tecktom.com

表示の選び方:ハミルトニアンの一番大きい項を対角にする

2026年10月17日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第3章 波動関数は基準の位置表示であること
目次
  1. 指針と、その根拠
  2. 運動エネルギーが一番大きいとき:平面波
  3. Coulomb 相互作用が一番大きいとき:サイトの表示
  4. 2サイトの模型で確かめる
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第1部 第3章 §1.3.5 ★★★ 一番大きい項の固有状態で表示すると、残りの項が作る非対角要素は小さく、摂動で扱える

指針と、その根拠

自由粒子は運動量表示で1行で解けた。H^\hat H がその表示で対角だったからである。実際の系のハミルトニアンは H^=H^0+V^\hat H=\hat H_0+\hat V のように2つ以上の項を持ち、どの表示でも厳密に対角にはならない。そのときは次の指針で表示を選ぶ。

表示の選び方

H^=H^0+V^\hat H=\hat H_0+\hat V で H^0\hat H_0 が一番大きい項なら、H^0\hat H_0 の固有状態 {∣n⟩}\{| n \rangle \} で表示する。その表示で H^\hat H は対角要素 En+VnnE_n+V_{nn} と、小さい非対角要素 VmnV_{mn}(m≠nm\neq n)を持つ行列になる。

この指針が良い理由を、2つの状態だけの場合で定量的に見る。H^0\hat H_0 の固有値を ±ΔE/2\pm\Delta E/2、V^\hat V の非対角要素を実数 vv とすると、H^=(ΔE/2vv−ΔE/2)\hat H=\begin{pmatrix}\Delta E/2&v\\ v&-\Delta E/2\end{pmatrix} の固有ベクトルは (cos⁡ϑ,sin⁡ϑ)T(\cos\vartheta,\sin\vartheta)^{\mathsf T}、(−sin⁡ϑ,cos⁡ϑ)T(-\sin\vartheta,\cos\vartheta)^{\mathsf T} で、混ざりの角 ϑ\vartheta は

tan⁡2ϑ=2vΔE,ϑ≈vΔE(∣v∣≪∣ΔE∣)(1.3.17)\tan2\vartheta=\frac{2v}{\Delta E},\qquad \vartheta\approx\frac{v}{\Delta E}\quad(\lvert v\rvert \ll\lvert \Delta E\rvert )\tag{1.3.17}

で決まる。∣v∣≪∣ΔE∣\lvert v\rvert \ll\lvert \Delta E\rvert なら固有ベクトルは表示の基底ベクトルとほぼ同じで、混ざる重みは ϑ2≈(v/ΔE)2\vartheta^2\approx(v/\Delta E)^2 にすぎない。多くの状態があるときも、Rayleigh–Schrödinger の摂動論で1次の固有ベクトルの補正は ∑m≠nVmnEn−Em∣m⟩\sum_{m\neq n}\frac{V_{mn}}{E_n-E_m}| m \rangle で、同じ比「非対角要素 ÷ 準位の間隔」が小さいかどうかが表示の良し悪しを決める。逆に小さいほうの項 V^\hat V を対角にする表示を選ぶと、大きいほうの H^0\hat H_0 が大きな非対角要素を作り、固有状態は多数の基底ベクトルに広がってしまう。

運動エネルギーが一番大きいとき:平面波

金属の伝導電子のように運動エネルギーが一番大きい系では、H^0=p^2/(2m)\hat H_0=\hat{\bm{p}}^2/(2m) の固有状態を探す。1次元で書くと −ℏ22mφ′′=Eφ-\frac{\hbar^2}{2m}\varphi''=E\varphi の一般解はφ=Aeκx+Be−κx\varphi=A\mathrm{e}^{\kappa x}+B\mathrm{e}^{-\kappa x}、κ2=−2mE/ℏ2\kappa^2=-2mE/\hbar^2 である。Re⁡κ≠0\operatorname{Re}\kappa\neq0 なら、A≠0A\neq0 の項は一方の無限遠で、B≠0B\neq0 の項は他方の無限遠で指数関数的に増え、1.3.3 節と同じ理由で一般化固有ベクトルにならない。残るのは κ=ik\kappa=\mathrm{i} k(kk は実数)、すなわち平面波 eikx\mathrm{e}^{\mathrm{i} kx} で、E=ℏ2k2/(2m)≥0E=\hbar^2k^2/(2m)\ge0 である。これは運動量表示 (1.3.9) の基底そのもので、運動エネルギーが一番大きい系では波数 kk で状態を指定する表示(kk 空間の表示)を選ぶことになる。結晶の周期ポテンシャルを足しても、並進対称性のおかげで kk は Bloch の波数として良い量子数に残り、バンド図はこの表示で描いた H^\hat H の対角要素にあたる(近似の数理 第12章)。

Coulomb 相互作用が一番大きいとき:サイトの表示

逆に、電子間の Coulomb 反発が運動エネルギーより大きい系では、kk 空間の表示は不利になる。3次元の Coulomb ポテンシャルの Fourier 変換は

∫e−μrre−ik⋅r d3r=4πk2+μ2 → μ→0  4πk2(1.3.18)\int\frac{\mathrm{e}^{-\mu r}}{r}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{r}}\,\mathrm{d}^3r=\frac{4\pi}{k^2+\mu^2}\ \xrightarrow{\ \mu\to0\ }\ \frac{4\pi}{k^2}\tag{1.3.18}

で(遠方を e−μr\mathrm{e}^{-\mu r} で切ってから極限を取る)、2電子の相互作用 1/∣r1−r2∣1/\lvert \bm{r}_1-\bm{r}_2\rvert は、平面波の対 (k1,k2)(\bm{k}_1,\bm{k}_2) を運動量移行 q\bm{q} だけずれた(k1+q,k2−q)(\bm{k}_1+\bm{q},\bm{k}_2-\bm{q}) へ、あらゆる q\bm{q} について重み 4π/q24\pi/q^2 でつなぐ。kk 空間の表示では、相互作用の非対角要素がいたる所に現れる。一方、位置表示(格子ならサイトの表示)では、相互作用は電子の位置だけの関数なので対角である。Coulomb 反発が一番大きい系では、電子を各原子の位置に置いた状態で表示を組む。次の模型でこの切り替わりを数値で見る。

2サイトの模型で確かめる

2つのサイト 1,21,2 に電子が2個あり、スピンは一重項(全体の波動関数はスピン部分が反対称なので、空間部分 Φ(i,j)\Phi(i,j) は i,ji,j の入れ替えで対称)とする。1電子のハミルトニアンはサイトの表示で h=(0−t−t0)h=\begin{pmatrix}0&-t\\-t&0\end{pmatrix}(t>0t>0 はサイト間の飛び移り)、同じサイトに2個いると U>0U>0 だけエネルギーが上がる。2電子のハミルトニアンは

H^=h⊗1^+1^⊗h+U∑i=1,2∣ii⟩⟨ii∣(1.3.19)\hat H=h\otimes\hat1+\hat1\otimes h+U\sum_{i=1,2}| ii \rangle \langle ii |\tag{1.3.19}

である。第1・2項が運動エネルギー、第3項が Coulomb 反発にあたり、これは格子の上の位置表示(サイトの表示)で書いた Schrödinger 方程式である。

サイトの表示では、対称な空間部分の基底を ∣11⟩| 11 \rangle、∣22⟩| 22 \rangle、∣S⟩≔(∣12⟩+∣21⟩)/2| \mathrm S \rangle \coloneqq(| 12 \rangle +| 21 \rangle )/\sqrt2 に取る。(h⊗1^+1^⊗h)∣11⟩=−t(∣21⟩+∣12⟩)=−2t∣S⟩(h\otimes\hat1+\hat1\otimes h)| 11 \rangle =-t(| 21 \rangle +| 12 \rangle )=-\sqrt2t| \mathrm S \rangle などから

H^≐(U0−2t0U−2t−2t−2t0)(1.3.20)\hat H\doteq\begin{pmatrix}U&0&-\sqrt2t\\0&U&-\sqrt2t\\-\sqrt2t&-\sqrt2t&0\end{pmatrix}\tag{1.3.20}

で、Coulomb 項は対角、運動エネルギーは非対角要素 −2t-\sqrt2t になる。

結合・反結合の表示(1電子の hh を対角にする表示。2サイトの kk 空間にあたる)では、∣b⟩=(∣1⟩+∣2⟩)/2| b \rangle =(| 1 \rangle +| 2 \rangle )/\sqrt2(固有値 −t-t)、∣a⟩=(∣1⟩−∣2⟩)/2| a \rangle =(| 1 \rangle -| 2 \rangle )/\sqrt2(固有値 +t+t)から∣bb⟩| bb \rangle、∣aa⟩| aa \rangle、(∣ab⟩+∣ba⟩)/2(| ab \rangle +| ba \rangle )/\sqrt2 を作る。∣bb⟩=12(∣11⟩+∣12⟩+∣21⟩+∣22⟩)| bb \rangle =\frac12(| 11 \rangle +| 12 \rangle +| 21 \rangle +| 22 \rangle ) などを Coulomb 項に入れると

H^≐(−2t+U/2U/20U/22t+U/2000U)(1.3.21)\hat H\doteq\begin{pmatrix}-2t+U/2&U/2&0\\U/2&2t+U/2&0\\0&0&U\end{pmatrix}\tag{1.3.21}

で、今度は運動エネルギーが対角、Coulomb 項が非対角要素 U/2U/2 を作る。

どちらの表示でも固有値は同じで、UU((∣11⟩−∣22⟩)/2(| 11 \rangle -| 22 \rangle )/\sqrt2)と

E±=U±U2+16t22(1.3.22)E_\pm=\frac{U\pm\sqrt{U^2+16t^2}}{2}\tag{1.3.22}

である。基底状態 E−E_- の近似は表示ごとに自然に出てくる。U≪tU\ll t では (1.3.21) の対角要素から E−≈−2t+U/2E_-\approx-2t+U/2(非対角 U/2U/2 と間隔 4t4t の比が小さい)、U≫tU\gg t では (1.3.20) の ∣S⟩| \mathrm S \rangle が非対角要素 −2t-\sqrt2t で間隔 UU の2状態とつながる2次の摂動からE−≈−2⋅(2t)2/U=−4t2/UE_-\approx-2\cdot(\sqrt2t)^2/U=-4t^2/U である。スピン三重項(空間部分が反対称な (∣12⟩−∣21⟩)/2(| 12 \rangle -| 21 \rangle )/\sqrt2)はどちらのサイトにも2個いられないので UU を感じず、飛び移りの寄与も打ち消してエネルギー 00 を持つ。一重項と三重項の差 J=4t2/UJ=4t^2/U が反強磁性の交換相互作用で、固体の巻ではハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部第1章でこの模型から導いた。

図

図 1.3.2 2サイトの模型の基底状態のエネルギー。厳密な値(点線)に、U≪tU\ll t では結合・反結合の表示の対角要素(青の実線)が、U≫tU\gg t ではサイトの表示の2次の摂動(赤の実線)が近づく。U≈4tU\approx4t の付近ではどちらの近似も外れ、どちらの表示でも非対角要素が準位の間隔と同じ大きさになる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの t/U→0t/U\to0(サイトの表示で飛び移りを2次の摂動として扱う) | 証明 証明済み(3行3列の行列の固有値は t/Ut/U について解析的で、収束する摂動級数の2次の項が −4t2/U-4t^2/U) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 1.3.6 どちらの表示で基底状態が1つの基底ベクトルに近いか ★★★

オリジナル2サイトの模型 (1.3.19) で、U/t=1U/t=1 と U/t=10U/t=10 の2つの場合を考える。

  1. (1) それぞれの場合に厳密な E−E_- を求め、−2t+U/2-2t+U/2 と −4t2/U-4t^2/U のどちらがよい近似かを答えよ。
  2. (2) U/t=10U/t=10 の基底状態を、サイトの表示で1次の摂動まで求め、∣S⟩| \mathrm S \rangle の重みを見積もれ。厳密な値は 0.9640.964 である。
  3. (3) U/t=1U/t=1 の基底状態について、結合・反結合の表示で ∣bb⟩| bb \rangle の重みを (1.3.17) で見積もれ。厳密な値は 0.9850.985 である。この場合にサイトの表示で一番大きい重み(∣S⟩| \mathrm S \rangle の 0.6210.621)と比べよ。
解答

(1) U/t=1U/t=1:E−=(1−17)t/2=−1.562tE_-=(1-\sqrt{17})t/2=-1.562t。−2t+U/2=−1.5t-2t+U/2=-1.5t(ずれ 4 %4\,\%)、−4t2/U=−4t-4t^2/U=-4t(大きく外れる)で、結合の表示の近似がよい。U/t=10U/t=10:E−=(10−116)t/2=−0.385tE_-=(10-\sqrt{116})t/2=-0.385t。−4t2/U=−0.4t-4t^2/U=-0.4t(ずれ 4 %4\,\%)、−2t+U/2=3t-2t+U/2=3t(符号も違う)で、サイトの表示の近似がよい。

(2) (1.3.20) で ∣S⟩| \mathrm S \rangle(エネルギー 00)が ∣11⟩| 11 \rangle、∣22⟩| 22 \rangle(エネルギー UU)とそれぞれ −2t-\sqrt2t でつながるので、1次の補正の係数は−2t0−U=2tU\frac{-\sqrt2t}{0-U}=\frac{\sqrt2t}{U} で、∣S⟩+2tU(∣11⟩+∣22⟩)| \mathrm S \rangle +\frac{\sqrt2t}{U}(| 11 \rangle +| 22 \rangle )。規格化すると ∣S⟩| \mathrm S \rangle の重みは1/(1+4t2/U2)=1/1.04=0.9621/(1+4t^2/U^2)=1/1.04=0.962 で、厳密な 0.9640.964 に近い。

(3) (1.3.21) の左上の2行2列で、間隔 ΔE=4t\Delta E=4t、非対角 v=U/2v=U/2。tan⁡2ϑ=2v/ΔE=U/(4t)=0.25\tan2\vartheta=2v/\Delta E=U/(4t)=0.25 から ϑ=0.1225\vartheta=0.1225、∣bb⟩| bb \rangle の重みは cos⁡2ϑ=0.985\cos^2\vartheta=0.985 で、この2行2列の中では (1.3.17) は厳密なので、値も一致する。サイトの表示では一番大きい重みでも 0.6210.621 で、基底状態は3つの基底ベクトルに広く分かれている。U/t=1U/t=1 ではサイトの表示は良い表示ではない。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ