確率論入門 第1章 §1.7
1.1 なぜ測度から始めるか
- 1.1-1 任意の ε>0 について {x}⊂[x−ε,x+ε]∩[0,1] である。右辺は長さ 2ε 以下の区間なので、単調性と (1.2) から
0≤P({x})≤P([x−ε,x+ε]∩[0,1])≤2ε.
ε>0 は任意なので P({x})=0 である。2. 1.1-2 n≥1 について In=[1/(2n+1),1/(2n)] とおく。隣り合う区間を比べる。In+1 の右端 1/(2n+2) は、1つ前の区間の左端より小さい。よって区間どうしは交わらない。可算加法性から
P(E)=n=1∑∞(2n1−2n+11)=21−31+41−51+⋯.
log(1+x) の展開で x=1 とおくと、次を得る。
log2=1−21+31−41+⋯.
よって右辺は 1−log2 に等しい。
P(E)=1−log2≈0.306853.
(項を2つずつ組にした級数は、各組が正なので和の順序の問題は生じない。)3. 1.1-3 「第1桁から第 n 桁までに 7 が現れない」という事象を En とする。最初の n 桁を固定した点の集合は、長さ 10−n の区間である。7 を含まない桁の並びは 9n 通りあるので、次を得る。
P(En)=9n⋅10−n=(0.9)n.
すべての桁に 7 が現れない事象 E は、すべての En に含まれる。よって単調性から、すべての n で P(E)≤(0.9)n が成り立つ。n→∞ として P(E)=0 である。4. 1.1-4 どの1点にも同じ確率 c を割り当てる確率測度 P があったとする。N=⋃n{n} は交わらない和なので、可算加法性から
1=P(N)=n=1∑∞c.
右辺は次のどちらかで、どちらも 1 にならない。
- c=0 なら、右辺は 0。
- c>0 なら、右辺は +∞。
したがってそのような P は存在しない。有限加法性だけを要求するなら、この矛盾は生じない(自然数の「密度」は有限加法的だが可算加法的でない)。
1.2 標本空間と事象
1.2-1 少なくとも2つが起こるのは、次の3つの組のどれかがともに起こるときである。
- A と B。
- B と C。
- C と A。
よって求める事象は
(A∩B)∪(B∩C)∪(C∩A).
2. 1.2-2 要素の言葉で、同値を順にたどる。
ω∈(n⋂An)c⟺「すべての n で ω∈An」が成り立たない⟺ある n で ω∈/An⟺ある n で ω∈Anc⟺ω∈n⋃Anc.
両辺の要素が一致するので、集合として等しい。3. 1.2-3 1. 1A−1B の値は、ω の位置で次のように決まる。
- A と B の両方に属するか、両方に属さないとき:0。
- ちょうど一方に属するとき:±1。
2乗すると、前者で 0、後者で 1 になる。これは 1A△B に一致する。2. (1.7) と De Morgan の法則から
1A∪B∪C=1−1Ac∩Bc∩Cc=1−(1−1A)(1−1B)(1−1C).
積を展開すると
(1−1A)(1−1B)(1−1C)=1−1A−1B−1C+1A1B+1B1C+1C1A−1A1B1C
なので、1 から引けば求める式を得る。両辺の期待値を取ると、3つの事象の包除原理になる(第5章)。4. 1.2-4 区間は番号の偶奇で次のようになる。
- n が偶数なら An=[0,1+1/n]。
- n が奇数なら An=[0,1−1/n]。
上極限:k≥n を満たす最小の偶数を m とする。このとき ⋃k≥nAk=[0,1+1/m] である。偶数番目の区間は番号とともに縮み、奇数番目の区間はそれに含まれるからである。n→∞ で m→∞ なので、共通部分は
nlimsupAn=n⋂[0,1+m(n)1]=[0,1].
下極限:k≥n を満たす最小の奇数を m′ とする。このとき ⋂k≥nAk=[0,1−1/m′] である。奇数番目の区間は番号とともに伸び、偶数番目の区間はそれを含むからである。n→∞ で 1−1/m′ は 1 に下から近づくが 1 には達しないので、
nliminfAn=n⋃[0,1−m′(n)1]=[0,1).
点 1 は偶数番目の An すべてに属し、奇数番目のどれにも属さないので、無限回起こるが「ある番号から先ずっと」は起こらない。したがって上極限には入り、下極限には入らない。
1.3 σ加法族と可測空間
1.3-1 1. σ加法族である。理由は次の通り。
- {1} と {2,3} は互いの補集合である。∅ と Ω も互いの補集合である。
- どの2つの和も4つのどれかになる。Ω が有限なので、可算個の和は有限個の和に帰着する。
これは命題 1.8 の分割 {{1},{2,3}} が生成する σ加法族である。2. σ加法族でない。{1} の補集合 {2,3} が族に入っていない。和 {1}∪{2}={1,2} も入っていない。2. 1.3-2 例題 1.3 の4つの集合を計算すると
A∩B={2},A∩Bc={1},Ac∩B={3},Ac∩Bc={4,5,6}.
どれも空でないので、これが原子であり、要素の個数は 24=16 である。{1,3}={1}∪{3}=A△B は原子の和なので σ({A,B}) に入る。{4} は原子 {4,5,6} の真部分集合で、原子の和として書けないので入らない。3. 1.3-3 3条件を順に確かめる。
- (F1) Ωc=Rc=∅ は可算なので R∈F。
- (F2) A∈F とする。このとき「A が可算」か「Ac が可算」のどちらかが成り立つ。この条件は A と補集合を入れ替えても変わらないので、Ac∈F。
- (F3) A1,A2,⋯∈F とする。すべての An が可算なら、可算集合の可算個の和は可算なので ⋃nAn∈F。ある Aj の補集合が可算なら、De Morgan の法則から次が成り立つ。
(n⋃An)c=n⋂Anc⊂Ajc.
可算集合の部分集合は可算なので、⋃nAn∈F。
(0,1) は非可算である。補集合 (−∞,0]∪[1,∞) も非可算である。したがって (0,1)∈/F である。この F はすべての1点集合を含むが開区間を含まないので、Borel 集合族より真に小さい。4. 1.3-4 F1={∅,{1},{2,3},Ω}、F2={∅,{2},{1,3},Ω} なので、
F1∪F2={∅,{1},{2},{2,3},{1,3},Ω}.
{1}∪{2}={1,2} がこの族に入っていないので、(F3) が成り立たず σ加法族でない。σ(F1∪F2) は {1},{2} を含む。よって {3}=({1}∪{2})c も含む。分割 {{1},{2},{3}} を含むので、命題 1.8 から σ(F1∪F2)=2Ω(要素8個)である。
1.4 確率測度と基本公式
- 1.4-1 2つの和の公式から
P(A∩B)=P(A)+P(B)−P(A∪B)=0.5+0.4−0.7=0.2.
差の公式から P(A∩Bc)=P(A)−P(A∩B)=0.5−0.2=0.3。同様に P(Ac∩B)=0.4−0.2=0.2 である。ちょうど一方が起こる確率は、この2つの和 0.5 である。これは P(A∪B)−P(A∩B)=0.7−0.2 とも計算できる。2. 1.4-2 目 1, 2, 3 のそれぞれについて、4回のうちその目が一度も出ない事象を A1,A2,A3 とする。1回で特定の目が出ない確率は 5/6 である。4回の結果は 64 通りが等しく起こるので
P(Ai)=(65)4,P(Ai∩Aj)=(64)4,P(A1∩A2∩A3)=(63)4.
包除原理から
P(A1∪A2∪A3)=3⋅1296625−3⋅1296256+129681=12961875−768+81=12961188=1211.
検算として、余事象「1,2,3 がすべて出る」の場合の数を数える。
- 4回のうち1回が 4,5,6 のどれかである場合:3×4!=72 通り。
- 1,2,3 のどれかが2回出る場合:3×4!/2!=36 通り。
合計は 108=1296/12 通りになり、一致する。3. 1.4-3 最初の表が第 n 回に出る事象を Bn とする。P(Bn)=2−n であり、Bn は互いに交わらない。求める事象は ⋃k≥1B2k なので、可算加法性から
k=1∑∞2−2k=k=1∑∞(41)k=1−1/41/4=31.
4. 1.4-4 2つの和の公式と P(A∪B)≤1 から
P(A∩B)=P(A)+P(B)−P(A∪B)≥P(A)+P(B)−1.
n 個の場合は、De Morgan の法則と Boole の不等式から
P(i⋂Ai)=1−P(i⋃Aic)≥1−i=1∑nP(Aic).
n=2 では 1−(1−P(A))−(1−P(B))=P(A)+P(B)−1 となり、第1式に一致する。5. 1.4-5 De Morgan の法則と劣加法性 (1.13) から
1−P(n⋂An)=P(n⋃Anc)≤n∑P(Anc)=n∑0=0.
確率は 0 以上なので P(⋂nAn)=1 である。
1.5 Borel 集合族
- 1.5-1 {a}c=(−∞,a)∪(a,∞) は開集合なので、B(R) に入る。(F2) から {a}∈B(R)。Q は可算なので、1点集合の可算個の和 Q=⋃n{qn} で書ける。(F3) から Q∈B(R)。
- 1.5-2 D={(−∞,q]:q∈Q} とおく。D⊂{(−∞,a]:a∈R}⊂B(R) なので σ(D)⊂B(R)。
逆に、実数 a を任意に取る。これに上から収束する有理数の減少列 qn を選ぶ。たとえば qn∈(a,a+1/n) と取ればよい。すると
(−∞,a]=n=1⋂∞(−∞,qn]
である。実際、次の2つが成り立つ。
- x≤a なら、x≤qn がすべての番号で成り立つ。
- x>a なら、ある番号で qn<x となる。
よって (−∞,a]∈σ(D) である。定理 1.17 と要点の箱の定石から、B(R)=σ({(−∞,a]})⊂σ(D) を得る。3. 1.5-3 第 n 段で取り除く開区間は 2n−1 個ある。それぞれの長さは 4−n なので、取り除く長さの合計は次のとおりである。
2n−1⋅4−n=21⋅2−n.
第 n 段のあとに残る集合 Fn は有限個の閉区間の和で、有限加法性から
Leb(Fn)=1−k=1∑n21⋅2−k=1−21(1−2−n).
F1⊃F2⊃⋯ で F=⋂nFn なので、上からの連続性から
Leb(F)=n→∞lim(1−21(1−2−n))=21.
F は Cantor 集合と同じように区間を1つも含まない閉集合だが、確率は 1/2 である。「区間を含まない」ことと「確率が 0 である」ことも別の性質である。4. 1.5-4 3条件を順に確かめる。
- (F1) E=R∩E で R∈B(R)。
- (F2) B∩E の、E の中での補集合を考える。それは E∖(B∩E)=Bc∩E であり、Bc∈B(R) である。
- (F3) ⋃n(Bn∩E)=(⋃nBn)∩E で、⋃nBn∈B(R)。
以上で、B(E) が3条件を満たすことが分かった。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com