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表の方程式だけで振動子を解く

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 観測量だけで理論を作る(Heisenberg 1925 の動機)
目次
  1. 運動方程式から遷移の選択則が出る
  2. 総和則で振幅を決める
  3. エネルギーの表
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第2部 第1章 §2.1.5 ★★★ Heisenberg が1925年に実際に解いた問題。運動方程式から隣どうしの遷移だけが残り、総和則と最低の状態の存在から En=ℏω(n+12)E_n=\hbar\omega(n+\frac12) が出る(共通例題①)

運動方程式から遷移の選択則が出る

調和振動子 V=12mω2x2V=\frac12m\omega^2x^2 を、ここまでの要請だけで解く。この巻の共通例題①である。運動方程式 (2.1.13) からx¨=−ω2x\ddot{\mathbf x}=-\omega^2\mathbf x で、表の要素では x¨nm=−ωnm2xnm\ddot x_{nm}=-\omega_{nm}^2x_{nm} なので

(ωnm2−ω2) xnm=0(2.1.23)(\omega_{nm}^2-\omega^2)\,x_{nm}=0\tag{2.1.23}

を得る。xnm≠0x_{nm}\neq0 になれるのは ωnm=±ω\omega_{nm}=\pm\omega、すなわち En−Em=±ℏωE_n-E_m=\pm\hbar\omega の組だけである。古典の調和振動子が基本振動 α=±1\alpha=\pm1 しか持たないことに対応する。

総和則 (2.1.20) によると、どの状態 nn にも xkn≠0x_{kn}\neq0 となる相手 kk がある(なければ左辺が0になる)。その相手のエネルギーは En±ℏωE_n\pm\hbar\omega なので、準位は間隔 ℏω\hbar\omega で並ぶ。さらにエネルギーの対角要素は

Hnn=12m∑k∣pnk∣2+mω22∑k∣xnk∣2≥0H_{nn}=\frac{1}{2m}\sum_k\lvert p_{nk}\rvert ^2+\frac{m\omega^2}{2}\sum_k\lvert x_{nk}\rvert ^2\ge0

で下に有界だから、最も低い状態がある。最低の状態から番号を n=0,1,2,…n=0,1,2,\dots と振り、En+1−En=ℏωE_{n+1}-E_n=\hbar\omega とする。最低の状態 n=0n=0 にはそれより下の相手がないので、x0,−1=0x_{0,-1}=0 と書く。

総和則で振幅を決める

状態 nn の相手は n±1n\pm1 だけで、ωn+1,n=ω\omega_{n+1,n}=\omega、ωn−1,n=−ω\omega_{n-1,n}=-\omega である。総和則 (2.1.20) は

ω∣xn+1,n∣2−ω∣xn−1,n∣2=ℏ2m\omega\lvert x_{n+1,n}\rvert ^2-\omega\lvert x_{n-1,n}\rvert ^2=\frac{\hbar}{2m}

となり、∣xn,n−1∣2\lvert x_{n,n-1}\rvert ^2 についての漸化式になる。x0,−1=0x_{0,-1}=0 から始めて順に足すと

∣xn+1,n∣2=(n+1)ℏ2mω(2.1.24)\lvert x_{n+1,n}\rvert ^2=\frac{(n+1)\hbar}{2m\omega}\tag{2.1.24}

を得る。位相は表の定義の中で選べるので、xn+1,n=xn,n+1=(n+1)ℏ/(2mω)x_{n+1,n}=x_{n,n+1}=\sqrt{(n+1)\hbar/(2m\omega)} と実数に取ってよい。

エネルギーの表

運動量の表は式 (2.1.10) から pn+1,n=imω xn+1,np_{n+1,n}=\mathrm{i} m\omega\,x_{n+1,n}、pn,n+1=−imω xn,n+1p_{n,n+1}=-\mathrm{i} m\omega\,x_{n,n+1} である。エネルギーの表の対角要素は、例題 2.1.2 の結果を x\mathbf x と p\mathbf p に当てはめて

(p2)nn=m2ω2(∣xn,n−1∣2+∣xn,n+1∣2),(x2)nn=∣xn,n−1∣2+∣xn,n+1∣2(\mathbf p^2)_{nn}=m^2\omega^2\bigl(\lvert x_{n,n-1}\rvert ^2+\lvert x_{n,n+1}\rvert ^2\bigr),\qquad (\mathbf x^2)_{nn}=\lvert x_{n,n-1}\rvert ^2+\lvert x_{n,n+1}\rvert ^2

なので、

Hnn=(p2)nn2m+mω22(x2)nn=mω2(nℏ2mω+(n+1)ℏ2mω)=ℏω(n+12)(2.1.25)H_{nn}=\frac{(\mathbf p^2)_{nn}}{2m}+\frac{m\omega^2}{2}(\mathbf x^2)_{nn} =m\omega^2\Bigl(\frac{n\hbar}{2m\omega}+\frac{(n+1)\hbar}{2m\omega}\Bigr)=\hbar\omega\Bigl(n+\frac12\Bigr)\tag{2.1.25}

となる。非対角要素も確かめておく。(p2)n,n+2=pn,n+1pn+1,n+2=(−imω)2xn,n+1xn+1,n+2=−m2ω2xn,n+1xn+1,n+2(\mathbf p^2)_{n,n+2}=p_{n,n+1}p_{n+1,n+2}=(-\mathrm{i} m\omega)^2x_{n,n+1}x_{n+1,n+2}=-m^2\omega^2x_{n,n+1}x_{n+1,n+2}、(x2)n,n+2=xn,n+1xn+1,n+2(\mathbf x^2)_{n,n+2}=x_{n,n+1}x_{n+1,n+2} なので、Hn,n+2=(−mω22+mω22)xn,n+1xn+1,n+2=0H_{n,n+2}=\bigl(-\frac{m\omega^2}{2}+\frac{m\omega^2}{2}\bigr)x_{n,n+1}x_{n+1,n+2}=0 で、H\mathbf H は確かに対角である。最初に置いた En+1−En=ℏωE_{n+1}-E_n=\hbar\omega とも矛盾しない。

図

図 2.1.2 表の方程式だけで解いた調和振動子。運動方程式から隣どうしの遷移(青の矢印)だけが0でない振幅を持ち、2つ離れた遷移(赤の破線)は0になる(式 (2.1.23))。振幅の2乗は総和則から (n+1)ℏ/(2mω)(n+1)\hbar/(2m\omega) に決まり(式 (2.1.24))、エネルギーは ℏω(n+12)\hbar\omega(n+\frac12) になる。

古い量子論の J=nℏJ=n\hbar からは E=Jω=nℏωE=J\omega=n\hbar\omega が出て、零点エネルギー 12ℏω\frac12\hbar\omega は出なかった。行列力学では、量子化条件を微分の形 (2.1.18) にしたことで定数の選択が要らなくなり、12\frac12 は最低の状態の条件 x0,−1=0x_{0,-1}=0 と総和則の組み合わせから出てくる。

スペクトル En=ℏω(n+12)E_n=\hbar\omega(n+\frac12) が分かると、熱平衡の分配関数と平均の量子数もこの段階で計算できる。等比級数の和から

Z=∑n=0∞e−βℏω(n+12)=e−βℏω/21−e−βℏω=12sinh⁡(βℏω/2),⟨n⟩=−1ℏω∂ln⁡Z∂β−12=1eβℏω−1(2.1.26)Z=\sum_{n=0}^\infty\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega(n+\frac12)}=\frac{\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega/2}}{1-\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega}}=\frac{1}{2\sinh(\beta\hbar\omega/2)},\qquad \langle n \rangle =-\frac{1}{\hbar\omega}\frac{\partial \ln Z}{\partial \beta}-\frac12=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1}\tag{2.1.26}

で、共通例題①の3つの答えがそろう。熱平衡の状態そのもの(密度行列 ρ^=e−βH^/Z\hat\rho=\mathrm{e}^{-\beta\hat H}/Z)は第4部の対象で、第4部第4章で同じ ZZ を密度行列の言葉で出す。同じスペクトルを生成消滅演算子の代数で出す方法は第2部第4章で扱う。

例題 2.1.5 振動子の表から位置と運動量のばらつきを読む ★★

オリジナル調和振動子の表 (2.1.24) を使う。

  1. (1) (x2)nn(\mathbf x^2)_{nn} と (p2)nn(\mathbf p^2)_{nn} を求め、(x2)nn(p2)nn=(n+12)ℏ\sqrt{(\mathbf x^2)_{nn}(\mathbf p^2)_{nn}}=(n+\frac12)\hbar を示せ。
  2. (2) (x2)00(\mathbf x^2)_{00} と (x2)33(\mathbf x^2)_{33} を求めよ。
  3. (3) 古典の振動子でエネルギー EE のとき、x2x^2 の時間平均は E/(mω2)E/(m\omega^2) である。E=EnE=E_n と置いて (2) と比べよ。
解答

(1) 例題 2.1.2 の結果から (x2)nn=∣xn,n−1∣2+∣xn+1,n∣2=ℏ2mω(n+n+1)=(2n+1)ℏ2mω(\mathbf x^2)_{nn}=\lvert x_{n,n-1}\rvert ^2+\lvert x_{n+1,n}\rvert ^2=\frac{\hbar}{2m\omega}(n+n+1)=\frac{(2n+1)\hbar}{2m\omega}。同様に (p2)nn=m2ω2(x2)nn=(2n+1)mℏω2(\mathbf p^2)_{nn}=m^2\omega^2(\mathbf x^2)_{nn}=\frac{(2n+1)m\hbar\omega}{2}。積の平方根は (2n+1)ℏ2=(n+12)ℏ\frac{(2n+1)\hbar}{2}=(n+\frac12)\hbar。対角要素 xnnx_{nn}, pnnp_{nn} は0なので、これは状態 nn での位置と運動量の標準偏差の積で、n=0n=0 で最小値 ℏ/2\hbar/2 をとる。

(2) (x2)00=ℏ2mω(\mathbf x^2)_{00}=\frac{\hbar}{2m\omega}、(x2)33=7ℏ2mω(\mathbf x^2)_{33}=\frac{7\hbar}{2m\omega}。

(3) En/(mω2)=(2n+1)ℏ2mωE_n/(m\omega^2)=\frac{(2n+1)\hbar}{2m\omega} で、(1) と完全に一致する。調和振動子では、零点エネルギーを含めた EnE_n を古典の式に入れると、x2x^2 の平均が量子の対角要素と等しくなる。これはビリアル定理(例題 2.1.3 (2))で Vnn=En/2V_{nn}=E_n/2 となることの言い換えである。

木下の勉強ステータス

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