解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第3章 §2.3.6 ★★ L に −V や −qϕ+qv⋅A を足すと、運動方程式は dtd(γmv)= 力。一様な力では双曲線の世界線、磁場では周期が γ 倍に伸びた円運動になる
一様な力と双曲運動
自由粒子の L にポテンシャル −V(x) を足した L=−mc2/γ−V を考える。Euler–Lagrange 方程式は
dtd(γmv)=−∇V(2.3.19)
で、左辺は運動量の時間変化、右辺は力である。L が t によらないので E=γmc2+V が保存する。ただし −V は Lorentz 変換で不変な形をしていないので、この L は「ある慣性系で決めた静的な力」を表すだけである。Lorentz 変換で不変な相互作用の代表は次の小節の電磁場である。
一様な力 F(V=−Fx)で、t=0 に静止していた粒子を考える。式 (2.3.19) から γmv=Ft なので
v(t)=1+(Ft/mc)2Ft/m,x(t)=Fmc2(1+(mcFt)2−1)(2.3.20)
である(x は v を積分した)。x+mc2/F と ct は (x+mc2/F)2−c2t2=(mc2/F)2 を満たすので、世界線は (ct,x) 平面の双曲線で、これを双曲運動と呼ぶ。速さは c に近づくが越えない。エネルギーの保存 γmc2−Fx=mc2 からも同じ x が出る。Ft≪mc では x≈Ft2/(2m) で Newton 力学の等加速度運動に戻る。双曲運動は、一様に加速する観測者の座標(Rindler 座標)として一般相対論の等価原理の章で使う(第2部第11章)。

図 2.3.3 一様な力 F のもとで静止から動き出す粒子。点線は式 (2.3.20) の双曲運動(厳密)、実線は Newton 力学の等加速度運動 x=Ft2/(2m), v=Ft/m(遅い極限の近似)。t≈0.5mc/F までは両者がほぼ重なり、その後、相対論の速さは c(破線)に近づく
例題 2.3.6 一様な電場で加速される電子 ★★
オリジナル電子(mc2=0.511MeV, m=9.109×10−31kg)が、強さ 1.00MVm−1 の一様な電場の中で静止から加速される。力の大きさは F=e×1.00×106Vm−1=1.602×10−13N である。
- (1) 時間の尺度 mc/F と長さの尺度 mc2/F を求めよ。
- (2) 速さが 0.9c になる時刻と、それまでに進む距離を求めよ。
- (3) Newton 力学で同じ速さになる時刻と比べよ。
解答
(1) mc/F=9.109×10−31×2.998×108/1.602×10−13=1.705×10−9s。mc2/F は「静止エネルギーを1 m あたりの仕事で割ったもの」で、0.511MeV/(1.00MeVm−1)=0.511m。
(2) v=0.9c では γ=1/0.19=2.294、γv/c=2.065。γmv=Ft から t=2.065mc/F=3.52×10−9s。距離はエネルギーの保存 Fx=(γ−1)mc2 から x=1.294×0.511m=0.661m。
(3) Newton 力学では t=0.9mc/F=1.53×10−9s で、相対論の 2.3 倍短い。速さが光速に近づくと、同じ力で運動量は同じだけ増えても速さはほとんど増えなくなる。
電磁場の中の粒子
電磁場の中の荷電粒子(電荷 q)では、第2部第2章と同じ相互作用の項を足す(第2部第2章)。
L=−mc21−c2v2−qϕ(x,t)+qv⋅A(x,t),S=−mc∫ds−q∫Aμdxμ(2.3.21)
で、4元ポテンシャルは Aμ=(ϕ/c,A)、Aμ=(ϕ/c,−A) である。Aμdxμ=ϕdt−A⋅dx なので2つの書き方は一致する。第2項 −q∫Aμdxμ は世界線に沿った線積分で、Lorentz 変換で不変であり、径数の取り替えでも変わらない。
正準運動量は pcan=γmv+qA で、第2部第2章と同じく運動学的運動量 γmv とは qA だけ違う。Euler–Lagrange 方程式は
dtd(γmv+qA)=−q∇ϕ+q∇(v⋅A)
で、dtdA=∂tA+(v⋅∇)A と ∇(v⋅A)−(v⋅∇)A=v×(∇×A) を使うと
dtd(γmv)=q(E+v×B),E=−∇ϕ−∂tA,B=∇×A(2.3.22)
になる。Lorentz 力の式は Newton 力学のときと同じ形で、左辺の運動量だけが γmv に替わる。径数を τ に選んで作用 (2.3.21) の Euler–Lagrange 方程式を書くと、同じ式が4元の形
mdτduμ=qFμνuν,Fμν=∂μAν−∂νAμ(2.3.23)
で出る。μ=0 の成分は dtd(γmc2)=qE⋅v(電場がする仕事率)、μ=i の成分は式 (2.3.22) である(F0i=−Ei/c の約束で確かめられる)。Fμν を場の側から作用で扱うのは第2部第6章である(第2部第6章)。
一様な磁場 B だけがあるとき、Lorentz 力は速度に垂直で仕事をしないので γ は一定で、式 (2.3.22) は γmdtdv=qv×B となる。これは質量を γm に替えた Newton 力学のサイクロトロン運動で、角振動数は
ω=γm∣q∣B,r=∣q∣B∣p∣(磁場に垂直な運動)(2.3.24)
である。速い粒子ほど回る周期が長くなる。
例題 2.3.7 磁場の中を回る電子 ★
オリジナル運動エネルギー E−mc2=1.000MeV の電子(mc2=0.511MeV, e/m=1.7588×1011Ckg−1)が、B=0.100T の一様な磁場に垂直に入る。
- (1) γ と pc を求めよ。
- (2) 角振動数 ω と半径 r を求めよ。
- (3) Newton 力学の式 ω0=eB/m と比べよ。
解答
(1) γ=1+1.000/0.511=2.957。pc=E2−m2c4=(1.511)2−(0.511)2=1.422MeV。
(2) ω=eB/(γm)=1.7588×1010/2.957=5.95×109s−1。r=p/(eB)=pc/(ecB) で、pc/e=1.422×106V なので r=1.422×106/(2.998×108×0.100)=4.74×10−2m。
(3) ω0=1.76×1010s−1 で、ω はその 1/γ=0.338 倍。一定の周波数の電場で加速し続ける装置(サイクロトロン)が、電子では γ がすぐ大きくなって同期がずれ、使えなくなる理由がこれである。
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