解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第3章 §5.3.6 ★★ Stefan–Boltzmann の法則・Wien の変位則・波長で書いた Planck の式・固体物理の Debye のモデルを、この章の g(ω) と nB の式で読み直す
熱放射:Stefan–Boltzmann の法則と Wien の変位則
熱力学や現代物理の授業では、黒体の表面から出る単位面積あたりの放射のパワーを
j=σT4,σ=5.670×10−8Wm−2K−4(5.3.35)
と習う(Stefan–Boltzmann の法則)。この章の言葉では、空洞に開けた小さな穴から出るエネルギーの流れである。光子はあらゆる向きに速さ c で飛んでいて、穴の面に対して角度 θ の向きに飛ぶ光子は単位時間に ccosθ の厚さの層から出てくる。向きについて平均すると、穴に向かう光子は全体の半分で、その cosθ の平均は 21 なので、21×21=41 が掛かり、j=41cU/V=4carT4 で、
σ=4car=60ℏ3c2π2kB4
になる。授業で与えられる定数 σ は、式 (5.3.20) の π4/15 と、光子の g(ω) の係数を組み合わせたものである。
授業では Planck の式を波長 λ の関数として
uλ(λ)=λ58πhcehc/(λkBT)−11(5.3.36)
と書くことが多い。これは uλ∣dλ∣=u(ω)dω、ω=2πc/λ で式 (5.3.18) を書き直したものである。Wien の変位則 λmaxT=b の b=2.898×10−3mK は、uλ の極大の位置から決まり、x=hc/(λkBT) の方程式 x=5(1−e−x) の解 x=4.965 を使って b=hc/(4.965kB) である。u(ω) の極大は x=3(1−e−x) の解 x=2.821 で決まり、この2つの極大は同じ光を指していない。分布を ω で表すか λ で表すかで dω/dλ∝λ−2 の因子が変わるので、「いちばん強い色」は分布の変数の取り方に依存する。
固体物理:Debye のモデル
固体物理の授業では、Debye のモデルを「格子振動を弾性体の音波として扱い、モードの数を 3N で打ち切る」と説明し、状態密度を D(ω)=9Nω2/ωD3 と書くことが多い(この章の gD と同じもの。記法の正本では D(ε) を電子の状態密度に取っておくので、この章では g と書いた)。フォノンは「格子振動の量子」と定義され、その平均の数に Bose 分布を使うと説明される。この章の形では、フォノンが μ=0 の Bose 粒子であることは、振動子1つのカノニカル分布の帰結として出てきた。授業の「格子比熱の T3 則」と「黒体放射の T4 則」は、別の章に置かれることが多いが、式 (5.3.26) のとおり同じ計算である。
表 5.3.2 授業で習う形とこの章の形の対応。| 授業での形 | この章の形 |
| j=σT4 | j=4c⋅VU、U=∫gphℏωnBdω |
| uλ=λ58πhcehc/λkBT−11 | u(ω)=Vgph(ω)ℏωnB(ω) |
| 放射圧 P=u/3 | F=−U/3、または断熱不変量 nα と ω∝V−1/3 |
| Debye の D(ω)=9Nω2/ωD3 | gD(ω)、式 (5.3.27) |
| フォノン=格子振動の量子 | 基準振動の振動子の段の数 nα |
| 光子は Bose 粒子、μ=0 | Z=∏αZα に N の拘束が無い |
光の吸収と放出の釣り合いから Planck 分布を出す Einstein の A・B 係数の議論は、光学と量子エレクトロニクスの巻で扱う(光学と量子エレクトロニクス 第20章)。その議論ではこの章の u(ω) を使う。フォノンの非調和性による熱膨張・熱伝導は固体の巻で扱う(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部第2章)。
例題 5.3.6 2つの「極大の波長」★★
オリジナル温度 T=3000K の黒体放射について次を求めよ。
- (1) uλ(λ) が極大になる波長 λmax。
- (2) u(ω) が極大になる角振動数 ωmax と、それに対応する波長 2πc/ωmax。
- (3) Stefan–Boltzmann の定数 σ を ℏ, c, kB から計算し、この温度での j を求めよ。
解答
(1) uλ∝λ−5/(ex−1)、x=hc/(λkBT) を x で書くと x5/(ex−1) に比例し、x で微分して 0 と置くと 5(ex−1)=xex、すなわち x=5(1−e−x)。反復で解くと x=4.9651。λmax=hc/(4.9651kBT)=2.898×10−3/3000m=966nm(近赤外)。
(2) u(ω)∝x3/(ex−1) の極大は x=3(1−e−x) から x=2.8214。ωmax=2.8214kBT/ℏ で、対応する波長は2πcℏ/(2.8214kBT)=hc/(2.8214kBT)=5.099×10−3/3000m=1700nm。(1) の 966nm と 1.76 倍違う。u(ω)dω と uλdλ は同じ帯域のエネルギーを表すが、dω と dλ の幅の取り方が違うので、密度の極大の位置が違う。
(3) σ=π2kB4/(60ℏ3c2)=5.670×10−8Wm−2K−4。j=σT4=5.670×10−8×(3000)4=4.59×106Wm−2。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com