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整数条件:ホロノミーと位相の一価性

2026年10月17日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第10部 第3章 前量子化
目次
  1. 平行移動とホロノミー
  2. 整数条件
  3. 例:平面・球面・単極子
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第10部 第3章 §10.3.4 ★★★ 閉じた曲面の上の ω\omega の積分が 2πℏ2\pi\hbar の整数倍でないと、曲率 (i/ℏ)ω(\mathrm{i}/\hbar)\omega の線束は存在しない。Aharonov–Bohm・Dirac の単極子・スピン 2S/ℏ∈Z2S/\hbar\in\mathbb{Z} が同じ条件

平行移動とホロノミー

曲線 γ(s)\gamma(s)(0≤s≤10\le s\le1)に沿って ∇γ˙F=0\nabla_{\dot\gamma}F=0 となるように波動関数の値を運ぶことを平行移動と呼ぶ。1つの開集合の中ではddsF(γ(s))+iℏθ(γ˙)F=0\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} s}F(\gamma(s))+\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\theta(\dot\gamma)F=0 なので

F(γ(1))=exp⁡(−iℏ∫γθ)F(γ(0)).(10.3.10)F(\gamma(1))=\exp\Bigl(-\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\int_\gamma\theta\Bigr)F(\gamma(0)).\tag{10.3.10}

閉曲線 γ\gamma を一周して戻ったときに掛かる位相をホロノミーと呼び、hol(γ)\mathrm{hol}(\gamma) と書く。γ\gamma が円板 DD の境界で、DD が1つの開集合に収まるなら、Stokes の定理から

hol(γ)=exp⁡(−iℏ∮γθ)=exp⁡(−iℏ∫Dω)(10.3.11)\mathrm{hol}(\gamma)=\exp\Bigl(-\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\oint_\gamma\theta\Bigr)=\exp\Bigl(-\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\int_D\omega\Bigr)\tag{10.3.11}

である(γ\gamma の向きは DD の向きから決まる境界の向き)。ゲージ変換 θ→θ+dλ\theta\to\theta+\mathrm{d}\lambda で ∮dλ=0\oint\mathrm{d}\lambda=0 なので、ホロノミーはゲージによらない。DD が1つの開集合に収まらないときも、DD を小さな片に分け、各片の境界のホロノミーを掛け合わせると内部の辺の寄与が往復で打ち消し合うので、式 (10.3.11) は DD 全体でそのまま成り立つ(ホロノミーが位相、すなわち可換な群の元なので掛ける順序を気にしなくてよい)。

整数条件

定理 10.3.5(整数条件 ★★★)

シンプレクティック多様体 (M,ω)(M,\omega) の上に、曲率 (i/ℏ)ω(\mathrm{i}/\hbar)\omega のエルミート接続を持つ複素線束があるならば、MM の中のすべての向きの付いた閉曲面 Σ\Sigma について

12πℏ∫Σω∈Z(10.3.12)\frac{1}{2\pi\hbar}\int_\Sigma\omega\in\mathbb{Z}\tag{10.3.12}

が成り立つ。逆に、この条件(ω/(2πℏ)\omega/(2\pi\hbar) の de Rham コホモロジー類が整数的であること)が成り立てば、そのような線束と接続が存在する。

必要性の証明

閉曲面 Σ\Sigma の上に閉曲線 γ\gamma を描き、Σ\Sigma を2つの面 Σ1\Sigma_1、Σ2\Sigma_2 に分ける(図 10.3.1)。γ\gamma に Σ1\Sigma_1 の境界としての向きを付けると、Σ2\Sigma_2 の境界としては逆向きになる。ホロノミーを Σ1\Sigma_1 で計算すると exp⁡(−iℏ∫Σ1ω)\exp(-\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\int_{\Sigma_1}\omega)、Σ2\Sigma_2 で計算すると(向きが逆なので)exp⁡(+iℏ∫Σ2ω)\exp(+\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\int_{\Sigma_2}\omega)。ホロノミーは線束と曲線 γ\gamma だけで決まる量なので2つは等しく、exp⁡(−iℏ∫Σω)=1\exp(-\frac{\mathrm{i}}{\hbar}\int_\Sigma\omega)=1、すなわち ∫Σω∈2πℏZ\int_\Sigma\omega\in2\pi\hbar\mathbb{Z} である。

十分性(線束を実際に組み立てること)は、各開集合の θα\theta_\alpha を貼り合わせる位相 e−iλαβ/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\lambda_{\alpha\beta}/\hbar} が3つの開集合の重なりで矛盾しないことを、Čech コホモロジーを使って示すもので、ここでは引用にとどめる。B. Kostant がこの形で前量子化を定式化した1B. Kostant (1970), “Quantization and unitary representations”, Lecture Notes in Mathematics 170, 87–208.下の脚注へ。同じ時期に J.-M. Souriau も同じ構成に達している2J.-M. Souriau (1970), Structure des systèmes dynamiques, Dunod.下の脚注へ。MM が単連結でないときは、同じ曲率の線束が複数あり、それらは閉曲線のまわりの余分なホロノミー(曲率を持たない平らな接続)で区別される。これは、磁場がかかっていない領域を一周しても磁束の分だけ位相が付く Aharonov–Bohm の状況と同じである。

図

図 10.3.1 整数条件の証明。閉曲面を閉曲線 γ\gamma で2つに分け、γ\gamma のホロノミーを上の面と下の面の両方で計算する。γ\gamma は上の面の境界としての向きを持ち、下の面の境界としては逆向きになる。

例:平面・球面・単極子

平面と余接束。R2fd\mathbb{R}^{2f_{\mathrm d}} や、配位空間 QQ の余接束 T∗QT^*Q(普通の力学の相空間)では ω=dθ\omega=\mathrm{d}\theta が全体で成り立つので、どの閉曲面でも Stokes の定理から ∫Σω=0\int_\Sigma\omega=0 で、条件は自動的に満たされる。普通の力学の前量子化では、整数条件は表に出てこない。

球面。第10部第2章の球面の面積形式 ωS=Ssin⁡ϑ dϑ∧dφ\omega_S=S\sin\vartheta\,\mathrm{d}\vartheta\wedge\mathrm{d}\varphi(S>0S>0)では全体の積分が 4πS4\pi S なので、条件 (10.3.12) は

4πS2πℏ=2Sℏ∈Z(10.3.13)\frac{4\pi S}{2\pi\hbar}=\frac{2S}{\hbar}\in\mathbb{Z}\tag{10.3.13}

となる。球面全体で定義される θ\theta は無いので、北極のまわりの θN=S(1−cos⁡ϑ) dφ\theta_N=S(1-\cos\vartheta)\,\mathrm{d}\varphi(北極 ϑ=0\vartheta=0 で0になり滑らか)と、南極のまわりの θS=−S(1+cos⁡ϑ) dφ\theta_S=-S(1+\cos\vartheta)\,\mathrm{d}\varphi の2枚を使う。どちらも dθ=Ssin⁡ϑ dϑ∧dφ\mathrm{d}\theta=S\sin\vartheta\,\mathrm{d}\vartheta\wedge\mathrm{d}\varphi を満たし、赤道付近の重なりでθN−θS=2S dφ=d(2Sφ)\theta_N-\theta_S=2S\,\mathrm{d}\varphi=\mathrm{d}(2S\varphi) である。ゲージ変換の規則から、切断の2つの表し方は FN=e−2iSφ/ℏFSF_N=\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} S\varphi/\hbar}F_S で結ばれる。φ\varphi を一周させても値が1つに定まる(一価である)ためには e−2iS⋅2π/ℏ=1\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} S\cdot2\pi/\hbar}=1、すなわち 2S/ℏ∈Z2S/\hbar\in\mathbb{Z} が必要で、式 (10.3.13) と同じ条件が直接出る。SS をスピンの大きさと読むと、S=ℏ/2,ℏ,3ℏ/2,…S=\hbar/2,\hbar,3\hbar/2,\dots だけが許される。量子化された Hilbert 空間の次元が 2S/ℏ+12S/\hbar+1 になることは、偏極を入れた第10部第5章で示す(第10部第5章)。

Dirac の単極子。原点に磁荷を置き、それが出す全磁束を gg(単位 Wb)とする。原点を囲む球面の上で、電荷 +e+e の粒子の共変微分の曲率は −(ie/ℏ)B-(\mathrm{i} e/\hbar)B で、例題 10.3.2 と同じく前量子化の ω\omega に −eB-eB の面積分が対応する。荷電粒子の波動関数が球面の上で矛盾なく定義される条件は、整数条件と同じ形の

eg2πℏ∈Z,g=n he(10.3.14)\frac{eg}{2\pi\hbar}\in\mathbb{Z},\qquad g=n\,\frac{h}{e}\tag{10.3.14}

である。P. A. M. Dirac は、単極子が1つでも存在すれば電荷が量子化されなければならないことをこの条件から導いた3P. A. M. Dirac (1931), Proc. R. Soc. Lond. A 133, 60–72.下の脚注へ。単極子のまわりの「Dirac の紐」は、球面の上で θN\theta_N と θS\theta_S のどちらか1枚だけを無理に全体へ広げたときの特異点で、2枚に分ければ紐は不要になる。同じ構造はスピンの Berry 位相にも現れ、パラメータ空間の縮退点が単極子の役を受け持つ(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第9章)。

Aharonov–Bohm 効果。細いソレノイドの外では磁場が0でも、ソレノイドを一周する経路のホロノミーは式 (10.3.11) の exp⁡(ieΦ/ℏ)\exp(\mathrm{i} e\Phi/\hbar)(Φ\Phi は内部の磁束)で、二つの経路で干渉させると縞が eΦ/he\Phi/h 本分ずれる4Y. Aharonov and D. Bohm (1959), Phys. Rev. 115, 485–491.下の脚注へ。外村彰らは、超伝導体で磁場を完全に閉じ込めたトロイダル磁石を電子線ホログラフィーで調べ、この位相のずれを確かめた5A. Tonomura et al. (1986), Phys. Rev. Lett. 56, 792–795.下の脚注へ。磁場の無い領域にいる粒子が位相を受けることは、波動関数が単なる関数でなく「接続を持つ線束の切断」であることの実験的な証拠と読める(第3部第7章)。

例題 10.3.4 磁束量子と干渉縞のずれ ★★

オリジナル

  1. (1) 磁束 h/eh/e の数値を求めよ。半径 1 μm1\,\mu\mathrm{m} の円の断面にこの磁束を通すには、どれだけの磁束密度が要るか。
  2. (2) 同じ断面に 0.5 mT0.5\,\mathrm{mT} の磁場を閉じ込めたとき、Aharonov–Bohm の干渉縞は何本分ずれるか。
  3. (3) 単極子の条件 (10.3.14) を、超伝導の磁束量子 h/(2e)h/(2e) と比べよ。
解答

(1) h=6.62607015×10−34 J sh=6.62607015\times10^{-34}\,\mathrm{J\,s}、e=1.602176634×10−19 Ce=1.602176634\times10^{-19}\,\mathrm C から h/e=4.136×10−15 Wbh/e=4.136\times10^{-15}\,\mathrm{Wb}。断面積 π(10−6 m)2=3.142×10−12 m2\pi(10^{-6}\,\mathrm m)^2=3.142\times10^{-12}\,\mathrm m^2 で割ると、B=1.32×10−3 T=1.32 mTB=1.32\times10^{-3}\,\mathrm T=1.32\,\mathrm{mT}。

(2) Φ=0.5×10−3×3.142×10−12=1.571×10−15 Wb\Phi=0.5\times10^{-3}\times3.142\times10^{-12}=1.571\times10^{-15}\,\mathrm{Wb}。ホロノミーの位相は eΦ/ℏ=2π Φ/(h/e)e\Phi/\hbar=2\pi\,\Phi/(h/e) で、縞のずれは Φ/(h/e)=0.380\Phi/(h/e)=0.380 本分。ずれは整数でなくてよい。R3\mathbb{R}^3 からソレノイドを除いた空間は単連結でなく、閉曲面で囲める磁束が無い(ソレノイドは無限に長い)ので、整数条件は課されない。

(3) 単極子の最小の磁束は h/e=4.14×10−15 Wbh/e=4.14\times10^{-15}\,\mathrm{Wb} で、超伝導体の磁束量子 h/(2e)=2.07×10−15 Wbh/(2e)=2.07\times10^{-15}\,\mathrm{Wb} の2倍である。超伝導では波動関数を持つのが電荷 2e2e の Cooper 対なので、同じ一価性の条件で ee が 2e2e に置き換わる。どちらも「閉じた経路を一周した位相が 2π2\pi の整数倍」という同じ形の条件で、超伝導リングの磁束の量子化は整数条件の平らな線束版(磁束の無い場所を一周する経路の一価性)にあたる。

1 B. Kostant (1970), “Quantization and unitary representations”, Lecture Notes in Mathematics 170, 87–208.

2 J.-M. Souriau (1970), Structure des systèmes dynamiques, Dunod.

3 P. A. M. Dirac (1931), Proc. R. Soc. Lond. A 133, 60–72.

4 Y. Aharonov and D. Bohm (1959), Phys. Rev. 115, 485–491.

5 A. Tonomura et al. (1986), Phys. Rev. Lett. 56, 792–795.

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