解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第14章 §2.14.6 ★★ 曲面論の Gauss 曲率 1/(R1R2)・力学の潮汐力の式・Poisson 方程式を、この章の Riemann テンソル・潮汐テンソル・Ricci テンソルと並べる
学部の授業では、曲率はまず3次元空間に置いた曲面の曲がり方として、潮汐力は Newton の万有引力の差として習う。この章の量との対応を表 2.14.2 に並べる。
表 2.14.2 授業で習った形とこの章の形| 授業での形 | この章の形 | つなぐ式 |
| 曲面の Gauss 曲率 K=R1R21 | 2次元の Rρσμν | K=2R=detgR1212 |
| 月による潮汐 r32GMmR⊕ | 測地線偏差 | Eij=c2Ri0j0=∂i∂jΦ |
| Poisson 方程式 ∇2Φ=4πGρ | Ricci テンソル | R00=∇2Φ/c2 |
| 質量の外で ∇2Φ=0 | 真空で Rμν=0 | 潮汐テンソルの対角和 =0 |
曲面の Gauss 曲率
曲面論の授業では、3次元空間の曲面上の点で、法線を含む平面で切った断面の曲率半径の最大値と最小値(主曲率半径)R1, R2 を使い、Gauss 曲率を K=1/(R1R2) と定める。曲面を X(u,v) と書くと、第1基本形式 gab=∂ua∂X⋅∂ub∂X と、単位法線 n を使った第2基本形式 Lab=∂ua∂ub∂2X⋅n から
K=detgabdetLab
と計算する。第2基本形式は曲面が外の空間の中でどう曲がっているかを表す量なので、この定義では K は曲面の外を使って定まる。
この章の式 (2.14.10) では、2次元のスカラー曲率 R は計量 gab とその微分だけから決まる。両者は K=R/2 で一致する。これが Gauss の驚異の定理(Theorema Egregium)で、Gauss 曲率は面の中の長さの測り方だけで決まる量だった。円柱面は R1=r0、R2=∞ で K=0 で、計量 dz2+r02dφ2 も Riemann テンソルが 0 になる。紙を丸めて円柱にしても紙の上の図形の長さや角度は変わらないので、内在的には平面と区別することができない。一般相対論で使う曲率は、外の空間を使わない内在的な曲率である。時空には外の空間が無いので、内在的な定義しか使うことができない。
例題 2.14.6 回転楕円体の赤道の Gauss 曲率 ★★
オリジナル赤道半径 A、極半径 B の回転楕円体を X=(Asinucosφ,Asinusinφ,Bcosu) と書く。
- (1) 第1基本形式(計量)ds2=E(u)du2+G(u)dφ2 の E, G を求めよ。
- (2) この形の2次元計量では K=−EG1∂u∂(E1∂u∂G) である(式 (2.14.3) から計算した R/2)。赤道 u=π/2 での K を求めよ。
- (3) 赤道での主曲率半径は、子午線(楕円 (Asinu,Bcosu))の曲率半径 R1 と、赤道の円の半径 R2=A である。K=1/(R1R2) を計算し、(2) と一致することを確かめよ。
解答
(1) ∂u∂X=(Acosucosφ,Acosusinφ,−Bsinu)、∂φ∂X=(−Asinusinφ,Asinucosφ,0) で、2つは直交する。よってE=A2cos2u+B2sin2u、G=A2sin2u。
(2) G=Asinu、∂u∂G=Acosu で、f(u)=AcosuE−1/2 を u で微分するとf′(u)=−AsinuE−1/2−21AcosuE−3/2E′(u)。u=π/2 では cosu=0、E=B2 なので f′=−A/B。よって
K=−B2A1(−BA)=B21.
(3) 楕円 (Asinu,Bcosu) の曲率半径は AB(A2cos2u+B2sin2u)3/2 で、u=π/2 では R1=B3/(AB)=B2/A。K=R1R21=B2A⋅A1=B21 で (2) と一致する。(2) は計量だけから、(3) は曲面の外の空間での曲がり方から計算した値である。sympy で一般の u について両者が一致することも確かめた(scripts/verify_ch2-14.py)。
力学の潮汐力と Poisson 方程式
力学の授業では、地球の中心と月に最も近い地表の点にはたらく月の引力の差を (r−R⊕)2GMm−r2GMm≈r32GMmR⊕ と展開して潮汐力を出す。この展開は −∇Φ を1回 Taylor 展開したもので、展開の係数がそのまま潮汐テンソル Eij=∂i∂jΦ である。この章では同じ式を、時空の曲率の成分 c2Ri0j0 として読み直した(式 (2.14.16))。地球に固定した系で考えると、月の引力そのものは地球全体の自由落下(月のまわりの公転運動)で打ち消され、差だけが残る。この「差だけが残る」ことは、等価原理で消せる部分(Γ)と消せない部分(R)の分け方に当たる。
Poisson 方程式 ∇2Φ=4πGρ は、潮汐テンソルの対角和が質量密度で決まることを言っている。式 (2.14.23) により、これは Ricci テンソルの 00 成分が質量密度で決まるという形で読める。第2部第15章の Einstein 方程式は、この関係を「Ricci テンソル(から作る Gμν)がエネルギー運動量テンソルで決まる」という全成分の形に広げたものになる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com