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何を近似したか・何の実験の量で確かめるか

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第18章 2準位原子と双極子近似・回転波近似
目次
  1. 置いた近似
  2. 回転波近似の誤差:Bloch–Siegert のずれ
  3. 何の実験の量で確かめるか
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第18章 §18.5 ★★ 2準位への縮約(A)・双極子近似(B)・回転波近似(B)。回転波近似の誤差は共鳴を Ω2/(4ω0)\Omega^2/(4\omega_0) だけずらす Bloch–Siegert のずれで、Floquet の方法で厳密に確かめられる

置いた近似

1つ目は、原子の多くの準位から ∣g⟩| g \rangle と ∣e⟩| e \rangle だけを残したことである。18.1節で見たとおり、縮退した励起状態の中では偏光が明るい状態を1つ決めるので縮約は厳密だが、離れた準位を捨てることは近似である。捨てた準位 ∣j⟩| j \rangle への結合は離調 ωL−ωjg\omega_{\mathrm L}-\omega_{jg} で割られた2次の量として、2つの準位のエネルギーをずらす。共鳴に近い遷移が1つだけで、ほかの遷移への離調が Ω\Omega と Δ\Delta より十分大きいことが条件になる。18.2節の例題で見たとおり、遠い離調の光ではこの条件が崩れ、縮約した模型の答えはゲージの選び方にさえ左右される。

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの ∣g⟩| g \rangle と ∣e⟩| e \rangle が張る2次元の部分空間(ほかの遷移への離調が Ω\Omega と ∣Δ∣\lvert \Delta\rvert より十分大きい) | 証明 要確認(縮退した励起状態の中の縮約は厳密。離れた準位への漏れを上から押さえる定理の形は確かめていない) | 行き先 近似の数理 第4章

2つ目は双極子近似で、札は 18.2節に置いた。3つ目が回転波近似で、式 (18.12) の反回転の項を捨てた。式 (18.12) は周期 π/ωL\pi/\omega_{\mathrm L} で速く変わる係数を持つ常微分方程式で、速い振動を時間平均で消すのは平均化の方法(Krylov–Bogoliubov)の典型である。平均化の定理は、時間 1/Ω1/\Omega の桁の範囲で、平均した方程式の解と元の方程式の解の差が O(Ω/ω0)\mathcal{O}(\Omega/\omega_0) にとどまることを保証する。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの Ω/ω0→0\Omega/\omega_0\to0 かつ ∣Δ∣/ω0→0\lvert \Delta\rvert /\omega_0\to0(反回転の項を時間平均で捨てる) | 証明 条件付き(時間 1/Ω1/\Omega の桁の範囲で誤差 O(Ω/ω0)\mathcal{O}(\Omega/\omega_0)。周期的な係数の常微分方程式に対する平均化の定理による。長い時間では2次の Ω2/(4ω0)\Omega^2/(4\omega_0) のずれが位相として積もる) | 行き先 近似の数理 第7章

回転波近似の誤差:Bloch–Siegert のずれ

捨てた反回転の項の効果を、2次の摂動で見積もる。式 (18.12) の第3項は、∣g⟩| g \rangle と ∣e⟩| e \rangle を強さ ℏΩ/2\hbar\Omega/2(直線偏光で Ωcr=Ω\Omega_{\mathrm{cr}}=\Omega のとき)でつなぐが、エネルギーの釣り合いが ℏ(ω0+ωL)\hbar(\omega_0+\omega_{\mathrm L}) だけ外れている。2次の摂動のエネルギーのずれは、∣g⟩| g \rangle が −(ℏΩ/2)2/[ℏ(ω0+ωL)]-(\hbar\Omega/2)^2/[\hbar(\omega_0+\omega_{\mathrm L})]、∣e⟩| e \rangle がその逆で、遷移の周波数はΩ2/[2(ω0+ωL)]\Omega^2/[2(\omega_0+\omega_{\mathrm L})] だけ上がる。共鳴が起こるのは ωL\omega_{\mathrm L} がこのずれた遷移の周波数に等しいときで、ωL≈ω0\omega_{\mathrm L}\approx\omega_0 を代入して

ωres≈ω0+Ω24ω0(18.18)\omega_{\mathrm{res}}\approx\omega_0+\frac{\Omega^2}{4\omega_0}\tag{18.18}

を得る。これが Bloch–Siegert のずれである(F. Bloch, A. Siegert (1940)、Phys. Rev. 57, 522)。同じ計算で、遠い離調の光シフトに反回転の項が足す分は −ℏΩ2/[4(ω0+ωL)]-\hbar\Omega^2/[4(\omega_0+\omega_{\mathrm L})] で、これを式 (18.17) に足したものが第1章の古典の分極率から出した双極子力 −ℏΩ24(1ω0−ωL+1ω0+ωL)-\frac{\hbar\Omega^2}{4}\bigl(\frac{1}{\omega_0-\omega_{\mathrm L}}+\frac{1}{\omega_0+\omega_{\mathrm L}}\bigr) に一致する。

式 (18.18) を摂動を使わずに確かめるには、Floquet の方法を使う。実験室の座標の Hamiltonian (18.9) は周期 T=2π/ωLT=2\pi/\omega_{\mathrm L} で周期的なので、1周期の時間発展の演算子 U^(T)\hat U(T) の固有値は e−iεkT/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varepsilon_kT/\hbar} の形をとる。εk\varepsilon_k を準エネルギーと呼ぶ(J. H. Shirley (1965)、Phys. Rev. 138, B979)。回転波近似では準エネルギーの差が ℏΩ′\hbar\Omega' になり、Δ=0\Delta=0 で最小値 ℏΩ\hbar\Omega をとる。反回転の項を残して U^(T)\hat U(T) を数値で計算し、準エネルギーの差が最小になる ωL\omega_{\mathrm L} を探すと、それが本当の共鳴である。図 18.3 は Ω/ω0=0.3\Omega/\omega_0=0.3 の場合で、最小は ωL/ω0=1.0216\omega_{\mathrm L}/\omega_0=1.0216 にあり、式 (18.18) の 1.02251.0225 とよく合う。

図

図 18.3 Ω/ω0=0.3\Omega/\omega_0=0.3 の直線偏光の場の中の2準位原子の準エネルギーの差。実線は回転波近似の一般化 Rabi 周波数、点線は反回転の項を残した H^=ℏω02σz−ℏΩcos⁡(ωLt)σx\hat H=\frac{\hbar\omega_0}{2}\sigma_z-\hbar\Omega\cos(\omega_{\mathrm L}t)\sigma_x の1周期の時間発展を数値で求めた結果である。点線の最小(共鳴)は ωL/ω0=1.0216\omega_{\mathrm L}/\omega_0=1.0216 にずれ、式 (18.18) の予言 1.02251.0225 と合う。

何の実験の量で確かめるか

この章の行列 (18.13) を確かめる量は3つある。1つ目は Rabi 振動の周波数で、共鳴で Ω\Omega が電場の振幅に比例する(強度の平方根に比例する)こと、離調を付けると Ω2+Δ2\sqrt{\Omega^2+\Delta^2} に速くなることを、振動の周期から測る。Rabi の分子線の磁気共鳴(I. I. Rabi ほか (1938)、Phys. Rev. 53, 318)以来、原子・イオン・超伝導回路の量子ビットで同じ形が確かめられている。量子ビットの操作の π\pi パルスと π/2\pi/2 パルスは、この式で長さを決めている。

2つ目は服を着た状態の分裂で、Autler–Townes の2本の線の間隔が Ω′\Omega' になることと、遠い離調の光シフトが強度に比例し離調に反比例することを、別の弱い光の分光で測る。光格子時計の魔法波長(第28章)は、2つの時計の準位の光シフトをそろえる波長のことである。

3つ目は回転波近似の破れで、Bloch–Siegert のずれ (18.18) を測る。原子と可視光では Ω/ω0\Omega/\omega_0 が 10−810^{-8} の桁で、第1章の例題の条件(Ω/2π=8.78 MHz\Omega/2\pi=8.78\,\mathrm{MHz}、780 nm780\,\mathrm{nm})ではずれは 0.050 Hz0.050\,\mathrm{Hz} にすぎない。ずれが大きく見えるのは、結合が遷移の周波数に比べて強い系で、超伝導の量子ビットと LC 共振器を強く結合させた回路で 50 MHz50\,\mathrm{MHz} の Bloch–Siegert のずれが観測されている(P. Forn-Díaz ほか (2010)、Phys. Rev. Lett. 105, 237001。結合は光子の量子化したモードとの結合で、この章の古典場の式の量子版にあたる)。

例題 18.5 Bloch–Siegert のずれを数で見る ★★

オリジナル

  1. (1) Ω/ω0=0.2\Omega/\omega_0=0.2 のとき、式 (18.18) の共鳴の位置 ωres/ω0\omega_{\mathrm{res}}/\omega_0 を求めよ。Floquet の方法で数値計算すると、準エネルギーの差の最小は ωL/ω0=1.00983\omega_{\mathrm L}/\omega_0=1.00983 にある。予言との差を、ずれ ωres−ω0\omega_{\mathrm{res}}-\omega_0 に対する割合で答えよ。
  2. (2) 第1章の例題の条件(λ0=780 nm\lambda_0=780\,\mathrm{nm}、Ω/2π=8.78 MHz\Omega/2\pi=8.78\,\mathrm{MHz})で、ずれを Hz で求めよ。
  3. (3) (2) のずれを、この遷移の自然幅(与えられた値として 6 MHz6\,\mathrm{MHz} とする)と比べ、原子の分光で回転波近似を疑わなくてよい理由を述べよ。
解答

(1) ωres/ω0=1+0.22/4=1.0100\omega_{\mathrm{res}}/\omega_0=1+0.2^2/4=1.0100。数値のずれ 0.009830.00983 は予言 0.01000.0100 より 1.7%1.7\% 小さい。差は Ω4/ω03\Omega^4/\omega_0^3 の桁の次の項で、Ω/ω0=0.2\Omega/\omega_0=0.2 では (0.2)2=4%(0.2)^2=4\% の桁の補正になる。

(2) 周波数で書くと (Ω/2π)2/(4ν0)(\Omega/2\pi)^2/(4\nu_0)、ν0=c/λ0=3.843×1014 Hz\nu_0=c/\lambda_0=3.843\times10^{14}\,\mathrm{Hz} なので(8.78×106)2/(4×3.843×1014)=0.0502 Hz(8.78\times10^6)^2/(4\times3.843\times10^{14})=0.0502\,\mathrm{Hz}。

(3) ずれは自然幅の 10−810^{-8} 倍で、線の中心をこの精度で決めることは普通の分光ではできない。Rabi 周波数を 1 GHz1\,\mathrm{GHz} に上げても、ずれは (109)2/(4×3.84×1014)≈650 Hz(10^9)^2/(4\times3.84\times10^{14})\approx650\,\mathrm{Hz} にとどまる。ただし時計の遷移のように 10−1810^{-18} の精度を目指すときは、この大きさのずれも数え上げる対象になる(第28章)。

木下の勉強ステータス

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