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当てる性質:局所の集合からの相対エントロピー

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第5章 Bell の不等式
目次
  1. の定義と意味
  2. 等方的な箱の
  3. 雑音を通すと は増えない
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第5章 §3.5.4 ★★★ 量子の箱と局所の箱の集合との相対エントロピーの最小値 DLD_{\mathcal L} を、データ処理不等式と結合凸性から閉じた形で求め、局所の模型の棄却に要る試行の回数と雑音への強さを読む

DLD_{\mathcal L} の定義と意味

SS は不等式が破れているかどうかを示すが、破れの大きさが「局所の模型をどれだけ強く否定するか」を直接表すわけではない。この巻の背骨である相対エントロピーで測るには、量子の箱 pp と局所の箱 L∈LL\in\mathcal L を比べ、局所の側で最も近いものを選べばよい。設定 xyxy は審判が分布 r(xy)r(xy) で選ぶので、xyxy と abab の結合分布 r(xy)p(ab ∣ xy)r(xy)p(ab\,|\,xy) と r(xy)L(ab ∣ xy)r(xy)L(ab\,|\,xy) の相対エントロピーを考える。

DL(p)≔min⁡L∈L∑x,yr(xy) D(p(⋅ ∣ xy) ∥ L(⋅ ∣ xy)).(3.5.14)D_{\mathcal L}(p)\coloneqq\min_{L\in\mathcal L}\sum_{x,y}r(xy)\,D\bigl(p(\cdot\,|\,xy)\,\big\|\,L(\cdot\,|\,xy)\bigr).\tag{3.5.14}

この章では r(xy)=1/4r(xy)=1/4(一様)とする。L\mathcal L は閉じた凸集合なので最小値は存在し、p∈Lp\in\mathcal L のとき、そのときに限り DL(p)=0D_{\mathcal L}(p)=0 である。この量は van Dam・Gill・Grünwald(2005、IEEE Trans. Inf. Theory 51、2812)が「非局所性の証明の統計的な強さ」として調べた。

意味は Sanov の定理(第1部第8章)から読める。ある局所の模型 LL が自然の真の姿で、nn 回の試行が独立だとすると、得られた xy,abxy,ab の頻度が量子の箱 pp に近くなる確率は e−nD(rp ∥ rL)\mathrm{e}^{-nD(rp\,\|\,rL)} 程度である。局所の模型の側が最も有利な LL を選んでも

max⁡L∈LPr⁡L(頻度が p に近い)≈e−nDL(p)(3.5.15)\max_{L\in\mathcal L}\Pr_L\bigl(\text{頻度が }p\text{ に近い}\bigr)\approx\mathrm{e}^{-nD_{\mathcal L}(p)}\tag{3.5.15}

である。Stein の補題(同じ章)の言葉では、量子の箱を帰無仮説、局所の模型を対立仮説にした検定で、第2種の誤りの確率が e−nDL\mathrm{e}^{-nD_{\mathcal L}} の速さで減る。誤りの確率を β\beta 以下にするのに要る試行の回数は、おおよそ n≈ln⁡(1/β)/DLn\approx\ln(1/\beta)/D_{\mathcal L} である。

等方的な箱の DLD_{\mathcal L}

DLD_{\mathcal L} は一般には16個の頂点の混合の重みについての数値的な最小化で求める。CHSH ゲームについて対称な箱では、閉じた形で書ける。ここで等方的な箱とは、どの xyxy でも、勝ちの2通りの (a,b)(a,b) に ω/2\omega/2 ずつ、負けの2通りに (1−ω)/2(1-\omega)/2 ずつを置く箱である。∣Φ+⟩| \Phi^+ \rangle や Werner 状態を CHSH の角度で測った箱、PR 箱はこの形をしている。2値の分布の相対エントロピーを db(s ∥ t)≔sln⁡st+(1−s)ln⁡1−s1−td_{\mathrm b}(s\,\|\,t)\coloneqq s\ln\frac st+(1-s)\ln\frac{1-s}{1-t} と書く。

定理 3.5.5(等方的な箱と局所の集合の相対エントロピー ★★★)

勝率 ω=12+S8\omega=\frac12+\frac S8 の等方的な箱 pp について、ω≥3/4\omega\ge3/4(S≥2S\ge2)なら

DL(p)=db(ω ∥ 34)(3.5.16)D_{\mathcal L}(p)=d_{\mathrm b}\Bigl(\omega\,\Big\|\,\frac34\Bigr)\tag{3.5.16}

であり、1/4≤ω≤3/41/4\le\omega\le3/4(∣S∣≤2\lvert S\rvert \le2)なら DL(p)=0D_{\mathcal L}(p)=0 である。

証明

下界から示す。任意の L∈LL\in\mathcal L をとり、結果 (a,b)(a,b) を「勝ち・負け」の1ビットに粗くする写像を pp と LL の両方に当てる。データ処理不等式(第1部第4章)から

∑x,y14D(p(⋅ ∣ xy) ∥ L(⋅ ∣ xy)) ≥ ∑x,y14 db(ω ∥ ωxyL)\sum_{x,y}\tfrac14D\bigl(p(\cdot\,|\,xy)\,\big\|\,L(\cdot\,|\,xy)\bigr)\ \ge\ \sum_{x,y}\tfrac14\,d_{\mathrm b}\bigl(\omega\,\big\|\,\omega^L_{xy}\bigr)

が成り立つ。ここで ωxyL\omega^L_{xy} は LL の xyxy での勝率で、pp の勝率はどの xyxy でも ω\omega である。dbd_{\mathrm b} は2つの引数について結合凸(第1部第3章)なので、右辺は db(ω ∥ ωˉL)d_{\mathrm b}(\omega\,\|\,\bar\omega^L) 以上である。ωˉL=14∑xyωxyL\bar\omega^L=\frac14\sum_{xy}\omega^L_{xy} は LL の平均の勝率で、CHSH 不等式から ωˉL≤3/4\bar\omega^L\le3/4 である。t<st<s の範囲で db(s ∥ t)d_{\mathrm b}(s\,\|\,t) は tt について減少するので、ω≥3/4\omega\ge3/4 なら右辺は db(ω ∥ 3/4)d_{\mathrm b}(\omega\,\|\,3/4) 以上である。

次に、この下界を達成する LL を作る。例題 3.5.2 (1) の S=+2S=+2 の8個の戦略を一様に混ぜた箱 L∗L^* を考える。8個はどれも xyxy のちょうど1つで負け、各 xyxy で負ける戦略は2個ずつある(A0B0A_0B_0 型の4個と A1B0A_1B_0 型の4個の負ける場所を数えると確かめられる)ので、L∗L^* の勝率はどの xyxy でも 3/43/4 である。8個の集合は全員の出力の符号を反転する操作で閉じているので、勝ちの2通りの (a,b)(a,b) は等しい確率 3/83/8 を、負けの2通りは 1/81/8 を持つ。L∗L^* は勝率 3/43/4 の等方的な箱で、D(p(⋅ ∣ xy) ∥ L∗(⋅ ∣ xy))=db(ω ∥ 3/4)D(p(\cdot\,|\,xy)\,\|\,L^*(\cdot\,|\,xy))=d_{\mathrm b}(\omega\,\|\,3/4) がどの xyxy でも成り立つ。1/4≤ω≤3/41/4\le\omega\le3/4 のときは、S=−2S=-2 の8個の戦略を一様に混ぜた箱(同じ理由で勝率 1/41/4 の等方的な箱になる)と L∗L^* を混ぜれば、勝率 ω\omega の等方的な箱そのものが L\mathcal L の中に作れるので DL=0D_{\mathcal L}=0 である。

証明は、この巻で繰り返し使ってきた2つの性質だけでできている。粗くすると DD は増えないので、勝ち負けしか見ない比較は箱全体の比較より弱い(下界)。等方的な箱では、勝ち負けを見た後に残る情報が量子と局所で同じ分布をしているので、粗くしても何も失われない(上界がその下界に一致する)。

図

図 3.5.3 等方的な箱の DLD_{\mathcal L}(式 (3.5.16)、点線=厳密)と、S=2S=2 のまわりの2次の近似 (S−2)2/24(S-2)^2/24(実線)。S≤2S\le2 では 00。量子力学で達成できる最大の点 S=22S=2\sqrt2 で 0.03210.0321 nat、PR 箱 S=4S=4 で ln⁡(4/3)=0.288\ln(4/3)=0.288 nat

数値を出すと次のとおりである。∣Φ+⟩| \Phi^+ \rangle を CHSH の角度で測った量子の箱は ω=cos⁡2(π/8)=0.8536\omega=\cos^2(\pi/8)=0.8536 で、

DL=db(0.8536 ∥ 0.75)=0.03207 nat=0.04627 ビット.(3.5.17)D_{\mathcal L}=d_{\mathrm b}(0.8536\,\|\,0.75)=0.03207\ \text{nat}=0.04627\ \text{ビット}.\tag{3.5.17}

PR 箱は ω=1\omega=1 で DL=ln⁡(4/3)=0.2877D_{\mathcal L}=\ln(4/3)=0.2877 nat である。S=2S=2 のすぐ上では、ω=34+δ\omega=\frac34+\delta(δ=(S−2)/8\delta=(S-2)/8)として db(34+δ ∥ 34)=δ22⋅34⋅14+O(δ3)=83δ2+O(δ3)d_{\mathrm b}(\frac34+\delta\,\|\,\frac34)=\frac{\delta^2}{2\cdot\frac34\cdot\frac14}+\mathcal{O}(\delta^3)=\frac83\delta^2+\mathcal{O}(\delta^3) なので

DL≈(S−2)224(3.5.18)D_{\mathcal L}\approx\frac{(S-2)^2}{24}\tag{3.5.18}

となる(図 3.5.3 の実線)。2次の係数は、2値の分布の Fisher 情報 1/(ω(1−ω))1/(\omega(1-\omega)) の半分である(第1部第7章)。SS が2をわずかに超えるだけの箱は、DLD_{\mathcal L} が S−2S-2 の2乗でしか増えないので、棄却に多くの試行を要する。

雑音を通すと DLD_{\mathcal L} は増えない

実験の装置は、結果を一定の確率で取り違える。Alice と Bob がそれぞれ独立に、確率 ε\varepsilon で結果の符号を反転する雑音を考える。これは手元の結果に確率行列F=(1−εεε1−ε)F=\begin{pmatrix}1-\varepsilon &\varepsilon \\ \varepsilon &1-\varepsilon \end{pmatrix} を当てる操作で、局所の箱を局所の箱へ写す(反転の乱数を λ\lambda に含めればよい)。したがって、雑音を通す前の最も近い局所の箱 L∗L^* を同じ雑音に通したものを比べる相手に選ぶと、データ処理不等式から

DL(F⊗F p)≤∑x,y14D(F⊗F p(⋅ ∣ xy) ∥ F⊗F L∗(⋅ ∣ xy))≤DL(p)(3.5.19)D_{\mathcal L}(F\otimes F\,p)\le\sum_{x,y}\tfrac14D\bigl(F\otimes F\,p(\cdot\,|\,xy)\,\big\|\,F\otimes F\,L^*(\cdot\,|\,xy)\bigr)\le D_{\mathcal L}(p)\tag{3.5.19}

となる。局所の操作で非局所性の証拠を増やすことはできない。この雑音で相関は Exy→(1−2ε)2ExyE_{xy}\to(1-2\varepsilon )^2E_{xy} となるので、S→(1−2ε)2SS\to(1-2\varepsilon )^2S である。量子の上限 222\sqrt2 から出発すると、(1−2ε)2⋅22>2(1-2\varepsilon )^2\cdot2\sqrt2>2 が CHSH 不等式を破る条件で、ε<(1−2−1/4)/2≈0.0796\varepsilon <(1-2^{-1/4})/2\approx0.0796 が要る。

最初の無抜け穴の Bell 実験(Hensen ほか 2015、Nature 526、682)は、1.3 km 離れた2つのダイヤモンドの電子スピンを使い、245 回の試行で S=2.42±0.20S=2.42\pm0.20 を得て、局所の模型を P=0.039P=0.039 で棄却した。S=2.42S=2.42 の等方的な箱では DL=0.00774D_{\mathcal L}=0.00774 nat で、nDL=245×0.00774≈1.90nD_{\mathcal L}=245\times0.00774\approx1.90、e−nDL≈0.15\mathrm{e}^{-nD_{\mathcal L}}\approx0.15 である。式 (3.5.15) は指数の部分だけの見積もりで、実際の PP 値は試行の独立性を仮定しない別の検定で計算されているので一致しないが、nDLnD_{\mathcal L} が1の程度にとどまることから、この実験の証拠の強さが数パーセントの水準だったことがわかる。

例題 3.5.4 棄却に要る試行の回数 ★★

オリジナル第2種の誤りの確率を β=10−6\beta=10^{-6} まで下げるのに要る試行の回数を n≈ln⁡(1/β)/DLn\approx\ln(1/\beta)/D_{\mathcal L} で見積もる。

  1. (1) ∣Φ+⟩| \Phi^+ \rangle を CHSH の角度で測った量子の箱と、PR 箱について、nn を求めよ。
  2. (2) 量子の箱の結果を、Alice と Bob がそれぞれ確率 ε=0.05\varepsilon =0.05 で取り違えるとき、SS・DLD_{\mathcal L}・nn を求めよ。
  3. (3) (2) で DLD_{\mathcal L} が下がることを、式 (3.5.19) を使わずに、db(ω ∥ 3/4)d_{\mathrm b}(\omega\,\|\,3/4) が ω>3/4\omega>3/4 で増加関数であることから確かめよ。
解答

(1) ln⁡(106)=13.82\ln(10^6)=13.82。量子の箱は DL=0.03207D_{\mathcal L}=0.03207 なので n≈13.82/0.03207≈431n\approx13.82/0.03207\approx431 回。PR 箱は 13.82/0.2877≈4813.82/0.2877\approx48 回。PR 箱は1回ごとに必ず勝つので、局所の模型が48回続けて勝つ確率 (3/4)48≈10−6(3/4)^{48}\approx10^{-6} と同じ数になる。

(2) (1−2ε)2=0.81(1-2\varepsilon )^2=0.81 なので S=0.81×22=2.291S=0.81\times2\sqrt2=2.291、ω=12+2.2918=0.7864\omega=\frac12+\frac{2.291}{8}=0.7864。雑音を通しても箱は等方的なので、定理 3.5.5 からDL=db(0.7864 ∥ 0.75)=0.00365D_{\mathcal L}=d_{\mathrm b}(0.7864\,\|\,0.75)=0.00365 nat。n≈13.82/0.00365≈3781n\approx13.82/0.00365\approx3781 回で、雑音の無いときの約9倍になる。

(3) ddωdb(ω ∥ t)=ln⁡ωt−ln⁡1−ω1−t\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} \omega}d_{\mathrm b}(\omega\,\|\,t)=\ln\frac{\omega}{t}-\ln\frac{1-\omega}{1-t} は ω>t\omega>t で正なので、db(ω ∥ 3/4)d_{\mathrm b}(\omega\,\|\,3/4) は ω>3/4\omega>3/4 で増加する。雑音は ω−12\omega-\frac12 を 0.810.81 倍に縮め、ω\omega を 0.85360.8536 から 0.78640.7864 へ下げるので、DLD_{\mathcal L} は 0.032070.03207 から 0.003650.00365 に下がる。

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