解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第7章 §2.7.4 ★★★ 並進の Noether 流がエネルギー密度・エネルギーの流れ・運動量密度を1つのテンソルにまとめる
正準エネルギー運動量テンソル
L が x を陽に含まないとき、時空の並進 (2.7.5) は Λμ=−bμL の準対称性だった。定理 2.7.2 の流れは
jμ=a∑∂(∂μϕa)∂L(−bν∂νϕa)+bμL=−bνTμν,
Tμν:=a∑∂(∂μϕa)∂L∂νϕa−δμνL(2.7.16)
になる。bν は4つの方向を自由に選べるので、ν ごとに保存則が1本ずつ、合わせて4本出る。
∂μTμν=0(ν=0,1,2,3).(2.7.17)
Tμν を正準エネルギー運動量テンソルと呼ぶ。L が x を陽に含むときは、同じ計算で ∂μTμν=−∂L/∂xν∣陽 となり、陽に含む方向の保存則だけが壊れる(例題 2.7.1 の (3))。
各成分の意味
ν=0(時間の並進)の流れの時間成分は、∂/∂(∂0ϕa)=cπa、∂0=c1∂t から
T00=a∑πa∂tϕa−L=:H(2.7.18)
で、場の Hamiltonian 密度そのものである(第2部第5章)。粒子の H=∑ipiq˙i−L が時刻の並進の保存量だったことの場の版になっている。ν=i(空間の並進)の時間成分は T0i=c∑aπa∂iϕa である。全体の量を
Pν:=c1∫T0νd3x,P0=cE,E=∫Hd3x,P=−∫a∑πa∇ϕad3x(2.7.19)
とまとめると、Pμ=(E/c,P) は場の4元運動量で、E が場のエネルギー、P が場の運動量である(Pi=−Pi)。P の負号は、場の形を +x の向きにずらすと δϕ=−ϵ∂xϕ となることの反映で、粒子の ∑ipiKi と同じ形である。
添字を Tμν=Tμληλν と上げ、エネルギー密度 u、エネルギーの流れの密度 S、運動量密度 g を
u=T00,Si=cTi0,gi=c1T0i(2.7.20)
で定めると、ν=0 の保存則は ∂tu+∇⋅S=0(エネルギーの連続の式)、ν=i の保存則は ∂tgi+∑j∂jTji=0(運動量の連続の式)になる。Tji は「i 成分の運動量が j の向きに流れる密度」で、応力(圧力)にあたる。
実スカラー場 L=21∂μϕ∂μϕ−21κ2ϕ2 では、π=∂tϕ/c2 で
u=21(c2(∂tϕ)2+(∇ϕ)2+κ2ϕ2),S=−∂tϕ∇ϕ,g=−c2∂tϕ∇ϕ=c2S(2.7.21)
となる。u は3つの2乗の和で負にならない。Tμν はこの場合 μ,ν について対称で、g=S/c2(エネルギーの流れと運動量密度が比例する)はその表れである。
角運動量と対称性
Lorentz 変換(空間の回転とブースト)にも Noether の定理を当てることができ、保存する流れは Mμνλ=xνTμλ−xλTμν の形になる。∂μMμνλ=Tνλ−Tλν なので、角運動量の保存には Tμν が対称であることが要る。スピンを持つ場(電磁場など)では正準テンソル (2.7.16) が対称にならず、例題 2.7.2 の自由度で対称に直す必要がある(2.7.5節)。ブーストの保存量は、粒子の Galilei 変換の場合(第1部第10章)と同じく、エネルギーの重心が等速で動くことを述べる。
例題 2.7.4 エネルギーは群速度で流れる ★★★
オリジナル実スカラー場の平面波 ϕ=Acos(kx−ωt)、ω=ck2+κ2 について次を求めよ。
- (1) u, Sx, gx の時間平均 ⟨u⟩, ⟨Sx⟩, ⟨gx⟩。
- (2) エネルギーが流れる速さ ⟨Sx⟩/⟨u⟩ が群速度 dω/dk に等しいことを示し、k=κ のときの値を答えよ。
解答
(1) θ=kx−ωt とおくと ∂tϕ=Aωsinθ, ∂xϕ=−Aksinθ。式 (2.7.21) から
u=2A2[(c2ω2+k2)sin2θ+κ2cos2θ],Sx=−∂tϕ∂xϕ=A2kωsin2θ,gx=c2Sx.
sin2 と cos2 の時間平均はどちらも 21 で、κ2=ω2/c2−k2 を使うと
⟨u⟩=4A2(c2ω2+k2+κ2)=2c2A2ω2,⟨Sx⟩=2A2kω,⟨gx⟩=2c2A2kω.
(2) ⟨Sx⟩/⟨u⟩=c2k/ω。分散関係を微分すると dω/dk=c2k/c2(k2+κ2)=c2k/ω で一致する。位相の進む速さ ω/k は c より大きいが、エネルギーは c より遅い群速度で運ばれる(図 2.7.2)。k=κ では ω=2cκ、dω/dk=c/2≈0.707c。式 (2.7.13) の電荷の流れの速さも同じ c2k/ω で、量子論では c2k/ω=c2p/E が相対論的な粒子の速さになる。

図 2.7.2 質量のあるスカラー場の分散関係(k=κ の点で接線と原点からの直線を引いた)。エネルギーと電荷は接線の傾き(群速度)で流れ、位相は原点からの直線の傾き(位相速度)で進む。点線の ω=ck は質量のない場合で、群速度はいつも c より小さい
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