数理統計 第10章 §10.7
§10.1
- 10.1-1 δ′ が δ≡1/2 を優越すると仮定する。すると R(1/2,δ′)≤R(1/2,δ)=0 なので
x=0∑n(δ′(x)−21)2(xn)2−n=0.
どの観測値も正の確率 (xn)2−n を持つ。よってすべての x で δ′(x)=1/2 となる。つまり δ′=δ である。
するとリスクはすべての p で等しく、狭義に小さくなる p は無い。これは優越の定義に反するので、δ は許容的である。2. 10.1-2 T∼Ga(n,θ) より
E[T]=nθ,V[T]=nθ2.
よって
R(θ,cT)=c2nθ2+(cn−1)2θ2=θ2{c2n(n+1)−2cn+1}.
c で微分して 0 とおくと 2n(n+1)c−2n=0 である。すなわち c∗=1/(n+1) で、最小値は
θ2{n+1n−n+12n+1}=n+1θ2.
Xˉ は c=1/n に当たる。そのリスクは θ2/n で、最適な cT の方がリスクが小さい。3. 10.1-3 密度を f、分布関数を F とする。
h(d)=E∣Y−d∣=∫−∞d(d−y)f(y)dy+∫d∞(y−d)f(y)dy
を d で微分する。境界から出る項は、被積分関数が y=d で 0 なので消える。よって
h′(d)=∫−∞df(y)dy−∫d∞f(y)dy=2F(d)−1.
h′ は単調非減少なので h は凸である。最小になるのは F(d)=1/2、すなわち d が中央値のときである。密度が無い場合も同じ結論になる。右微分が 2F(d)−1、左微分が 2F(d−)−1 だからである。4. 10.1-4 E[cXˉ]=cλ、V[cXˉ]=c2λ/n なので
R(λ,cXˉ)=nc2λ+(1−c)2λ2,R(λ,Xˉ)=nλ.
cXˉ の方が小さい条件を変形する。
⟺⟺nc2λ+(1−c)2λ2<nλ(1−c)2λ<n1−c20<λ<n(1−c)1+c(両辺を λ>0 で割った)(両辺を 1−c>0 で割った).
λ がこれより大きいと Xˉ の方がリスクが小さく、どちらも他方を優越しない。
§10.2
- 10.2-1 T はデータそのものなので十分である(条件付き分布は1点に集中し、母数によらない)。ϕ(T)=X1−X2 とおく。すべての μ で Eμ[ϕ(T)]=μ−μ=0 が成り立つ。しかし X1−X2∼N(0,2) なので P(ϕ(T)=0)=0=1 である。よって T は完備でない。
- 10.2-2 M の密度 nmn−1/θn より
E[M]=θnn∫0θmndm=n+1nθ.
よって η(M)=(n+1)M/n は不偏である。M は完備十分統計量なので(§10.2 の例)、これが UMVUE である。E[M2]=θnn∫0θmn+1dm=n+2nθ2 より
V[η(M)]=n2(n+1)2⋅n+2nθ2−θ2=θ2n(n+2)(n+1)2−n(n+2)=n(n+2)θ2.
3. 10.2-3 T∼Po(nλ) について
E[T(T−1)]=t≥2∑t(t−1)t!(nλ)te−nλ=(nλ)2t≥2∑(t−2)!(nλ)t−2e−nλ=(nλ)2.
よって T(T−1)/n2 は λ2 の不偏推定量で、完備十分統計量の関数である。定理 10.7 によりこれが UMVUE である。4. 10.2-4 Xˉ は完備十分統計量で、Xˉ∼N(μ,1/n) である。E[Xˉ2]=μ2+1/n より、UMVUE は Xˉ2−1/n である。Z∼N(0,1) を使って Xˉ=μ+Z/n と書くと
Xˉ2=μ2+n2μZ+nZ2.
V[Z]=1、V[Z2]=2 である。さらに Cov(Z,Z2)=E[Z3]=0 なので
V[Xˉ2−1/n]=n4μ2+n22.
Fisher 情報量は I(μ)=1、また g′(μ)2=4μ2 である。よって下界は 4μ2/n である。UMVUE の分散は下界より 2/n2 だけ大きく、下界には一致しない。
§10.3
10.3-1 データを c ずらしたときの動きで判定する。
- Xˉ・中央値・Xˉ+1 はどれも同じだけずれる。よってこの3つは位置同変である。
- 2Xˉ は 2c ずれる。X(n)−X(1) は変わらない。よってこの2つは位置同変ではない。
10.3-2 f(z)=1{−21<z<21} より、尤度は次のとおりである。
∏f(xi−θ)={10(x(n)−21<θ<x(1)+21),(それ以外).
この区間上の一様分布の平均として、Pitman 推定量は δ∗=(X(1)+X(n))/2 である。
リスクは母数が 0 のときに計算すればよい。Ui を単位区間上の一様分布とし、観測を Xi=Ui−21 と書くと
δ∗=2U(1)+U(n)−21.
対称性より平均は 0 で、リスクは分散
41{(n+1)2(n+2)2n+(n+1)2(n+2)2}=41⋅(n+1)2(n+2)2(n+1)=2(n+1)(n+2)1
である。Xˉ のリスク 1/(12n) と比べるため、分母の差を計算する。
2(n+1)(n+2)−12n=2n2−6n+4=2(n−1)(n−2)
よって n≥3 では Pitman 推定量のリスクが Xˉ より小さい。n=1,2 では中点と標本平均が一致するので、両者は等しい。Pitman 推定量のリスクは 1/n2 の速さで減る。これは標本平均の 1/n より速い。3. 10.3-3 W=∑Xi2/σ2∼χn2 なので
E[W]=n,E[W2]=2n+n2=n(n+2),c∗=E[W2]E[W]=n+21.
リスクは c∗2n(n+2)−2c∗n+1=n+2n−n+22n+1=n+22。4. 10.3-4 ∑i(xi−θ)2=∑i(xi−xˉ)2+n(θ−xˉ)2 より、尤度は
∏f(xi−θ)=C(x)exp{−n(θ−xˉ)2/2}
の形である(C(x) は母数を含まない)。分母は C∫e−n(θ−xˉ)2/2dθ=C2π/n である。分子は θ=xˉ+u と置換して、奇関数の積分が 0 になることを使う。
C∫(xˉ+u)e−nu2/2du=Cxˉ2π/n+0
比は xˉ である。
§10.4
- 10.4-1 m=E[θ∣x] とおき、θ−d=(θ−m)+(m−d) と分ける。2乗して事後期待値をとる。交差項は 2(m−d)E[θ−m∣x]=0 なので
E[(θ−d)2∣x]=V[θ∣x]+(m−d)2.
第1項は d によらないので、d=m のとき最小である。2. 10.4-2 命題 10.13 (2) で次の値を使う。
α=2,β=1,n=5,t=12
事後分布は Ga(14,1/6) で、ベイズ推定値は 14/6=7/3≈2.333 である。一方、標本平均は 2.4、事前平均は αβ=2、データの重みは nβ/(nβ+1)=5/6 である。重み付き平均は
65⋅2.4+61⋅2=2+31=37
で一致する。3. 10.4-3 n/σ2=4/4=1、1/τ2=1 である。
- 事後精度は 2。
- 事後平均は (1⋅2+1⋅0)/2=1。
- 事後分散は 1/2。
よって θ∣x∼N(1,1/2) である。事後分散はデータによらないので、ベイズリスク(事後期待損失の平均)は 1/2 である。比較のため、Xˉ のリスクは σ2/n=1 である。4. 10.4-4 仮に X/n が π に関するベイズ推定量だとする。X/n は不偏なので、命題 10.14 より r(π,X/n)=0 である。しかし
r(π,X/n)=∫01np(1−p)π(dp)
で、π は開区間 (0,1) に確率1を置く。その上で p(1−p)>0 なので、このベイズリスクは正である。矛盾するので、X/n はベイズ推定量にならない。
§10.5
- 10.5-1 δ がミニマックスでないとする。すると supθR(θ,δ′)<c を満たす推定量 δ′ がある。このときすべての θ で
R(θ,δ′)<c=R(θ,δ)
となり、δ′ は δ を優越する。これは許容性に反するので、δ はミニマックスである。2. 10.5-2 R(θ,cX)=c2V[X]+(cθ−θ)2=c2+(1−c)2θ2 である。場合を分ける。
- c=1 なら、θ→±∞ でリスクは発散する。よって最大リスクは ∞ である。
- c=1 なら、リスクは恒等的に 1 で、最大リスクも 1 である。
したがって cX の形の中でミニマックスなものは、c=1 のときだけである。3. 10.5-3 χp2 の密度 2p/2Γ(p/2)xp/2−1e−x/2 より
E[χp21]=2p/2Γ(p/2)1∫0∞xp/2−2e−x/2dx=2p/2Γ(p/2)2p/2−1Γ(p/2−1)=2(p/2−1)1=p−21(p≥3).
θ=0 では ∥X∥2∼χp2 である。式 (10.8) より、リスクは
p−p−2(p−2)2=2.
次元によらず 2 である。これは X のリスク p より小さい。差は p−2 である。4. 10.5-4 一様事前分布のもとで、x を与えたときの重み付き事後期待損失は
hx(d)=(xn)∫01(d−p)2px−1(1−p)n−x−1dp
に比例する。場合を分けて最小点を調べる。
- 1≤x≤n−1 では積分は有限である。定理 10.12 (2) より、最小点は
d=∫01px−1(1−p)n−x−1dp∫01px(1−p)n−x−1dp=B(x,n−x)B(x+1,n−x)=nx
である(B(a+1,b)/B(a,b)=a/(a+b) を使った)。
h0(d)=∫01(d−p)2(1−p)n−1p−1dp
p→0 で被積分関数は d2/p のようにふるまう。これが有限であるには d=0 が必要である。d=0 なら h0(0)=∫01p(1−p)n−1dp<∞ である。
- 同様に、x=n では d=1 のときだけ有限になる。
したがって、有限なベイズリスクを持つベイズ推定量は X/n に限られ、一意である。そのベイズリスクは ∫01p(1−p)p(1−p)/ndp=1/n<∞ である。定理 10.18 より、X/n は重み付き損失のもとで許容的である。
2乗損失のもとで、δ′ が X/n を優越すると仮定する。不等式 R(p,δ′)≤R(p,X/n) を正の数 p(1−p) で割ると、重み付き損失のリスクについて同じ不等式が成り立ち、狭義の不等号も保たれる。これは重み付き損失での許容性に反する。よって X/n は2乗損失のもとでも許容的である。
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