量子力学の様々な構成方法 第5部 第6章 §5.6.2 ★★★ 熱平衡の光の Q を Fock 空間の和で出し、Gauss 関数の分散の引き算で P=Gnˉ、W=Gnˉ+1/2 を得る。∫∣α∣2 が nˉ・nˉ+21・nˉ+1 と並べ方ごとに違う
Q から始めて P と W を出す
熱平衡の光の1モードは、第4部第4章・第6部第5章の
ρ^=n=0∑∞(1−q)qn∣n⟩⟨n∣,q=e−βℏω=nˉ+1nˉ,nˉ=eβℏω−11
である。3つの分布のうち (5.6.7) の Q は最も直接に計算することができる。⟨n∣α⟩=e−∣α∣2/2αn/n! から
Q(α)=π1−qe−∣α∣2n=0∑∞n!(q∣α∣2)n=π1−qe−(1−q)∣α∣2,1−q=nˉ+11
となり、Q=Gnˉ+1 である。命題 5.6.3 で Q=P∗G1、Gauss 関数の畳み込みは σ の足し算なので、P が Gauss 関数なら P=Gnˉ のはずである。実際 Gnˉ∗G1=Gnˉ+1 で、特性関数は一意に決まるので、熱的な光の3つの分布は
P(α)=πnˉe−∣α∣2/nˉ,W(α)=π(2nˉ+1)2e−2∣α∣2/(2nˉ+1),Q(α)=π(nˉ+1)e−∣α∣2/(nˉ+1)(5.6.9)
である。これは共通例題⑤の正答表と同じ形である。W=Gnˉ+1/2 を x,p に戻すと、2nˉ+11=tanh2βℏω と (5.6.2) からW(x,p)=πℏtanh(βℏω/2)exp(−2tanh(βℏω/2)H/(ℏω)) で、第5部第5章が Wn の重み和で、第5部第3章が Bloch 方程式で出した熱平衡の W と一致する。
P が正しいことは (5.6.8) に戻しても確かめることができる。⟨n∣ρ^∣n⟩=∫P(α)∣⟨n∣α⟩∣2d2α に d2α=πd(∣α∣2) を使うと
⟨n∣ρ^∣n⟩=nˉn!1∫0∞e−t/nˉe−ttndt=nˉ1(nˉ+1nˉ)n+1=(nˉ+1)n+1nˉn
で、Bose–Einstein 分布 (1−q)qn に戻る。
並べ方ごとの光子数と、古典の場の集団
定理 5.6.2 で m=n=1 と置くと、(5.6.9) の3つの分布の ∣α∣2 の平均はそれぞれ
∫P∣α∣2=⟨a^†a^⟩=nˉ,∫W∣α∣2=⟨2a^†a^+a^a^†⟩=nˉ+21,∫Q∣α∣2=⟨a^a^†⟩=nˉ+1(5.6.10)
を与える(∫Gσ∣α∣2d2α=σ)。差の 21 と 1 は交換関係 a^a^†=a^†a^+1 から出る。W の nˉ+21 はエネルギー ℏω(nˉ+21) の零点を含み、P の nˉ は光子検出器が数える数である(検出器が正規順序の量を測ることは光学と量子エレクトロニクス 第32章)。同じ章の強度の相関 g(2)(0)=⟨(a^†)2a^2⟩/nˉ2 も、P の4次の積分 ∫P∣α∣4=2nˉ2 から g(2)(0)=2 と出る。
熱的な光の P は至る所で正の Gauss 関数なので、(5.6.8) は、複素振幅 α が平均 0・分散 nˉ の Gauss 分布に従って揺らぐ古典の場の集団(位相がでたらめな古典の雑音)として読むことができる。光子数の統計も相関も、この古典の集団の平均と区別がつかない。熱的な光は、5.6.3節以降の状態と違い、量子に固有の性質を P の中に持たない光である。
例題 5.6.2 5 GHz のマイクロ波モードの熱的な光 ★★
オリジナル超伝導回路の共振器のモード(ω/2π=5 GHz)が温度 T=50 mK と 300 K の熱平衡にあるとき、nˉ と原点の W(0) を求めよ。W(0) が真空の値 2/π からどれだけ離れているか、また 300 K で P・W・Q の違いが見えるかを述べよ。
解答
ℏω/(kBT) は 50 mK で 4.799、300 K で 8.00×10−4 である。nˉ=1/(eℏω/kBT−1) から50 mK では nˉ=0.00830、300 K では nˉ=1249.7 である。
(5.6.9) から W(0)=π(2nˉ+1)2 で、50 mK では 0.6262、真空の 2/π=0.6366 より 1.6% 小さいだけで、モードはほぼ真空にある。300 K では W(0)=2.546×10−4 で、分布は半径 nˉ≈35 の円に広がる。3つの分布の σ は nˉ・nˉ+21・nˉ+1 で、相対的な違いは 1/nˉ≈8×10−4 しかない。高温では並べ方の違いが見えなくなり、3つの分布はどれも古典の Boltzmann 分布 πnˉ1e−∣α∣2/nˉ(nˉ≈kBT/ℏω)に近づく。並べ方の違いが見えるのは、nˉ が 1 程度以下の低温か、次の節以降の非古典的な状態である。
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