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Ricci テンソルとスカラー曲率

2026年10月22日15分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第11章 曲率テンソル
目次
  1. 縮約
  2. 2次元と3次元
  3. 縮約した Bianchi 恒等式
  4. Ricci の幾何的な意味
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第11章 §11.3 ★★★ Riemann を縮約して Ricci とスカラー曲率を作り、2次元で R=2KR=2K、3次元で Ricci が全部を決めることを示す

縮約

Riemann テンソルは4つの添字を持ち、そのままでは扱いにくい。縮約は座標に依らない操作なので(第4章 §4.2)、添字を縮約して小さなテンソルを作る。

定義 11.9(Ricci テンソルとスカラー曲率)

Rσν=Rρσρν,R=gσνRσν(11.15)R_{\sigma\nu}=R^\rho{}_{\sigma\rho\nu},\qquad R=g^{\sigma\nu}R_{\sigma\nu}\tag{11.15}

をそれぞれ Ricci テンソル・スカラー曲率と呼ぶ。

縮約の選び方はほかにもあるが、どれも ±Rσν\pm R_{\sigma\nu} か 00 になる。(11.10) から Rρρμν=0R^\rho{}_{\rho\mu\nu}=0(確認テスト 11.2-2)、(11.9) から Rρσνρ=−RσνR^\rho{}_{\sigma\nu\rho}=-R_{\sigma\nu} である。したがって Ricci テンソルは、Riemann から作れる2階のテンソルとして本質的に1つしかない。

命題 11.10(Ricci は対称)

Rσν=RνσR_{\sigma\nu}=R_{\nu\sigma}。

証明

Rσν=gρλRλσρνR_{\sigma\nu}=g^{\rho\lambda}R_{\lambda\sigma\rho\nu} と書く。(11.12) で組を入れ替えると Rλσρν=RρνλσR_{\lambda\sigma\rho\nu}=R_{\rho\nu\lambda\sigma} である。計量の対称性を使って和の添字の名前を入れ替えると、次を得る。

Rσν=gρλRρνλσ=gλρRλνρσ=Rνσ.R_{\sigma\nu}=g^{\rho\lambda}R_{\rho\nu\lambda\sigma}=g^{\lambda\rho}R_{\lambda\nu\rho\sigma}=R_{\nu\sigma}.

2次元と3次元

命題 11.11(2次元の Ricci ★★★)

2次元では

Rμν=K gμν,R=2K(11.16)R_{\mu\nu}=K\,g_{\mu\nu},\qquad R=2K\tag{11.16}

である。KK は例題 11.2 の量(Gauss 曲率)である。

証明

例題 11.2 の式に gρμg^{\rho\mu} を掛けて縮約する。2次元では gρμgρμ=2g^{\rho\mu}g_{\rho\mu}=2 なので

Rσν=K(gρμgρμ gσν−δμν gσμ)=K(2gσν−gσν)=Kgσν.R_{\sigma\nu}=K\bigl(g^{\rho\mu}g_{\rho\mu}\,g_{\sigma\nu}-\delta^\mu{}_\nu\,g_{\sigma\mu}\bigr)=K(2g_{\sigma\nu}-g_{\sigma\nu})=Kg_{\sigma\nu}.

さらに gσνg^{\sigma\nu} で縮約すると R=2KR=2K を得る。

球面では R=2/a2R=2/a^2 で、符号は正である。記法の正本の注意どおり、正の曲率は正定値の計量で述べる。同じ球面を時空の空間部分として −a2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)-a^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2) と書くと R=−2/a2R=-2/a^2 になる。

命題 11.12(3次元では Ricci が全部を決める ★★)

3次元では

Rρσμν=gρμRσν−gρνRσμ−gσμRρν+gσνRρμ−R2(gρμgσν−gρνgσμ).(11.17)R_{\rho\sigma\mu\nu}=g_{\rho\mu}R_{\sigma\nu}-g_{\rho\nu}R_{\sigma\mu}-g_{\sigma\mu}R_{\rho\nu}+g_{\sigma\nu}R_{\rho\mu} -\frac R2\bigl(g_{\rho\mu}g_{\sigma\nu}-g_{\rho\nu}g_{\sigma\mu}\bigr).\tag{11.17}

証明

テンソルの式なので、1点 pp で計量が δij\delta_{ij} になる基底をとって示せば足りる。3次元では、反対称な組 [ρσ][\rho\sigma] は Levi-Civita 記号 ϵρσα\epsilon_{\rho\sigma\alpha} によって1つの添字と1対1に対応する。したがって (11.9)・(11.10) を満たす配列は、ある行列 AαβA^{\alpha\beta} で次のように書ける。

Rρσμν=ϵρσαϵμνβAαβ.R_{\rho\sigma\mu\nu}=\epsilon_{\rho\sigma\alpha}\epsilon_{\mu\nu\beta}A^{\alpha\beta}.

(11.12) から AA は対称である。3次元には相異なる4つの添字が無いので、第1 Bianchi 恒等式は自動的に成り立つ(命題 11.8 の証明)。縮約して Ricci を作ると、ϵρσαϵρνβ=δσνδαβ−δσβδαν\epsilon_{\rho\sigma\alpha}\epsilon_{\rho\nu\beta}=\delta_{\sigma\nu}\delta_{\alpha\beta}-\delta_{\sigma\beta}\delta_{\alpha\nu} から

Rσν=δσνTr⁡A−Aνσ,R=3Tr⁡A−Tr⁡A=2Tr⁡AR_{\sigma\nu}=\delta_{\sigma\nu}\operatorname{Tr} A-A_{\nu\sigma},\qquad R=3\operatorname{Tr} A-\operatorname{Tr} A=2\operatorname{Tr} A

となる。

したがって Aαβ=R2δαβ−RαβA_{\alpha\beta}=\tfrac R2\delta_{\alpha\beta}-R_{\alpha\beta} で、AA は Ricci だけで決まる。これを ϵϵ\epsilon\epsilon の積の公式(δ\delta の3行3列の行列式)に入れて展開すると (11.17) になる。

この命題から、3次元の空間では Ricci が 00 なら Riemann も 00 である。4次元以上ではそうならず、Ricci が 00 でも Weyl テンソルの分だけ曲がっていてよい。Schwarzschild 時空はその例で、『相対論入門』第12章が扱う。

縮約した Bianchi 恒等式

系 11.13(縮約した Bianchi 恒等式 ★★★)

Gμν=Rμν−12gμνRG_{\mu\nu}=R_{\mu\nu}-\tfrac12g_{\mu\nu}R と置くと ∇μGμν=0\nabla^\mu G_{\mu\nu}=0。

証明

(11.13) で ρ\rho と μ\mu を縮約する。計量は共変微分と交換するので(∇g=0\nabla g=0)、縮約は微分の内側でも外側でもよい。

∇λRσν+∇ρRρσνλ−∇νRσλ=0\nabla_\lambda R_{\sigma\nu}+\nabla_\rho R^\rho{}_{\sigma\nu\lambda}-\nabla_\nu R_{\sigma\lambda}=0

を得る。第3項では Rρσλρ=−RσλR^\rho{}_{\sigma\lambda\rho}=-R_{\sigma\lambda} を使った。

さらに gσνg^{\sigma\nu} で縮約する。第2項の gσνRρσνλg^{\sigma\nu}R^\rho{}_{\sigma\nu\lambda} は、(11.10)・(11.12) で並べ替えると −Rρλ-R^\rho{}_\lambda になる。

∇λR−∇ρRρλ−∇νRνλ=0,つまり∇ρ(Rρλ−12δρλR)=0.\nabla_\lambda R-\nabla_\rho R^\rho{}_\lambda-\nabla_\nu R^\nu{}_\lambda=0,\qquad\text{つまり}\qquad \nabla_\rho\Bigl(R^\rho{}_\lambda-\tfrac12\delta^\rho{}_\lambda R\Bigr)=0 .

添字を下げれば主張の式になる。

GμνG_{\mu\nu} を Einstein テンソルと呼ぶ。物質のエネルギー運動量テンソルも ∇μTμν=0\nabla^\mu T_{\mu\nu}=0 を満たすので、Einstein 方程式 Gμν∝TμνG_{\mu\nu}\propto T_{\mu\nu} は保存則と矛盾しない。その議論は『相対論入門』第11章 §11.2 に送る。2次元では (11.16) から Gμν=Kgμν−Kgμν=0G_{\mu\nu}=Kg_{\mu\nu}-Kg_{\mu\nu}=0 で、Einstein テンソルは恒等的に消える。

Ricci の幾何的な意味

2つの接ベクトル X,YX,Y が張る面の断面曲率を次の式で定める。

K(X,Y)=RρσμνXρYσXμYνg(X,X)g(Y,Y)−g(X,Y)2.(11.18)K(X,Y)=\frac{R_{\rho\sigma\mu\nu}X^\rho Y^\sigma X^\mu Y^\nu}{g(X,X)g(Y,Y)-g(X,Y)^2}.\tag{11.18}

2次元では例題 11.2 の式から分子は分母の KK 倍で、K(X,Y)=KK(X,Y)=K になる。高い次元では、断面曲率はその面の方向に沿って測地線で作った小さな曲面の Gauss 曲率である。

命題 11.14(Ricci は断面曲率の和)

長さ1の TT と、それに直交する正規直交な e1,…,en−1e_1,\dots,e_{n-1} をとると

RσνTσTν=∑i=1n−1K(ei,T).R_{\sigma\nu}T^\sigma T^\nu=\sum_{i=1}^{n-1}K(e_i,T).

証明

T,e1,…,en−1T,e_1,\dots,e_{n-1} を正規直交基底に選ぶと、縮約は基底についての和になる。

RσνTσTν=∑iRρσμνeiρTσeiμTν+RρσμνTρTσTμTν.R_{\sigma\nu}T^\sigma T^\nu=\sum_{i}R_{\rho\sigma\mu\nu}e_i^\rho T^\sigma e_i^\mu T^\nu+R_{\rho\sigma\mu\nu}T^\rho T^\sigma T^\mu T^\nu .

最後の項は (11.10) で 00 になる。残りの各項は、(11.18) の分母が 11 なので K(ei,T)K(e_i,T) に等しい。

Ricci は「TT の方向に進む測地線の束が、それに直交するすべての方向で平均してどれだけ寄り集まるか」を測る。この読み方は §11.4 の測地線偏差で式になる。もう1つの読み方として、測地線で作った半径 rr の小さな球の体積がある。

測地球の体積とスカラー曲率

空間の次元を nn とする。点 pp から測地線の長さで rr 以内にある点の集まりを測地球と呼ぶ。その体積は、平らな場合の V0rnV_0r^n と比べて次のようになる。

V(r)=V0rn(1−R6(n+2)r2+O(r4))V(r)=V_0r^n\Bigl(1-\frac{R}{6(n+2)}r^2+\mathcal{O}(r^4)\Bigr)

になる。証明は pp を中心とする測地線の座標で計量を2次まで展開して得られるので、ここでは2つの例で確かめるだけにする。

  • 半径 aa の球面の円板の面積は 2πa2(1−cos⁡(r/a))=πr2(1−r2/12a2+⋯ )2\pi a^2(1-\cos(r/a))=\pi r^2(1-r^2/12a^2+\cdots) である。R=2/a2R=2/a^2、n=2n=2 で公式と一致する。
  • 3次元球面(§11.5)の球の体積は 4π3r3(1−r2/5a2+⋯ )\tfrac{4\pi}{3}r^3(1-r^2/5a^2+\cdots) である。R=6/a2R=6/a^2、n=3n=3 で公式と一致する。

正の曲率では球が平らな場合より小さく、負の曲率では大きくなる。

例題 11.3 トーラスの曲率 ★★

オリジナル管の半径が bb、中心の円の半径が c>bc>b のトーラスを考える。その計量は ds2=b2dθ2+(c+bcos⁡θ)2dφ2\mathrm{d} s^2=b^2\mathrm{d}\theta^2+(c+b\cos\theta)^2\mathrm{d}\varphi^2 である。θ=0\theta=0 が外側の赤道、θ=π\theta=\pi が内側の赤道に当たる。

  1. Gauss 曲率 KK とスカラー曲率 RR を求め、符号が変わる所を答えよ。
  2. トーラス全体での ∫K dA\int K\,\mathrm{d} A を求めよ。
解答

(1) 弧長 r=bθr=b\theta を使うと、計量は次の形になる。

ds2=dr2+f(r)2dφ2,f=c+bcos⁡(r/b).\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} r^2+f(r)^2\mathrm{d}\varphi^2,\qquad f=c+b\cos(r/b).

例題 11.1 の結果 K=−f′′/fK=-f''/f が使えて、f′′=−cos⁡(r/b)/bf''=-\cos(r/b)/b だから

K=cos⁡θb (c+bcos⁡θ),R=2K=2cos⁡θb (c+bcos⁡θ).K=\frac{\cos\theta}{b\,(c+b\cos\theta)},\qquad R=2K=\frac{2\cos\theta}{b\,(c+b\cos\theta)} .

外側の赤道では K=1/b(c+b)>0K=1/b(c+b)>0、内側の赤道では K=−1/b(c−b)<0K=-1/b(c-b)<0 である。K=0K=0 になるのは θ=±π/2\theta=\pm\pi/2、つまりトーラスの上と下の円である。

同じ KK は第7章の例題 7.3 で第二基本形式から求めた。第7章の半径 R,rR,r が、ここの c,bc,b に当たる。ここでは計量だけから同じ値が出たので、驚異の定理の確かめにもなる。

(2) 面積要素は dA=det⁡g dθ dφ=b(c+bcos⁡θ) dθ dφ\mathrm{d} A=\sqrt{\det g}\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi=b(c+b\cos\theta)\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi である。K dA=cos⁡θ dθ dφK\,\mathrm{d} A=\cos\theta\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi となって分母が消え、

∫K dA=∫02π ⁣ ⁣∫02πcos⁡θ dθ dφ=0\int K\,\mathrm{d} A=\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{2\pi}\cos\theta\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi=0

を得る。外側の半分 ∣θ∣<π/2\lvert\theta\rvert<\pi/2 の寄与は 4π4\pi である。内側の半分の寄与は −4π-4\pi で、両者はちょうど打ち消し合う。全曲率が管の太さに依らず 00 になることは、第15章 §15.2 の Gauss–Bonnet の定理の1つの例である(トーラスの Euler 標数は 00)。

図

図 11.2 トーラス(c=2c=2、b=1b=1)の Gauss 曲率の符号。橙が K>0K>0 の外側、青が K<0K<0 の内側、灰色の帯の上と下の円で K=0K=0 になる。全体の積分は 00 である(例題 11.3)。

確認テスト

オリジナル

  1. 11.3-1 Riemann テンソルの1番目と4番目の添字の縮約 RρμνρR^\rho{}_{\mu\nu\rho} を Ricci テンソルで表せ。
  2. 11.3-2 地球を半径 RE=6.371×106 mR_{\mathrm E}=6.371\times10^6\ \mathrm m の球とみなし、表面の Gauss 曲率とスカラー曲率を求めよ。また半径 aa の円柱の面 ds2=a2dφ2+dz2\mathrm{d} s^2=a^2\mathrm{d}\varphi^2+\mathrm{d} z^2 のスカラー曲率を求めよ。
  3. 11.3-3 2次元の計量 ds2=e2w(x,y)(dx2+dy2)\mathrm{d} s^2=\mathrm{e}^{2w(x,y)}(\mathrm{d} x^2+\mathrm{d} y^2) を考える。その Gauss 曲率が K=−e−2w(∂x2w+∂y2w)K=-\mathrm{e}^{-2w}(\partial_x^2w+\partial_y^2w) であることを示し、w=ln⁡(ℓ/y)w=\ln(\ell/y) の場合の値を求めよ。
  4. 11.3-4 nn 次元で gμνGμν=(1−n/2)Rg^{\mu\nu}G_{\mu\nu}=(1-n/2)R を示せ。また n≥3n\ge3 では、Einstein テンソルが消えることと Ricci テンソルが消えることが同値であることを示せ。

木下の勉強ステータス

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