光学と量子エレクトロニクス 第18章 §18.6 ★★ 時間に依存する摂動論の1次の遷移確率は、Rabi の式の Ω→0 の極限。磁気共鳴の回転座標は同じ変換
学部の量子力学の授業では、光による遷移を時間に依存する摂動論で習う。摂動 V^(t)=V^0cosωt を t=0 に入れると、1次の摂動で ∣g⟩ から ∣e⟩ に移る確率は
Pe(1)(t)=ℏ2∣⟨e∣V^0∣g⟩∣2(ω−ω0)2sin2((ω−ω0)t/2)
になる(e+iωt の項は分母が ω+ω0 で小さいとして落とす。これは回転波近似と同じ操作である)。V^0=−d^⋅E0 なら ∣⟨e∣V^0∣g⟩∣/ℏ=Ω で、
Pe(1)(t)=Δ2Ω2sin22Δt
と書ける。これは Rabi の式 (18.16) で Ω′ を ∣Δ∣ に置き換えたもので、Ω≪∣Δ∣ か Ωt≪1 のときの極限にあたる。摂動論は ∣g⟩ の確率が減ることを入れていないので、共鳴で Pe(1)=(Ωt/2)2 が時間とともに際限なく増える。Rabi の式はその増え方を sin2(Ωt/2) で止め、確率が 1 を超えないようにしたものである。長い時間で sin2(Δt/2)/Δ2→(πt/2)δ(Δ) とおくと Fermi の黄金律になり、幅のある光に対する遷移の速さと Einstein の B 係数が出る(第20章、第20章)。
授業で使う相互作用の形は、電磁気の授業の流れでは H^1=(e/m)A⋅p^(速度のゲージ)、光学・量子エレクトロニクスの授業では −d^⋅E(長さのゲージ)である。共鳴で2つのゲージの Rabi 周波数が一致することは式 (18.8) で示した。
磁気共鳴(NMR・ESR)の授業では、静磁場 B0ez の中のスピンに、xy 面内で回転する磁場を当て、磁場と一緒に回る座標で見ると静磁場が B0−ω/γ に減って見える、と習う。これは式 (18.11) の変換と同じで、−2ℏωLσz の項が「減って見える静磁場」にあたる。振動磁場を当てたときに回転磁場の半分だけを残すのが回転波近似で、これも図 18.1 と同じ見方である。スピンの歳差の古典との対応は 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第5章 にあり、第19章ではこの 2×2 行列を Bloch 球の上の歳差として書く。
例題 18.6 摂動論はいつまで使えるか ★★
オリジナル共鳴(Δ=0)の光を時刻 0 から当てる。
- (1) Rabi の式 sin2(Ωt/2) が、1次の摂動論の Pe(1)=(Ωt/2)2 より 10% 小さくなるのは Ωt がいくつのときか。そのときの Pe を求めよ。
- (2) 離調 Δ=−5Ω のとき、摂動論と Rabi の式の振動の振幅(Pe の最大値)と周期を比べよ。
解答
(1) x=Ωt/2 とおくと条件は sin2x=0.9x2 で、これを数値で解くと x=0.5592、Ωt=1.118 である。そのとき Pe=sin2(0.5592)=0.281。原子の 28% が上の準位に移るまでは、摂動論の誤差は 10% 以内にとどまる。
(2) Rabi の式では最大値 Ω2/Ω′2=1/26=0.0385、周期 2π/Ω′=2π/(26Ω)。摂動論では最大値 Ω2/Δ2=1/25=0.0400、周期 2π/∣Δ∣=2π/(5Ω)。最大値は 4%、周期は 26/5−1=2.0% だけ違う。どちらも Ω2/(2Δ2) の桁の違いで、離調が大きいほど摂動論は良くなる。違いの源は服を着た状態の光シフトで、振動の周波数が ∣Δ∣ から Ω′ に変わる。
ほかの巻では
- 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第12章:同じ1次の摂動と Rabi の式の比べを「1次が厳密解より10%大きい」で測り Ωt=1.06 を得る。この章の 1.118 は「厳密解が1次の0.9倍」の基準
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com