相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部 第4章 §7.4.4 ★★ 日記を AB に書き込む操作を、Bob の手元にもつれを持つ符号とみなし、C の消失を直せる条件として読む。k 量子ビットは下限で、若いブラックホールの遅れ k+n/2 は量子 Singleton 上界の等号である
符号としての U^
日記 A の状態 ∣ψ⟩A を、∣ψ⟩A↦U^(∣ψ⟩A⊗∣Φ⟩B1E⊗∣0⟩B2) によって C∪L∪E に書き込む写像を考える。これは k 個の論理量子ビットを書き込む量子誤り訂正の符号で、受け手の手元にあらかじめ E を置いておく形をしている(もつれを補助に使う符号)。「残ったブラックホール C が手に入らない」ことは C の消失で、第3部第9章では消失を直せる条件が I(R;消失した部分)=0 だった。式 (7.4.3) はその条件そのものである。Hayden–Preskill の問いは、「乱数の符号は、どれだけ大きな消失を直せるか」と言い換えることができる。
k 量子ビットは下限
どんなユニタリ U^ を使っても、s<k では日記を取り戻すことができない。初めは R と E は独立なので I(R;E)=0 で、相互情報量の連鎖律と、条件付きエントロピーの大きさ ∣S(L∣X)∣≤S(L)(Araki–Lieb の不等式。第3部第2章)から
I(R;EL)=I(R;E)+I(R;L∣E)=S(L∣E)−S(L∣RE)≤2S(L)≤2sln2(7.4.15)
を得る。取り戻すには I(R;EL)=2kln2 が要るので、s≥k が必要である。古いブラックホールの乱数のユニタリは s=k+c でこの下限に達し、c の分だけ誤りが指数関数的に小さくなる。1量子ビットの放射で 2ln2 の相関を運べるのは、手元の E を補助に使っているからで、超高密度符号で1量子ビットが2ビットを運んだ(第3部第6章)のと同じ勘定である。
若いブラックホールと量子 Singleton 上界
若いブラックホール(m=0)では補助の E が無く、U^ は k 個の論理量子ビットを n+k 個の物理量子ビットに書き込む普通の符号である。第3部第9章の量子 Singleton 上界(第3部第9章)は、[[Nphys,k]] の符号が t 個の量子ビットの消失を直すには Nphys−k≥2t が要ることを言う。消失するのは C の n+k−s 個なので、
(n+k)−k≥2(n+k−s)⟺s≥k+2n(7.4.16)
が必要で、式 (7.4.12) の m=0 の立ち上がりと一致する。乱数の符号は、大きな次元では量子 Singleton 上界をほぼ等号で満たす。古いブラックホールと若いブラックホールの差 n/2 は、補助のもつれ E の有無の差である。
例題 7.4.4 下限にどれだけ近いか ★★
オリジナル古いブラックホールに k=3 量子ビットの日記を入れる。
- s=2 で取り戻せないことを、式 (7.4.15) で示せ。
- s=3 と s=4 のとき、定理 7.4.2 の上界を求めよ。
- 若いブラックホール(n=10)なら、量子 Singleton 上界からいくつ以上の s が必要か。
解答
(1) I(R;EL)≤2sln2=4ln2<6ln2=2kln2 なので、R との相関の少なくとも 2ln2 は C に残る。
(2) 古いブラックホールでは dAdC/(dEdL)=4k−s。s=3 で ln(1+1)=ln2=0.693 nat、s=4 で ln(1+41)=0.2231 nat。下限の s=k では相関の6分の1(2kln2=4.16 nat のうち 0.69 nat)が残りうるが、1量子ビット足すと上界は約3分の1になる。
(3) s≥k+n/2=3+5=8。古いブラックホールの約 3 に比べて 5 量子ビット多く要る。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com