解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第4章 §4.4.6 ★★ 級数の打ち切り条件と a^∣0⟩=0 は同じ条件。前期量子論の nh との差 21、行列要素と古典の Fourier 成分の一致
級数解と打ち切り
解析力学を使わない授業では、Schrödinger 方程式
−2mℏ2dq2d2ψ+21mω2q2ψ=Eψ
を ξ=q/ℓ、εr=2E/(ℏω) で無次元化して ψ′′+(εr−ξ2)ψ=0 とし、遠方の振る舞い e−ξ2/2 を括り出して ψ=h(ξ)e−ξ2/2 とおく。h は
h′′−2ξh′+(εr−1)h=0(4.4.28)
を満たし、べき級数 h=∑kckξk の係数は漸化式
ck+2=(k+1)(k+2)2k+1−εrck(4.4.29)
に従う。級数が途中で止まらないと、k が大きいところで ck+2/ck≈2/k となって h は eξ2 と同じ速さで増え、ψ を規格化することができない。級数が止まるのは εr=2n+1 のときで、これが E=ℏω(n+21) である。
この章の道筋では、同じ条件は「a^ を繰り返し掛けると止まらなければならない」(4.4.3節)で与えられた。2つは同じことを言っている。a^=21(ξ+dξd), a^†=21(ξ−dξd) で、方程式 (4.4.28) はa^†a^ψ=2εr−1ψ を h について書いたものである。級数の打ち切りは「下げ続けると 0 に当たって止まる」ことの、係数の言葉での表現になっている。授業で天下りに出てきた a^ は、古典の作用角変数の複素振幅を量子化したものとして、この章では出所がはっきりした。
前期量子論との差
前期量子論の量子化条件 ∮pdq=nh(J=nℏ)を調和振動子に当てると E=nℏω で、間隔 ℏω は正しいが、全体が 21ℏω だけずれる。第1部第14章で述べたとおり、滑らかな転回点を持つポテンシャルでは WKB の接続から 21 が加わり(第4部第7章)、調和振動子ではその結果が厳密になる。この章の言葉では、21 は z∗z の並べ方(4.4.2節)から出てきた。WKB で転回点の位相として現れる 21 と、並べ方として現れる 21 は、調和振動子では同じ量である。準位の間隔だけで決まる量(遷移の振動数、比熱の温度依存の形)は 21 を区別しない。区別するのは基底状態のエネルギーそのものと、第5部で扱う零点エネルギーの和である。
行列要素と古典の Fourier 成分
古典の振動子の位置は q(t)=Asin(ωt+θ0) で、e−iωt と e+iωt の2つの Fourier 成分だけを持ち、その大きさは
∣q±1∣=2A=2mωJ
である。量子では、Heisenberg 描像の q^H(t)=2ℓ(a^e−iωt+a^†eiωt) の行列要素が、⟨n−1∣q^H(t)∣n⟩=ℓn/2e−iωt となって同じ振動数で振動する。古典の式で J=nℏ とおくと
2mωnℏ=ℓ2n=∣⟨n−1∣q^∣n⟩∣
で、両者は一致する。nℏ はちょうど Jn と Jn−1 の平均 21[(n+21)+(n−21)]ℏ である。「量子の遷移 n→n−1 の行列要素は、2つの準位の中間の作用変数を持つ古典の軌道の Fourier 成分に対応する」という対応は、一般のポテンシャルでは n が大きいときの近似だが、調和振動子では厳密になる。古典の q(t) が倍音を持たないことが、量子の行列要素が隣の準位にしか無いこと(Δn=±1 の選択則)に対応している。
例題 4.4.6 級数を打ち切って n=3 の状態を作る ★
オリジナル
- (1) ψ=h(ξ)e−ξ2/2 を ψ′′+(εr−ξ2)ψ=0 に入れて、式 (4.4.28) を導け。
- (2) εr=7 とし、奇数の項だけの級数(c1=1, c0=0)を漸化式 (4.4.29) で計算して、級数が止まることを確かめよ。
- (3) (2) の h が Hermite 多項式 H3=8ξ3−12ξ に比例することを確かめ、a^† を ψ0 に3回掛けた結果と同じ状態であることを述べよ。
解答
(1) ψ′=(h′−ξh)e−ξ2/2、ψ′′=(h′′−2ξh′−h+ξ2h)e−ξ2/2。代入すると ξ2h の項が打ち消し合い、(h′′−2ξh′+(εr−1)h)e−ξ2/2=0 が残る。
(2) c3=2⋅32⋅1+1−7c1=−32、c5=4⋅52⋅3+1−7c3=0 で、以降の奇数の係数はすべて 0。h=ξ−32ξ3 で止まる。εr=7 は n=3 の E=27ℏω に当たる。
(3) H3=8ξ3−12ξ=−12(ξ−32ξ3) で、h の −12 倍である。式 (4.4.22) の導出のとおり、(a^†)3ψ0 はH1=2ξH0, H2=2ξH1−H1′, H3=2ξH2−H2′ の順に多項式を作り、同じ H3(ξ)e−ξ2/2 に比例する。級数で εr を探すと「止まる値を探す」作業になるが、生成演算子では止まることが初めから組み込まれていて、n を指定すれば多項式が直接出る。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com