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出てくるもの (2):電磁場の中の Dirac 方程式、g=2g=2 と微細構造

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第4章 相対論的量子力学
目次
  1. 最小結合
  2. 小さい成分を消す:Pauli の Hamiltonian
  3. 次の次数:微細構造の3つの項
  4. 水素原子の厳密な準位
  5. この近似の位置づけ
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第4章 §5.4.4 ★★★ 最小結合 ∂μ→∂μ+iqAμ\partial_\mu\to\partial_\mu+\mathrm{i} qA_\mu の Dirac 方程式から小さい成分を消すと Pauli の Hamiltonian と g=2g=2、次の次数で微細構造が出る

最小結合

第2部第8章では、ゲージ変換 Aμ→Aμ−∂μΛA_\mu\to A_\mu-\partial_\mu\Lambda と波動関数の位相 ψ→eiqΛψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}\psi が組になること、第4部第6章ではそれを量子化すると p→p−qA\bm{p}\to\bm{p}-q\bm{A} の最小結合になることを見た。共変な形では微分を共変微分 Dμ=∂μ+iqAμD_\mu=\partial_\mu+\mathrm{i} qA_\mu に置き換える。Aμ=(ϕ,A)A^\mu=(\phi,\bm{A})、Aμ=(ϕ,−A)A_\mu=(\phi,-\bm{A}) として、Dirac 方程式は

(iγμDμ−m)ψ=0⟺i∂tψ=[α⋅π+βm+qϕ]ψ,π≔p−qA(5.4.21)(\mathrm{i}\gamma^\mu D_\mu-m)\psi=0 \quad\Longleftrightarrow\quad \mathrm{i}\partial_t\psi=\bigl[\bm{\alpha}\cdot\bm{\pi}+\beta m+q\phi\bigr]\psi,\qquad \bm{\pi}\coloneqq\bm{p}-q\bm{A}\tag{5.4.21}

になる。右の形は左の形に左から γ0\gamma^0 を掛けて iγ0γ0(∂t+iqϕ)=i∂t−qϕ\mathrm{i}\gamma^0\gamma^0(\partial_t+\mathrm{i} q\phi)=\mathrm{i}\partial_t-q\phi、iγ0γi(∂i+iqAi)=iαi∂i+qαiAi\mathrm{i}\gamma^0\gamma^i(\partial_i+\mathrm{i} qA_i)=\mathrm{i}\alpha_i\partial_i+q\alpha_iA^i を使えば得られる(Ai=−AiA_i=-A^i)。この節では ϕ\phi は電磁場のスカラーポテンシャルで、Klein–Gordon の場ではない。

小さい成分を消す:Pauli の Hamiltonian

静止エネルギーの速い位相をくくり出して ψ=e−imt(ξ,ζ)\psi=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} mt}(\xi,\zeta) とおく。式 (5.4.21) の上下のブロックは

(i∂t−qϕ) ξ=(σ⋅π) ζ,(i∂t−qϕ+2m) ζ=(σ⋅π) ξ(5.4.22)(\mathrm{i}\partial_t-q\phi)\,\xi=(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})\,\zeta,\qquad (\mathrm{i}\partial_t-q\phi+2m)\,\zeta=(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})\,\xi\tag{5.4.22}

になる。非相対論の運動では、くくり出した後の時間変化 i∂t\mathrm{i}\partial_t と静電エネルギー qϕq\phi は mm よりはるかに小さい。2つ目の式の左辺で 2m2m 以外を落とすと ζ≈(σ⋅π)ξ/(2m)\zeta\approx(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})\xi/(2m) で、1つ目に入れると

i∂tξ=[(σ⋅π)22m+qϕ]ξ=[π22m−q2mσ⋅B+qϕ]ξ(5.4.23)\mathrm{i}\partial_t\xi=\Bigl[\frac{(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})^2}{2m}+q\phi\Bigr]\xi =\Bigl[\frac{\bm{\pi}^2}{2m}-\frac{q}{2m}\bm{\sigma}\cdot\bm{B}+q\phi\Bigr]\xi\tag{5.4.23}

を得る。2つ目の等号は第4部第6章で示した (σ⋅π)2=π2−qσ⋅B(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})^2=\bm{\pi}^2-q\bm{\sigma}\cdot\bm{B} である(σiσj=δij+i∑kϵijkσk\sigma_i\sigma_j=\delta_{ij}+\mathrm{i}\sum_k\epsilon_{ijk}\sigma_k と [πi, πj]=iq∑kϵijkBk\left[\pi_i,\,\pi_j\right]=\mathrm{i} q\sum_k\epsilon_{ijk}B_k から出る)。電子 q=−eq=-e では Zeeman の項が e2mσ⋅B=ge2mS⋅B\frac{e}{2m}\bm{\sigma}\cdot\bm{B}=g\frac{e}{2m}\bm{S}\cdot\bm{B}(S=12σ\bm{S}=\frac12\bm{\sigma})で g=2g=2 になる。

第4部第6章では、運動エネルギーを π2/(2m)\bm{\pi}^2/(2m) でなく (σ⋅π)2/(2m)(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})^2/(2m) と書くことを「選んだ」。2つは磁場が無ければ同じ式で、どちらを選ぶかは非相対論の理論の中では決まらなかった。Dirac 方程式から出発すると、(σ⋅π)2(\bm{\sigma}\cdot\bm{\pi})^2 の形が小さい成分を消す計算の中で決まる。g=2g=2 は相対論と最小結合の帰結である。実測の電子の gg は 22 からわずかにずれ、そのずれ (g−2)/2(g-2)/2 の最初の項α/(2π)\alpha/(2\pi) は Schwinger が場の量子論で計算した1J. Schwinger (1948), Physical Review 73, 416–417.下の脚注へ。この計算は1粒子の Dirac 方程式の外にある(第5部第5章)。

次の次数:微細構造の3つの項

ζ\zeta の式で落とした (i∂t−qϕ)/(2m)(\mathrm{i}\partial_t-q\phi)/(2m) を1次まで残し、さらに ξ\xi だけで確率が規格化されるように取り替える(ψ†ψ=∣ξ∣2+∣ζ∣2\psi^\dagger\psi=\lvert \xi\rvert ^2+\lvert \zeta\rvert ^2 なので、ξ\xi そのものは規格化されていない)と、1/m31/m^3 までの有効 Hamiltonian は、静的な場で

Heff=π22m−q2mσ⋅B+qϕ−π48m3−q4m2σ⋅(E×π)−q8m2∇⋅E(5.4.24)H_{\mathrm{eff}}=\frac{\bm{\pi}^2}{2m}-\frac{q}{2m}\bm{\sigma}\cdot\bm{B}+q\phi-\frac{\bm{\pi}^4}{8m^3} -\frac{q}{4m^2}\bm{\sigma}\cdot(\bm{E}\times\bm{\pi})-\frac{q}{8m^2}\nabla\cdot\bm{E}\tag{5.4.24}

になる2L. L. Foldy and S. A. Wouthuysen (1950), Physical Review 78, 29–36。ユニタリ変換で大きい成分と小さい成分を 1/m1/m の各次数で切り離す方法。下の脚注へ。第4項は相対論的な運動エネルギー p2+m2−m\sqrt{\bm{p}^2+m^2}-m の展開の次の項、第5項はスピン軌道相互作用、第6項は Darwin 項である。中心力 V(r)=qϕ(r)V(r)=q\phi(r)(B=0\bm{B}=0)では E=−∇ϕ=−1qxrdVdr\bm{E}=-\nabla\phi=-\frac{1}{q}\frac{\bm{x}}{r}\frac{\mathrm{d} V}{\mathrm{d} r} なので、第5項は 14m21rdVdrσ⋅(x×p)=12m21rdVdr S⋅L\frac{1}{4m^2}\frac1r\frac{\mathrm{d} V}{\mathrm{d} r}\bm{\sigma}\cdot(\bm{x}\times\bm{p})=\frac{1}{2m^2}\frac1r\frac{\mathrm{d} V}{\mathrm{d} r}\,\bm{S}\cdot\bm{L}、第6項は 18m2∇2V\frac{1}{8m^2}\nabla^2V になる。

水素原子の厳密な準位

Coulomb ポテンシャル V(r)=−Zα/rV(r)=-Z\alpha/r の Dirac 方程式は、変数分離で厳密に解くことができる。その結果は、主量子数 nn と全角運動量 jj で

Enj=m[1+(Zαn−(j+12)+(j+12)2−Z2α2)2]−1/2(5.4.25)E_{nj}=m\Biggl[1+\biggl(\frac{Z\alpha}{n-(j+\frac12)+\sqrt{(j+\frac12)^2-Z^2\alpha^2}}\biggr)^{2}\Biggr]^{-1/2}\tag{5.4.25}

である(導出はここでは追わない)。ZαZ\alpha について展開すると

Enj=m−m(Zα)22n2−m(Zα)42n4(nj+12−34)+O((Zα)6)(5.4.26)E_{nj}=m-\frac{m(Z\alpha)^2}{2n^2}-\frac{m(Z\alpha)^4}{2n^4}\Bigl(\frac{n}{j+\frac12}-\frac34\Bigr)+\mathcal{O}\bigl((Z\alpha)^6\bigr)\tag{5.4.26}

で、第2項が Bohr の準位、第3項が微細構造である。微細構造は jj だけによって決まり、軌道角運動量 ll によらない。したがって 2s1/22s_{1/2} と 2p1/22p_{1/2} は Dirac 方程式では同じエネルギーになる。実際には 2s1/22s_{1/2} が約 1 GHz1\,\mathrm{GHz} 高く、Lamb と Retherford がマイクロ波で測った3W. E. Lamb, Jr. and R. C. Retherford (1947), Physical Review 72, 241–243.下の脚注へ。この Lamb シフトも、g−2g-2 と同じく場の量子論の効果である。

基底状態 n=1n=1、j=12j=\frac12 では式 (5.4.25) は E1,1/2=m1−(Zα)2E_{1,1/2}=m\sqrt{1-(Z\alpha)^2} にまとまる。図 5.4.2 に、束縛エネルギー m−Em-E を Bohr の準位と比べる。ZαZ\alpha が 0.30.3 を超えるあたりから差が目に見えて開く。

図

図 5.4.2 水素型原子の基底状態の束縛エネルギー。Dirac 方程式の厳密な値 1−1−(Zα)21-\sqrt{1-(Z\alpha)^2}(点線)と、非相対論の Bohr の準位 (Zα)2/2(Z\alpha)^2/2(実線)。破線はウラン(Z=92Z=92, Zα=0.671Z\alpha=0.671)

この近似の位置づけ

式 (5.4.23) と (5.4.24) は、小さいパラメータ v/cv/c(原子では ZαZ\alpha)について展開して低い次数で切ったもので、m→∞m\to\infty の極限の問題を順に補正していく B 型の近似である。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの v/c→0v/c\to0(水素型原子では Zα→0Z\alpha\to0) | 証明 要確認(Foldy–Wouthuysen の展開の各次数が厳密な Dirac の準位に収束する前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 5.4.4 水素の 2p2p の分裂とウランの 1s1s ★★

オリジナルmc2=0.51099895 MeVmc^2=0.51099895\,\mathrm{MeV}、α=7.2973525693×10−3\alpha=7.2973525693\times10^{-3}、h=4.135667696×10−15 eV sh=4.135667696\times10^{-15}\,\mathrm{eV\,s} とする(換算質量の補正は無視する)。

  1. (1) 式 (5.4.26) から、水素(Z=1Z=1)の 2p3/22p_{3/2} と 2p1/22p_{1/2} のエネルギーの差を mc2α4mc^2\alpha^4 の倍数で求め、eV\mathrm{eV} と振動数(GHz\mathrm{GHz})で表せ。
  2. (2) ウランの水素型イオン(Z=92Z=92)の 1s1s の束縛エネルギーを、式 (5.4.25) と Bohr の準位でそれぞれ求めて比べよ。
解答

(1) n=2n=2 で j=32j=\frac32 と j=12j=\frac12 の第3項の差は

−mα42⋅16[(22−34)−(21−34)]=mα432⋅1=mc2α432-\frac{m\alpha^4}{2\cdot16}\Bigl[\Bigl(\frac{2}{2}-\frac34\Bigr)-\Bigl(\frac{2}{1}-\frac34\Bigr)\Bigr]=\frac{m\alpha^4}{32}\cdot1=\frac{mc^2\alpha^4}{32}

(j=32j=\frac32 が上)。数値は mc2α4=0.51099895×106×(7.2973525693×10−3)4=1.449×10−3 eVmc^2\alpha^4=0.51099895\times10^6\times(7.2973525693\times10^{-3})^4=1.449\times10^{-3}\,\mathrm{eV} なので、差は 4.53×10−5 eV4.53\times10^{-5}\,\mathrm{eV}、振動数は 4.53×10−5/(4.135667696×10−15)=1.095×1010 Hz=10.95 GHz4.53\times10^{-5}/(4.135667696\times10^{-15})=1.095\times10^{10}\,\mathrm{Hz}=10.95\,\mathrm{GHz} である。Bohr の準位 3.4 eV3.4\,\mathrm{eV} に比べると 10−510^{-5} の大きさで、α2\alpha^2 の程度である。

(2) Zα=92×7.2973525693×10−3=0.67136Z\alpha=92\times7.2973525693\times10^{-3}=0.67136。Dirac では mc2(1−1−0.671362)=0.51099895 MeV×0.25887=132.3 keVmc^2\bigl(1-\sqrt{1-0.67136^2}\bigr)=0.51099895\,\mathrm{MeV}\times0.25887=132.3\,\mathrm{keV}、Bohr では mc2(Zα)2/2=0.51099895 MeV×0.22536=115.2 keVmc^2(Z\alpha)^2/2=0.51099895\,\mathrm{MeV}\times0.22536=115.2\,\mathrm{keV} である。Dirac の値が 15%15\% 大きい。1s1s の電子の速さは Zαc≈0.67cZ\alpha c\approx0.67c 程度で、もはや遅いとはいえない。重い原子の内殻電子では相対論の補正を摂動として扱うことはできず、式 (5.4.25) のような厳密な扱いが要る。

1 J. Schwinger (1948), Physical Review 73, 416–417.

2 L. L. Foldy and S. A. Wouthuysen (1950), Physical Review 78, 29–36。ユニタリ変換で大きい成分と小さい成分を 1/m1/m の各次数で切り離す方法。

3 W. E. Lamb, Jr. and R. C. Retherford (1947), Physical Review 72, 241–243.

木下の勉強ステータス

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AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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