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量子化条件:作用の条件から交換関係へ

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 観測量だけで理論を作る(Heisenberg 1925 の動機)
目次
  1. 古い量子化条件を Fourier 係数で書く
  2. 微分を準位の差に読み替える
  3. Born と Jordan の形:
  4. 数値例:4次の項を足した振動子
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第2部 第1章 §2.1.4 ★★★ Bohr–Sommerfeld の条件を JJ で微分し、微分を準位の差に読み替えると振動子強度の総和則になる。その対角要素と、運動方程式から出る非対角要素0を合わせると xp−px=iℏ\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x=\mathrm{i}\hbar になる

古い量子化条件を Fourier 係数で書く

ここまでの要請 (M1)(M2) と運動方程式だけでは、xnmx_{nm} と ωnm\omega_{nm} はまだ決まらない。古典の運動方程式は JJ の連続な族の解を持つので、その中から量子の状態を選ぶ条件が要る。古い量子論ではこれを Bohr–Sommerfeld の条件 J=nℏJ=n\hbar で与えた(転回点の位相を入れると (n+12)ℏ(n+\frac12)\hbar になる。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第14章)。しかしこの条件は軌道の積分 ∮p dx\oint p\,\mathrm{d} x で書かれているので、軌道を捨てた理論ではそのまま使えない。Heisenberg はこれを Fourier 係数で書き直した。dx=x˙ dt\mathrm{d} x=\dot x\,\mathrm{d} t と p=mx˙p=m\dot x から、1周期 T=2π/ωT=2\pi/\omega について

∮p dx=∫0Tmx˙2 dt=m∑α,β(iαωXα)(iβωXβ)∫0Tei(α+β)ωtdt=mT∑αα2ω2∣Xα∣2\oint p\,\mathrm{d} x=\int_0^Tm\dot x^2\,\mathrm{d} t =m\sum_{\alpha,\beta}(\mathrm{i}\alpha\omega X_\alpha)(\mathrm{i}\beta\omega X_\beta)\int_0^T\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\alpha+\beta)\omega t}\mathrm{d} t =mT\sum_\alpha\alpha^2\omega^2\lvert X_\alpha\rvert ^2

となる。積分は β=−α\beta=-\alpha の項だけで TT になり、X−α=Xα∗X_{-\alpha}=X_\alpha^* を使った。2π2\pi で割ると

J=m∑α=−∞∞α2ω∣Xα∣2.(2.1.17)J=m\sum_{\alpha=-\infty}^{\infty}\alpha^2\omega\lvert X_\alpha\rvert ^2.\tag{2.1.17}

条件 J=nℏJ=n\hbar と J=(n+12)ℏJ=(n+\frac12)\hbar は定数の分だけ違い、どちらが正しいかは古い量子論の中では決まらない。Heisenberg は定数を消すために、式 (2.1.17) を JJ で微分した。dJdJ=1\frac{\mathrm{d} J}{\mathrm{d} J}=1 だから

1=m∑α=−∞∞α ddJ(α ω∣Xα∣2)=2m∑α=1∞α ddJ(α ω∣Xα∣2)(2.1.18)1=m\sum_{\alpha=-\infty}^{\infty}\alpha\,\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} J}\bigl(\alpha\,\omega\lvert X_\alpha\rvert ^2\bigr) =2m\sum_{\alpha=1}^{\infty}\alpha\,\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} J}\bigl(\alpha\,\omega\lvert X_\alpha\rvert ^2\bigr)\tag{2.1.18}

を得る。α\alpha と −α-\alpha の項は等しいので、正の α\alpha だけの和の2倍にまとめた。

微分を準位の差に読み替える

式 (2.1.5) では、エネルギーの微分 αℏdHdJ\alpha\hbar\frac{\mathrm{d} H}{\mathrm{d} J} を準位の差 En−En−αE_n-E_{n-\alpha} に読み替えると Bohr の振動数が出た。Heisenberg は同じ読み替えを、JJ の関数すべてに当てはめた。α\alpha 番目の高調波に付いた量 Gα(J)G_\alpha(J) が、遷移 n→n−αn\to n-\alpha に付いた量 G(n,n−α)G(n,n-\alpha) に対応するとき、

αℏdGαdJ ⟷ G(n+α,n)−G(n,n−α)(2.1.19)\alpha\hbar\frac{\mathrm{d} G_\alpha}{\mathrm{d} J}\ \longleftrightarrow\ G(n+\alpha,n)-G(n,n-\alpha)\tag{2.1.19}

と置く。右辺は「状態 nn の上へ α\alpha 離れた遷移」と「下へ α\alpha 離れた遷移」の差で、J=nℏJ=n\hbar の前後で幅 αℏ\alpha\hbar の差の商をとることに当たる。式 (2.1.18) の Gα=αω∣Xα∣2G_\alpha=\alpha\omega\lvert X_\alpha\rvert ^2 は、前節の対応で G(n,n−α)=ωn,n−α∣xn,n−α∣2G(n,n-\alpha)=\omega_{n,n-\alpha}\lvert x_{n,n-\alpha}\rvert ^2 になる。読み替えると

ℏ=2m∑α=1∞(ωn+α,n∣xn+α,n∣2−ωn,n−α∣xn,n−α∣2).\hbar=2m\sum_{\alpha=1}^\infty\Bigl(\omega_{n+\alpha,n}\lvert x_{n+\alpha,n}\rvert ^2-\omega_{n,n-\alpha}\lvert x_{n,n-\alpha}\rvert ^2\Bigr).

第1項で k=n+αk=n+\alpha、第2項で k=n−αk=n-\alpha と置き、ωkn=−ωnk\omega_{kn}=-\omega_{nk} を使うと、2つの項は1つの和にまとまる。

∑kωkn∣xkn∣2=ℏ2mすなわち∑kfkn=1,fkn≔2m ωkn∣xkn∣2ℏ.(2.1.20)\sum_k\omega_{kn}\lvert x_{kn}\rvert ^2=\frac{\hbar}{2m}\qquad\text{すなわち}\qquad \sum_k f_{kn}=1,\quad f_{kn}\coloneqq\frac{2m\,\omega_{kn}\lvert x_{kn}\rvert ^2}{\hbar}.\tag{2.1.20}

これが Heisenberg の量子化条件で、Heisenberg 自身が注意したように、同じ年に W. Kuhn と W. Thomas が分散の理論から導いた振動子強度の総和則(Thomas–Reiche–Kuhn の総和則)と一致する1W. Kuhn (1925), Z. Phys. 33, 408–412;W. Thomas (1925), Naturwissenschaften 13, 627;F. Reiche and W. Thomas (1925), Z. Phys. 34, 510–525.下の脚注へ。fknf_{kn} は遷移 n→kn\to k の振動子強度で、kk が nn より上の準位なら正、下なら負である。条件は軌道を一切含まず、観測にかかる ωkn\omega_{kn} と xknx_{kn} だけで書けている。JJ の定数が微分で消えたので、J=nℏJ=n\hbar と (n+12)ℏ(n+\frac12)\hbar のどちらを選んでも式 (2.1.20) は同じになる。

Born と Jordan の形:xp−px=iℏ\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x=\mathrm{i}\hbar

式 (2.1.20) を運動量の表 (2.1.10) で書き直す。積の規則から

(xp−px)nn=∑k(xnkpkn−pnkxkn)=∑k(xnk imωknxkn−imωnkxnk xkn)=2im∑kωkn∣xkn∣2(\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x)_{nn}=\sum_k\bigl(x_{nk}p_{kn}-p_{nk}x_{kn}\bigr) =\sum_k\bigl(x_{nk}\,\mathrm{i} m\omega_{kn}x_{kn}-\mathrm{i} m\omega_{nk}x_{nk}\,x_{kn}\bigr) =2\mathrm{i} m\sum_k\omega_{kn}\lvert x_{kn}\rvert ^2

となる。最後の等号で ωnk=−ωkn\omega_{nk}=-\omega_{kn} と xnkxkn=∣xkn∣2x_{nk}x_{kn}=\lvert x_{kn}\rvert ^2(式 (2.1.9))を使った。総和則 (2.1.20) を入れると

(xp−px)nn=iℏ(すべての n)(2.1.21)(\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x)_{nn}=\mathrm{i}\hbar\qquad(\text{すべての }n)\tag{2.1.21}

である。非対角要素については、運動方程式から次のことが言える。

定理 2.1.2(Born–Jordan の交換関係 ★★★)

運動方程式 (2.1.13) と総和則 (2.1.20) が成り立ち、準位に縮退がなければ

xp−px=iℏ 1(2.1.22)\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x=\mathrm{i}\hbar\,\mathbf 1\tag{2.1.22}

である(1\mathbf 1 は単位行列)。

証明

D=xp−px\mathbf D=\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x と置く。Leibniz 則と式 (2.1.13) から

D˙=x˙p+xp˙−p˙x−px˙=p2m−xV′(x)+V′(x)x−p2m=0.\dot{\mathbf D}=\dot{\mathbf x}\mathbf p+\mathbf x\dot{\mathbf p}-\dot{\mathbf p}\mathbf x-\mathbf p\dot{\mathbf x} =\frac{\mathbf p^2}{m}-\mathbf xV'(\mathbf x)+V'(\mathbf x)\mathbf x-\frac{\mathbf p^2}{m}=0.

x\mathbf x と V′(x)V'(\mathbf x) が可換であることを使った。一方 D\mathbf D も遷移の表なので D˙nm=iωnmDnm\dot D_{nm}=\mathrm{i}\omega_{nm}D_{nm} である。縮退がなければ n≠mn\neq m で ωnm≠0\omega_{nm}\neq0 だから Dnm=0D_{nm}=0。対角要素は式 (2.1.21) で iℏ\mathrm{i}\hbar である。

Born と Jordan はこれを「強めた量子条件」と呼び、pq−qp=h2πi1pq-qp=\frac{h}{2\pi\mathrm{i}}\mathbf 1 の形で書いた(符号を入れ替えると式 (2.1.22) と同じ)。Bohr–Sommerfeld の条件は、こうして軌道を含まない交換関係に置き換わった。

数値例:4次の項を足した振動子

総和則 (2.1.20) は調和振動子に限らない。ℏ=m=ω=1\hbar=m=\omega=1 の単位で H=12p2+12x2+x4H=\frac12p^2+\frac12x^2+x^4 を、調和振動子の固有状態80個を基底にした行列で対角化した。最低のエネルギーは E0=0.80377E_0=0.80377、E1=2.73789E_1=2.73789 である。基底状態からの振動子強度 fk0f_{k0} は、xx が奇関数なので kk が奇数のときだけ0でなく、

f10=0.99276,f30=0.00722,f50=0.000024f_{10}=0.99276,\qquad f_{30}=0.00722,\qquad f_{50}=0.000024

で、和は k=5k=5 までで 0.9999990.999999 に達する。n=0,1,2,3n=0,1,2,3 のどの状態についても ∑k(Ek−En)∣xkn∣2=0.5000000000\sum_k(E_k-E_n)\lvert x_{kn}\rvert ^2=0.5000000000(10桁)が得られた。さらに pnm=iωnmxnmp_{nm}=\mathrm{i}\omega_{nm}x_{nm} で運動量の表を作り、xp−px\mathbf x\mathbf p-\mathbf p\mathbf x を計算すると、左上の 6×66\times6 のブロックでi 1\mathrm{i}\,\mathbf 1 と 10−810^{-8} 以内で一致し、非対角要素も0になる。行列を有限で打ち切ったことによる誤差は、ブロックの端(番号の大きい状態)に集まる。

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの 調和振動子の固有状態 N=80N=80 個が張る部分空間(N→∞N\to\infty) | 証明 証明済み(固有値は Rayleigh–Ritz の上界で、基底を足すと単調に下がる) | 行き先 近似の数理 第4章

例題 2.1.4 有限の表では総和則が成り立たない ★★

オリジナル状態が NN 個しかない有限の表(N×NN\times N のエルミート行列)で、総和則 (2.1.20) と交換関係 (2.1.22) を考える。

  1. (1) エネルギーが最も高い状態 n=N−1n=N-1 について、∑kωkn∣xkn∣2\sum_k\omega_{kn}\lvert x_{kn}\rvert ^2 の符号を調べ、総和則が成り立たないことを示せ。
  2. (2) 交換関係 (2.1.22) の両辺のトレースを比べ、同じ結論を出せ。
  3. (3) (1) から、行列力学の準位の列について何が言えるか。
解答

(1) 最も高い状態では、ほかのすべての kk で Ek<EN−1E_k<E_{N-1}、すなわち ωk,N−1<0\omega_{k,N-1}<0 である。したがって∑kωk,N−1∣xk,N−1∣2≤0\sum_k\omega_{k,N-1}\lvert x_{k,N-1}\rvert ^2\le0 で、正の ℏ/(2m)\hbar/(2m) に等しくなれない。数値で確かめると、前の数値例のハミルトニアンを N=5N=5 で打ち切ったとき、最上の状態の和は負になる。

(2) トレースは積の順序によらないので Tr⁡(xp)=Tr⁡(px)\operatorname{Tr}(\mathbf x\mathbf p)=\operatorname{Tr}(\mathbf p\mathbf x)、左辺のトレースは0である。右辺のトレースは iℏN≠0\mathrm{i}\hbar N\neq0 で、矛盾する。

(3) 総和則が成り立つには、どの状態にもそれより上の準位があって振動子強度を正にしなければならない。したがって準位は上に有界でなく、表は無限次元の行列である。有限次元で交換関係を満たせないことの代数的な証明(トレースの議論)と、打ち切った行列で何が起きるかは、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第1章にもある。

1 W. Kuhn (1925), Z. Phys. 33, 408–412;W. Thomas (1925), Naturwissenschaften 13, 627;F. Reiche and W. Thomas (1925), Z. Phys. 34, 510–525.

木下の勉強ステータス

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