量子力学の様々な構成方法 第5部 第6章 §5.6.3 ★★ Gauss 型の状態は3つの分布がどれも Gauss 関数で、各直交位相の分散が s ごとに 41 ずつずれる。スクイーズド状態では P の分散が負になり、P は関数として存在しない
変位は3つの分布をそろって平行移動する
コヒーレント状態 ∣α0⟩=D^(α0)∣0⟩ では、ρ^=∣α0⟩⟨α0∣ が (5.6.8) の形そのものなので P=δ2(α−α0) である。命題 5.6.3 から W=G1/2(α−α0)=π2e−2∣α−α0∣2、Q=G1(α−α0) となる。
一般の状態を変位させたときも同じことが起こる。D^(β)†D^(ξ)D^(β)=D^(ξ)eξβ∗−ξ∗β(D^(β)†a^D^(β)=a^+β から)なので、ρ^→D^(β)ρ^D^(β)† で χs(ξ)→χs(ξ)eξβ∗−ξ∗β、Fourier 変換すると Fs(α)→Fs(α−β) となる。外から古典の電流でモードを駆動すると変位が起こるので、駆動は3つの分布をそろって β だけ平行移動させる。これは 第5部第2章の「線形の Heisenberg 発展では W は古典の流れで運ばれる」の特別な場合で、P と Q にも同じことが成り立つ。
スクイーズド真空
スクイーズ演算子 S^(r)=exp[r(a^2−a^†2)/2](光学と量子エレクトロニクス 第31章の S^(ζ) で ζ=r を実数に選んだもの)はS^†a^S^=a^coshr−a^†sinhr を与え、X^1→e−rX^1、X^2→erX^2 と直交位相を伸び縮みさせる。これは面積を保つ線形の正準変換なので、第5部第2章の命題(Wt=W0∘M−1)から、スクイーズド真空 ∣r⟩=S^(r)∣0⟩ の Wigner 関数は真空の W を引き伸ばしたもので
W(α)=π2exp(−2e2rX12−2e−2rX22),VarX1=4e−2r,VarX2=4e2r(5.6.11)
である。前置きの係数は面積を保つことから変わらない。Q は命題 5.6.3 で W を各直交位相の分散 41 の Gauss 関数でならしたもので、Gauss 関数どうしの畳み込みでは分散が足されるから
Q(α)=2πV1V21exp(−2V1X12−2V2X22),V1,2=41+e∓2r,V1V2=2coshr(5.6.12)
となる。原点の値 Q(0)=1/(πcoshr) は、(5.6.7) の ∣⟨0∣r⟩∣2/π と一致する(⟨0∣r⟩=1/coshr)。
P を同じ考えで出そうとすると、各直交位相の分散を W から 41 引くことになり、X1 の方向の「分散」は (e−2r−1)/4<0 になる。負の分散の Gauss 関数は存在しない。特性関数で言えば、ξ=ik(k は実数。eξα∗−ξ∗α=e2ikX1 で X1 の方向を見る)で
χ1(ik)=χ0(ik)ek2/2=exp(2k2(1−e−2r))
が k→∞ で Gauss 関数のように増える。多項式でおさえられない関数の Fourier 変換は、緩増加超関数(Schwartz の意味の超関数)としても存在しない。スクイーズド状態の P は、関数としても通常の超関数としても書けない。

図 5.6.1 1つのモードの位相空間に描いた Gauss 型の状態の W の楕円(各方向の標準偏差を半径に取った等高線。点線は厳密な形)。真空とコヒーレント状態は半径 21 の円、スクイーズド状態(r=0.69、約 6 dB)は面積が同じで向きで太さの違う楕円、熱的な光は真空より大きい円。左下の灰色は同じスクイーズド状態の Q で、各直交位相の分散に 41 を足すので、細い向きでも半径 21 を下回らない。P は逆に 41 を引くので、細い向きで分散が負になる。
Gauss 型の状態の分類
一般の Gauss 型の状態(W が Gauss 関数の状態。変位・スクイーズ・回転・熱的な雑音の組み合わせ)は、(X1,X2) の共分散行列 V で決まる。命題 5.6.3 から、Fs の共分散行列は V−4s1 で、s=1 の P が正の Gauss 関数になるのは V−411 が正定値のとき、つまりどの向きの直交位相の分散も真空の 41 を下回らないときに限る。どの向きかで 41 を下回る状態(スクイーズを持つ状態)の P は関数でない。P が非負の確率分布として書ける状態を古典の光と呼ぶ規約は 光学と量子エレクトロニクス 第32章にあり、そこで P≥0 から g(2)(0)≥1 が出ることを示している。Gauss 型の状態では、古典の光であることと、どの向きの雑音も真空以上であることが同じ条件になる。
例題 5.6.3 10 dB のスクイーズド真空の3つの分布 ★★
オリジナル細い向きの分散が真空の 101(10 dB)のスクイーズド真空について、r を求め、W・Q・P の各直交位相の分散を並べよ。Q の細い向きの分散から、スクイーズの大きさを読み取る式を書け。
解答
e−2r=0.1 から r=21ln10=1.1513。
W の分散は (5.6.11) から VarX1=0.025、VarX2=2.5(積 161 で最小不確定)。Q は 41 を足して 0.275 と 2.75。P は 41 を引いて −0.225 と 2.25 で、X1 の方向で負になり、Gauss 関数として存在しない。
Q の細い向きの分散 V1 は真空の Q の値 21 より小さいが、41 を下回ることはない。スクイーズは W の分散 V1−41 で読む必要があり、真空との比は (V1−41)/41=4V1−1、デシベルでは −10log10(4V1−1) である(V1=0.275 で 10 dB)。Q の上ではスクイーズは「真空より少し細い」だけに見え、強いスクイーズほど Q の形は W から離れる。
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