解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第1章 §1.1.3 ★★★ L↔H と U↔F が同じ図の上の同じ操作であることを先に見る
傾きと切片で曲線を表し直す
1変数の関数 f(v) が下に凸(f′′(v)>0)だとする。グラフの各点には接線が1本引け、凸なので傾き p=f′(v) と点 v は1対1に対応する。傾き p の接線は縦軸を切片 f(v)−pv で切る。この切片の符号を変えたもの
f∗(p)=pv−f(v)p=f′(v)=vmax[pv−f(v)](1.1.3)
を f の Legendre 変換と呼ぶ。2つ目の等号は、pv−f(v) を v で微分して 0 とおくと p=f′(v) が出ること、凸なのでそこが最大であることによる。曲線は「各点の座標 (v,f(v)) の集まり」としても「各傾きの接線の集まり」としても表すことができ、Legendre 変換は前者から後者への持ち替えにあたる(図 1.1.3)。

図 1.1.3 f(v)=v2/2 の点 v=1 での接線(破線)。傾きは p=1、縦軸の切片は −f∗(p)=−1/2。傾き p を決めると接線が1本決まり、その切片から f∗(p) を読み取ることができる。
力学では f に L を、v に速度 q˙ を当てはめる。傾き p=∂q˙∂L が正準運動量で、
H(q,p)=pq˙−L(q,q˙)p=∂L/∂q˙(1.1.4)
がハミルトニアンである(q は変換のあいだ止めておく)。L=21mq˙2−V(q) なら p=mq˙, H=2mp2+V(q) となり、H は全エネルギーを運動量で書いたものになる。
熱力学では f に内部エネルギー U(S) を、v にエントロピー S を当てはめる(体積は止めておく)。傾き ∂S∂U が温度 T で、Helmholtz の自由エネルギーは
F(T)=U−TST=∂U/∂S(1.1.5)
である。式 (1.1.3) と比べると F=−U∗(T) で、全体の符号が逆になっている。熱力学では切片そのものを、力学では切片の符号を変えたものを使う、という慣習の違いにすぎず、接線の傾きで曲線を表し直すという操作は同じである。この対応は 第3部第4章 で、Gibbs のエネルギー G まで含めて扱う。
Legendre 変換をもう一度当てると元に戻る。f∗ の傾きは dpdf∗=v で、f∗∗(v)=pv−f∗(p) は f(v) に一致する。力学ではこれが ∂p∂H=q˙(Hamilton 方程式の片方)にあたり、熱力学では −∂T∂F=S にあたる。H を q˙ でなく p の関数として書く理由、単なる変数の置き換えでは情報が落ちる理由は 第1部第7章 で扱う。
例題 1.1.3 相対論的粒子の H を Legendre 変換で求める ★★★
オリジナル相対論的な自由粒子の Lagrangian は L=−mc21−v2/c2 である(この L を選ぶ理由は 第2部第3章 で扱う)。1次元で考える。
- (1) 正準運動量 p=∂v∂L を求めよ。
- (2) H=pv−L を p の関数として表せ。
- (3) dpdH=v を確かめよ。
- (4) 電子(mc2=0.511MeV)が p=mc を持つとき、H と速さ v を求めよ。
解答
(1) γ=1/1−v2/c2 とおくと p=∂v∂L=−mc2⋅1−v2/c2−v/c2=γmv。L は v について下に凸(∂v∂p=γ3m>0)なので、v と p は1対1に対応する。
(2) H=pv−L=γmv2+γmc2=γm(v2+c2(1−c2v2))=γmc2。p=γmv から γ2=1+m2c2p2 なので
H(p)=p2c2+m2c4.
p<mc では H=mc2+2mp2−8m3c2p4+⋯ と収束する級数に展開でき、第2項が非相対論の運動エネルギーである。第1項の mc2 は、L の中の定数 −mc2 が Legendre 変換で H に現れたもので、静止した粒子の持つエネルギーにあたる。
(3) dpdH=p2c2+m2c4pc2=γmc2γmvc2=v。もう一度 Legendre 変換すると vp−H(p) は L に戻る。
(4) H=2mc2=1.414×0.511≈0.723MeV。v=Hpc2=2c≈0.707c。
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