解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第1章 §1.1.6 ★★ Newton の運動方程式・作用反作用・熱力学の関係式・交換関係が、この巻のどの式にあたるか
この節では、解析力学を使わずに習う形と、この巻の形を式で並べる。
運動方程式とエネルギーの保存
力学の授業では、運動方程式 mx¨=−dxdV から出発する。この巻では L=21mx˙2−V(x) を選び、Euler–Lagrange 方程式 (1.1.2) を当てる。∂x˙∂L=mx˙, ∂x∂L=−dxdV なので、両者は同じ式である。
エネルギーの保存は、授業では運動方程式の両辺に x˙ を掛けて
mx¨x˙+dxdVx˙=dtd(21mx˙2+V)=0
と示す。この巻では、L が時刻 t をあらわに含まないこと(時間の並進で変わらないこと)から、その生成子である H が保存する、と読む(1.1.4節の表の3行目)。x˙ を掛けるという手順が、時間の並進という変換を選ぶことにあたる。
作用反作用と運動量の保存
2つの物体の運動量の和が保存することは、授業では作用反作用の法則から示す。物体1が物体2から受ける力と、物体2が物体1から受ける力が逆向きで同じ大きさなので、2つの運動方程式を足すと力が打ち消し合う。この巻では、2物体の位置エネルギーが差 x1−x2 だけに依ることを、2物体を同時に同じだけずらす並進で L が変わらない、と読み、Noether の定理から p1+p2 の保存を出す。作用反作用の法則は、位置エネルギーが差だけに依ることの結果として出てくる(下の例題)。
熱力学の関係式と交換関係
熱力学の授業では F=U−TS を定義として置き、dF=−SdT−PdV を導く。この巻では、これを U(S,V) を S について Legendre 変換したものと読む(式 (1.1.5))。−∂T∂F=S は、Legendre 変換を2回当てると元に戻ることの言い換えである。
量子力学の授業では、運動量を演算子 p^=−iℏdqd に置き換えるところから始める。このとき任意の関数 ψ(q) について
[q^,p^]ψ=q(−iℏdqdψ)−(−iℏdqd(qψ))=iℏψ
となり、交換関係 [q^,p^]=iℏ が出る。この巻では、これを Poisson 括弧 {q,p}=1 を [⋅,⋅]/(iℏ) に置き換えたものと読む(第4部第1章)。何をどこまで置き換えてよいのか、置き換えで決まらない部分(演算子の並べ方)は何か、という問いがそこで改めて立つ。
対応をまとめると次のようになる。
| 授業で習った形 | この巻での読み方 |
| mx¨=−dxdV | L=21mx˙2−V の Euler–Lagrange 方程式 |
| 両辺に x˙ を掛けてエネルギー保存 | 時間の並進で L が変わらない ⇒ 生成子 H が保存 |
| 作用反作用 ⇒ 運動量保存 | 同時並進で L が変わらない ⇒ p1+p2 が保存 |
| F=U−TS, dF=−SdT−PdV | U(S,V) の S についての Legendre 変換 |
| p^=−iℏdqd, [q^,p^]=iℏ | {q,p}=1 の Poisson 括弧を交換子に置き換える |
例題 1.1.6 2物体の並進対称性と作用反作用 ★★
オリジナル直線上の2物体(質量 m1, m2、位置 x1, x2)が、差だけに依る位置エネルギー U(x1−x2) で相互作用している。L=21m1x˙12+21m2x˙22−U(x1−x2) とする。
- (1) 同時並進 δx1=δx2=ϵ で L が変わらないことを示し、式 (1.1.7) から保存量を求めよ。
- (2) 物体1が受ける力 −∂x1∂U と物体2が受ける力 −∂x2∂U の和が 0 であることを示せ。
- (3) m1=1kg の物体が v1=2ms−1 で、静止している m2=3kg の物体に弾性衝突した。全運動量と重心の速さを求め、衝突後の速度 v1′=−1ms−1, v2′=1ms−1 が全運動量と運動エネルギーを保つことを確かめよ。
解答
(1) x1−x2 は (x1+ϵ)−(x2+ϵ)=x1−x2 で変わらず、速度も変わらないので L は変わらない。K1=K2=1 なので Q=p1+p2=m1x˙1+m2x˙2、全運動量が保存する。
(2) u=x1−x2 とおくと ∂x1∂U=U′(u), ∂x2∂U=−U′(u)。よって2つの力は −U′(u) と +U′(u) で、和は 0 である。作用反作用の法則は、位置エネルギーが差だけに依ること、つまり同時並進で L が変わらないことの結果として出てくる。
(3) 全運動量は 1×2+3×0=2kgms−1、重心の速さは 2/(1+3)=0.5ms−1。衝突後の全運動量は 1×(−1)+3×1=2kgms−1、運動エネルギーは衝突前が 21×1×22=2J、衝突後が 21×1×12+21×3×12=2J で、どちらも保たれる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com