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限界:強結合・低温・非 Markov・singular coupling limit

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第14章 開放系:弱結合の Markov 極限(van Hove・Davies・Lindblad)
目次
  1. 強結合と情報の逆流
  2. 低温と相関時間
  3. 近い Bohr 周波数
  4. singular coupling limit とそのほかの方法
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第14章 §14.6 ★★ Davies の定理の外で何が起きるか。情報の逆流・低温での長い相関時間・近い Bohr 周波数・別の極限

強結合と情報の逆流

結合が強く ΓτB\Gamma\tau_{\mathrm B} が 11 に近いと、縮約した時間発展は半群から外れるだけでなく、「分割可能性」も失う。各時刻の Φt\Phi_t が Φt=Φt,sΦs\Phi_t=\Phi_{t,s}\Phi_s(t≥st\ge s)と完全正値な Φt,s\Phi_{t,s} で分けられるとき、時間発展はCP 分割可能であるという。半群はもちろん、時間に依存する GKSL 形の生成子を持つ時間発展もこれに含まれる。CP 分割可能なら、2つの状態の跡距離 12∥Φtρ^1−Φtρ^2∥1\frac12\lVert \Phi_t\hat\rho_1-\Phi_t\hat\rho_2\rVert _1 は完全正値な写像で増えない(相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部第1章のデータ処理不等式)ので、時間について単調に減る。したがって跡距離がある時刻から増えれば、それは CP 分割可能でない証拠で、系から浴へ出た区別のための情報が系へ戻ってきたことを表す。この見方による非 Markov 性の判定は、H.-P. Breuer、E.-M. Laine、J. Piilo、B. Vacchini の総説(Rev. Mod. Phys. 88, 021002 (2016))と、Á. Rivas、S. F. Huelga、M. B. Plenio の総説(Rep. Prog. Phys. 77, 094001 (2014))にまとめられている(どちらも書誌を二次文献で照合)。

例題 14.7 Lorentz 型の浴の強結合で跡距離が増える ★★★

オリジナル例題 14.3 の模型で ΓτB=2\Gamma\tau_{\mathrm B}=2 とする(時間の単位を τB\tau_{\mathrm B} にとる)。

  • (1) c(t)=e−t/2[cos⁡3t2+13sin⁡3t2]c(t)=\mathrm{e}^{-t/2}\bigl[\cos\frac{\sqrt3t}{2}+\frac{1}{\sqrt3}\sin\frac{\sqrt3t}{2}\bigr] と c˙=−23e−t/2sin⁡3t2\dot c=-\frac{2}{\sqrt3}\mathrm{e}^{-t/2}\sin\frac{\sqrt3t}{2} を示せ。
  • (2) ρ^1=∣e⟩⟨e∣\hat\rho_1=| e \rangle \langle e | と ρ^2=∣g⟩⟨g∣\hat\rho_2=| g \rangle \langle g | から出発した2つの状態の跡距離が ∣c(t)∣2\lvert c(t)\rvert ^2 であることを示し、その最初の零点と、その後の極大の時刻と値を求めよ。
  • (3) この時間発展が CP 分割可能でないことを述べ、零点の時刻の写像について何が言えるかを述べよ。
解答

(1) δ=1−4=i3\delta=\sqrt{1-4}=\mathrm{i}\sqrt3 なので cosh⁡δt2=cos⁡3t2\cosh\frac{\delta t}{2}=\cos\frac{\sqrt3t}{2}、1δsinh⁡δt2=13sin⁡3t2\frac{1}{\delta}\sinh\frac{\delta t}{2}=\frac{1}{\sqrt3}\sin\frac{\sqrt3t}{2}。微分すると cos⁡\cos の項は打ち消し合い、sin⁡\sin の係数が −(32+123)=−23-\bigl(\frac{\sqrt3}{2}+\frac{1}{2\sqrt3}\bigr)=-\frac{2}{\sqrt3} になる。

(2) Φt(∣e⟩⟨e∣)=∣c∣2∣e⟩⟨e∣+(1−∣c∣2)∣g⟩⟨g∣\Phi_t(| e \rangle \langle e |)=\lvert c\rvert ^2| e \rangle \langle e |+(1-\lvert c\rvert ^2)| g \rangle \langle g |、Φt(∣g⟩⟨g∣)=∣g⟩⟨g∣\Phi_t(| g \rangle \langle g |)=| g \rangle \langle g | で、差は ∣c∣2(∣e⟩⟨e∣−∣g⟩⟨g∣)\lvert c\rvert ^2(| e \rangle \langle e |-| g \rangle \langle g |)、跡距離は ∣c∣2\lvert c\rvert ^2。c=0c=0 は tan⁡3t2=−3\tan\frac{\sqrt3t}{2}=-\sqrt3 から 3t2=2π3\frac{\sqrt3t}{2}=\frac{2\pi}{3}、t=4π33=2.418t=\frac{4\pi}{3\sqrt3}=2.418。その後 c˙=0\dot c=0 となる 3t2=π\frac{\sqrt3t}{2}=\pi、t=2π3=3.628t=\frac{2\pi}{\sqrt3}=3.628 でc=−e−π/3=−0.163c=-\mathrm{e}^{-\pi/\sqrt3}=-0.163、跡距離は e−2π/3=0.0266\mathrm{e}^{-2\pi/\sqrt3}=0.0266 まで回復する(図 14.3)。Markov の極限なら跡距離は e−Γt\mathrm{e}^{-\Gamma t} で単調に減る。

(3) 跡距離が t=2.418t=2.418 から 3.6283.628 まで増えるので、CP 分割可能でない。とくに t0=2.418t_0=2.418 では Φt0\Phi_{t_0} が ∣e⟩⟨e∣| e \rangle \langle e | と ∣g⟩⟨g∣| g \rangle \langle g | を同じ状態に移すので逆写像を持たず、t>t0t>t_0 の Φt\Phi_t を Φt,t0Φt0\Phi_{t,t_0}\Phi_{t_0} と分けることは、どんな写像 Φt,t0\Phi_{t,t_0} でもできない(Φt0\Phi_{t_0} の後では2つの状態が区別できないのに、Φt\Phi_t の後では区別できる)。この時刻を通る時間発展を、時間に依存する生成子 L(t)\mathcal L(t) の方程式で書くと、生成子が発散する(検算スクリプト)。

図

図 14.3 強結合(ΓτB=2\Gamma\tau_{\mathrm B}=2)の Lorentz 型の浴での上の準位の振幅。t=2.418τBt=2.418\tau_{\mathrm B} で 00 を横切り、符号を変えて大きさが回復する。跡距離 ∣c∣2\lvert c\rvert ^2 は t=3.628τBt=3.628\tau_{\mathrm B} で 0.02660.0266 まで戻る。

低温と相関時間

熱浴の相関関数には、浴そのものの時間 1/ωc1/\omega_{\mathrm c} のほかに、温度で決まる時間 ℏβ=ℏ/kBT\hbar\beta=\hbar/ k_{\mathrm B} T が現れる。KMS 条件で虚時間の方向に周期 ℏβ\hbar\beta を持つことから、低温ほど相関関数の減衰はゆっくりになり、温度 00 では指数関数でなくべきで減る(例:J∝ω\mathcal J\propto\omega の Ohm 型の浴では u−2u^{-2})。Davies の極限の小さいパラメータは「緩和の速さ × 相関時間」なので、低温では Γ≪kBT/ℏ\Gamma\ll k_{\mathrm B} T/\hbar という条件が加わり、温度を下げると同じ結合でも Markov の近似が悪くなる。

もう1つ、Davies の定常状態は系だけの Gibbs 状態 e−βH^S/ZS\mathrm{e}^{-\beta\hat H_S}/Z_S だが、有限の結合の真の平衡は全体の Gibbs 状態の部分トレース Tr⁡Be−βH^/Z\operatorname{Tr}_B\mathrm{e}^{-\beta\hat H}/Z で、両者は λ2\lambda^2 の次数で違う。低温で kBTk_{\mathrm B} T が結合のエネルギーに近づくと、この違いは無視できない。前に挙げた Merkli(2020)の結果は、正しい相互作用のある平衡に近づく半群を与える点でもこの問題に答えている(二次文献による)。

近い Bohr 周波数

永年近似で落とす項は、周期 2π/∣ω−ω′∣2\pi/\lvert \omega-\omega'\rvert で振動する。2つの Bohr 周波数の差が緩和の速さと同じ程度に小さい(多準位の原子の微細構造、弱く結合した2つの量子ビットなど)と、λ\lambda を固定した現実の系では、この項を平均で消すことができない。定理 14.3 は λ→0\lambda\to0 の極限なので、差が有限であれば最後には成り立つが、与えられた λ\lambda でどちらの近似が良いかは別の問題である。A. Trushechkin は、近い周波数の組の項だけを残し、GKSL 形と熱力学的な性質を保つ「部分的な永年近似」を提案した(Trushechkin (2021), Phys. Rev. A 103, 062226。二次文献で照合)。

singular coupling limit とそのほかの方法

van Hove の極限とは別に、浴の相関時間を 00 に送る極限がある。H^=H^S+ε−2H^B+ε−1H^I\hat H=\hat H_S+\varepsilon ^{-2}\hat H_B+\varepsilon ^{-1}\hat H_I のように浴の時間を速め、結合を強めて ε→0\varepsilon \to0 とすると、相関関数は δ(u)\delta(u) に近づき(白色雑音)、γ(ω)\gamma(\omega) は ω\omega によらない定数になる。V. Gorini と A. Kossakowski は、この singular coupling limit でも縮約した時間発展が完全正値な半群に近づくことを論じた(Gorini, Kossakowski (1976), J. Math. Phys. 17, 1298。二次文献で照合。Hamiltonian の尺度のとり方の細部は要確認)。極限の生成子には永年近似が要らないが、γ(ω)=γ(−ω)\gamma(\omega)=\gamma(-\omega) なので KMS の比 e−βℏω\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega} が 11、すなわち無限大の温度に当たり、定常状態は一般に Gibbs 状態にならない。量子光学の強いレーザー雑音のように、浴の帯域が系のすべての周波数より広い状況のための極限である。

Davies の極限の外を計算する方法としては、射影の方程式 (14.6) を時間局所な形に直して λ\lambda で展開する方法(時間たたみ込みのない形、TCL)、浴の相関関数を指数関数の和で表して補助の自由度の階層方程式に直す方法(谷村・久保(1989)の階層型運動方程式)、浴の一部を系に取り込んでから Markov の極限をとる方法がある。いずれも、極限の定理でなく、別の部分空間を選び直す A 型の操作として読める。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ε→0\varepsilon \to0(浴の相関時間 ε2\varepsilon ^2 と系の時間の比。白色雑音の極限) | 証明 要確認(Gorini–Kossakowski 1976 が扱った。尺度のとり方の正確な前提は原論文で確かめていない。極限の定常状態は熱平衡でない) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

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