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出てくるもの(3):なぜ最大エントロピーなのか

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 最大エントロピー原理
目次
  1. 推論か、頻度か
  2. 拘束のもとでの集中
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第1章 §2.1.5 ★★★ 独立な試行を数え上げると、拘束を満たす標本の経験分布は最大エントロピーの分布に集中する。Pythagoras の等式の D(p ∥ pλ)D(p\,\|\,p_\lambda) が集中の速さを決める

推論か、頻度か

ここまでの議論は、最大エントロピーの分布を「知らないことを仮定しない分布」として選んだ。これは推論の規則で、それが実験と合う理由はまだ示していない。この節では、同じ分布が「拘束を満たすほとんどすべての場合に実際に観測される頻度」でもあることを、数え上げで示す。

参照分布 qq から独立に NN 回値を引き、値 xx が出た回数を nxn_x、経験分布を P(x)=nx/NP(x)=n_x/N とする。ある経験分布 PP が出る確率は多項分布で、第1部第8章の定理 1.8.2(型のクラスの確率)を Stirling の公式で書き直すと

Pr⁡(経験分布が P)=N!∏xnx!∏xq(x)nx=e−ND(P ∥ q)+O(ln⁡N)(2.1.15)\Pr(\text{経験分布が }P)=\frac{N!}{\prod_xn_x!}\prod_xq(x)^{n_x}=\mathrm{e}^{-N D(P\,\|\,q)+\mathcal{O}(\ln N)}\tag{2.1.15}

となる。qq が一様分布のときは、並びの数 N!/∏xnx!≈eNH(P)N!/\prod_xn_x!\approx\mathrm{e}^{NH(P)} を数えることと同じで、Boltzmann が気体の状態の数え方に使った式である1L. Boltzmann (1877), Sitzungsber. Akad. Wiss. Wien 76, 373–435。下の脚注へ。式 (2.1.15) から、経験分布の集合 AA に入る確率が e−Nmin⁡P∈AD(P ∥ q)\mathrm{e}^{-N\min_{P\in A}D(P\,\|\,q)} で減ることを示したものが Sanov の定理である(第1部第8章。ここでは結果だけを使う)。

拘束のもとでの集中

試行の結果について、「NN 回の gg の値の平均が gˉ\bar g だった」ことだけを知ったとする。経験分布の言葉では P∈CP\in\mathcal C である。C\mathcal C に入る2つの経験分布 PP と pλp_\lambda の確率の比は、式 (2.1.15) と Pythagoras の等式 (2.1.6) から

Pr⁡(経験分布が P∣C)Pr⁡(経験分布が pλ∣C)≈e−N[D(P ∥ q)−D(pλ ∥ q)]=e−ND(P ∥ pλ)(2.1.16)\frac{\Pr(\text{経験分布が }P\mid\mathcal C)}{\Pr(\text{経験分布が }p_\lambda\mid\mathcal C)}\approx\mathrm{e}^{-N[D(P\,\|\,q)-D(p_\lambda\,\|\,q)]}=\mathrm{e}^{-N D(P\,\|\,p_\lambda)}\tag{2.1.16}

となる。NN が大きいと、D(P ∥ pλ)D(P\,\|\,p_\lambda) が 1/N1/N より大きい経験分布はほとんど出てこない。拘束を満たす標本の経験分布は pλp_\lambda に集中する。集中の指数がちょうど D(P ∥ pλ)D(P\,\|\,p_\lambda) になる理由は、Pythagoras の等式により、C\mathcal C の中では qq からの DD の差が pλp_\lambda からの DD に等しいことにある。

経験分布が pλp_\lambda に集中するので、NN 回のうち1回目の値の条件付き分布も pλp_\lambda に近づく。次の定理は、第1部第8章の定理 1.8.7 を、拘束が期待値で与えられる場合に書き直したものである。この章が新しく足すのは有限の NN でのずれの大きさで、条件付き分布と pλp_\lambda の差は O(1/N)\mathcal{O}(1/N)、DD では O(1/N2)\mathcal{O}(1/N^2) である(図 2.1.3)。

定理 2.1.2(条件付き極限定理 ★★★)

X1,…,XNX_1,\dots,X_N を qq に従う独立な確率変数とし、gˉ\bar g は gg のとる値の最小値と最大値の間(端を含まない)にあるとする。1N∑n=1Ng(Xn)\frac1N\sum_{n=1}^Ng(X_n) が gˉ\bar g に等しい(またはその近くにある)という条件のもとで、X1X_1 の条件付き分布は N→∞N\to\infty で pλp_\lambda(式 (2.1.4))に収束する。さらに、固定した個数 kk について (X1,…,Xk)(X_1,\dots,X_k) の条件付き分布は独立な pλp_\lambda の積に収束する。

N→∞N\to\infty の主張の証明は第1部第8章の定理の証明(Sanov の定理と Pythagoras の不等式)と同じ流れで、ここでは繰り返さない2J. M. Van Campenhout and T. M. Cover (1981), IEEE Trans. Inf. Theory 27, 483–489。I. Csiszár (1984), Ann. Probab. 12, 768–793。下の脚注へ。

この定理から、最大エントロピー原理が頻度としても正しいことが分かる。NN 個のサイコロの目の合計が 4N4N だと分かったとき、そのうち1個の目の分布は N→∞N\to\infty で例題 2.1.1 の pλp_\lambda になる。これを熱浴の言葉に読み替えると、1個のサイコロが注目する系で、残りの N−1N-1 個が熱浴、合計の目が全体のエネルギーである。合計が値として決まっているのは全体のミクロカノニカル分布で、1個の系の分布がカノニカル分布に近づくことは、統計力学の授業で「系と熱浴」からカノニカル分布を導くことと同じである(2.1.6節)。推論としての最大エントロピーと、全体の等重率から出る頻度は、N→∞N\to\infty で同じ分布になる。

図

図 2.1.3 NN 個の公平なサイコロの目の合計が 4N4N のときの、1個目の出目の条件付き分布(点線、厳密)と、平均 44 の最大エントロピーの分布 pλp_\lambda(実線、N→∞N\to\infty の極限)。N=3N=3 で (2,3,4,5,6,5)/25(2,3,4,5,6,5)/25。D(条件付き分布 ∥ pλ)D(\text{条件付き分布}\,\|\,p_\lambda) は N=3,10,100N=3,10,100 で 1.25×10−21.25\times10^{-2}, 1.04×10−31.04\times10^{-3}, 9.78×10−69.78\times10^{-6} と、およそ N−2N^{-2} で減る。

例題 2.1.6 3個のサイコロの合計が 1212 ★★★

オリジナル公平なサイコロを3個振り、目の合計が 1212 だったとだけ知らされた。

  1. (1) 1個目の目が kk である条件付き確率を、残り2個の目の和が 12−k12-k になる場合の数を数えて求めよ。
  2. (2) 例題 2.1.1 の pλp_\lambda と比べよ。k=6k=6 だけが pλp_\lambda の傾向から外れる理由を述べよ。
解答

(1) 2個のサイコロの和が ss になる場合の数は、s=11,10,9,8,7,6s=11,10,9,8,7,6 でそれぞれ 2,3,4,5,6,52,3,4,5,6,5 である。1個目が kk なら残りの和は 12−k12-k なので、k=1,…,6k=1,\dots,6 の場合の数は 2,3,4,5,6,52,3,4,5,6,5、合計 2525。条件付き確率は

Pr⁡(X1=k∣X1+X2+X3=12)=(2,3,4,5,6,5)25=(0.08, 0.12, 0.16, 0.20, 0.24, 0.20).\Pr(X_1=k\mid X_1+X_2+X_3=12)=\frac{(2,3,4,5,6,5)}{25}=(0.08,\ 0.12,\ 0.16,\ 0.20,\ 0.24,\ 0.20).

(2) pλ=(0.103,0.123,0.146,0.174,0.207,0.247)p_\lambda=(0.103,0.123,0.146,0.174,0.207,0.247) と比べると、k≤5k\le5 では「目が大きいほど確率が高い」という傾向が同じで、値も近い。D(条件付き分布 ∥ pλ)=0.0125D(\text{条件付き分布}\,\|\,p_\lambda)=0.0125 nat である。k=6k=6 のとき残り2個の和は 66 で、その場合の数 55 が和 77 の場合の数 66 より少ないので、k=6k=6 だけ確率が下がる。残りの個数が少ないと「熱浴」の場合の数が 12−k12-k の関数として指数関数で近似できない。残りの個数 N−1N-1 を増やすと、和が ss になる場合の数の対数が ss についてほぼ1次式になり(2.1.6節の ln⁡WB\ln W_{\mathrm B} の展開)、条件付き分布は pλp_\lambda に近づく。図 2.1.3 の N=10N=10 ではすでに k=6k=6 も単調な並びに入っている。

この節の極限で捨てたもの、すなわち定理の前に述べた有限の NN のずれ(条件付き分布で O(1/N)\mathcal{O}(1/N)、DD で O(1/N2)\mathcal{O}(1/N^2))を札にしておく。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N1/N(拘束を共有する独立な試行の数 NN。熱浴の言葉では熱浴の大きさ) | 証明 証明済み(値が有限個で独立同分布、拘束の値が値の範囲の内部にあるとき。Van Campenhout–Cover 1981・Csiszár 1984) | 行き先 近似の数理 第6章

ほかの巻では

  • 近似の数理 第13章:有限の NN のずれを越えて、熱力学極限そのものが存在する条件(物質の安定性)が読める

1 L. Boltzmann (1877), Sitzungsber. Akad. Wiss. Wien 76, 373–435。

2 J. M. Van Campenhout and T. M. Cover (1981), IEEE Trans. Inf. Theory 27, 483–489。I. Csiszár (1984), Ann. Probab. 12, 768–793。

木下の勉強ステータス

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