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出てくるもの(3):逃げ道の分類

2026年10月15日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第5章 ファイアウォール
目次
  1. 捨てる仮定で分ける
  2. 相補性
  3. ER = EPR
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第5章 §7.5.5 ★★ どの仮定を捨てるかで立場を分ける。相補性と ER = EPR は、定理を当てるときの前提「RR と CC は別々の系」を疑う立場として読める

捨てる仮定で分ける

矛盾 (7.5.9) は、定理 7.5.1 とその前提が正しい限り避けられない。逃げ道は、3つの仮定のどれかか、定理を当てるときに置いた前提のどれかを捨てることである。主な立場を表 7.5.1 にまとめる。

表 7.5.1 AMPS の矛盾からの逃げ道
立場捨てるもの一夫一婦制の不等式との関係
情報は消える仮定3(純粋性)I(B;R)=0I(B;R)=0 のまま。Hawking(1976)の立場。量子力学のユニタリ性を手放す
ファイアウォール仮定1(地平面の真空)I(B;C)=0I(B;C)=0。等価原理が地平面で破れる(7.5.4節)
新しい非局所な力学仮定2(外は場の量子論)情報が地平面から巨視的に離れた所で放射へ移る。不等式は使えるが、BB の状態が仮定どおりでない
相補性・ER = EPR「RR と CC は別々の系」CC が RR の一部の言い換えなら、不等式の RR と CC は重なっていて、定理は当てられない

相補性

AMPS より前に、Susskind・Thorlacius・Uglum はブラックホールの相補性を提案していた1L. Susskind, L. Thorlacius and J. Uglum (1993), Phys. Rev. D 48, 3743.下の脚注へ。外の観測者の記述(情報は放射に出る)と落ちる観測者の記述(地平面では何も起きない)は、どちらもそれだけで矛盾がなく、1人の観測者が両方を確かめることはできないので、両立してよい、という考えである。AMPS の議論に当てはめると、BB と RR のもつれを確かめられるのは外にいる観測者だけで、BB と CC のもつれを確かめられるのは地平面を越えた観測者だけなので、1人の観測者が図 7.5.2 の点 (2,2)(2,2) を実際に測ることはない、という主張になる。

AMPS はこれに対し、外の観測者がまず RR を集めて BB と最大にもつれた部分を取り出し、そのあとで飛び込んで BB と CC を測ればよいと反論した。Harlow と Hayden は、この取り出しに必要な量子計算の時間が、ブラックホールのエントロピーについて指数関数的に長くなるという議論を出した2D. Harlow and P. Hayden (2013), J. High Energy Phys. 06, 085.下の脚注へ。蒸発の時間は SBH/kBS_{\mathrm{BH}}/ k_{\mathrm B} の 3/23/2 乗に比例するだけなので、取り出しが終わる前にブラックホールは蒸発してしまう。ただし、これは計算の困難さについての予想に基づく議論で、矛盾そのものを解消したわけではない。

ER = EPR

Maldacena と Susskind は、もつれた2つのブラックホールは Einstein–Rosen 橋(ワームホール)でつながっている、という対応を提案した3J. Maldacena and L. Susskind (2013), Fortschr. Phys. 61, 781.下の脚注へ。名前は、Einstein–Rosen 橋の論文と Einstein–Podolsky–Rosen のもつれの論文が同じ 1935 年に出たことによる。この見方では、Page 時間の後の放射 RR とブラックホールはつながっていて、内側の相手 CC は RR の自由度の複雑な組み合わせとして表される。CC が RR と独立な系でなければ、I(B;R)I(B;R) と I(B;C)I(B;C) は同じもつれを2回数えていることになり、定理 7.5.1 の前提(全体の Hilbert 空間が RR と CC に分かれる)が成り立たない。この主張は、何を仮定すれば正確に言えるのかがまだ決まっていない。島の公式(第7部第7章の式 (7.7.10)、第7部第7章)は、Page 時間の後に内部の一部(島)が放射の側に属するとみなすと Page 曲線が出ることを示し、この見方に半古典的な根拠を与えた。ただし、放射から内部の情報を取り出す具体的な手順はまだ分かっていない。

例題 7.5.5 相手が放射の一部なら矛盾しない ★★

オリジナル4つの量子ビット R′R'、CC、BB、XX が ∣0⟩R′⊗∣Φ+⟩BC⊗∣0⟩X| 0 \rangle _{R'}\otimes| \Phi^+ \rangle _{BC}\otimes| 0 \rangle _X にあるとする。

  1. (1) R=R′CR=R'C(CC を放射の一部とみなす)とおいて I(B;R)I(B;R) と I(B;C)I(B;C) を求め、和が 2S(B)2S(B) を超えることを確かめよ。
  2. (2) これが定理 7.5.1 に反しない理由を述べよ。
  3. (3) RR と CC が重なるとき、一般に成り立つ不等式 I(B;R′C)≥I(B;C)I(B;R'C)\ge I(B;C) を相対エントロピーの単調性から説明せよ。
解答

(1) ρ^BR′C=∣0⟩⟨0∣R′⊗∣Φ+⟩⟨Φ+∣BC\hat\rho_{BR'C}=| 0 \rangle \langle 0 |_{R'}\otimes| \Phi^+ \rangle \langle \Phi^+ |_{BC} は純粋で S(BR′C)=0S(BR'C)=0、S(R′C)=S(C)=ln⁡2S(R'C)=S(C)=\ln2、S(B)=ln⁡2S(B)=\ln2。I(B;R)=ln⁡2+ln⁡2−0=2ln⁡2I(B;R)=\ln2+\ln2-0=2\ln2。I(B;C)=2ln⁡2I(B;C)=2\ln2 も同じ。和は 4ln⁡2>2S(B)=2ln⁡24\ln2>2S(B)=2\ln2 である。

(2) 定理は互いに重ならない3つの系 RR、BB、CC について述べている。ここでは CC が RR の一部で、I(B;R)I(B;R) と I(B;C)I(B;C) は同じ Bell 対を2回数えている。3つの互いに重ならない系 R′R'、BB、CC で書き直すと I(B;R′)=0I(B;R')=0、I(B;C)=2ln⁡2I(B;C)=2\ln2 で、和は 2S(B)2S(B) に等しく、不等式は等号で成り立つ。

(3) I(B;R′C)=D(ρ^BR′C ∥ ρ^B⊗ρ^R′C)I(B;R'C)=D(\hat\rho_{BR'C}\,\|\,\hat\rho_B\otimes\hat\rho_{R'C}) の2つの状態に Tr⁡R′\operatorname{Tr}_{R'} を当てると I(B;C)I(B;C) の2つの状態になる。単調性から I(B;C)≤I(B;R′C)I(B;C)\le I(B;R'C)。CC が RR の一部なら、BB と CC のもつれは自動的に BB と RR の相関に含まれる。ER = EPR の見方は、内側の相手が放射の自由度に「含まれている」とすることで、矛盾をこの形に読み替える。

1 L. Susskind, L. Thorlacius and J. Uglum (1993), Phys. Rev. D 48, 3743.

2 D. Harlow and P. Hayden (2013), J. High Energy Phys. 06, 085.

3 J. Maldacena and L. Susskind (2013), Fortschr. Phys. 61, 781.

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