解答
(1) 状態を (g, e) の順に並べ、列を「移る前」とする。Kh=(1/21/210)、Kc=(3/41/410) で、1周期は
KcKh=(7/81/83/41/4).
定常分布は π(e)=81π(g)+41π(e) から π(g)=6π(e)、π=(76,71)。熱い熱浴の後は Khπ=(76⋅21+71, 76⋅21)=(74,73)。冷たい熱浴の後は π に戻る。1周期の行列は詳細つり合いを満たす Gibbs 分布を持たないが、第1部第4章の H 定理により、どこから始めても D(p∥π) が減って π に近づく。
(2) 熱い熱浴に触れるあいだに e にいる確率が 71 から 73 に増えるので、⟨Qh⟩=ε(73−71)=72ε。冷たい熱浴では 73 から 71 に戻るので ⟨Qc⟩=−72ε。1周期で系のエネルギーは戻り、熱 72ε が熱い熱浴から冷たい熱浴へ運ばれる。
(3) Kh(e∣e)=Kc(e∣e)=0 なので、e から e へ続けてとどまる経路は確率 0 で、残りは5本である。g を 0、e を 1 と書き、Qh=ε(x1−x0)、Qc=ε(x2−x1) とする。
経路(0,0,0)(0,0,1)(0,1,0)(1,0,0)(1,0,1)P76⋅21⋅43=28976⋅21⋅41=28376⋅21⋅1=281271⋅1⋅43=28371⋅1⋅41=281熱の項 −βhQh−βcQc0−ln4−ln2+ln4+ln2ln2−ln4Σ0ln6−ln4=ln23ln2−ln6+ln2=−ln3−ln2
((0,0,1) の lnπ(1)π(0)=ln6、(1,0,0) の lnπ(0)π(1)=−ln6。)逆回しの確率 P~=π(x2)Kc(x1∣x2)Kh(x0∣x1) で ln(P/P~) を直接計算しても、同じ Σ になる(局所詳細つり合いがそれぞれの熱浴で成り立つため)。平均は
⟨Σ⟩=283ln23+2812ln2−283ln3−281ln2=28−3+12−1ln2=72ln2≈0.1980.
一方 (βc−βh)⟨Qh⟩=εln4−ln2⋅72ε=72ln2 で一致する。定常状態では系のエントロピーが1周期で戻るので、エントロピー生成は2つの熱浴のエントロピーの変化 −βh⟨Qh⟩−βc⟨Qc⟩ だけになる。これは 4.3.5 節の「流れ×親和力」で、流れが運ばれた熱 ⟨Qh⟩/ε、親和力が (βc−βh)ε=ln2 である。
(4) ⟨e−Σ⟩=289⋅1+283⋅32+2812⋅21+283⋅3+281⋅2=289+2+6+9+2=1。P が 0 の経路(e に続けてとどまるもの)は P~ でも 0 なので、式 (4.3.9) が等号で成り立つ。Σ<0 の経路は (1,0,0) と (1,0,1) で、Pr(Σ<0)=284=71。e から出発して熱い熱浴に熱を返し、冷たい熱浴から熱をもらう経路で、熱が冷たい方から熱い方へ運ばれている。
(5) βhε=ln2 と βcε=ln4=2ln2 から Th=2Tc=600K。ε=kBTcln4=1.380649×10−23×300×1.3863=5.74×10−21J、⟨Qh⟩=72ε=1.64×10−21J。kB⟨Σ⟩=1.380649×10−23×0.1980=2.73×10−24J/K で、⟨Qh⟩(3001−6001)=1.64×10−21/600=2.73×10−24J/K と一致する。これは熱伝導の Clausius の形(4.3.6 節の例題)そのものである。2つの熱浴の温度が等しければ、Kh=Kc はどちらも同じ Gibbs 分布について詳細つり合いを満たし、定常分布はその Gibbs 分布になる。そのとき各刻みで流れが釣り合い(式 (4.3.20) の等号の条件)、すべての経路で P=P~ となって ⟨Σ⟩=0 である。