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当てる道具(2):回転座標と回転波近似

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第18章 2準位原子と双極子近似・回転波近似
目次
  1. 実験室の座標の Hamiltonian
  2. 回転座標への変換
  3. なぜ「回転波」と呼ぶか:直線偏光は2つの円偏光の和
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第18章 §18.3 ★★★ 回転座標に移ると、結合はゆっくり回る項と 2ωL2\omega_{\mathrm L} で回る項に分かれる。前者だけを残すのが回転波近似で、直線偏光を2つの円偏光に分けたとき、原子と同じ向きに回る成分だけを残すことにあたる

実験室の座標の Hamiltonian

式 (18.2)・(18.3)・(18.5) を合わせると、2準位原子の Hamiltonian は原子の位置を原点に取って

H^(t)=ℏω02σz−12[deg⋅E0 e−iωLt+deg⋅E0∗ eiωLt]σ+−h.c.,E0=E0e(18.9)\hat H(t)=\frac{\hbar\omega_0}{2}\sigma_z-\frac{1}{2}\Bigl[\bm{d}_{eg}\cdot\bm{E}_0\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}+\bm{d}_{eg}\cdot\bm{E}_0^*\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}\Bigr]\sigma_+-\mathrm{h.c.},\qquad\bm{E}_0=E_0\bm{e}\tag{18.9}

になる(h.c.\mathrm{h.c.} は前の項のエルミート共役で、σ−\sigma_- の項)。E=12(E0e−iωLt+E0∗eiωLt)\bm{E}=\frac12(\bm{E}_0\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}+\bm{E}_0^*\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}) を式 (18.3) に掛け、σ+\sigma_+ の係数を集めたものである。σ+\sigma_+ に掛かる2つの項のうち、e−iωLt\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t} を持つ項を共回転の項、e+iωLt\mathrm{e}^{+\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t} を持つ項を反回転の項と呼ぶ。名前の理由は次の小節で述べる。Rabi 周波数を共回転の項の係数で

Ω=deg⋅E0ℏ(18.10)\Omega=\frac{\bm{d}_{eg}\cdot\bm{E}_0}{\hbar}\tag{18.10}

と定める。deg\bm{d}_{eg} の位相(∣e⟩| e \rangle の位相の選び方)か光の位相を選ぶと Ω\Omega は実数で正にできるので、以下 Ω>0\Omega>0 とする。直線偏光で deg\bm{d}_{eg} も実数のときは、反回転の項の係数も ℏΩ\hbar\Omega になり、式 (18.9) は第1章の ℏω02σz−ℏΩcos⁡(ωLt)σx\frac{\hbar\omega_0}{2}\sigma_z-\hbar\Omega\cos(\omega_{\mathrm L}t)\sigma_x に戻る。

回転座標への変換

状態を ∣ψ~(t)⟩=U^(t)∣ψ(t)⟩| \tilde\psi(t) \rangle =\hat U(t)| \psi(t) \rangle、U^(t)=eiωLtσz/2\hat U(t)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t\sigma_z/2} と変換する。∣ψ~⟩| \tilde\psi \rangle が従う Schrödinger 方程式の Hamiltonian は

H~=U^H^U^†+iℏdU^dtU^†(18.11)\tilde H=\hat U\hat H\hat U^\dagger+\mathrm{i}\hbar\frac{\mathrm{d} \hat U}{\mathrm{d} t}\hat U^\dagger\tag{18.11}

である(iℏ d∣ψ~⟩/dt=iℏU^˙∣ψ⟩+U^H^∣ψ⟩\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d}| \tilde\psi \rangle /\mathrm{d} t=\mathrm{i}\hbar\dot{\hat U}| \psi \rangle +\hat U\hat H| \psi \rangle に ∣ψ⟩=U^†∣ψ~⟩| \psi \rangle =\hat U^\dagger| \tilde\psi \rangle を入れる)。第2項は iℏ⋅iωL2σz=−ℏωL2σz\mathrm{i}\hbar\cdot\frac{\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}}{2}\sigma_z=-\frac{\hbar\omega_{\mathrm L}}{2}\sigma_z で、第1項では U^σ+U^†=eiωLtσ+\hat U\sigma_+\hat U^\dagger=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}\sigma_+ となる(σ+\sigma_+ は σz\sigma_z の固有値を 22 上げるので)。したがって

H~=−ℏΔ2σz−ℏ2[Ω σ++Ω∗σ−]−ℏ2[Ωcr e2iωLtσ++Ωcr∗e−2iωLtσ−],Ωcr=deg⋅E0∗ℏ(18.12)\tilde H=-\frac{\hbar\Delta}{2}\sigma_z-\frac{\hbar}{2}\Bigl[\Omega\,\sigma_++\Omega^*\sigma_-\Bigr]-\frac{\hbar}{2}\Bigl[\Omega_{\mathrm{cr}}\,\mathrm{e}^{2\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}\sigma_++\Omega_{\mathrm{cr}}^*\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}\omega_{\mathrm L}t}\sigma_-\Bigr],\qquad\Omega_{\mathrm{cr}}=\frac{\bm{d}_{eg}\cdot\bm{E}_0^*}{\hbar}\tag{18.12}

を得る。Δ=ωL−ω0\Delta=\omega_{\mathrm L}-\omega_0 は離調(この本の流儀でレーザー −- 原子)である。ここまでは厳密で、近似は入っていない。共回転の項は時間に依らなくなり、反回転の項は角周波数 2ωL2\omega_{\mathrm L} で回る。

回転波近似は、式 (18.12) の第3項を捨てることである。Ω\Omega を実数に取れば

H~RWA=−ℏΔ2σz−ℏΩ2σx(18.13)\tilde H_{\mathrm{RWA}}=-\frac{\hbar\Delta}{2}\sigma_z-\frac{\hbar\Omega}{2}\sigma_x\tag{18.13}

で、記法の正本と第1章の式に一致する。捨てる理由は時間の尺度の分離にある。残した項が状態を動かす速さは Ω\Omega と Δ\Delta の桁で、捨てた項は 2ωL2\omega_{\mathrm L} の速さで符号を変えるので、時間 1/Ω1/\Omega の間に Ω/ωL\Omega/\omega_{\mathrm L} 回に1回の割合でしか同じ向きに押さない。捨てた項の影響は、時間平均すると O(Ω/ω0)\mathcal{O}(\Omega/\omega_0) の振幅の小さなふらつきと、O(Ω2/ω0)\mathcal{O}(\Omega^2/\omega_0) の準位のずれとして残る。後者は 18.5節で Bloch–Siegert のずれとして計算する。

なぜ「回転波」と呼ぶか:直線偏光は2つの円偏光の和

式 (18.12) の2つの係数 Ω\Omega と Ωcr\Omega_{\mathrm{cr}} は、deg\bm{d}_{eg} と E0\bm{E}_0 の内積か、deg\bm{d}_{eg} と E0∗\bm{E}_0^* の内積かだけが違う。deg\bm{d}_{eg} が mm を1上げる遷移(∣g⟩| g \rangle が m=0m=0、∣e⟩| e \rangle が m=+1m=+1)のものだとすると、deg∝ex−iey\bm{d}_{eg}\propto\bm{e}_x-\mathrm{i}\bm{e}_y で(例題 18.1 の (1))、光が反時計回りの円偏光 e=(ex+iey)/2\bm{e}=(\bm{e}_x+\mathrm{i}\bm{e}_y)/\sqrt2 なら deg⋅e≠0\bm{d}_{eg}\cdot\bm{e}\neq0、deg⋅e∗=0\bm{d}_{eg}\cdot\bm{e}^*=0 になる。この場合は反回転の項が厳密に 00 で、回転波近似は近似でなくなる。原子の双極子は自由な時間発展で zz 軸のまわりを反時計回りに角周波数 ω0\omega_0 で回り、光の電場も同じ向きに ωL\omega_{\mathrm L} で回るので、2つは同じ向きにゆっくりずれながら回る。

直線偏光 excos⁡ωLt\bm{e}_x\cos\omega_{\mathrm L}t は、反時計回りと時計回りの2つの円偏光の和

excos⁡ωLt=12(excos⁡ωLt+eysin⁡ωLt)+12(excos⁡ωLt−eysin⁡ωLt)(18.14)\bm{e}_x\cos\omega_{\mathrm L}t=\frac12\bigl(\bm{e}_x\cos\omega_{\mathrm L}t+\bm{e}_y\sin\omega_{\mathrm L}t\bigr)+\frac12\bigl(\bm{e}_x\cos\omega_{\mathrm L}t-\bm{e}_y\sin\omega_{\mathrm L}t\bigr)\tag{18.14}

に分けられる(図 18.1)。原子の双極子と同じ向きに回る成分は、原子から見るとほとんど止まって見え、Rabi 振動を起こす。逆向きに回る成分は、原子から見ると角周波数 ωL+ω0≈2ω0\omega_{\mathrm L}+\omega_0\approx2\omega_0 で回って見え、平均すると原子をほとんど動かさない。回転波近似は、場を回転する波に分けて、原子と同じ向きに回る波だけを残す近似である。磁気共鳴で、静磁場のまわりを歳差するスピンに回転磁場を当てる Rabi(1937)の問題(I. I. Rabi (1937)、Phys. Rev. 51, 652)は、反回転の成分がちょうど無い場合にあたり、厳密に解ける。

図

図 18.1 直線偏光の電場(太い矢印)は、同じ大きさで逆向きに回る2つの円偏光(細い矢印)の和である(式 (18.14)、時刻 ωLt=50∘\omega_{\mathrm L}t=50^\circ の向き)。mm を1上げる遷移では、原子の双極子と同じ反時計回りの成分は共回転の項 Ω\Omega に、時計回りの成分は反回転の項 Ωcr\Omega_{\mathrm{cr}} に入る。回転波近似は後者を捨てる。

例題 18.3 円偏光では反回転の項が消える ★★

オリジナル∣g⟩=∣1s⟩| g \rangle =| 1s \rangle、∣e⟩=∣2p,+1⟩| e \rangle =| 2p,+1 \rangle の2準位を考え、deg=−e⟨2p,+1∣r^∣1s⟩\bm{d}_{eg}=-e\langle 2p,+1 | \hat{\bm{r}} | 1s \rangle を例題 18.1 の (1) の値で表す。

  1. (1) 反時計回りの円偏光 E0=E0(ex+iey)/2\bm{E}_0=E_0(\bm{e}_x+\mathrm{i}\bm{e}_y)/\sqrt2 について、Ω\Omega と Ωcr\Omega_{\mathrm{cr}} を求めよ。
  2. (2) 同じ振幅の xx 方向の直線偏光 E0=E0ex\bm{E}_0=E_0\bm{e}_x について、Ω\Omega と Ωcr\Omega_{\mathrm{cr}} を求めよ。
  3. (3) ∣g⟩| g \rangle と ∣e⟩| e \rangle の重ね合わせの双極子の期待値が、自由な時間発展で zz 軸のまわりをどちら向きに回るかを求め、(1) の結果と結びつけよ。
解答

(1) 例題 18.1 の (1) から ⟨2p,+1∣r^∣1s⟩=−C2(ex−iey)\langle 2p,+1 | \hat{\bm{r}} | 1s \rangle =-\frac{C}{\sqrt2}(\bm{e}_x-\mathrm{i}\bm{e}_y) なので、deg=eC2(ex−iey)\bm{d}_{eg}=\frac{eC}{\sqrt2}(\bm{e}_x-\mathrm{i}\bm{e}_y)。内積は複素共役を取らずに成分どうしを掛けるので

Ω=eCE02ℏ(1⋅1+(−i)⋅i)=eCE0ℏ,Ωcr=eCE02ℏ(1⋅1+(−i)⋅(−i))=0.\Omega=\frac{eCE_0}{2\hbar}\bigl(1\cdot1+(-\mathrm{i})\cdot\mathrm{i}\bigr)=\frac{eCE_0}{\hbar},\qquad\Omega_{\mathrm{cr}}=\frac{eCE_0}{2\hbar}\bigl(1\cdot1+(-\mathrm{i})\cdot(-\mathrm{i})\bigr)=0 .

反時計回りの円偏光は、この遷移に対して共回転の項だけを持ち、回転波近似は厳密になる。

(2) Ω=Ωcr=deg⋅exE0ℏ=eCE02 ℏ\Omega=\Omega_{\mathrm{cr}}=\frac{\bm{d}_{eg}\cdot\bm{e}_xE_0}{\hbar}=\frac{eCE_0}{\sqrt2\,\hbar} で、直線偏光は共回転と反回転の項を同じ大きさで持つ。大きさが (1) の 1/21/\sqrt2 になるのは、式 (18.14) のとおり、直線偏光の振幅が半分ずつ2つの円偏光に分かれ、そのうち (1) と同じ向きの成分だけが共回転の項を与えるからである。

(3) ∣g⟩| g \rangle と ∣e⟩| e \rangle の重ね合わせ cg∣g⟩+ce∣e⟩c_g| g \rangle +c_e| e \rangle の双極子の期待値は ⟨d^⟩=2Re⁡[cg∗ce deg∗]\langle \hat{\bm{d}} \rangle =2\operatorname{Re}[c_g^*c_e\,\bm{d}_{eg}^*] で、deg∗=eC2(ex+iey)\bm{d}_{eg}^*=\frac{eC}{\sqrt2}(\bm{e}_x+\mathrm{i}\bm{e}_y)、自由な時間発展で cg∗ce∝e−iω0tc_g^*c_e\propto\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t} なので

⟨d^⟩∝Re⁡[(ex+iey)e−iω0t]=excos⁡ω0t+eysin⁡ω0t\langle \hat{\bm{d}} \rangle \propto\operatorname{Re}\bigl[(\bm{e}_x+\mathrm{i}\bm{e}_y)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}\bigr]=\bm{e}_x\cos\omega_0t+\bm{e}_y\sin\omega_0t

となり、双極子は反時計回りに回る。(1) で共回転の項を持ったのは、この双極子と同じ向きに回る光だった。∣e⟩=∣2p,−1⟩| e \rangle =| 2p,-1 \rangle を選ぶと deg∝ex+iey\bm{d}_{eg}\propto\bm{e}_x+\mathrm{i}\bm{e}_y になって向きが逆転し、共回転の項を持つのは時計回りの円偏光になる。「原子の双極子と同じ向きに回る光の成分が共回転の項に入る」と覚えておけばよい。この章では円偏光を原子の量子化軸 zz のまわりの回る向きで呼び、光の進む向きに対する螺旋度(第15章、第15章)とは区別する。

ほかの巻では

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