm B} T_{\mathrm{loc}} 程度のエネルギーを持つ。ϱ\varrho を小さくすると、そこに局在したモードの量子のエネルギーは 1/ϱ1/\varrho で大きくなり、エネルギー密度は (kBTloc)4/(ℏc)3∝ϱ−4( k_{\mathrm B} T_{\mathrm{loc}})^4/(\hbar c)^3\propto\varrho^{-4} で増える。地平面の真空ではこれらすべてのモードについて ⟨d^†d^⟩=0\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle =0 が保たれて打ち消しあっているが、Page 時間の後に仮定1を捨てると、地平面のすぐ近くの短い波長のモードまで O(1)\mathcal{O}(1) 個ずつ粒子が現れ、落ちる観測者は地平面で Planck 程度のエネルギーの量子にぶつかる。これがファイアウォールである。

図

図 7.5.4 I(B;C)=0I(B;C)=0 にしたときに落ちる観測者が1つのモードで数える粒子の数(式 (7.5.12))。地平面の真空なら 00(対数の目盛りに乗らない)。振動数の低いモードほど多く、ν=0.2\nu=0.2 で約1個

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ϱ/rs→0\varrho/r_{\mathrm s}\to0(地平面からの距離がブラックホールの大きさより十分小さい) | 証明 証明済み(地平面の近くの計量の Taylor 展開。誤差は (ϱ/rs)2(\varrho/r_{\mathrm s})^2 の程度) | 行き先 近似の数理 第7章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℓP/rs→0\ell_{\mathrm P}/r_{\mathrm s}\to0(計量を古典のまま場だけを量子化する外場近似) | 証明 要確認(重力の量子的なゆらぎを無視する。仮定2そのもの) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 7.5.4 落ちる観測者が見る粒子とその温度 ★★

オリジナル

  1. (1) ν=0.2\nu=0.2 のモードについて、I(B;C)=0I(B;C)=0 で CC も同じ熱状態のときの ⟨d^†d^⟩\langle \hat d^\dagger\hat d \rangle と、CC が真空のときの値を求めよ。
  2. (2) 式 (7.5.11) の d^\hat d が ∣ΨBC⟩| \Psi_{BC} \rangle を消すことを、∣ΨBC⟩| \Psi_{BC} \rangle の係数 cn=1−q2 qnc_n=\sqrt{1-q^2}\,q^n で確かめよ。
  3. (3) 地平面から ϱ=1 fm\varrho=1\,\mathrm{fm} と ϱ=ℓP=1.616×10−35 m\varrho=\ell_{\mathrm P}=1.616\times10^{-35}\,\mathrm m の所の局所的な温度 (7.5.13) を求めよ。
解答

(1) nˉ=0.3978\bar n=0.3978。CC も熱状態なら 2nˉ(nˉ+1)=2×0.3978×1.3978=1.1122\bar n(\bar n+1)=2\times0.3978\times1.3978=1.112、CC が真空なら nˉ(nˉ+2)=0.3978×2.3978=0.954\bar n(\bar n+2)=0.3978\times2.3978=0.954。どちらでも落ちる観測者はこのモードに1個程度の粒子を見る。

(2) b^∣ΨBC⟩=∑ncnn∣n−1⟩B∣n⟩C\hat b| \Psi_{BC} \rangle =\sum_nc_n\sqrt n| n-1 \rangle _B| n \rangle _C、c^†∣ΨBC⟩=∑mcmm+1∣m⟩B∣m+1⟩C\hat c^\dagger| \Psi_{BC} \rangle =\sum_mc_m\sqrt{m+1}| m \rangle _B| m+1 \rangle _C。後者で m=n−1m=n-1 とおくと ∑ncn−1n∣n−1⟩B∣n⟩C\sum_nc_{n-1}\sqrt n| n-1 \rangle _B| n \rangle _C。cn=q cn−1c_n=q\,c_{n-1} なので b^∣ΨBC⟩=q c^†∣ΨBC⟩\hat b| \Psi_{BC} \rangle =q\,\hat c^\dagger| \Psi_{BC} \rangle、つまり d^∣ΨBC⟩=0\hat d| \Psi_{BC} \rangle =0。交換関係は、BB と CC の演算子が交換することと [c^†, c^]=−1\left[\hat c^\dagger,\,\hat c\right]=-1 から [d^, d^†]=([b^, b^†]+q2[c^†, c^])/(1−q2)=(1−q2)/(1−q2)=1\left[\hat d,\,\hat d^\dagger\right]=\bigl(\left[\hat b,\,\hat b^\dagger\right]+q^2\left[\hat c^\dagger,\,\hat c\right]\bigr)/(1-q^2)=(1-q^2)/(1-q^2)=1。

(3) ℏc/(2πkB)=3.644×10−4 K m\hbar c/(2\pi k_{\mathrm B})=3.644\times10^{-4}\,\mathrm{K\,m} なので、ϱ=10−15 m\varrho=10^{-15}\,\mathrm m で Tloc=3.64×1011 KT_{\mathrm{loc}}=3.64\times10^{11}\,\mathrm K(約 31 MeV31\,\mathrm{MeV})、ϱ=ℓP\varrho=\ell_{\mathrm P} で Tloc=2.25×1031 KT_{\mathrm{loc}}=2.25\times10^{31}\,\mathrm K。地平面に近づくほど、捨てた相関の代償は高いエネルギーの量子として現れる。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

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