この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第6章 §4.6.7 ★★★ 比べるのは経路の分布と流れを強めた経路の分布。その に Cramér–Rao を当てると TUR が出て、同じ補題から速度限界と熱機関の交換関係が出る
この章では、定常状態の経路の分布 と、分布を変えずに流れだけをそろって 倍にした経路の分布 を比べた。過減衰の Langevin 方程式ではその が厳密に で(命題 4.6.1)、経路の Fisher 情報は である。Markov 跳躍過程では Fisher 情報は で、対数平均の不等式(補題 4.6.3)によって 以下に押さえられる。当てた の性質は、 の2次の係数が Fisher 情報になり、Fisher 情報が推定の精度を Cramér–Rao の不等式で押さえる、という第1部第7章の結果である。
出てきたものは3つある。第一に TUR (定理 4.6.2)で、相対誤差 の流れを作るには 以上の散逸が要る。等号に近づくのは駆動の弱い線形応答の領域で、そこでは Einstein の関係(揺動散逸定理)のもとで等号が成り立つ。第二に速度限界で、分布を から へ移すのに要るエントロピー生成は、移した距離の2乗に比例し時間に反比例する。距離を全変動で測ると Shiraishi–Funo–Saito の限界(定理 4.6.4)、Wasserstein 距離で測ると最適輸送の限界(定理 4.6.5)、Fisher 情報で測ると情報幾何の限界 (4.6.21) になり、最後のものは量子力学の Mandelstam–Tamm の限界と同じ形をしている。第三に、定常的に働く熱機関の出力は 以下で、Carnot 効率と有限の出力と小さな揺らぎは同時に得ることはできない。
3つとも、「エントロピー生成は、ある変化を経路の上で見分けられるようにするための代価である」という1つの見方から出ている。流れを正確に作ることも、分布を速く移すことも、経路の分布を変えることで、その変化の大きさを と Fisher 情報で測ると、エントロピー生成が下から押さえる。これらの関係が実験でどう確かめられてきたかは、次の 第4部第7章 で扱う。
要点
- 仮想的な駆動 ()で流れだけが 倍。、。
- TUR:。跳躍過程では ()。
- 一様な環 。弱い駆動・細かい段で等号に近づく。
- 速度限界:、、。
- 熱機関:。量子:。
総合問題 3状態の環で回る分子モーター ★★★
オリジナル3つの状態 を環状に回るモーターがある。どの状態からも前へ 、後ろへ の速さで移り、1周するごとに周回の数 が1増える(後ろへ1周すると1減る)。
- (1) 定常分布、各辺の流れ 、周回の数の平均の速さ 、エントロピー生成の速さ を求めよ。(使う道具:4.6.2 節、第4部第1章・第4部第3章 のエントロピー生成)
- (2) 長い時間での を求め、TUR の比 を計算して を確かめよ。(使う道具:4.6.3 節)
- (3) 仮想的な駆動の経路の Fisher 情報 を求め、 と比べよ。式 (4.6.13) の2つの不等号のどちらが等号かを述べよ。(使う道具:4.6.2 節、第1部第7章 の Cramér–Rao)
- (4) 周回の数で時間を測り、相対誤差 1% を得るのに要る時間と を求め、TUR の下限と比べよ。(使う道具:4.6.3 節)
- (5) 時刻0に全確率を状態1に置いて放す。 での 、、その間のエントロピー生成 (数値)を使い、速度限界 (4.6.16) を確かめよ。(使う道具:4.6.4 節、第4部第1章 の緩和)
解答
(1) どの状態も同じ速さで出入りするので、定常分布は一様 である。各辺の流れは で、周回の数は辺を1本通るごとに 進むから である。式 (4.6.11) で各辺の対数は なので である。1周あたりの親和力は で、1周するごとに のエントロピーが生成される。
(2) 状態によらずいつも前へ 、後ろへ で跳ぶので、前後の跳躍の回数は独立な Poisson 過程で、正味の跳躍数の分散は である。周回の数はその なので である。 で、式 (4.6.15) の の値 と一致する。
(3) 各辺で なので、式 (4.6.12) から で、 より小さい。1段目の下限は で、実際の に一致する。したがって Cramér–Rao の不等号は等号で、TUR が開いている理由は対数平均の不等号(各辺の往きと帰りの比が2で、平衡から離れていること)だけである。例題 4.6.2 の格子の上のモーターと同じ構造である。
(4) なので、 には (約8.3時間)が要る。そのあいだの で、TUR の下限 の 1.04 倍()である。散逸に換算すると で、TUR の下限からの上乗せは4%にとどまる。
(5) 遷移の行列は巡回行列なので、 は離散 Fourier 変換で対角化することができる。 として固有値は ()で、 は である。数値で解くと 、 である。活動度は分布によらず で、 を式 (4.6.11)(その時刻の で)から時間で積分すると である( では で被積分関数は対数的に発散するが、積分は有限である)。右辺は で、実際の を下回り、速度限界が確かに成り立つ。初めの分布は定常分布から遠く、緩和のエントロピー生成と、環を回し続けるためのエントロピー生成の両方が に入っている。
木下の勉強ステータス
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