何を削ったか・何の実験の量で確かめるか
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部 第2章 §1.2.5 ★★ 周期ポテンシャルの は、原子核が止まっていること・結晶が無限に広いこと・欠陥が無いことの3つを仮定している。前の2つに裏付けの札を置く
削ったもの
この章で選んだ は、周期 を持つポテンシャルの中の電子の である。実在の結晶からこの にたどり着くまでに、3つのものを削っている。
1つめは原子核の運動である。実在の原子核は、つり合いの位置のまわりで熱振動と零点振動をしている。原子核の質量 は電子の質量 よりはるかに大きく、電子から見ると原子核はほとんど動かないので、原子核を格子点 に止めたとみなす(Born–Oppenheimer の考え方)。融点より十分低い温度では、振動の振幅は格子定数に比べて小さいが、 ではない。原子核の振動を量子化したものがフォノンで、第3部で扱う。
2つめは結晶の表面と有限の大きさである。周期境界条件は、結晶の反対側の面どうしをつないで表面を無くす操作である。表面の近くの原子は内部の原子と違う環境にあるので、表面にしかない電子の状態(表面準位)は周期境界条件では出てこない。それでも周期境界条件を使ってよい理由は、内部の原子に比べて表面の原子の割合が小さく、単位体積あたりの量(エネルギー密度・状態密度)を計算する限り、その割合が になる極限で境界条件の選び方によらなくなるからである(次の例題)。
3つめは欠陥と不純物である。実在の結晶には、原子の抜けた空孔・入り込んだ不純物原子・並びのずれ(転位)・同位体の混ざりがある。これらは周期性を壊すので、この章の には入っていない。第4部の電気伝導では、不純物による散乱を緩和時間として取り込む。
さらに、ポテンシャル の中には他の電子からの寄与が平均として含まれている。電子どうしの相互作用を平均のポテンシャルに置き換える近似(平均場)は、第2部の1電子のバンドの前提で、その札は第2部と第5部で置く。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 電子と原子核の質量比 (原子核の振動の振幅と格子定数の比) | 証明 条件付き(原子核の質量が大きい極限での Born–Oppenheimer は第V巻第7章の範囲。周期的な配置が基底状態になること自体は未解決の結晶化問題) | 行き先 近似の数理 第7章
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 表面の原子の割合 ( は単位胞の数) | 証明 証明済み(単位体積あたりのエネルギー・積分した状態密度などバルクの量に限る。周期境界と Dirichlet の固有値が交互に並ぶので、境界条件によらず同じ極限になる。表面準位は扱えない) | 行き先 近似の数理 第12章
何の実験の量で確かめるか
格子と逆格子を確かめる量は、回折の角度である。逆格子ベクトルの長さは格子面の間隔 (1.2.14) を通して回折の角度に現れ、X 線・電子線・中性子の回折で格子定数を求めることができる(第1部第3章)。基底の中身は、回折の強度(構造因子 (1.2.7) の大きさ)に現れる。
回折とは独立な確かめとして、巨視的な密度がある。結晶の密度 は、慣用単位胞の中の原子の数 、モル質量 、Avogadro 定数 を使って
になる(記号 ・ は記法の正本に無い。密度行列 と原子核の質量 との区別のため添字を付けた)。回折で求めた と天秤で測った密度を比べることで、格子と基底の見立て()が正しいかを確かめられる。逆に、 と と を精密に測ると が決まる。Si の単結晶の球を使った Avogadro 定数の決定(X 線結晶密度法)は、この式を精密測定に使ったものである。
原子核の熱振動は、回折の山の高さが温度とともに下がること(Debye–Waller 因子)として現れる。格子の周期そのものは熱振動があっても残るので、回折の山の位置は動かない(熱膨張で が変わる分を除く)。この観察は、1つめの削り方が「原子核の平均の位置は周期的に並んでいる」という意味で正しいことを示している。
例題 1.2.5 1 mm の Si 結晶の表面の原子の割合と密度 ★★
オリジナル1辺 の立方体の Si 単結晶を考える。格子定数は例題 1.2.4 の 、Si の標準原子量は とする。
- (1) 1辺に並ぶ慣用単位胞の数 と、結晶全体の慣用単位胞の数を求めよ。
- (2) 表面に接する(6つの面のどれかに接する)慣用単位胞の割合を、 が大きいとして見積もれ。
- (3) 式 (1.2.17) で Si の密度を で求めよ( は定義値)。
解答
(1) で、全体の数は である。
(2) 表面に接しない内側の胞は 個なので、割合は である。単位胞の数を と書くと、この割合は で、札の「表面の原子の割合 」の具体的な値になる。1 mm の結晶でも、表面の割合は百万分の3程度である。
(3) ダイヤモンド構造の慣用単位胞には fcc の格子点4個に基底2個ずつ、合わせて 個の原子がある。 なので
である。 を fcc の4個と取り違えると半分の値になるので、密度の測定は基底が2個であることの確かめにもなる。
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