tecktom.com

出てくるもの(2):粒子数・占有数・連続変数

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 最大エントロピー原理
目次
  1. 粒子数も知っている:グランドカノニカル分布
  2. 占有数:Fermi 分布と Bose 分布
  3. 連続変数と参照測度
  4. 拘束に入れ忘れた保存量
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第1章 §2.1.4 ★★ 拘束を増やすとグランドカノニカル分布、状態空間に占有数の制限を入れると Fermi 分布と Bose 分布が出る。連続変数では参照測度の選び方が物理の入力になる

粒子数も知っている:グランドカノニカル分布

系が粒子を出し入れできるとき、状態 ii ごとにエネルギー EiE_i と粒子数 NiN_i が決まる。拘束を ⟨E⟩=U\langle E \rangle =U と ⟨N⟩=Nˉ\langle N \rangle =\bar N の2つにすると、乗数も2つになり

p(i)=e−βEi−λNNiΞ,Ξ=∑ie−βEi−λNNi(2.1.13)p(i)=\frac{\mathrm{e}^{-\beta E_i-\lambda_NN_i}}{\Xi},\qquad \Xi=\sum_i\mathrm{e}^{-\beta E_i-\lambda_NN_i}\tag{2.1.13}

となる。式 (2.1.10) から ∂S/∂Nˉ=kBλN\partial S/\partial\bar N= k_{\mathrm B}\lambda_N で、熱力学の ∂S/∂N=−μ/T\partial S/\partial N=-\mu/T と比べると λN=−βμ\lambda_N=-\beta\mu である。こうして p(i)=e−β(Ei−μNi)/Ξp(i)=\mathrm{e}^{-\beta(E_i-\mu N_i)}/\Xi のグランドカノニカル分布が出る。化学ポテンシャルは、平均粒子数の拘束にかかる乗数(に −kBT- k_{\mathrm B} T を掛けたもの)である。同じ要領で、体積の平均を拘束に加えると定圧の分布 e−β(E+PV)\mathrm{e}^{-\beta(E+PV)} が出て、圧力は体積の拘束の乗数として現れる。

占有数:Fermi 分布と Bose 分布

相互作用しない粒子が1粒子状態(軌道)jj にエネルギー εj\varepsilon _j で入るとき、多粒子の状態は各軌道の占有数 (n1,n2,… )(n_1,n_2,\dots) で決まり、E=∑jnjεjE=\sum_jn_j\varepsilon _j、N=∑jnjN=\sum_jn_j である。式 (2.1.13) の指数は −β∑j(εj−μ)nj-\beta\sum_j(\varepsilon _j-\mu)n_j と軌道ごとの和になるので、分布は軌道ごとの積

p(n1,n2,… )=∏jpj(nj),pj(n)∝e−β(εj−μ)np(n_1,n_2,\dots)=\prod_jp_j(n_j),\qquad p_j(n)\propto\mathrm{e}^{-\beta(\varepsilon _j-\mu)n}

に分かれる。ここで、占有数がとれる値の集合を状態空間に入れておく必要がある。Fermi 粒子なら n∈{0,1}n\in\{0,1\}、Bose 粒子なら n∈{0,1,2,… }n\in\{0,1,2,\dots\} で、平均の占有数は

⟨nj⟩F=1eβ(εj−μ)+1,⟨nj⟩B=1eβ(εj−μ)−1(2.1.14)\langle n_j \rangle _{\mathrm F}=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon _j-\mu)}+1},\qquad \langle n_j \rangle _{\mathrm B}=\frac{1}{\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon _j-\mu)}-1}\tag{2.1.14}

となる。最大エントロピー原理そのものには Pauli の排他律は入っていない。粒子の統計は、どの占有数の組を数えるか、すなわち状態空間と参照分布の側に入る。

例題 2.1.4 1つの軌道の占有数 ★★

オリジナル1つの軌道について、平均の占有数 nˉ=⟨n⟩\bar n=\langle n \rangle だけが分かっているとする。

  1. (1) Fermi 粒子(n∈{0,1}n\in\{0,1\})のとき、最大エントロピーの値が二値エントロピー hb(nˉ)=−nˉln⁡nˉ−(1−nˉ)ln⁡(1−nˉ)h_{\mathrm b}(\bar n)=-\bar n\ln\bar n-(1-\bar n)\ln(1-\bar n) になることを示せ。乗数を式 (2.1.10) から求め、β(ε−μ)=ln⁡((1−nˉ)/nˉ)\beta(\varepsilon -\mu)=\ln\bigl((1-\bar n)/\bar n\bigr) と式 (2.1.14) が一致することを確かめよ。
  2. (2) nˉ=0.1\bar n=0.1 と nˉ=0.5\bar n=0.5 の Fermi 粒子の軌道1つあたりのエントロピーを nat で求めよ。nˉ=2\bar n=2 の Bose 粒子の軌道(例題 2.1.3)と比べよ。
解答

(1) 値が2つで拘束が平均1つなので、p(1)=nˉp(1)=\bar n、p(0)=1−nˉp(0)=1-\bar n と分布は拘束だけで決まり、H=hb(nˉ)H=h_{\mathrm b}(\bar n) である。乗数は λ=dhb/dnˉ=−ln⁡nˉ−1+ln⁡(1−nˉ)+1=ln⁡((1−nˉ)/nˉ)\lambda=\mathrm{d} h_{\mathrm b}/\mathrm{d}\bar n=-\ln\bar n-1+\ln(1-\bar n)+1=\ln\bigl((1-\bar n)/\bar n\bigr)。拘束の関数を (ε−μ)n(\varepsilon -\mu)n に取り直すと乗数が β\beta になるので β(ε−μ)=ln⁡((1−nˉ)/nˉ)\beta(\varepsilon -\mu)=\ln\bigl((1-\bar n)/\bar n\bigr)、解いて nˉ=1/(eβ(ε−μ)+1)\bar n=1/(\mathrm{e}^{\beta(\varepsilon -\mu)}+1) で、式 (2.1.14) の Fermi 分布と一致する。

(2) hb(0.1)=0.3251h_{\mathrm b}(0.1)=0.3251 nat、hb(0.5)=ln⁡2=0.6931h_{\mathrm b}(0.5)=\ln2=0.6931 nat。Fermi 粒子の軌道は値が2つしかないので、1軌道あたりのエントロピーは ln⁡2\ln2 を超えない。nˉ=0.5\bar n=0.5(ε=μ\varepsilon =\mu)で最大になり、Fermi 準位の近くの軌道だけが熱力学のエントロピーに寄与する。nˉ=2\bar n=2 の Bose 粒子の軌道は 1.90951.9095 nat で、占有数に上限がないぶん大きい。

連続変数と参照測度

連続な変数 x∈Rx\in\mathbb{R} の確率密度 p(x)p(x) について、離散の式をそのまま写した −∫p(x)ln⁡p(x) dx-\int p(x)\ln p(x)\,\mathrm{d} x(微分エントロピー)は、変数の取り替えで値が変わる。y=ϕ(x)y=\phi(x) と変数を替えると密度は pY(y)=p(x)/∣ϕ′(x)∣p_Y(y)=p(x)/\lvert \phi'(x)\rvert となり、微分エントロピーは ⟨ln⁡∣ϕ′(X)∣⟩\langle \ln\lvert \phi'(X)\rvert \rangle だけずれる。したがって「微分エントロピーが最大の分布」は、どの変数で一様に数えるかを決めない限り意味を持たない。相対エントロピー D(p ∥ m)=∫pln⁡(p/m) dxD(p\,\|\,m)=\int p\ln(p/m)\,\mathrm{d} x は、pp と参照の密度 mm が同じ因子で変わるので、変数の取り替えで変わらない。連続変数の最大エントロピー原理は、参照測度 mm を明示した最小相対エントロピー原理 (2.1.3) として述べる必要がある。

古典力学の系では、参照測度を相空間の体積要素 dΓ\mathrm{d}\Gamma(正準変数 (x,p)(\bm{x},\bm{p}) の上で一様)に選ぶ。理由は Liouville の定理で、Hamilton の運動方程式に従う流れは相空間の体積を保つ(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第1章)。時間が経っても形を変えない測度を「何も知らないときの重み」に選ぶ理由は、推論の結果を時間の原点の選び方に依らせないためである。正準変数でない変数(速さと位置など)で一様に数えると、この性質がなくなる。

1粒子の運動量 p\bm{p} について平均の運動エネルギー ⟨∣p∣2/(2m)⟩=32kBT\langle \lvert \bm{p}\rvert ^2/(2m) \rangle =\frac32 k_{\mathrm B} T だけを拘束にすると、d3p\mathrm{d}^3p で一様な参照測度のもとでp(p)∝e−β∣p∣2/(2m)p(\bm{p})\propto\mathrm{e}^{-\beta\lvert \bm{p}\rvert ^2/(2m)} の Gauss 分布、すなわち Maxwell 分布が出る。R\mathbb R の上で平均と分散を決めた最大エントロピーの分布が Gauss 分布になる、という統計学の事実の物理版である。

例題 2.1.5 参照測度を取り違えると ★★

オリジナル1次元の自由粒子(質量 mm)の運動エネルギー ε=p2/(2m)\varepsilon =p^2/(2m) の平均が UU であることだけが分かっているとする(pp は運動量)。

  1. (1) 運動量 p∈Rp\in\mathbb{R} の上で一様な参照測度を使うと、最大エントロピーの分布は何か。そのときの ε\varepsilon の確率密度を求めよ。
  2. (2) エネルギー ε≥0\varepsilon \ge0 の上で一様な参照測度を使うと、最大エントロピーの分布は何か。
  3. (3) 2つの答えで、ε>2U\varepsilon >2U となる確率をそれぞれ求めよ。どちらが熱平衡の正しい分布か。
解答

(1) p(p)∝e−λp2/(2m)p(p)\propto\mathrm{e}^{-\lambda p^2/(2m)} の Gauss 分布で、⟨p2/(2m)⟩=1/(2λ)=U\langle p^2/(2m) \rangle =1/(2\lambda)=U から λ=1/(2U)\lambda=1/(2U)。分散は ⟨p2⟩=2mU\langle p^2 \rangle =2mU である。ε=p2/(2m)\varepsilon =p^2/(2m) の密度は、±p\pm p の2つが同じ ε\varepsilon を与えることと dε=(p/m)dp\mathrm{d}\varepsilon =(p/m)\mathrm{d} p から pε(ε)=12πUεe−ε/(2U)p_{\varepsilon }(\varepsilon )=\frac{1}{\sqrt{2\pi U\varepsilon }}\mathrm{e}^{-\varepsilon /(2U)}(自由度1の χ2\chi^2 分布を UU 倍したもの)。

(2) pε(ε)=e−ε/U/Up_{\varepsilon }(\varepsilon )=\mathrm{e}^{-\varepsilon /U}/U の指数分布。ε\varepsilon の上で一様に数えると、運動量の小さい所の重みが ∣dε/dp∣=∣p∣/m\lvert \mathrm{d}\varepsilon /\mathrm{d} p\rvert =\lvert p\rvert /m に比例して小さくなる。

(3) (1) では Pr⁡(ε>2U)=Pr⁡(∣p∣>4mU)=erfc(1)=0.1573\Pr(\varepsilon >2U)=\Pr(\lvert p\rvert >\sqrt{4mU})=\mathrm{erfc}(1)=0.1573。(2) では e−2=0.1353\mathrm{e}^{-2}=0.1353。同じ拘束から違う答えが出たのは、参照測度が違うからである。正準変数 (x,p)(x,p) の上で一様な測度が Liouville の定理で保たれるので、熱平衡の分布は (1) である。(1) は温度 TT のカノニカル分布 e−βp2/(2m)\mathrm{e}^{-\beta p^2/(2m)} で U=12kBTU=\frac12 k_{\mathrm B} T とおいたものと一致する(等分配)。

拘束に入れ忘れた保存量

最大エントロピー原理の答えは、拘束に何を書いたかで決まる。力学がエネルギー以外の量も保存するのにそれを拘束に入れなければ、予言は外れる。可積分な量子多体系では、保存量が系の大きさと同じだけあり、時間が経った後の局所的な観測量は、エネルギーだけを拘束にしたカノニカル分布でなく、すべての保存量の平均を拘束にした最大エントロピーの分布(一般化 Gibbs アンサンブル)で記述されることが数値計算で示されている1M. Rigol, V. Dunjko, V. Yurovsky, and M. Olshanii (2007), Phys. Rev. Lett. 98, 050405。下の脚注へ。このとき失敗したのは原理でなく拘束の選び方である。どの量の平均を拘束に入れるかは力学の保存量で決まり、拘束を決めた後でどの分布を使うかは推論の規則で決まる。孤立した量子系が熱平衡の分布に近づく仕組みは 第2部第3章 で扱う。

ほかの巻では

1 M. Rigol, V. Dunjko, V. Yurovsky, and M. Olshanii (2007), Phys. Rev. Lett. 98, 050405。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ