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出てくるもの(1):熱浴の状態数を展開すると e−βH\mathrm{e}^{-\beta H}

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第3章 カノニカル分布と Z=∫e^(-β H) dΓ
目次
  1. 系と熱浴を合わせて孤立系にする
  2. 対数を展開する
  3. 熱浴を調和振動子の集まりにして確かめる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第3章 §3.3.3 ★★★ ミクロカノニカル分布から出発し、熱浴が大きい極限でカノニカル分布を導く。β\beta が熱浴の ∂ln⁡W/∂E\partial\ln W/\partial E であることが分かる

系と熱浴を合わせて孤立系にする

前の節の2つの議論は、分布の形を決めたが、β\beta が温度の逆数であることまでは示していない。この節では、前の章のミクロカノニカル分布だけから出発して、カノニカル分布とその β\beta の意味を導く。

注目する系(系 S、Hamiltonian HS(ΓS)H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S}))と熱浴(系 B、HB(ΓB)H_{\mathrm B}(\Gamma_{\mathrm B}))を合わせた全体は孤立していて、全エネルギーが EE に決まっているとする。系と熱浴の間の相互作用は、熱をやりとりさせるために必要だが、そのエネルギーは HSH_{\mathrm S}, HBH_{\mathrm B} に比べて無視できるほど小さいとする(弱い結合)。全体にミクロカノニカル分布を当てると、HS+HBH_{\mathrm S}+H_{\mathrm B} が EE と E+ΔEE+\Delta E の間にある点がすべて等しい重みで現れる。

系 S が特定の点 ΓS\Gamma_{\mathrm S} にある確率は、そのとき熱浴がとれる点の数、すなわちエネルギーが E−HS(ΓS)E-H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S}) の殻の中の熱浴の状態数WB(E−HS(ΓS))W_{\mathrm B}(E-H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S})) に比例する。

ρS(ΓS)∝WB(E−HS(ΓS)).(3.3.10)\rho_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S})\propto W_{\mathrm B}\bigl(E-H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S})\bigr).\tag{3.3.10}

ここまでは近似を使っていない。系 S の分布は、自分の Hamiltonian と熱浴の状態数の形で決まる。

対数を展開する

熱浴は系 S よりはるかに大きく、HS≪EH_{\mathrm S}\ll E とする。WBW_{\mathrm B} そのものは EE の大きな冪や指数で急に変わるので直接展開せず、対数を展開する。ε=HS(ΓS)\varepsilon =H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S}) として

ln⁡WB(E−ε)=ln⁡WB(E)−ε ∂ln⁡WB∂E+ε22 ∂2ln⁡WB∂E2−⋯ .(3.3.11)\ln W_{\mathrm B}(E-\varepsilon )=\ln W_{\mathrm B}(E)-\varepsilon \,\frac{\partial \ln W_{\mathrm B}}{\partial E}+\frac{\varepsilon ^2}{2}\,\frac{\partial^2\ln W_{\mathrm B}}{\partial E^2}-\cdots .\tag{3.3.11}

1次の係数は、前の章の温度の定義 1/T=∂SB/∂E1/T=\partial S_{\mathrm B}/\partial E、SB=kBln⁡WB(E)S_{\mathrm B}= k_{\mathrm B}\ln W_{\mathrm B}(E) から

∂ln⁡WB∂E=1kBT=β\frac{\partial \ln W_{\mathrm B}}{\partial E}=\frac{1}{ k_{\mathrm B} T}=\beta

で、熱浴の温度の逆数そのものである。2次の係数は ∂β/∂E=−1/(kBT2CB)\partial\beta/\partial E=-1/( k_{\mathrm B} T^2C_{\mathrm B})(CB=∂E/∂TC_{\mathrm B}=\partial E/\partial T は熱浴の熱容量)で、2次の項と1次の項の比は ε/(2TCB)\varepsilon /(2T C_{\mathrm B}) の大きさになる。熱浴の熱容量は熱浴の粒子数 NBN_{\mathrm B} に比例して大きくなるので、NB→∞N_{\mathrm B}\to\infty でこの比は 00 に近づき、1次で打ち切ってよい。式 (3.3.10) に戻すと

ρS(ΓS)∝WB(E) e−βHS(ΓS)∝e−βHS(ΓS)\rho_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S})\propto W_{\mathrm B}(E)\,\mathrm{e}^{-\beta H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S})}\propto\mathrm{e}^{-\beta H_{\mathrm S}(\Gamma_{\mathrm S})}

となり、カノニカル分布が出る。β\beta は熱浴の温度で決まり、系 S の性質にはよらない。3.3.2節の掛け算の議論で出た「接している部分は同じ β\beta を持つ」という結果は、系が熱浴と同じ温度になることを表している。

熱浴を調和振動子の集まりにして確かめる

展開を1次で打ち切ってよいことを、熱浴の状態数が正確に計算できる例で確かめる。熱浴を角振動数 ω\omega の1次元調和振動子 nn 個とし、系 S も同じ振動子1個とする。全体は n+1n+1 個の振動子なので、第3部第2章の3.2.7節の総合問題 (3) で N=n+1N=n+1 と置いたものになる。熱浴の状態密度は gn(E)=En−1/[(n−1)! (ℏω)n]g_n(E)=E^{n-1}/[(n-1)!\,(\hbar\omega)^n] で、系 S のエネルギーが ε\varepsilon である確率密度は、そこで求めた

Pn(ε)=n (E−ε)n−1En(0≤ε≤E)(3.3.12)P_n(\varepsilon )=\frac{n\,(E-\varepsilon )^{n-1}}{E^n}\qquad(0\le\varepsilon \le E)\tag{3.3.12}

である。この分布の平均は ⟨ε⟩=E/(n+1)\langle \varepsilon \rangle =E/(n+1) で、全体のエネルギーが n+1n+1 個の振動子に等しく分けられている。平均を εˉ=E/(n+1)\bar\varepsilon =E/(n+1) と書いてE=(n+1)εˉE=(n+1)\bar\varepsilon を入れ、n→∞n\to\infty とすると

Pn(ε)=n(n+1)εˉ(1−ε(n+1)εˉ)n−1 ⟶ 1εˉ e−ε/εˉ,P_n(\varepsilon )=\frac{n}{(n+1)\bar\varepsilon }\Bigl(1-\frac{\varepsilon }{(n+1)\bar\varepsilon }\Bigr)^{n-1}\ \longrightarrow\ \frac{1}{\bar\varepsilon }\,\mathrm{e}^{-\varepsilon /\bar\varepsilon },

すなわち β=1/εˉ\beta=1/\bar\varepsilon の指数分布(例題 3.3.1 の (3) で求めたカノニカル分布でのエネルギーの分布)に近づく。有限の nn では、熱浴の ∂ln⁡gn/∂E=(n−1)/E\partial\ln g_n/\partial E=(n-1)/E と 1/εˉ=(n+1)/E1/\bar\varepsilon =(n+1)/E が 1/n1/n の程度ずれていて、温度の定め方自体に 1/n1/n の程度のあいまいさが残る。図 3.3.2 に n=2,5,20n=2,5,20 の分布を示す。

図

図 3.3.2 nn 個の振動子からなる熱浴に接した振動子1個のエネルギー分布 (3.3.12)(厳密な値なので点線。赤 n=2n=2、橙 n=5n=5、青 n=20n=20)と、熱浴が大きい極限の指数分布(近似なので実線)。n=2n=2 では分布は直線で、ε=3εˉ\varepsilon =3\bar\varepsilon で切れる

例題 3.3.3 理想気体を熱浴にしたときのずれ ★★

オリジナル単原子理想気体 NBN_{\mathrm B} 個を熱浴にする。熱浴の ΦB(E)\Phi_{\mathrm B}(E) は E3NB/2E^{3N_{\mathrm B}/2} に比例するので(第3部第2章)、K=3NB/2K=3N_{\mathrm B}/2 と置くとWB(E)=gB(E) ΔE∝EK−1W_{\mathrm B}(E)=g_{\mathrm B}(E)\,\Delta E\propto E^{K-1} である。系 S は長さ LL の線分の上を自由に動く1自由度の粒子で、HS=p2/(2m)H_{\mathrm S}=p^2/(2m) とする。

  1. 系 S の状態密度 gS(ε)g_{\mathrm S}(\varepsilon ) が ε−1/2\varepsilon ^{-1/2} に比例することを示し、式 (3.3.10) から系 S のエネルギーの分布 P(ε)P(\varepsilon ) を書け。
  2. 熱浴の βB=∂ln⁡WB/∂E\beta_{\mathrm B}=\partial\ln W_{\mathrm B}/\partial E を求めよ。また展開 (3.3.11) の2次の項と1次の項の比が ε/(2E)\varepsilon /(2E) で、本文の ε/(2TCB)\varepsilon /(2TC_{\mathrm B}) と一致することを確かめよ。
  3. NB=20N_{\mathrm B}=20 とする。⟨ε⟩\langle \varepsilon \rangle を (1) の分布と、β=βB\beta=\beta_{\mathrm B} のカノニカル分布 ∝gS(ε) e−βε\propto g_{\mathrm S}(\varepsilon )\,\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon } で求め、ずれを比べよ。
解答

(1) HS≤εH_{\mathrm S}\le\varepsilon の相空間の面積は L⋅22mεL\cdot2\sqrt{2m\varepsilon } なので、hh で割って微分すると gS(ε)=Lh2m/ε∝ε−1/2g_{\mathrm S}(\varepsilon )=\frac{L}{h}\sqrt{2m/\varepsilon }\propto\varepsilon ^{-1/2} である。系 S のエネルギーが ε\varepsilon である確率密度は gS(ε) WB(E−ε)g_{\mathrm S}(\varepsilon )\,W_{\mathrm B}(E-\varepsilon ) に比例するので、規格化して

P(ε)=ε−1/2(E−ε)K−1EK−1/2 B(12,K)(0≤ε≤E)P(\varepsilon )=\frac{\varepsilon ^{-1/2}(E-\varepsilon )^{K-1}}{E^{K-1/2}\,B(\frac12,K)}\qquad(0\le\varepsilon \le E)

を得る(BB はベータ関数)。

(2) ln⁡WB(E)=(K−1)ln⁡E+定数\ln W_{\mathrm B}(E)=(K-1)\ln E+\text{定数} なので βB=(K−1)/E\beta_{\mathrm B}=(K-1)/E、NB=20N_{\mathrm B}=20 では K=30K=30 で βB=29/E\beta_{\mathrm B}=29/E である。2階微分は ∂2ln⁡WB/∂E2=−(K−1)/E2\partial^2\ln W_{\mathrm B}/\partial E^2=-(K-1)/E^2 で、2次の項と1次の項の比は ε22K−1E2/εK−1E=ε2E\frac{\varepsilon ^2}{2}\frac{K-1}{E^2}\Big/\varepsilon \frac{K-1}{E}=\frac{\varepsilon }{2E} である。一方、kBT=E/(K−1)k_{\mathrm B} T=E/(K-1) から CB=∂E/∂T=(K−1)kBC_{\mathrm B}=\partial E/\partial T=(K-1) k_{\mathrm B} で、TCB=ETC_{\mathrm B}=E となり、本文の比 ε/(2TCB)\varepsilon /(2TC_{\mathrm B}) と一致する。系のエネルギーは EE の数十分の1なので、2次の項は1次の項の 1%1\% 程度である。

(3) (1) の分布はベータ分布なので

⟨ε⟩=E B(32,K)B(12,K)=E2K+1=E3NB+1=E61=0.01639 E.\langle \varepsilon \rangle =E\,\frac{B(\frac32,K)}{B(\frac12,K)}=\frac{E}{2K+1}=\frac{E}{3N_{\mathrm B}+1}=\frac{E}{61}=0.01639\,E .

カノニカル分布 ∝ε−1/2e−βε\propto\varepsilon ^{-1/2}\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon } では ⟨ε⟩=1/(2β)\langle \varepsilon \rangle =1/(2\beta) で、β=βB=29/E\beta=\beta_{\mathrm B}=29/E を入れると E/58=0.01724 EE/58=0.01724\,E である。比は 58/61=0.95158/61=0.951 で、ずれは 3/(3NB+1)=4.9%3/(3N_{\mathrm B}+1)=4.9\%、すなわち 1/NB1/N_{\mathrm B} の程度である。厳密な値 E/61E/61 は、全体の 3NB+1=613N_{\mathrm B}+1=61 個の2次の項(熱浴の運動量の成分 6060 個と系の pp)に EE を等しく分けた値になっている。NBN_{\mathrm B} を大きくすると、熱浴の ∂ln⁡WB/∂E\partial\ln W_{\mathrm B}/\partial E で決めた温度と系の平均エネルギーから決めた温度が一致していく。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/NB1/N_{\mathrm B}(系に比べて熱浴が大きい。系と熱浴の相互作用のエネルギーが無視できる) | 証明 条件付き(相互作用が短距離で安定な系の熱力学極限。相転移点や長距離相互作用ではミクロカノニカルとカノニカルが一致しないことがある) | 行き先 近似の数理 第13章

木下の勉強ステータス

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