解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第14章 §2.14.2 ★★ 局所慣性系で Riemann テンソルを計量の2階微分だけで書き、対称性・独立な成分の数・2つの Bianchi 恒等式を読み取る
局所慣性系での形
添字を全部下げた Rρσμν=gρλRλσμν の性質を調べる。テンソルの等式は1つの座標で示せばどの座標でも成り立つので、点 P の局所慣性系の座標を使う。P では Γ=0 なので式 (2.14.3) の ΓΓ の項が消え、∂g=0 なので gρλ∂μΓλνσ=∂μ(gρλΓλνσ) である。添字を下げた Christoffel 記号 21(∂νgρσ+∂σgρν−∂ρgνσ) を微分して整理すると、
Rρσμν(P)=21(∂μ∂σgρν+∂ν∂ρgσμ−∂μ∂ρgσν−∂ν∂σgρμ)(2.14.6)
を得る。Riemann テンソルは、1点で見れば計量の2階微分の組み合わせである。
定理 2.14.3(Riemann テンソルの対称性 ★★)
Rρσμν=−Rρσνμ,Rρσμν=−Rσρμν,Rρσμν=Rμνρσ,Rρσμν+Rρμνσ+Rρνσμ=0(第1 Bianchi 恒等式).(2.14.7)(2.14.8)
証明
式 (2.14.6) で、μ↔ν の入れ替えは第1項と第4項、第2項と第3項を入れ替えて符号を変える。ρ↔σ も同じ(g の対称性と、偏微分が入れ替えられることを使う)。組 (ρσ) と (μν) の入れ替えは第1項と第2項をそれぞれ自分に、第3項と第4項をそれぞれ自分に移す。第1 Bianchi 恒等式は、(σ,μ,ν) を巡回させた3つの和をとると12項が2つずつ打ち消し合う。どれも P で成り立つテンソルの等式なので、どの座標でも成り立つ。第1 Bianchi 恒等式は Γ の対称性(捩れが無いこと)に、2番目の反対称性は ∇g=0 に由来する。
独立な成分の数
n 次元で Rρσμν は反対称な組 [ρσ] と [μν] の対称な行列とみなせる。反対称な組は N=n(n−1)/2 通りで、対称な N×N 行列の成分は N(N+1)/2 個ある。ここから第1 Bianchi 恒等式の分を引く。4つの添字がすべて異なる場合だけが新しい条件になり、その数は4つを選ぶ組み合わせ (4n) である。整理すると
2N(N+1)−(4n)=12n2(n2−1)(2.14.9)
で、n=2,3,4 でそれぞれ 1, 6, 20 になる。
この数は、第2部第13章の式 (2.13.20) の直後で、座標で消せない2階微分の数として数えたものと一致する。4次元の 20 を、局所慣性系をとる自由度から数え直すと次のようになる。1点の計量の2階微分 ∂λ∂κgμν は対称な組 (λκ) と (μν) でそれぞれ 10 通りずつ、合わせて 100 個ある。座標変換 x′μ(x) の3階微分 ∂3x′μ/∂xα∂xβ∂xγ は μ の4通りと対称な3つ組の 20 通りで 80 個あり、これを選んで ∂∂g を 80 個まで 0 にすることができる。残る 100−80=20 個は座標を選んでも消えない量で、これが Riemann テンソルの成分の数に一致する。Γ(∂g)は 40 個で、座標変換の2階微分も 40 個あるので、すべて消すことができる。
成分が少ない次元では、Riemann テンソルは縮約した量で決まる。Ricci テンソル Rμν=Rρμρν とスカラー曲率 R=gμνRμν(2.14.4節で意味を調べる)を使うと、2次元では
Rρσμν=2R(gρμgσν−gρνgσμ)(2.14.10)
となる(右辺は対称性をすべて満たし、成分は1つしかないので、縮約して R に一致するように係数を決めればよい)。3次元では成分が 6 個で、対称な Rμν の成分も 6 個なので、Riemann テンソルは Ricci テンソルで決まる:
Rρσμν=gρμRσν−gρνRσμ−gσμRρν+gσνRρμ−2R(gρμgσν−gρνgσμ).(2.14.11)
4次元では 20 個のうち 10 個が Ricci テンソルで決まり、残りの 10 個(Weyl テンソル)は Ricci テンソルが 0 でも 0 にならない。2.14.4節で、この違いが物質の無い所の潮汐力の有無に対応することを見る。
第2 Bianchi 恒等式
定理 2.14.4(第2 Bianchi 恒等式 ★★★)
∇λRρσμν+∇μRρσνλ+∇νRρσλμ=0.(2.14.12)
証明
点 P の局所慣性系で考える。P で Γ=0 なので、共変微分は偏微分に等しく、∂λ(ΓΓ) も P で 0 である。よって P で∇λRρσμν=∂λ∂μΓρνσ−∂λ∂νΓρμσ である。(λ,μ,ν) を巡回させた3つの和をとると、6つの項は偏微分の順番が入れ替えられることにより2つずつ打ち消し合う。
縮約した形は 2.14.4節で使う。物理の側から見ると、この恒等式はエネルギー運動量の保存が Einstein 方程式と矛盾しないことを保証する(第2部第15章)。
例題 2.14.2 球面と平面の Riemann テンソル ★★
オリジナル
- (1) 半径 a の球面 ds2=a2(dθ2+sin2θdφ2) について、例題 2.14.1 に書いた Christoffel 記号から Rθφθφ を計算せよ。
- (2) Rθφθφ、Rθθ、Rφφ、R を求め、式 (2.14.10) を満たすことを確かめよ。
- (3) 平面の極座標 ds2=dr2+r2dφ2 では Γrφφ=−r、Γφrφ=1/r である。同じ計算で Rrφrφ=0 を示せ。
解答
(1) 式 (2.14.3) で ρ=μ=θ、σ=ν=φ とおく。Γ は φ によらないので ∂φ の項は消え、Γθθλ=0 なので第3項も消える:
Rθφθφ=∂θΓθφφ−ΓθφφΓφθφ=−(cos2θ−sin2θ)+sinθcosθ⋅cotθ=sin2θ.
(2) Rθφθφ=gθθRθφθφ=a2sin2θ。Ricci テンソルは Rφφ=Rθφθφ=sin2θ、Rθθ=Rφθφθ=gφφRφθφθ=a2sin2θ1a2sin2θ=1(Rφθφθ=Rθφθφ を使った)で、非対角成分は 0 である。
R=gθθRθθ+gφφRφφ=a21+a2sin2θsin2θ=a22.
式 (2.14.10) の右辺は a21(gθθgφφ−0)=a21⋅a2⋅a2sin2θ=a2sin2θ で、左辺に一致する。正定値の計量の球面で R=+2/a2 になる(この本の流儀でも他の教科書と同じ)。
(3) 同じ形で Rrφrφ=∂rΓrφφ−ΓrφφΓφrφ=−1−(−r)⋅r1=0。2次元の成分はこれ1つなので、極座標の平面の Riemann テンソルはすべて 0 である。Γ が 0 でなくても R は 0 になり、平面が曲がっていないことを座標によらずに判定することができる。
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