解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第4章 §1.4.6 ★★ Newton の運動方程式・力学的エネルギー保存・Snell の法則・鎖の力の釣り合い・弦の自由端は、Euler–Lagrange 方程式とその第一積分・自然境界条件の特別な場合
Newton の運動方程式とエネルギー保存
解析力学を使わない力学の授業では、1次元の粒子の運動を mq¨=−V′(q) と書き、両辺に q˙ を掛けて積分して 21mq˙2+V(q)=E(一定)を導く。L=21mq˙2−V(q) とおくと、∂L/∂q=−V′(q), ∂L/∂q˙=mq˙ で、Euler–Lagrange 方程式 (1.4.5) は mq¨+V′(q)=0 となり、Newton の運動方程式と同じ式になる。エネルギー関数は h=21mq˙2+V(q) で、命題 1.4.2 がエネルギー保存にあたる。「両辺に q˙ を掛けて積分する」という手順は、命題の証明で ∑iq˙i×(Euler–Lagrange の左辺) をつくった手順そのものである。エネルギー保存が成り立つ条件が「V が時刻によらない」であることは、命題の言葉では「L が t を陽に含まない」にあたる。この L をなぜ選ぶのかは 第1部第5章 で扱う。
Snell の法則
光学では、屈折率 n1 の媒質から n2 の媒質へ入る光線について、境界面の法線から測った角を α1,α2 として n1sinα1=n2sinα2 を習う。屈折率が高さ y だけによる層状の媒質で、光が通る時間(c を掛けて光路長)∫n(y)1+y′2dx を停留させる経路を考える(Fermat の原理。この原理は 第2部第10章 で扱う)。L=n(y)1+y′2 は x を陽に含まないので、エネルギー関数
y′∂y′∂L−L=−1+y′2n(y)
が一定である。光線が鉛直方向(層の法線、y 軸の向き)となす角を α とすると sinα=dx/ds=1/1+y′2 なので、第一積分は
n(y)sinα=一定(1.4.20)
と書ける。これが層状の媒質での Snell の法則である。前の節の最速降下線の第一積分 (1.4.17) も、sinα=1/1+y′2=y/(2r) と書き直すとsinα/y=一定、すなわち sinα/v=一定(v=2gy)である。屈折率が速さに反比例する(n∝1/v)ことを使えば、最速降下線は「速さが 2gy の媒質の中の光線」と同じ方程式に従う。
鎖の力の釣り合い
吊るした鎖の形を力学の授業で求めるときは、鎖の微小部分にかかる力を釣り合わせる。張力の水平成分 Th はどこでも同じで、鉛直成分 Thy′ の変化が微小部分の重さ ρgds と釣り合うので
Thy′′=ρg1+y′2(1.4.21)
を得る(y は上向き)。y=λ+acosh(x/a) を入れると y′′=cosh(x/a)/a, 1+y′2=cosh(x/a) なので、a=Th/(ρg) のとき式 (1.4.21) を満たす。力の釣り合いからは2階の方程式 (1.4.21) が直接出て、変分法からは第一積分 (y−λ)/1+y′2=a が出る。後者を x で微分して整理すると前者に戻るので、2つの方法で得る曲線は同じである。変分法の定数 a は、力学の言葉では水平張力を単位の長さの重さで割った長さである。
弦の自由端
張力 Ts で張った弦の静的な変位 y(x)(0≤x≤ℓ)を考える。右端 x=ℓ は、鉛直な棒に通した軽い輪に結んであり、摩擦なしに上下に動けるとする。力の釣り合いで考える授業の形では、「輪は質量がないので、輪にかかる鉛直方向の力 −Tsy′(ℓ) は 0 でなければならない」として、境界条件 y′(ℓ)=0 を課す。変分法では、弦の位置エネルギー ∫0ℓ(2Tsy′2−f(x)y)dx(f は単位の長さあたりの外力)の停留点を、右端の値を自由にして探す。自然境界条件 (1.4.11) は ∂L/∂y′=Tsy′(ℓ)=0 で、力の釣り合いで課した条件と一致する。輪を棒にばね定数 k のばねでつないだ場合は、ばねの位置エネルギー 2ky(ℓ)2 が端の費用 Ψ になり、条件 (1.4.12) は Tsy′(ℓ)+ky(ℓ)=0 となる。これも、輪にかかる張力の鉛直成分とばねの力の釣り合いと同じ式である。
| 授業で習った形 | この章の形 |
| 運動方程式 | mq¨=−V′(q) | Euler–Lagrange 方程式 (1.4.5) |
| エネルギー保存 | q˙ を掛けて積分 | 第一積分 h(L が t を含まない) |
| 運動量保存 | 外力のない方向 | 循環座標の ∂L/∂q˙j |
| 屈折 | n1sinα1=n2sinα2 | 第一積分 n(y)sinα= 一定 |
| 自由端 | 質量のない輪の力の釣り合い | 自然境界条件 ∂L/∂y′=0 |
例題 1.4.6 境界のある媒質で Snell の法則を1変数の極値問題として出す ★★
オリジナル屈折率 n1=1 の媒質(y<0)と n2=1.5 の媒質(y>0)が平面 y=0 で接している。点 P=(0,−1) から点 Q=(2,1) へ進む光線を考える(長さの単位はそろっていればよい)。屈折率が境界で不連続なので、Euler–Lagrange 方程式は境界の上では使えない。各媒質の中では n が一定で、第一積分 (1.4.20) から sinα が一定、すなわち光線は直線である。
- (1) 光線が境界を横切る点を (s,0) とし、光路長 Φ(s) を s の関数として書け。
- (2) Φ′(s)=0 が n1sinα1=n2sinα2 と同じであることを示せ(α1,α2 は各直線が y 軸となす角)。
- (3) s を数値で求め、n1sinα1 と n2sinα2 の値を確かめよ。
解答
(1) 2本の線分の長さは s2+1 と (2−s)2+1 なので
Φ(s)=n1s2+1+n2(2−s)2+1.
(2) Φ′(s)=n1s2+1s−n2(2−s)2+12−s。s/s2+1 は第1の線分が y 軸となす角の正弦 sinα1、(2−s)/(2−s)2+1 は sinα2 なので、Φ′(s)=0 は n1sinα1=n2sinα2 と同じである。汎関数の停留を、媒質の中では直線という形に絞り、残った1変数 s について普通の微分で停留させた。
(3) Φ′(s) は s について単調に増え、Φ′(0)<0<Φ′(2) なので、Φ′(s)=0 の解は1つである。数値で解くと s≈1.363 で、
sinα1=1.3632+11.363≈0.806,sinα2=0.6372+10.637≈0.537.
n1sinα1≈0.806, n2sinα2≈1.5×0.537≈0.806 で一致する。そのときの光路長は Φ≈3.469 である。屈折率の高い側では光線が法線に近づき(α2<α1)、光は屈折率の高い媒質の中の道のりを短くとっている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com