電磁気学入門 第3章 §3.7
3.1-1 導体の表面は等電位面なので、表面に沿った方向の電位の微分 ∂ϕ/∂t はゼロであり、接線成分 Et=−∂ϕ/∂t は表面上でゼロである。接線成分は面を横切って連続なので、すぐ外でもゼロになる。
3.1-2 球殻の内部を通る半径 r (a<r<b) の球面の上では、電場がゼロである。Gauss の法則から内側の全電荷はゼロで、内壁の電荷は −q である。点電荷は中心にあるので、対称性から内壁の電荷は一様に分布する。
- 内壁の面密度は σa=−4πa2q である。
- 外表面の電荷は、全電荷から内壁の分を引いて Q−(−q)=Q+q である。外の領域の電位を 4πε0rQ+q とすれば、外表面で一定値をとり、全電荷の条件も満たす。定理 3.2 からこれが答えであり、外表面の電荷は一様で σb=4πb2Q+q である。
- 球殻の電位は外表面の値 V=4πε0bQ+q である。
3.1-3 表面のすぐ外の電場は E=Q/(4πε0a2) で一様なので、(3.4) から単位面積あたりの力は外向きにf=2ε0E2=32π2ε0a4Q2 である。北半球にはたらく力は、対称性から z 成分だけが残る。面素は dS=a2sinθdθdφ である。その面素が受ける力の鉛直成分は fcosθdS である。よって
Fz=f∫02πdφ∫0π/2cosθsinθa2dθ=f⋅2πa2⋅21=πa2f=32πε0a2Q2
である。北半球は南半球から(南半球の電荷の電場を通して)この大きさの力で押し離される。北半球自身の電荷どうしの力は、作用反作用で合計がゼロになる。よって表面全体の力を北半球について合計したものが、南半球から受ける力に等しい。
数値は、Q=4πε0aV を入れて
F=32πε0a216π2ε02a2V2=2πε0V2=2π×8.854×10−12×(1.0×105)2N=0.139N
である。力は半径によらない。4. 3.1-4 空洞を V、内壁を S とする。内壁の上で電位は一定値 V0 をとる。空洞に電荷が無いので ∇2ϕ=0 で、
∫V∣∇ϕ∣2dV=∫V∇⋅(ϕ∇ϕ)dV=∮Sϕ∇ϕ⋅dS=V0∮S∇ϕ⋅dS=−V0∮SE⋅dS.
Gauss の法則から、内壁を貫く電場の流束は空洞の中の電荷を ε0 で割ったものでゼロである。よって ∫V∣∇ϕ∣2dV=0 で、∇ϕ=0 となる。電位は空洞の中で一定で、境界の値 V0 に等しい。5. 3.2-1 電荷を λ 倍したとき、表面の電荷の面密度をすべて λ 倍すれば、導体の表面で等電位の条件を満たす。このとき電位も同じ倍率になる。一意性定理によりこれが唯一の解なので、Q/V は倍率によらず、形だけで決まる。6. 3.2-2 中心の円柱に単位長さあたり λ の電荷を与える。半径 s (a<s<b)、長さ L の同軸の円筒面に Gauss の法則を使うと
E⋅2πsL=ε0λL,E=2πε0sλ
である。電位差は
V=∫ab2πε0sλds=2πε0λlogab
で、単位長さあたりの容量は
C′=Vλ=log(b/a)2πε0.
数値は log(b/a)=log4=1.386 より
C′=1.3862π×8.854×10−12F/m=4.01×10−11F/m=40.1pF/m
である。7. 3.2-3 2つの状態を順に調べる。
- 導体1にだけ単位電荷を与える(Q1=1、Q2=0)。球殻の内壁に −1、外面に +1 が乗る。電場は内球と球殻の間でも球殻の外でも 1/(4πε0r2) である。よって
V2=4πε0b1,V1=V2+4πε01(a1−b1)=4πε0a1
である。
- 導体2にだけ単位電荷を与える(Q2=1)。電荷は球殻の外面に一様に乗り、内側の電場はゼロなので
V1=V2=4πε0b1
である。
まとめて
(pij)=4πε01(1/a1/b1/b1/b)
で、p12=p21 を満たす。行列式は
(4πε0)21(ab1−b21)=(4πε0)21ab2b−a
なので、逆行列は
(cij)=4πε0b−aab2(1/b−1/b−1/b1/a)=4πε0b−aab−b−aab−b−aabb−ab2.
命題 3.6 の3つを確かめる。
- 対角成分は c11,c22>0 である。
- 非対角成分は c12=c21<0 である。
- 行の和は c11+c12=0 と c21+c22=4πε0b で、どちらも負でない。
c11+c21=0 は「導体1だけを電位 1 にし導体2を接地したとき、両方の電荷の和がゼロ」という意味である。導体1は導体2に完全に囲まれていて、導体1から出る電気力線はすべて導体2の内壁で終わる。よって導体2の内壁の電荷は導体1の電荷とちょうど打ち消し、接地した導体2の外面には電荷が乗らない。8. 3.2-4 前問の電位係数を入れると
p11+p22−2p12=4πε01(a1+b1−b2)=4πε01abb−a
なので、C=b−a4πε0ab となり、例題 3.3 の結果と一致する。9. 3.3-1 鏡像電荷を領域の中に置くと、その領域の中の電荷分布が元の問題と変わり、Poisson 方程式の右辺が違う別の問題の解になってしまうので、一意性定理を使って元の問題の解と同一視することができない。10. 3.3-2 例題 3.4 (4) から W外=−16πε0de2 である。数値を入れると
W外=−16π×8.854×10−12×1.0×10−9(1.602×10−19)2J=−5.77×10−20J
で、1eV=1.602×10−19J で割って −0.360eV である。電子は表面に近づくとエネルギーが 0.36eV 下がる。仕事関数(数 eV)と比べて1桁小さいが無視できない大きさで、金属表面のすぐ外のポテンシャルの形を考えるときにはこの寄与を入れる。11. 3.3-3 注意の箱から、鏡像は2つある。1つは z=a2/b に置く q′=−qa/b である。もう1つは中心に置く +qa/b である。点電荷が受ける力の z 成分(正なら斥力)は
F=4πε0q[(b−a2/b)2−qa/b+b2qa/b]=4πε0bq2a[b21−(b2−a2)2b2].
u=a2/b2≪1 とおくと
(b2−a2)2b2=b21(1−u)−2=b21(1+2u+⋯)
なので、括弧の中は −2a2/b4+⋯ である。よって
F≃−4πε0b52q2a3
となり、引力である。中性の球でも、点電荷が球の上に双極子を誘起し、その双極子から引かれるので引力になる。誘起される双極子は p∝a3q/b2 である。双極子が作る電場は 1/b3 で減るので、全体で 1/b5 になる。12. 3.3-4 鏡像は次の3つで、どれも領域 x>0,y>0 の外にある。
- 点 (−x0,y0,0) に −q。
- 点 (x0,−y0,0) に −q。
- 点 (−x0,−y0,0) に +q。
平面 x=0 上の点 (0,y,z) をとる。実際の電荷と1つ目の鏡像までの距離は、どちらも
x02+(y−y0)2+z2
で等しいので、2つの電位は打ち消し合う。2つ目と3つ目の鏡像も同様に打ち消し合う。よって電位はゼロである。
平面 y=0 の上でも、2つの座標の役割を入れ替えた同じ議論で電位はゼロになる。無限遠でも電位はゼロなので、一意性定理によりこれが答えである。13. 3.4-1 内部の解に r−(l+1) があると原点で発散するが、原点には電荷が無いので電位は有限でなければならない。外部の解に rl (l≥1) があると無限遠で発散するが、有限の電荷分布の電位は無限遠でゼロに近づかなければならない。14. 3.4-2 公式に l=2 を入れる。
(x2−1)2dx2d2(x2−1)2P2=x4−2x2+1,=12x2−4,=22⋅2!1(12x2−4)=812x2−4=23x2−1.
次に2つの積分を計算する。
∫−11P22dx=41∫−11(9x4−6x2+1)dx=41(518−4+2)=41⋅58=52,
∫−11P1P2dx=21∫−11(3x3−x)dx=0
(被積分関数が奇関数)。どちらも (3.16) と一致する。15. 3.4-3 cos2θ=x2 を Legendre 多項式で表す。P2=23x2−1 を逆に解くと
x2=31P0+32P2
である。境界の値が2つの多項式だけを含むので、直交性から l=0,2 の係数だけが残る。内部の解は Al の項だけである。係数は A0=V0/3、A2a2=2V0/3 となり、
ϕ内=V0[31+32(ar)2P2(cosθ)].
外部の解は Bl の項だけである。係数は B0/a=V0/3、B2/a3=2V0/3 となり、
ϕ外=V0[3ra+32(ra)3P2(cosθ)].
面密度は、電場の法線成分の跳び (3.2) から
σ=ε0(Er,外−Er,内)=ε0(−∂r∂ϕ外+∂r∂ϕ内)r=a
である。
∂r∂ϕ外a=V0[−3a1−a2P2],∂r∂ϕ内a=V0⋅3a4P2
より
σ(θ)=aε0V0[31+310P2(cosθ)]=aε0V0(5cos2θ−34).
全電荷を求める。P2 の項は次の積分がゼロなので消える。
∫0πP2sinθdθ=∫−11P2dx=0
よって全電荷は
3aε0V0⋅4πa2=34πε0aV0
である。これは外部の電位の 1/r の係数 V0a/3=Q/(4πε0) からも読み取れる。16. 3.4-4 (a) ϕ=X(x)Y(y) とおく。境界条件に合わせて、2つの因子を次のように選ぶ。
- x=0,a でゼロなので X=sin(nπx/a) をとる。
- y=0 でゼロなので Y=sinh(nπy/a) をとる。
重ね合わせを
ϕ=n∑cnsinanπxsinhanπy
とおき、辺 y=a で V0 になるように係数を決める。本文の溝の問題と同じ Fourier 係数の計算で、奇数の n に対して cnsinh(nπ)=4V0/(nπ)、偶数に対してゼロである。
ϕ(x,y)=π4V0n=1,3,5,…∑n1sinhnπsinh(nπy/a)sinanπx.
(b) 電位 V0 をもつ辺を、4辺それぞれに替えた4つの問題を考える。その解を ϕ1,…,ϕ4 とする。これらを足すと、和は4辺すべてで V0 をとる Laplace 方程式の解になる。一意性定理から、正方形の中で ϕ1+⋯+ϕ4=V0 である。
正方形を中心のまわりに 90∘ 回すと、4つの問題は互いに移り合う。よって中心での4つの値は等しく、それぞれ V0/4 である。(a) の級数に x=y=a/2 を入れると
π4n奇数∑n(−1)(n−1)/22cosh(nπ/2)1=0.2500
となり、この値と一致する。17. 3.5-1 原点を a だけずらすと、新しい位置ベクトルは r′−a である。よって
p新=∫(r′−a)ρdV′=p−a∫ρdV′=p−Qa
である。全電荷がゼロなら p新=p である。18. 3.5-2 全電荷と双極子モーメントはどちらもゼロである。
Q=q+q−q−q=0,p=q(dx^−dx^)−q(dy^−dy^)=0
四重極モーメントの対角成分 (3x′2−r′2,3y′2−r′2,3z′2−r′2) への寄与は、電荷1つあたり次のとおりである。
- x 軸上の正の電荷は q(2d2,−d2,−d2) を寄与する。
- y 軸上の負の電荷は −q(−d2,2d2,−d2) を寄与する。
非対角成分は、どの電荷も2つの座標が同時にゼロでないことはないのでゼロである。合計して
QxxQyyQzz=2q(2d2)+2q(d2)=6qd2,=2q(−d2)−2q(2d2)=−6qd2,=2q(−d2)+2q(d2)=0.
対角和はゼロである。(3.23) から
ϕ≃4πε0121r36qd2(x^2−y^2)=4πε0r53qd2(x2−y2).
19. 3.5-3 p=pz^ とする。z^=cosθr^−sinθθ^ を使うと
3(p⋅r^)r^−p=2pcosθr^+psinθθ^
なので、(3.24) の成分は
Er=4πε0r32pcosθ,Eθ=4πε0r3psinθ
である。電気力線は電場に平行なので、xz 面内の変位 (dr,rdθ) は電場の成分に比例する。よって
rdθdr=EθEr=sinθ2cosθ⟹rdr=2sinθcosθdθ⟹logr=2logsinθ+定数
で、r=r0sin2θ である。電場の大きさは次のとおりである。
- 軸上(θ=0)では 2p/(4πε0r3)。
- 赤道面(θ=π/2)では p/(4πε0r3)。
よって赤道面と軸上の比は 1 : 2 である。20. 3.5-4 U=−pEcosα なので、同じ向きと逆向きのエネルギーの差は
ΔU=2pE=2×6.2×10−30×1.0×106J=1.24×10−23J
である。熱エネルギーは
kBT=1.381×10−23×300J=4.14×10−21J
なので、比は ΔU/kBT=3.0×10−3 である。106V/m という強い電場でも、熱運動のエネルギーのほうが約300倍大きく、水の分子の向きはわずかしかそろわない。この「わずかなそろい」が、第4章で扱う極性分子の誘電率の温度依存性のもとになる。
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