量子力学の様々な構成方法 第2部 第1章 §2.1.5 ★★★ Heisenberg が1925年に実際に解いた問題。運動方程式から隣どうしの遷移だけが残り、総和則と最低の状態の存在から En=ℏω(n+21) が出る(共通例題①)
運動方程式から遷移の選択則が出る
調和振動子 V=21mω2x2 を、ここまでの要請だけで解く。この巻の共通例題①である。運動方程式 (2.1.13) からx¨=−ω2x で、表の要素では x¨nm=−ωnm2xnm なので
(ωnm2−ω2)xnm=0(2.1.23)
を得る。xnm=0 になれるのは ωnm=±ω、すなわち En−Em=±ℏω の組だけである。古典の調和振動子が基本振動 α=±1 しか持たないことに対応する。
総和則 (2.1.20) によると、どの状態 n にも xkn=0 となる相手 k がある(なければ左辺が0になる)。その相手のエネルギーは En±ℏω なので、準位は間隔 ℏω で並ぶ。さらにエネルギーの対角要素は
Hnn=2m1k∑∣pnk∣2+2mω2k∑∣xnk∣2≥0
で下に有界だから、最も低い状態がある。最低の状態から番号を n=0,1,2,… と振り、En+1−En=ℏω とする。最低の状態 n=0 にはそれより下の相手がないので、x0,−1=0 と書く。
総和則で振幅を決める
状態 n の相手は n±1 だけで、ωn+1,n=ω、ωn−1,n=−ω である。総和則 (2.1.20) は
ω∣xn+1,n∣2−ω∣xn−1,n∣2=2mℏ
となり、∣xn,n−1∣2 についての漸化式になる。x0,−1=0 から始めて順に足すと
∣xn+1,n∣2=2mω(n+1)ℏ(2.1.24)
を得る。位相は表の定義の中で選べるので、xn+1,n=xn,n+1=(n+1)ℏ/(2mω) と実数に取ってよい。
エネルギーの表
運動量の表は式 (2.1.10) から pn+1,n=imωxn+1,n、pn,n+1=−imωxn,n+1 である。エネルギーの表の対角要素は、例題 2.1.2 の結果を x と p に当てはめて
(p2)nn=m2ω2(∣xn,n−1∣2+∣xn,n+1∣2),(x2)nn=∣xn,n−1∣2+∣xn,n+1∣2
なので、
Hnn=2m(p2)nn+2mω2(x2)nn=mω2(2mωnℏ+2mω(n+1)ℏ)=ℏω(n+21)(2.1.25)
となる。非対角要素も確かめておく。(p2)n,n+2=pn,n+1pn+1,n+2=(−imω)2xn,n+1xn+1,n+2=−m2ω2xn,n+1xn+1,n+2、(x2)n,n+2=xn,n+1xn+1,n+2 なので、Hn,n+2=(−2mω2+2mω2)xn,n+1xn+1,n+2=0 で、H は確かに対角である。最初に置いた En+1−En=ℏω とも矛盾しない。

図 2.1.2 表の方程式だけで解いた調和振動子。運動方程式から隣どうしの遷移(青の矢印)だけが0でない振幅を持ち、2つ離れた遷移(赤の破線)は0になる(式 (2.1.23))。振幅の2乗は総和則から (n+1)ℏ/(2mω) に決まり(式 (2.1.24))、エネルギーは ℏω(n+21) になる。
古い量子論の J=nℏ からは E=Jω=nℏω が出て、零点エネルギー 21ℏω は出なかった。行列力学では、量子化条件を微分の形 (2.1.18) にしたことで定数の選択が要らなくなり、21 は最低の状態の条件 x0,−1=0 と総和則の組み合わせから出てくる。
スペクトル En=ℏω(n+21) が分かると、熱平衡の分配関数と平均の量子数もこの段階で計算できる。等比級数の和から
Z=n=0∑∞e−βℏω(n+21)=1−e−βℏωe−βℏω/2=2sinh(βℏω/2)1,⟨n⟩=−ℏω1∂β∂lnZ−21=eβℏω−11(2.1.26)
で、共通例題①の3つの答えがそろう。熱平衡の状態そのもの(密度行列 ρ^=e−βH^/Z)は第4部の対象で、第4部第4章で同じ Z を密度行列の言葉で出す。同じスペクトルを生成消滅演算子の代数で出す方法は第2部第4章で扱う。
例題 2.1.5 振動子の表から位置と運動量のばらつきを読む ★★
オリジナル調和振動子の表 (2.1.24) を使う。
- (1) (x2)nn と (p2)nn を求め、(x2)nn(p2)nn=(n+21)ℏ を示せ。
- (2) (x2)00 と (x2)33 を求めよ。
- (3) 古典の振動子でエネルギー E のとき、x2 の時間平均は E/(mω2) である。E=En と置いて (2) と比べよ。
解答
(1) 例題 2.1.2 の結果から (x2)nn=∣xn,n−1∣2+∣xn+1,n∣2=2mωℏ(n+n+1)=2mω(2n+1)ℏ。同様に (p2)nn=m2ω2(x2)nn=2(2n+1)mℏω。積の平方根は 2(2n+1)ℏ=(n+21)ℏ。対角要素 xnn, pnn は0なので、これは状態 n での位置と運動量の標準偏差の積で、n=0 で最小値 ℏ/2 をとる。
(2) (x2)00=2mωℏ、(x2)33=2mω7ℏ。
(3) En/(mω2)=2mω(2n+1)ℏ で、(1) と完全に一致する。調和振動子では、零点エネルギーを含めた En を古典の式に入れると、x2 の平均が量子の対角要素と等しくなる。これはビリアル定理(例題 2.1.3 (2))で Vnn=En/2 となることの言い換えである。
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